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後日届いたお礼の手紙
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アルスラーンがオンブルの本部にある地下牢に侵入し、アリアと共に消えた事件から一週間。捕まったはずの悪魔が封印の儀の前に姿を消したことから、世間はまだまだ慌ただしい。
「いやぁ。世間様はまだ師匠のやらかしを忘れてくれないなぁ?」
「オノレ、師匠だってやらかしたのは自覚しているよ。ニノンとサラに『やっぱり可哀想』って泣きつかれて、その上女帝陛下にまでヘルプ出されてしょうがなかったんだよ」
「もう!オノレもユベールもそんな言い方しないの!」
「オノレさん、ユベールさん、お師匠様のおかげで丸く収まったんですから…」
「…いやぁ。僕もまだまだ甘いなぁ。そして情け無い」
可愛い弟子二人におもちゃにされるガエル。ニノンとサラはオノレとユベールを窘めるが、ガエルにとってはそれさえ情けなかった。
「というわけで、サラが泣くのでやはり私としてはどうにかしてやりたい。知恵を貸してくれ」
女帝の『秘密の』召集により朝から集まったファルマン、ガエル、ニノン、サラ、そしてオノレとユベール。
「いやぁ、そうは言われてもね。オンブルに通報したの僕だし」
「俺はキメラ狩りで忙しいんですが」
「そう言わずに知恵を貸してくれぇ…ファルマン…」
「女帝陛下におかれましては、そんな顔をされませんように」
「ファルマンー!!!」
ガエルとファルマンは非情になりきれない甘い女帝に呆れ顔。
「お師匠様、私からもお願いします!アルスラーンさんとアリアさんを助けてあげて下さい!」
サラも女帝の横で頭を下げる。それを見て、ニノンもサラと手を繋いで深々と頭を下げた。
「お師匠様、私からもお願い!」
「…うーん。…うーん、どうしようか。ファルマン、どう思う?」
「…」
あまりに必死な様子のサラとニノン。そんな可愛い弟子二人に押され気味なガエル。可愛い娘とそのお友達…ましてや妹弟子の娘であり仕えるべき皇女様…の懇願に折れかけるファルマン。
「…俺は反対、何もしない方がいいと思います」
「俺も」
対して、オノレとユベールは割と冷静だった。二人が反対するのを聞いて、ガエルとファルマン、女帝はさらに悩む。しかし、ニノンとサラの言葉に全員手のひらを返す。
「事情を知ってて見捨てるなんて、悪魔のこと悪く言えないじゃんかー!」
「みんなのバカー!大っ嫌い!!!」
ニノンとサラの大っ嫌い発言に、全員ショックを受ける。そしてとうとう折れる。
「わかった。わかったよ、助けられるよう努力はするから許しておくれ」
「困った子達じゃあ…」
「ニノン、協力するから大嫌いというのは撤回してくれ」
「本当に?」
「本当に助けてあげてくれる?」
ガエルとファルマン、女帝が頷けばニノンとサラは笑顔になる。
「ありがとう、お母様!」
「パパ大好きー!」
「…大人も大変だね」
「娘や弟子には弱いんだなぁ…」
オノレとユベールは呆れ顔だが、こうなるともうどうしようもない。
「私としては、キメラを生み出すという特性が働かないような環境に二人きりにして軟禁してしまえばいいかと思うんじゃが」
「まあ、それなら一応罰にもなるしいいと思いますが」
「じゃあ、幻影の孤島でいいんじゃない?あそこ、一匹たりとも生き物は存在しないしキメラを生み出そうとしても無理でしょ。悪魔なら転移魔法くらい、魔封じの首輪さえ外せばチョチョイのチョイだし」
「なるほど、いい案じゃな!」
女帝は手を叩く。
「あとは、レーヌが活躍してくれるよね?」
「え?」
「認識阻害魔法と防音魔法をかけてあげるから、オンブルの本部に忍び込んで鍵をくすねておいで」
「は!?」
「フード付きのローブを着て、仮面もつけてアルスラーンという男に鍵を渡せばいい」
「えー…私かぁ…バレたらヤバいのぅ…それで、どうするんじゃ?」
なんだかんだ言いつつも、そうと決まればやる気はある女帝である。
