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悪役令嬢様がエンディング前に婚約破棄なされたので王太子殿下の新たな婚約者になりましたが、悪役令嬢にはなってやりません。聖女ざまぁ!!!
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「俺はこの婚約を認めていない。お前なんか婚約者とは認めないぞ」
「うるせーこのポンコツ王太子が!!!」
いつも優しげに微笑む淑女の中の淑女と呼ばれる彼女は、鬼の形相をして今日婚約を結んだばかりの『王太子殿下』を全力で引っ叩いた。
「いった…貴様いきなりなにをする!?」
「うるせーポンコツ!!!このクソ野郎!」
「なっ…さっきからポンコツポンコツと、一体なんなのだ!?」
「お見合いの席で顔を合わせて数秒で婚約者と認めないとかテメーは何様だあ゙ぁ゙ん゙!?」
「そ、それは…」
王太子…サファイアはあまりの彼女の剣幕に言い返せなくなる。
「わたくしは、それでなくとも貴方のようなポンコツに大親友のエメラルドお姉様を泣かされてブチ切れてるのに、さらには貴方みたいなポンコツの婚約者に抜擢されてしまったのですよ?本当に最悪!!!エメラルドお姉様のような素敵な方を婚約者にしておきながら、聖女さまとやらと恋仲になって?エメラルドお姉様を聖女との仲を引き裂く悪女扱い!本当に最低ですね、このクソ野郎!挙句婚約破棄されたのに謝ってもいないそうじゃないですか!聞いてますからねこのポンコツ!!!婚約者として認めないとか、私の方が願い下げです!」
「…は?」
サファイアは一気に捲し立てた彼女に混乱する。願い下げと言われて受け入れられなかった。王太子たる自分を願い下げとはどういうことか。
「…なに?もしかして王太子である自分との婚約ならわたくしが喜ぶとでも思ってたんですか?ふざけんな!エメラルドお姉様を泣かせた奴なんて好きになるわけないでしょう!」
「な、なっ…!」
「大体聖女さまと恋愛ごっこを続けたいならこの婚約にももっと抵抗してごらんなさい!婚約しておいてわたくしにグダグダ言うとかどんだけヘタレなんですか!」
「うっ…」
「おまけに、貴方の有責で婚約破棄されたくせにエメラルドお姉様を悪役令嬢呼ばわりとか本っ当に最低。無理。キモい。エメラルドお姉様があんな小者の聖女風情を虐めるわけないでしょうふざけんな!!!あとわたくしは、貴方方の言うところの悪役令嬢にはなって差し上げませんからね!」
元婚約者のエメラルドと並び淑女の中の淑女と呼ばれた彼女…新しい婚約者、ラピスラズリ。
彼女は思っていたより過激な女だったようだ。
…否、王太子であるのに自分の立場を真の意味で理解していないサファイアがそうさせているのだ。
サファイアも、薄々それに自覚はある。
「貴方、どうせ聖女さまから甘い言葉を囁かれて、それに溺れちゃったんでしょう?王太子殿下は素敵な人です、自信を持ってください、あんな悪役令嬢の言うことは気にしないで、とか」
「た、たしかに言われたが…」
「エメラルドお姉様に劣等感を持ってたらしい貴方にはさぞ甘美な言葉だったでしょうね!!!エメラルドお姉様が貴方に小言をよく言ってたのは、少しでも貴方が王太子として相応しい人間に近づくようにって優しさだったのに!あーあ、バカじゃないですか?甘い言葉で近づいてくる奴に惑わされて、本当の味方を失うとか!」
「…っ」
「エメラルドお姉様は言ってました。貴方はまだまだ甘いけど、きっと将来はこの国を守っていける素敵な王になるだろうって。それを支えたいって」
エメラルドがそんなことを言っていたなんて聞いてない。いつもお小言ばかりのうるさい女としか思っていなかった。
そうサファイアは心の中で言い訳するが、言い訳にもなっていないのは自覚があるので口には出さない。
「ねえ、ポンコツ王太子殿下?もう一度しっかり考えてごらんなさい。貴方にとって今一番必要な行動は何か。一番必要な人は誰か。わかったところで、後の祭りかも知れないですけど」
