異世界恋愛の短編集

下菊みこと

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別にいいよ、好きにすれば

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私は公爵家の長女として生まれた。

妹が一人いる。

男兄弟はいない。

だから私が家を継ぐことになった。

両親は私を厳しく育てたが、家を継ぐ私にとってそれは愛情だと思った。

実際、私は公爵として回すべき仕事はなんでもできるようになった。

マナーも教養ももちろん身についた。

両親はそれだけでなく、何故かは知らないがサバイバル術や平民が送るような自分で自分のことをすることまで学ばせてくれた。

…と、思っていたが。

実際にはただの虐待だったらしい。

妹曰く、私が厳しく育てられたのは教育虐待で、侍女をつけられず身の回りのこと全部を自分でやらされたのはネグレクトで、サバイバル術はご飯をもらえなかったひもじい私が勝手に身につけただけ、らしい。

そして公爵家を継ぐために公爵としてこなす仕事を覚えさせられたのではなく、妹が家を継いだ時に補佐…というか仕事を押し付けるために教え込まれたのだとか。

両親に確認したら、本当だった。

あー、だから妹には婚約者がいて私には婚約者がいないんだ。

てっきり結婚くらいは自由にさせてくれるつもりだと思っていたが、そもそも結婚せず家に縛り付けられてろってことですか。

そうですか、そうですか。

別にいいよ、好きにすれば。

でも、私もこれからは好きにさせてもらうから。

私は公爵家の娘にしては本当にごく僅かな、でも平民として生きていくには十分なお小遣いをタンス預金していたから、それを持って夜中にこっそり家を出た。

成人したばかりの十八歳の私には、全てが賭けだったが…それでも家を出る決意は固かった。

私にサバイバル術を授けてくれて、何かと可愛がってくれた庭師の爺やが家出に協力してくれた。

私が爺やに可愛がられていることを知る人はいないため、バレないだろう。

だってみんな、私をいじめる時以外は私には関心がなかったから。













…何故私がこんなに両親から嫌われていたかと言えば、実は私は双子だったらしい。

母のお腹の中には私と弟がいて、でも弟は生まれて間も無く…それを私のせいだと、両親もうちで働く使用人たちも思ったそうだ。

唯一まともに私を愛してくれていた庭師の爺やは、最後にそれを教えて私を逃がしてくれた。

逃がしたことはバレはしないだろうけどバレたところであと余命半月だから大丈夫と、青白くなった顔で笑い痩せ細った腕で抱きしめて励ましてくれた爺や。

せめて看取るくらいはしたかったけど、爺やは私が逃げ延びて幸せになってくれる方が嬉しいと送り出してくれたから。

だから私は、幸せになってみせる。













庭師の爺やの用意してくれた偽りの身分証で隣国に渡り、祖国から離れた田舎の地域で平民として暮らし始めた私。

持ち出してきたタンス預金でアパートを一部屋借りて、家具と服と食器とその他諸々を揃えた。

それでもあと一カ月は暮らしていける余裕はあるが…早めに仕事を見つけたいところ。

ということでサバイバル術を駆使して、狩人になってみた。

害獣を駆除して報酬をもらい、駆除した害獣を捌いて加工して保存食にして食べる。

皮や骨も無駄にはせず、加工して売り物にした。

気がついた頃には、私はこの辺りで有名な狩人になっていた。

ちょうどこの辺りの狩人が最近老衰して後継もおらず、獣害に困っていたからみんな助かると言ってくれた。

害獣の肉の保存食があるし山菜も山で取れるから食には困らない、害獣駆除の報酬と皮などの加工品の売り上げでお金にも困らない。

税金をきちんと納税しても、手元には結構なお金が残った。

私はそのうち、狩人としての名声を手にして結構な貯金のあるお金持ちになった。

また、自分で言うのもなんだが銀髪に青い目のそれなりの美人なので村の男性にはモテる。

残念ながら結婚する気はないからあれだけど。

私はずっと独身でいい。

「このお金、何に使おう」

お金は持ちすぎちゃいけない。

お金は天下の回りもので、使わないとみんなが困ると庭師の爺やが言っていた。

老後や狩りで何かあった時のための貯金は十分。

それだけ残しておいて、あとのお金は誰かのために使おう。

では誰のために使おうか。

「あの子のために使おう」

私はあの子を、助けてあげることにした。

庭師の爺やが、私にしてくれたみたいに。














あの子は、この村の厄介者だ。

孤児で、盗みを働いて生きていた。

