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皇女は女帝に慈悲を乞う

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「というわけで、アルスラーンさんとアリアさんには事情があるんです!お母様、封印するのだけは見逃してあげてください!」

「そうは言ってものぅ…サラ、お前も将来の女帝ならわかっておるじゃろう?女帝には時に冷酷な判断も必要じゃ。助けられない命もある。それでも多くの臣民のためになるならば、それが最善と信じて決断するのが女帝というものじゃ」

「そんなぁ…」

サラは皇宮に戻ってすぐ、女帝に対してアルスラーンのことを話した。家族全員を亡くしてもうアリアしかアルスラーンにはいないのだと説明した。しかし、サラの話を聞いた女帝は困り顔になる。悪魔や悪魔との契約者に情けをかけるわけにはいかない。

「サラ、情けをかける優しさは美徳じゃが相手を間違えてはいかん」

「…お母様の意地っ張り!」

サラは女帝の言葉が正しいのは理解している。けれど、彼らについ肩入れしてしまう。だって可哀想なのだ。将来の女帝として良くないとはわかっていてもなお、彼らへ慈悲を与えて欲しいと願ってしまう。

「さ、サラ。私だってアルスラーンとかいう者のことは正直とても同情しておる。可哀想とは思うのじゃ。けれど、女帝としてはの」

「お母様なんか大っ嫌い!」

「さ、サラ!」

サラは女帝の私室を飛び出す。自分の部屋に戻って泣いてしまった。どうしても、あの二人が悪い人とは思えない。それは、自分達も危ない目にあったし人に迷惑をかけているのはわかっている。けど、それは悪魔の特性であり本人の意思とは関係ない。なんとか、助けてあげたかった。












「私はダメな母親じゃあ…」

一方、女帝はというとサラが出て行ってすぐにワインを開けた。自棄酒である。

「もっと優しい言い方があったかのう…それとも、もっと厳しく言ってやるべきだったか」

しょぼんと背中を丸めて、チーズをお供にワインを飲む。

「それとも…サラの言う通り、情けをかけてやるのも女帝として…いや、しかし他の臣民の安全を確保せねば…」

キメラを生み出してしまう特性。それさえなんとかすれば、あるいはキメラがいても困らない場所に軟禁してしまえば…?

「わ、私の足りない頭ではこれ以上思いつかんー!ファルマン、ファルマンに明日相談じゃあ!師匠も巻き込んで…そうじゃ!ニノンにも相談するか!ニノンの発想はいつも面白いし、妙案を思いついてくれるかもしれん!」

女帝は緊急で明日の朝にファルマンとニノン、ガエルを呼び出すことにした。
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