ラピスラズリは席を立つ。サファイアは、それを止めることも、見送りもしなかった。ただ、ラピスラズリの言葉を何度も反芻していた。
「…ラピスラズリ」
「話しかけないでくださいませ」
二回目の顔合わせ。ラピスラズリは顔も見たくないのにと不愉快そうに眉を寄せる。一方でサファイアは、気まずく思いつつも言葉を紡ぐ。
「この間は…俺が間違っていたようだ。謝罪しよう」
「ああそうですか」
「…つれないな」
困ったように眉尻を下げるサファイア。
だがラピスラズリは気にすることなく庭のバラに目をやる。
「…その、俺は王太子であるのにあまりに幼稚だったと思う。これからそれは改善していくつもりだ」
「そうですか。それで?」
「………やったことの重さに今更気付いて、エメラルドに謝罪をした。彼女は既に新たな婚約を結んでいて、幸せそうだったのが救いだが…本当に申し訳ないことをしたと、心から反省しているんだ、本当に、本当に」
「そうですか」
「でも…今は幸せでも、傷つけた。王太子でありながら、元婚約者をあんなにも蔑ろにしていた。俺は最低だ」
今にも泣き出しそうな顔で反省を口にするサファイア。
それを冷めた目で見るラピスラズリ。
「言っておいて差し上げますけど、貴族はみんなエメラルドお姉様の味方ですよ。貴方がどんなに反省したところで冷めた目で見られるだけです」
「…うん。俺にできることは猛省して、今からでも信頼を回復するよう努めることだけだな」
「王太子という立場でありながら、貴族を軽んじたのです。信頼回復は簡単じゃないですよ?この国唯一の王子じゃなかったら、今頃貴方なんて干されてます」
「うん、そうだな。同腹の妹や腹違いの妹は多いが、弟がいないのは…今は救いか」
「そうですね、よかったですね。貴族にとっては替えが利かないから良くないですけど」
ラピスラズリの言葉にサファイアは笑う。
「だろうな。本当に、替えが利かない唯一の王太子がこんなんですまないな」
「本当に。まあでもいざとなったら、公爵閣下の御子様たちもいますけどね」
「叔父上は従弟達を王位に就かせる気はないようだし、彼らはまだ幼すぎるが…まあ、そうだな」
なにやらサファイアは本当に生まれ変わったように反省しているようだが、ラピスラズリはエメラルドお姉様と慕う彼女を傷つけたクズを赦すつもりがないのでそっと視線を逸らす。じゃないとまた引っ叩きそうだからだ。
しかしサファイアはまだ喋り続ける。
「それと…ルビーのことなんだが」
「…あの小者聖女がなんですか?」
ラピスラズリは静かにサファイアに視線を戻す。
「甘い言葉を囁かれて酔っていたが、冷静になってみるとまるで…彼女は『正解』の言葉だけを喋っているような違和感があって…それに、エメラルドが彼女を虐めるわけがないと言われて…考えてみたらそれはそうだなと思って…」
「それで?」
「彼女を問い詰めたら、白状したんだ。なにやら、この世界に似た世界を象った遊戯があるらしく…その遊戯のある世界から、転生してきた、とか、なんとか…エメラルドは悪役令嬢なのに虐めてこないから、濡れ衣を着せたとか…たまに言ってることがよくわからないが、とにかくそういうことらしい…」
「あらまあ…小者聖女風情がエメラルドお姉様に濡れ衣着せるとかふざけんじゃないです。大体この世界に似た遊戯とかなんですかそれ。それで?」
「エメラルドは悪役令嬢なのに、自分から悪役令嬢の役を辞退するなんて、もう少しでエンディングだったのにと発狂して…今は教会の奥に幽閉されている」
ラピスラズリもさすがに幽閉と聞いて驚く。
「たしかに聖女さまが発狂なんて人には言えないですけど…幽閉とは思い切った判断ですね。まあエメラルドお姉様にしたことを思えば当然だけど」
「ああ。仕方がないんだろう。教会としては放置するわけにもいかないからな」
「そうですね…聖女ざまぁ!!!」