私はそんなあの子をお手製の罠で確保した。

村の人たちにも相談して、私が預かることにした。

みんなほっとしたようで、よろしくお願いしますと言ってきた。

私が借りたアパートは、2LDKでお風呂付き。

だから一つ使える部屋があるから、あの子のための部屋にした。

あの子のための家具や服やその他諸々を買って、さてここからだ。

私はあの子に魔術で制約をつけた。

家から勝手に出て行かないこと。

盗みを働かないこと。

人を傷つけないこと。

人の悪口を言わないこと。

その四戒を与えた。

その上で、家の中ではあの子の自由にさせることにした。

だが、とりあえず手始めにお風呂には入れる。

入浴剤入りのお風呂、初めてのシャンプーとリンスと洗顔料とボディーソープ。

全部初めてで怖がっていたが、慣れると気持ちよさそうにしていた。

可愛かった。

そして、伸びっぱなしの髪を魔術で短く切ってあげた。

だいぶ男の子らしい見た目になったが、まだ幼いせいか可愛らしさが勝つ。

金髪に赤い瞳がとてもキュートだ。

顔は整っているのだ、この子は。

そしてこの子にお腹いっぱい保存食と山菜で作ったお料理を食べさせた。

この子はガツガツと食べて、お腹いっぱいになると寝た。

そうしてこの子との生活が始まった。













この子との生活は、楽しいものだ。

お風呂に入るようになって清潔になったこの子は、ご飯を毎日お腹いっぱいに食べて肉付きが良くなった。

そうしたら絶世の美少年となった。

さらに、いつのまにやら私に懐いてくれるようになった。

私に懐いてくれたこの子に、読み書き計算を教えれば…地頭が良かったらしく案外とすんなり読み書き計算を覚えた。

それからは様々なマナーや地理や歴史や生物学や魔術学も教えてやるようになり、この子は知識をするする吸収していった。

そのうち狩りにも同行させるようになり、狩りも覚えた。

読み書き計算と教養と魔術とマナーと狩りさえ出来れば、どこでも生きていけるだろう。

たとえ私が途中でなにかあっても、この子は生きていける。

そのうち村での買い物や村での人付き合いにもこの子を同行させるようになり、最初は村人たちはこの子を警戒していたが…大人しくしているこの子を見て、警戒を解いてくれるようになり。

この子はいつの間にか、村の子供の一人として受け入れられるようになった。

村人たちは蟠りがなくなりこの子を可愛がってくれて、この子も蟠りがなくなり村人たちにも懐いた。

私はお金もあるし食べ物もあるので二人暮らしでも、暮らしには困らない。

このまま穏やかな日々が続くと思っていた。












「…この子が、この国の王子かもしれない?」

「はい、国王陛下がお手つきしたメイドの産んだ子かもしれません。魔術で国王陛下との血の繋がりを確認させてください」

「…はい」

唐突に、この子の迎えが来た。

この子は魔術で、国王陛下の子だと確認が取れた。

この子は王家に引き取られることになった。

国王陛下は、男の子に恵まれず子供はみんな女の子ばかりだったから。

私は魔術で掛けた四戒を解き、王家の使者にこの子を託す。

「さようなら、キリアン」

「やだよ、マリア!一緒に来てよ!」

「ごめんね、幸せになってね」

「マリア、マリア!!!」

私は国に王子様を返した。

村の人たちからは、王子様を立派に育てて返した〝英雄の狩人〟と呼ばれるようになった。

名声は手にした、お金もある。

でも、ちょっぴり寂しい。

寂しさを埋めるために、私は老後の資金は残して余ったお金は村の子供達に勉強を教えるための資金に使った。

村の子供達と戯れていれば、心は凪いだ。

村人たちも、子供達が賢くなって喜んでくれた。

仕事中に子供達の面倒を見てもらえると頼ってくれた。

寂しいけれど、寂しくない。

そんな日々を過ごして、いつの間にか十年の月日が経っていた。

私はもう二十八歳、あの子は十八歳になった頃だろうか。

そう黄昏ていたら、玄関のドアがノックされた。

出てみると、金髪に赤い瞳の絶世の美青年。

まさか。

「キリアン…!」

「そうだよ、僕のマリア。やっと迎えに来られた」

「迎えに…?」

「そう、僕と一緒に王宮に来て。結婚しよう、マリア」

プロポーズを受ける。

跪かれて、呆然としている間に左手を取られた。

薬指に婚約指輪を嵌められる。

「ま、待ってキリアン」

「マリアこそ待って、聞いて。マリアの素性は調べた。隣国の公爵家の令嬢だと。そしてマリアの〝元〟家族は僕がマリアが欲しいと言ったらOKしてくれた。身分も申し分ないし、家族の許可も得たからいつだって結婚できるよ」