「幻影の孤島についてアドバイスしてあげて、鍵を渡せばそれでいいさ。アリアとかいう悪魔の牢にも隠蔽魔法はかけてあげるよ。あとは…アルスラーンにも多少の手助けはしようかな。透明化の魔法とか?」
「そうかそうか。素直にアドバイスを聞いてくれればいいんじゃが」
「拒まれたら、その時は手助け終了ってことでオンブルに突き出せばいい。本来手助けする時点でもうアウトなのだし」
「えー!」
「そんなぁ…」
ニノンとサラは抗議の声を上げるが、オノレとユベールに窘められる。
「わがままを聞いてもらったんだから、これ以上求めちゃダメだよ」
「ニノンもサラも、この辺で納得しておけよな」
「…はーい」
「わかりました…」
こうしてガエルと女帝によってアルスラーンとアリアは助かったのだった。
「まあ、なんだかんだでこれ以上キメラは増えないことになったしめでたしめでたしだね」
ガエルは無理矢理自分を納得させる。そんなガエルの元に、ふわふわと手紙の入った封筒が舞い落ちる。
「…これは、アルスラーンとアリアからのものだね」
「え、お二人とも元気そうですか!?」
「今からちょっと読んでみるね…うん、二人とも元気だそうだ。読んでご覧」
ニノンとサラが手紙を読む。そこには、『フードの人』とガエルとファルマン、ニノンとサラとオノレとユベールへのお詫びと感謝の言葉が丁寧に綴られていた。そして、最後に二人が元気に過ごしていること、もうキメラは生み出されていないこと、二人きりの生活がとても幸せなことが書かれていた。
「よかった、元気そうですね」
「お母様にも後で見せてあげたいです」
「そうだね、これを見たらレーヌも喜ぶだろう。オノレとユベールは見なくていいのかい?」
「俺達は何もしてないので遠慮します」
「公爵様にもお見せした方が良いのでは?」
「なら、ファルマンにも見せてからレーヌのところに行こうかな」
こうして、アルスラーンとアリアの一件はとりあえず片付いた。あと残るは、未だに駆除しきれていないキメラを狩り切るだけである。キメラ狩りも、ファルマンさえいれば簡単に終わるだろう。
「…なんか、この一週間すごく緊張しましたね」
「そうだね、バレちゃいけないもんね。でも、良かったね」
「本当に良かったですね」
手を繋いで笑い合うニノンとサラを見て、オノレとユベールも甘いなぁと思いつつも癒されていた。
「いやぁ。世間様はまだ師匠のやらかしを忘れてくれないなぁ?」
「オノレ、師匠だってやらかしたのは自覚しているよ。ニノンとサラに『やっぱり可哀想』って泣きつかれて、その上女帝陛下にまでヘルプ出されてしょうがなかったんだよ」
「もう!オノレもユベールもそんな言い方しないの!」
「オノレさん、ユベールさん、お師匠様のおかげで丸く収まったんですから…」
「…いやぁ。僕もまだまだ甘いなぁ。そして情け無い」
可愛い弟子二人におもちゃにされるガエル。ニノンとサラはオノレとユベールを窘めるが、ガエルにとってはそれさえ情けなかった。
「というわけで、サラが泣くのでやはり私としてはどうにかしてやりたい。知恵を貸してくれ」
女帝の『秘密の』召集により朝から集まったファルマン、ガエル、ニノン、サラ、そしてオノレとユベール。
「いやぁ、そうは言われてもね。オンブルに通報したの僕だし」
「俺はキメラ狩りで忙しいんですが」
「そう言わずに知恵を貸してくれぇ…ファルマン…」
「女帝陛下におかれましては、そんな顔をされませんように」
「ファルマンー!!!」
ガエルとファルマンは非情になりきれない甘い女帝に呆れ顔。
「お師匠様、私からもお願いします!アルスラーンさんとアリアさんを助けてあげて下さい!」
サラも女帝の横で頭を下げる。それを見て、ニノンもサラと手を繋いで深々と頭を下げた。
「お師匠様、私からもお願い!」
「…うーん。…うーん、どうしようか。ファルマン、どう思う?」
「…」
あまりに必死な様子のサラとニノン。そんな可愛い弟子二人に押され気味なガエル。可愛い娘とそのお友達…ましてや妹弟子の娘であり仕えるべき皇女様…の懇願に折れかけるファルマン。
「…俺は反対、何もしない方がいいと思います」
「俺も」
対して、オノレとユベールは割と冷静だった。二人が反対するのを聞いて、ガエルとファルマン、女帝はさらに悩む。しかし、ニノンとサラの言葉に全員手のひらを返す。