「君はブレないな…ちなみに聖女の家族は、教会からお金を受け取ったようで聖女の待遇に文句はないらしい。なんでも聖女は、家族にも私は聖女なのだからと偉そうに振る舞って嫌われていたそうだ」
「じゃあ間違っても助けは来ないですね?」
ラピスラズリはため息をつく。
「まあ、聖女さまに関しては一応落ち着くところに落ち着いた…のでしょうか。聖女は存在してくれていればそれだけで国に加護があります。殊更大事にする必要はないはずです」
「そうだな。教会は手に余る聖女に困っているようだが…教会も、俺が聖女にゾッコンなのを利用していた節があるから存分に困ってもらおう」
「まあそうですね。最近の教会の調子に乗った態度は目に余りますから」
そこまで話し終わると、サファイアはラピスラズリに改めて頭を下げた。
「…エメラルドにも、君にも、本当にすまなかったと思ってる」
「王太子殿下、さすがにそんな簡単に頭を下げてはいけません」
「いや、君にもちゃんと謝りたい」
「…そう、ですか」
「本当に申し訳ないことをした」
ラピスラズリはしばらく黙ってサファイアの頭を見ていたが、仕方がなさそうに言った。
「わたくしはもういいです、本当に。王命で貴方と婚約させられたことは、もう仕方がないと思ってます。貴方の最初の無礼な態度も、聖女に唆されていたせいもあるでしょうからもういいです」
「え」
「ですが、エメラルドお姉様を悲しませたことは許していません」
「…っ」
「それと、二度と舐めた態度は取らないことです。次は引っ叩く程度じゃ済まさないですよ。わたくしだけでなく、誰に対しても礼節はわきまえなさいませ」
ラピスラズリの言葉にサファイアはコクコクと頷く。
「これからは君を大切にする。絶対に」
「ああそうですか」
そう言ってラピスラズリはサファイアを睨みつけた。
「大切にしてくださるのはいいですけど、エメラルドお姉様の件は本当に許してませんからね」
「わかってる」
「そんなこと言っても、わたくしがいつか絆されると思ってるんでしょう?そんなこと絶対有り得ないんですからね!」
サファイアはそんなラピスラズリに苦笑する。
その後ラピスラズリがサファイアを許すまでに五年、夫として愛するようになるまでは十年が掛かったそうな。
「うるせーこのポンコツ王太子が!!!」
いつも優しげに微笑む淑女の中の淑女と呼ばれる彼女は、鬼の形相をして今日婚約を結んだばかりの『王太子殿下』を全力で引っ叩いた。
「いった…貴様いきなりなにをする!?」
「うるせーポンコツ!!!このクソ野郎!」
「なっ…さっきからポンコツポンコツと、一体なんなのだ!?」
「お見合いの席で顔を合わせて数秒で婚約者と認めないとかテメーは何様だあ゙ぁ゙ん゙!?」
「そ、それは…」
王太子…サファイアはあまりの彼女の剣幕に言い返せなくなる。
「わたくしは、それでなくとも貴方のようなポンコツに大親友のエメラルドお姉様を泣かされてブチ切れてるのに、さらには貴方みたいなポンコツの婚約者に抜擢されてしまったのですよ?本当に最悪!!!エメラルドお姉様のような素敵な方を婚約者にしておきながら、聖女さまとやらと恋仲になって?エメラルドお姉様を聖女との仲を引き裂く悪女扱い!本当に最低ですね、このクソ野郎!挙句婚約破棄されたのに謝ってもいないそうじゃないですか!聞いてますからねこのポンコツ!!!婚約者として認めないとか、私の方が願い下げです!」
「…は?」
サファイアは一気に捲し立てた彼女に混乱する。願い下げと言われて受け入れられなかった。王太子たる自分を願い下げとはどういうことか。
「…なに?もしかして王太子である自分との婚約ならわたくしが喜ぶとでも思ってたんですか?ふざけんな!エメラルドお姉様を泣かせた奴なんて好きになるわけないでしょう!」
「な、なっ…!」
「大体聖女さまと恋愛ごっこを続けたいならこの婚約にももっと抵抗してごらんなさい!婚約しておいてわたくしにグダグダ言うとかどんだけヘタレなんですか!」
「うっ…」