「…っ!」

勝手なことしないでとか、せっかくあの人たちとは縁を切ったのにとか、色々思うけれど…嬉しいという気持ちが勝ってしまう。

正直言ってキリアンに対して恋愛感情はない。

でも、ずっとずっと会いたかった可愛いこの子が戻ってきた…いや、連れて行ってくれるというならそれは嬉しい、すごく嬉しい。

ずっと一緒にいられるなら、結婚でもなんでもいい。

でも。

「結婚…するに当たって、一ついい?」

「うん、なに?」

「まだその、子供を産める身体ではあるけど…お世継ぎとか」

「大丈夫。僕魔術は大得意だから。お世継ぎが生まれやすいように調整できるよ」

なにそのえげつない魔術。

「それは…すごいね…」

「でしょう?だから大丈夫。出産時のサポートも僕に任せて。魔術は大得意だから」

ねえだから覚えてる魔術がえげつないって。

王宮ってそんなことも教えるの?

独学?

独学なの?

「だから安心してお嫁さんにおいで、僕のマリア」

「あともう一つ聞いていい?」

「うん?」

「私もう二十八歳のおばさんだけど、抱けるの?」

「抱けるよ、マリアなら。それに二十八歳はまだまだ若いと思うけど」

キリアンは十八歳なのに、いいのかな。

「あ、年齢差は気にしないで。さっきも言った通りお世継ぎも出産も僕の魔術でどうとでもなるんだから、年齢差なんて関係ないよ」

「え、あ、うん」

「他に質問は?」

「うん、あの…」

言いづらいけど聞いておかないと。

「私…この歳で処女なんだけど、大丈夫?」

キリアンはぱっと表情を明るくした。

「むしろ最高!」

ぎゅっと抱きしめられる。

「マリア、僕のマリア。僕の妃、僕の正妃。僕は君以外には妃を持たないよ。公妾もいらない。今度こそ、ずっと一緒にいてよ」

「…うん、寂しい思いをさせてごめんね」

「こうして再会できたから、お互いそれは言いっこなし」

ぎゅうぎゅうと抱きしめられ続けて、五分くらいしてようやく離してもらえた。

「で、お嫁さんには来てくれる?」

「うん、それでキリアンとずっと一緒にいられるなら。でも、キリアンはいいの?」

「僕はマリアがいいの!」

ということで、王妃様になることになってしまいました。














キリアンと結婚して、王妃になった。

二人の男の子の双子と三人の女の子の三つ子の子宝に恵まれて、出産も無事乗り越えた。

五人の子供達はいずれもキリアンそっくりで、地頭も良くて優秀で健康で元気いっぱい。

こうして私は幸せになりました…なんだけど。

「ねえ、キリアン。両親や妹からの接触が一切無いのって、なにかした?」

「いや?勝手に自滅してるだけだよ」

最悪の思い出しかない〝元〟家族はなにがしかあったらしい。

「なにしたの?」

「いや、本当に何もしてないって。一応隣国の貴族だし、マリアを妃にするのに彼らが公爵でいてくれる必要があるから…僕は何もしてないんだけど…」

「ど?」

「いや、君がいなくなって仕方なく君の妹に公爵としての仕事を教え込んだけど向いてなかったみたいでね。それならと君の妹の婚約者に公爵の仕事を教えて婿養子にとったんだけど、夫になって爵位を継承して後継を生んだら…あちこちで火遊びするようになって、大変みたいだよ」

最初に頭に浮かんだ言葉はざまぁみろ。

ただ。

「妹とその旦那の子供は無事なの?」

「ああうん、それは大丈夫。君の両親や妹は唯一の後継であるその子を大切にしているよ」

「そう。なら良かった」

「それより、君は今幸せ?」

「幸せよ?子宝にも恵まれて、旦那様にも恵まれているもの」

キリアンにそう言って抱きつく。

この数年で、私もキリアンを〝思い出のあの子〟ではなく〝そばにいてくれる夫〟として愛するようになっていた。

「本当に、幸せなの」

「それならよかった」

「キリアンは?」

「僕も可愛い子供たちと、愛おしい妻に囲まれて幸せだよ」

庭師の爺や、見てる?

こうして私は、幸せになったのです。

全部貴方が逃がしてくれたおかげです、ありがとう。

「ねえキリアン、今度恩人のお墓参りに行きたいの」

「前に言っていた庭師の彼だね。もちろん連れて行くよ」

「ありがとう、キリアン」

今度会いに行くからね。

またね、爺や。
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