見た目以外あんまり好きじゃない婚約者が幼児化したのでこれ幸いと育て直してみた

下菊みこと

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嫌な婚約者の本心は

私の婚約者は、なんというか性格が悪い。

私が何かするたび上から目線でアドバイスしてきたり、マウントを取ってきたりする。

あんまり良い気分じゃないからやめてと言ってもやめない。

しかし、そんな婚約者にある日罰が下った。

「…ルーク様が子供になった?」

「はい、今までの記憶も消えて完全に小さな頃に戻られていて…」

「理由は?原因は?」

「なんでも呪いを受けたそうで…」

「呪いを?」

婚約者の従者曰く、婚約者は世間知らずなめちゃくちゃ美人の幼馴染から猛アプローチを受けていたが断り続けていたためとうとうキレた幼馴染に呪われたとか。

幼馴染に言い寄られていたなんて初耳なんだけど。

たしかに顔はいいから惚れる気持ちはわからないでもないけれど、幼馴染とやらもやり過ぎだ。

しかし、美人に言い寄られても靡かなかったというのは我が婚約者ながらグッジョブだとは思う。

うん。

「幼馴染とやらは?」

「格下の貴族の娘でしたが、親が強制的に修道院に押し込めたそうです。親はルーク様への慰謝料や娘の婚約者だった貴公子への慰謝料にと大変だそうで」

「へえ…」

そりゃまた大変だ。

今頃借金まみれだろう。

おそらくいずれ爵位を売って金にするくらいは困窮するのではなかろうか。

「私とルーク様との婚約は?」

「その…治る可能性もあるし治らない可能性もありますが、両家ともにぜひ婚約は続けて欲しいと」

「…その場合何歳差カップルになります?」

本来なら同い年のカップルだったが。

「十八歳と九歳なので…九歳差ですね」

「わぁ…両家の両親ともにそれでもいいのね?」

「はい」

最悪子供は親戚の子を養子にするところまで考えているのだろう。

それならそれで私も問題はない。

だが。

「わかったわ…でも、ひとつだけお願いがあります」

「はい」

私は決意を込めて言った。

「彼を私に育て直させてください」

婚約者の従者は目をまん丸にした。













結局私の要望は通り、彼は我が家で育て直し中。

彼は幼い頃の可愛らしい姿で、記憶もない状態で、けれど幸か不幸か身につけていた教養はそのままだったので育て直しと言っても勉強は特にさせる必要もなかった。

つまりやるのは性格矯正だけである。

もしかしたら幼馴染とやらはそうなった彼に自分を好きになるよう刷り込みたかったのかもしれないと気付いてしまい辟易したが、まあとにかく。

「ルーク様、いいですか?人の嫌がることはしない」

「人の嫌がることはしない」

「コミュニケーションをとる際は相手の気持ちを考える」

「相手の気持ちを考える」

「相手の喜ぶことを第一にする」

「相手の喜ぶことを第一にする」

九歳に戻り記憶もない真っさらな彼は、それはもう素直で可愛い。

見た目はキュートな上に私の言うことを素直に聞いてくれるので惚れ直した。

キュートな彼に色々吹き込みつつ、お膝に乗せて可愛がったり頭をよしよししたりするのがマイブームとなりつつある。

もうずっとこのままでもいい。

そんな風に思っていると、ふと彼がラッコさん座りの体勢からこちらに向き直り私にキスをした。

「え、ルーク様?」

「相手の喜ぶことを第一にする、でしょ?レオナが喜ぶかなって思って」

そう言ってにへらと笑った彼は可愛くて、胸がキュンとした。

ずっとこのまたイチャイチャしていたい!

しかし現実とは非情なものである。

キスされて少しした瞬間何故かボフンと音を立てて彼の周りに煙幕が広がり、煙幕が消えると元の彼が現れた。

重い。

「…元に戻った?」

「ああ、そうらしい。おそらくキスがトリガーだろうな」

おとぎ話みたいなトリガーだが、まあお花畑な幼馴染殿を思えばさもありなん。

彼は「ああ、重いだろう。すまない」と言って私の上から退いた。

「…わー!戻ってるー!」

彼の従者は一拍置いてからようやく事態を飲み込めたようで彼の両親に報告に行った。

部屋に残されたのは私とルーク様だけ。

しばらく無言で見つめ合う。

気まずさから私はなにかを言おうとするが思い浮かばない。

「…えーっと」

「その、悪かったな」

「え?」

彼は言った。

「君に『育て直し』された記憶は残ってる」

「!!!」

「俺のバッドコミュニケーションで嫌な思いをさせていたらしい。すまなかった」

「い、いえ…」

「だが」

彼は私の手を取って、真剣な表情で言った。

「今までの分も、これからはすごく大切にする。もともと惚れていたが、幼児化した俺にもあんなにも優しくしてくれた君に…今更ながら惚れ直した。俺とやり直してはくれないだろうか」

もともと惚れていたとか初耳ですけど。

それならもっと大切にしてくれても良かったんじゃない?

でも彼は美人な幼馴染殿に言い寄られても相手にしていなかったという。それを考えれば私に惚れていたというのも辻褄は合う。

気付かなかったよ、なんて厄介なツンデレ(?)なのだろうか。

でも今の彼は『育て直し』の効果か素直で可愛いままらしいので。

「…最後のチャンスですからね」

「もちろんだ」

「大切にしてくださいね」

「今度こそ大切にする。決して間違えない」

こうして私たちはオシドリも真っ青なラブラブカップルへの道を進むことになった。














「レオナ、愛してる」

「る、ルーク様」

「レオナはなにをしていても可愛い」

彼はあれ以降積極的に私に愛を伝えてくる。

どうも前の態度は照れ隠しだったらしい。

今の彼はどストレートに私に愛をぶつけてくる。

ちょっと恥ずかしいけれど、幸せにも感じてしまう。

「レオナ、好きだ」

「うぅ…恥ずかしい…」

「あ…すまない、嫌だったか?」

「嫌じゃないですぅ!!!」

雨降って地固まるなんて単純なことじゃないかもしれないけど、とりあえず結果オーライということで…!

ただ幸せ過ぎて死にそうなんだけどどうしよう…!
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