「おまけに、貴方の有責で婚約破棄されたくせにエメラルドお姉様を悪役令嬢呼ばわりとか本っ当に最低。無理。キモい。エメラルドお姉様があんな小者の聖女風情を虐めるわけないでしょうふざけんな!!!あとわたくしは、貴方方の言うところの悪役令嬢にはなって差し上げませんからね!」
元婚約者のエメラルドと並び淑女の中の淑女と呼ばれた彼女…新しい婚約者、ラピスラズリ。
彼女は思っていたより過激な女だったようだ。
…否、王太子であるのに自分の立場を真の意味で理解していないサファイアがそうさせているのだ。
サファイアも、薄々それに自覚はある。
「貴方、どうせ聖女さまから甘い言葉を囁かれて、それに溺れちゃったんでしょう?王太子殿下は素敵な人です、自信を持ってください、あんな悪役令嬢の言うことは気にしないで、とか」
「た、たしかに言われたが…」
「エメラルドお姉様に劣等感を持ってたらしい貴方にはさぞ甘美な言葉だったでしょうね!!!エメラルドお姉様が貴方に小言をよく言ってたのは、少しでも貴方が王太子として相応しい人間に近づくようにって優しさだったのに!あーあ、バカじゃないですか?甘い言葉で近づいてくる奴に惑わされて、本当の味方を失うとか!」
「…っ」
「エメラルドお姉様は言ってました。貴方はまだまだ甘いけど、きっと将来はこの国を守っていける素敵な王になるだろうって。それを支えたいって」
エメラルドがそんなことを言っていたなんて聞いてない。いつもお小言ばかりのうるさい女としか思っていなかった。
そうサファイアは心の中で言い訳するが、言い訳にもなっていないのは自覚があるので口には出さない。
「ねえ、ポンコツ王太子殿下?もう一度しっかり考えてごらんなさい。貴方にとって今一番必要な行動は何か。一番必要な人は誰か。わかったところで、後の祭りかも知れないですけど」
ラピスラズリは席を立つ。サファイアは、それを止めることも、見送りもしなかった。ただ、ラピスラズリの言葉を何度も反芻していた。
「…ラピスラズリ」
「話しかけないでくださいませ」
二回目の顔合わせ。ラピスラズリは顔も見たくないのにと不愉快そうに眉を寄せる。一方でサファイアは、気まずく思いつつも言葉を紡ぐ。
「この間は…俺が間違っていたようだ。謝罪しよう」
「ああそうですか」
「…つれないな」
困ったように眉尻を下げるサファイア。
だがラピスラズリは気にすることなく庭のバラに目をやる。
「…その、俺は王太子であるのにあまりに幼稚だったと思う。これからそれは改善していくつもりだ」
「そうですか。それで?」
「………やったことの重さに今更気付いて、エメラルドに謝罪をした。彼女は既に新たな婚約を結んでいて、幸せそうだったのが救いだが…本当に申し訳ないことをしたと、心から反省しているんだ、本当に、本当に」
「そうですか」
「でも…今は幸せでも、傷つけた。王太子でありながら、元婚約者をあんなにも蔑ろにしていた。俺は最低だ」
今にも泣き出しそうな顔で反省を口にするサファイア。
それを冷めた目で見るラピスラズリ。
「言っておいて差し上げますけど、貴族はみんなエメラルドお姉様の味方ですよ。貴方がどんなに反省したところで冷めた目で見られるだけです」
「…うん。俺にできることは猛省して、今からでも信頼を回復するよう努めることだけだな」
「王太子という立場でありながら、貴族を軽んじたのです。信頼回復は簡単じゃないですよ?この国唯一の王子じゃなかったら、今頃貴方なんて干されてます」
「うん、そうだな。同腹の妹や腹違いの妹は多いが、弟がいないのは…今は救いか」
「そうですね、よかったですね。貴族にとっては替えが利かないから良くないですけど」
ラピスラズリの言葉にサファイアは笑う。
「だろうな。本当に、替えが利かない唯一の王太子がこんなんですまないな」
「本当に。まあでもいざとなったら、公爵閣下の御子様たちもいますけどね」
「叔父上は従弟達を王位に就かせる気はないようだし、彼らはまだ幼すぎるが…まあ、そうだな」
