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帰るといえば引き止められる
ニノンは妖精達と遊び倒した後、疲れ切って足先だけ泉に浸しながらゆっくりと休んでいた。
「なあ、ニノン」
神がそんなニノンに、どこか緊張した面持ちで話しかける。
「どうしました?神様」
「もしお前が望むなら、ずっと聖域に居てもいいぞ?無理に俗世なんかに帰る必要ない」
神の言葉にニノンはきょとんとした顔をする。
「ここにいればいつまでも俺やサンティユモン、ブロンとだってずっと一緒に居られる。今日仲良くなった妖精達とだってずっとずっと遊んで暮らせる。それに、無意識の自分に会いたいならまたいつでも会える。損はないだろう?」
神の誘惑に、しかしニノンは首を振って否定した。
「神様と妖精王様、ホワイトドラゴン様と別れるのは寂しいです。妖精さん達ともせっかく仲良くなったので離れたくはないです」
「なら」
「けど、俗世では私のことを待っていてくれるお父様やお師匠様、お友達だってたくさんいます。使用人達だって、きっと心配してくれると思うんです。その全てを捨てる覚悟は、私にはありません」
ニノンの言葉に神は口をへの字に曲げて不満を表した。
「お前はいつも他人を優先するよな」
「いえ、単に私が大切な人と離れたくないだけですよ?」
「ふん。…気は変わらないのか?」
「そうですね」
「…そうか」
神の表情が少し寂しそうに見えてニノンは内心慌てるが、何をどう言えばいいのかわからない。
「クリニョタン。今生の別れというわけでもない。そんなに落ち込むな」
「サンティユモン、人間は寿命が短い。もう会えないと思っていた方がいい」
「そんなことはない。またいつでも神託を下してブロンに迎えに行かせればいい」
「…俺は別にそれでもいいが、その度に俗世は大騒ぎになるぞ?」
何も考えていなさそうな案に心底呆れた、という目で妖精王を見つめる神。
「だが、その分ニノンが私とクリニョタンとブロンのお気に入りだと示せるだろう?」
「ああ、それでニノンに下手に手を出す連中が減るだろうって?たしかにここの国民の信仰は他より強い。俺達のお気に入りになにかする度胸は国内の人間にはないだろうな」
「だろう。手間はかけされることになるが、ニノンを守ることにも繋がるし悪くない案のはずだ」
神は少し思案して同意した。
「ふん。別にニノンを守るためじゃないが、せっかくのおもちゃをすんなり手放すのも惜しい。ニノン、大人しくこの聖域に残って死ぬまで一緒にいるか、頻繁に聖域に通うかを選ばせてやる」
「頻繁といっても、人間の時間の感覚でいうとそこまで負担にならないはずだ。どうだ?」
神と妖精王の言葉に、ニノンはにっこり笑った。
「一度帰りますけど、また日帰りでよければいつでも遊びに来ます!予定がなければになってしまいますけど」
「もちろんそれでいい。な、クリニョタン」
「ふん」
神はツンケンした態度の割に自分に対する対応が甘いと気付いたニノンは、口には出さないが嬉しくてにっこり笑った。
「なあ、ニノン」
神がそんなニノンに、どこか緊張した面持ちで話しかける。
「どうしました?神様」
「もしお前が望むなら、ずっと聖域に居てもいいぞ?無理に俗世なんかに帰る必要ない」
神の言葉にニノンはきょとんとした顔をする。
「ここにいればいつまでも俺やサンティユモン、ブロンとだってずっと一緒に居られる。今日仲良くなった妖精達とだってずっとずっと遊んで暮らせる。それに、無意識の自分に会いたいならまたいつでも会える。損はないだろう?」
神の誘惑に、しかしニノンは首を振って否定した。
「神様と妖精王様、ホワイトドラゴン様と別れるのは寂しいです。妖精さん達ともせっかく仲良くなったので離れたくはないです」
「なら」
「けど、俗世では私のことを待っていてくれるお父様やお師匠様、お友達だってたくさんいます。使用人達だって、きっと心配してくれると思うんです。その全てを捨てる覚悟は、私にはありません」
ニノンの言葉に神は口をへの字に曲げて不満を表した。
「お前はいつも他人を優先するよな」
「いえ、単に私が大切な人と離れたくないだけですよ?」
「ふん。…気は変わらないのか?」
「そうですね」
「…そうか」
神の表情が少し寂しそうに見えてニノンは内心慌てるが、何をどう言えばいいのかわからない。
「クリニョタン。今生の別れというわけでもない。そんなに落ち込むな」
「サンティユモン、人間は寿命が短い。もう会えないと思っていた方がいい」
「そんなことはない。またいつでも神託を下してブロンに迎えに行かせればいい」
「…俺は別にそれでもいいが、その度に俗世は大騒ぎになるぞ?」
何も考えていなさそうな案に心底呆れた、という目で妖精王を見つめる神。
「だが、その分ニノンが私とクリニョタンとブロンのお気に入りだと示せるだろう?」
「ああ、それでニノンに下手に手を出す連中が減るだろうって?たしかにここの国民の信仰は他より強い。俺達のお気に入りになにかする度胸は国内の人間にはないだろうな」
「だろう。手間はかけされることになるが、ニノンを守ることにも繋がるし悪くない案のはずだ」
神は少し思案して同意した。
「ふん。別にニノンを守るためじゃないが、せっかくのおもちゃをすんなり手放すのも惜しい。ニノン、大人しくこの聖域に残って死ぬまで一緒にいるか、頻繁に聖域に通うかを選ばせてやる」
「頻繁といっても、人間の時間の感覚でいうとそこまで負担にならないはずだ。どうだ?」
神と妖精王の言葉に、ニノンはにっこり笑った。
「一度帰りますけど、また日帰りでよければいつでも遊びに来ます!予定がなければになってしまいますけど」
「もちろんそれでいい。な、クリニョタン」
「ふん」
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