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なんだかなぁと思うのです

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ファルファッラから告げられた、アザレアの耳に入れたい情報。

それは、聞きたくもない知らせだった。

「王太子殿下が学園に戻ってくるそうなのですが、クリス様はもう聞きました?」

「聞いた。あの君の忠臣もそれを伝えにきたんだね」

「はい。護衛としても諜報としても使える子ですから」

なるほど、とクリザンテーモは頷く。

「他の貴公子たちもそれに伴って戻ってくるらしい」

「まだまだのんびりしていて欲しかったのですが」

「…アザレア、愛してる。君のことはオレが守るよ」

「ぴえっ!」

手を握り真剣な表情でそんなことを誓うクリザンテーモに、アザレアは心臓が高鳴る。

変な声が出たことも気にする余裕はなく、ただただクリザンテーモに簡単にときめいては落ちていく己に辟易するばかりだった。



















「…あ、アザレア嬢」

数日後、本当に学園に戻ってきた王太子殿下にアザレアは声をかけられた。

隣にいるクリザンテーモが睨みを利かせているので滅多なことにはならないが、あまり良い気分ではない。

「御機嫌よう、王太子殿下」

「あ、ご、御機嫌よう…あの、その…あの時は、すまなかった」

「…え」

あの、ゲーム内ですら傍若無人だった王太子殿下がちゃんと謝ってきた?

あまりの事実にぽかんとするアザレア。

「魅了魔法にかかっていたとはいえ、ひとりの女性を数人の男が寄ってたかって責めるとは…情け無いことをした」

「い、いえいえ…」

「申し訳なかった。私は自分を鍛え、心身ともに強くなろうと思う。そして今度こそ己の婚約者を大切にする。…だが、その前にまず君に一言謝りたかったんだ。本当にすまなかった」

その真摯な姿勢に、アザレアは少し王太子への評価を上方修正する。

「はい、では謝罪はお受けします。ですからどうか、これからは婚約者の方と今度こそお幸せに」

「…ああ、ありがとう。失礼する」

王太子は婚約者を迎えにいくのだろう、アザレアとは反対の方に向かって行った。

「アザレア、良いのかい?」

「はい。心から反省しているようでしたから。そもそも魅了魔法のせいだと知ってしまいましたし」

「君は優しいね」

微笑むクリザンテーモに、アザレアは言った。

「それに…く、クリス様が…こうして守ってくださいましたから」

「え」

「彼に睨みを利かせるだけでなく…手まで繋いでくれたから…心強かったです」

珍しいアザレアのデレに、クリザンテーモはクラクラと眩暈がした。

いっそのこと場所を弁えず、このままアザレアを抱きしめてしまいたいと思ったところでリュカの渾身の一撃が頭に入る。

「痛っ」

「はい、主人もお嬢様も教室に向かいましょうねー」

「ふふっ」

アザレアはそんなクリザンテーモに小さく笑う。そんなアザレアもまた可愛く感じて、クリザンテーモはキューンとしていた。リュカはそんな二人に内心はいはいご馳走さまですと唱えつつ教室に連行する。

その後、攻略対象だった彼等からそれぞれ心からの謝罪を受けて全て許したアザレア。

その優しさから、まるで女神だと称えられるようになったのにアザレア本人は気づくことはなかった。
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