なにやらサファイアは本当に生まれ変わったように反省しているようだが、ラピスラズリはエメラルドお姉様と慕う彼女を傷つけたクズを赦すつもりがないのでそっと視線を逸らす。じゃないとまた引っ叩きそうだからだ。
しかしサファイアはまだ喋り続ける。
「それと…ルビーのことなんだが」
「…あの小者聖女がなんですか?」
ラピスラズリは静かにサファイアに視線を戻す。
「甘い言葉を囁かれて酔っていたが、冷静になってみるとまるで…彼女は『正解』の言葉だけを喋っているような違和感があって…それに、エメラルドが彼女を虐めるわけがないと言われて…考えてみたらそれはそうだなと思って…」
「それで?」
「彼女を問い詰めたら、白状したんだ。なにやら、この世界に似た世界を象った遊戯があるらしく…その遊戯のある世界から、転生してきた、とか、なんとか…エメラルドは悪役令嬢なのに虐めてこないから、濡れ衣を着せたとか…たまに言ってることがよくわからないが、とにかくそういうことらしい…」
「あらまあ…小者聖女風情がエメラルドお姉様に濡れ衣着せるとかふざけんじゃないです。大体この世界に似た遊戯とかなんですかそれ。それで?」
「エメラルドは悪役令嬢なのに、自分から悪役令嬢の役を辞退するなんて、もう少しでエンディングだったのにと発狂して…今は教会の奥に幽閉されている」
ラピスラズリもさすがに幽閉と聞いて驚く。
「たしかに聖女さまが発狂なんて人には言えないですけど…幽閉とは思い切った判断ですね。まあエメラルドお姉様にしたことを思えば当然だけど」
「ああ。仕方がないんだろう。教会としては放置するわけにもいかないからな」
「そうですね…聖女ざまぁ!!!」
「君はブレないな…ちなみに聖女の家族は、教会からお金を受け取ったようで聖女の待遇に文句はないらしい。なんでも聖女は、家族にも私は聖女なのだからと偉そうに振る舞って嫌われていたそうだ」
「じゃあ間違っても助けは来ないですね?」
ラピスラズリはため息をつく。
「まあ、聖女さまに関しては一応落ち着くところに落ち着いた…のでしょうか。聖女は存在してくれていればそれだけで国に加護があります。殊更大事にする必要はないはずです」
「そうだな。教会は手に余る聖女に困っているようだが…教会も、俺が聖女にゾッコンなのを利用していた節があるから存分に困ってもらおう」
「まあそうですね。最近の教会の調子に乗った態度は目に余りますから」
そこまで話し終わると、サファイアはラピスラズリに改めて頭を下げた。
「…エメラルドにも、君にも、本当にすまなかったと思ってる」
「王太子殿下、さすがにそんな簡単に頭を下げてはいけません」
「いや、君にもちゃんと謝りたい」
「…そう、ですか」
「本当に申し訳ないことをした」
ラピスラズリはしばらく黙ってサファイアの頭を見ていたが、仕方がなさそうに言った。
「わたくしはもういいです、本当に。王命で貴方と婚約させられたことは、もう仕方がないと思ってます。貴方の最初の無礼な態度も、聖女に唆されていたせいもあるでしょうからもういいです」
「え」
「ですが、エメラルドお姉様を悲しませたことは許していません」
「…っ」
「それと、二度と舐めた態度は取らないことです。次は引っ叩く程度じゃ済まさないですよ。わたくしだけでなく、誰に対しても礼節はわきまえなさいませ」
ラピスラズリの言葉にサファイアはコクコクと頷く。
「これからは君を大切にする。絶対に」
「ああそうですか」
そう言ってラピスラズリはサファイアを睨みつけた。
「大切にしてくださるのはいいですけど、エメラルドお姉様の件は本当に許してませんからね」
「わかってる」
「そんなこと言っても、わたくしがいつか絆されると思ってるんでしょう?そんなこと絶対有り得ないんですからね!」
サファイアはそんなラピスラズリに苦笑する。
その後ラピスラズリがサファイアを許すまでに五年、夫として愛するようになるまでは十年が掛かったそうな。
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