「事情を知ってて見捨てるなんて、悪魔のこと悪く言えないじゃんかー!」
「みんなのバカー!大っ嫌い!!!」
ニノンとサラの大っ嫌い発言に、全員ショックを受ける。そしてとうとう折れる。
「わかった。わかったよ、助けられるよう努力はするから許しておくれ」
「困った子達じゃあ…」
「ニノン、協力するから大嫌いというのは撤回してくれ」
「本当に?」
「本当に助けてあげてくれる?」
ガエルとファルマン、女帝が頷けばニノンとサラは笑顔になる。
「ありがとう、お母様!」
「パパ大好きー!」
「…大人も大変だね」
「娘や弟子には弱いんだなぁ…」
オノレとユベールは呆れ顔だが、こうなるともうどうしようもない。
「私としては、キメラを生み出すという特性が働かないような環境に二人きりにして軟禁してしまえばいいかと思うんじゃが」
「まあ、それなら一応罰にもなるしいいと思いますが」
「じゃあ、幻影の孤島でいいんじゃない?あそこ、一匹たりとも生き物は存在しないしキメラを生み出そうとしても無理でしょ。悪魔なら転移魔法くらい、魔封じの首輪さえ外せばチョチョイのチョイだし」
「なるほど、いい案じゃな!」
女帝は手を叩く。
「あとは、レーヌが活躍してくれるよね?」
「え?」
「認識阻害魔法と防音魔法をかけてあげるから、オンブルの本部に忍び込んで鍵をくすねておいで」
「は!?」
「フード付きのローブを着て、仮面もつけてアルスラーンという男に鍵を渡せばいい」
「えー…私かぁ…バレたらヤバいのぅ…それで、どうするんじゃ?」
なんだかんだ言いつつも、そうと決まればやる気はある女帝である。
「幻影の孤島についてアドバイスしてあげて、鍵を渡せばそれでいいさ。アリアとかいう悪魔の牢にも隠蔽魔法はかけてあげるよ。あとは…アルスラーンにも多少の手助けはしようかな。透明化の魔法とか?」
「そうかそうか。素直にアドバイスを聞いてくれればいいんじゃが」
「拒まれたら、その時は手助け終了ってことでオンブルに突き出せばいい。本来手助けする時点でもうアウトなのだし」
「えー!」
「そんなぁ…」
ニノンとサラは抗議の声を上げるが、オノレとユベールに窘められる。
「わがままを聞いてもらったんだから、これ以上求めちゃダメだよ」
「ニノンもサラも、この辺で納得しておけよな」
「…はーい」
「わかりました…」
こうしてガエルと女帝によってアルスラーンとアリアは助かったのだった。
「まあ、なんだかんだでこれ以上キメラは増えないことになったしめでたしめでたしだね」
ガエルは無理矢理自分を納得させる。そんなガエルの元に、ふわふわと手紙の入った封筒が舞い落ちる。
「…これは、アルスラーンとアリアからのものだね」
「え、お二人とも元気そうですか!?」
「今からちょっと読んでみるね…うん、二人とも元気だそうだ。読んでご覧」
ニノンとサラが手紙を読む。そこには、『フードの人』とガエルとファルマン、ニノンとサラとオノレとユベールへのお詫びと感謝の言葉が丁寧に綴られていた。そして、最後に二人が元気に過ごしていること、もうキメラは生み出されていないこと、二人きりの生活がとても幸せなことが書かれていた。
「よかった、元気そうですね」
「お母様にも後で見せてあげたいです」
「そうだね、これを見たらレーヌも喜ぶだろう。オノレとユベールは見なくていいのかい?」
「俺達は何もしてないので遠慮します」
「公爵様にもお見せした方が良いのでは?」
「なら、ファルマンにも見せてからレーヌのところに行こうかな」
こうして、アルスラーンとアリアの一件はとりあえず片付いた。あと残るは、未だに駆除しきれていないキメラを狩り切るだけである。キメラ狩りも、ファルマンさえいれば簡単に終わるだろう。
「…なんか、この一週間すごく緊張しましたね」
「そうだね、バレちゃいけないもんね。でも、良かったね」
「本当に良かったですね」
手を繋いで笑い合うニノンとサラを見て、オノレとユベールも甘いなぁと思いつつも癒されていた。
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