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残念令嬢は冷遇王子に甘やかされる
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「で?これでいいの?」
「はい!とっても素敵ですー!ジェラール様の騎士団長服姿、一生忘れません!」
「あーそう。絵に残さなくていいの?」
「そんなことしたら他の人が見ちゃうかもしれないじゃないですか!もしそれでジェラール様に惚れてしまったらどうなさるのです!」
興奮してジェラールに詰め寄るオレリア。そんなオレリアを心底呆れたという顔で見つめつつ頭を撫でるジェラールは、内心幸せでいっぱいだった。
「さあ、次は魔術師団長服です!着てみてくださいませ!」
「はいはい…。これでいい?」
「あ…だめ…尊い…」
たらりと鼻血まで出し始めるオレリアに若干引いたような表情を作るジェラールは、しかしオレリアの自分への愛情を感じむしろかなり喜んでいた。
そもそも何故こんなことになっているのか。数時間前に遡る。
オレリアは最近ようやく実力を発揮し始め忙しく働くジェラールのために、手作りのお弁当を用意してジェラールを訪ねた。
「ジェラール様と両想いー!うふふふふふ!」
ご機嫌な彼女は気付かなかった。オレリアの満面の笑みに、すれ違う人みんなが心を奪われていることに。
「ジェラール様!貴方だけの婚約者、オレリアですよ!」
「貴方だけの、ね…」
ジェラールは執務室で、なぜか不機嫌そうにしていた。オレリアはどうしたのだろうとジェラールに近付く。
「ジェラール様、今日は最近お忙しいジェラール様のために手作りのお弁当を持ってきたのです!よかったら食べてくださいませ」
ふわり、と…まるで花が咲くような笑み。ジェラールは、ああこの笑顔を振りまいて自分の執務室まで来たのかとイライラした。自分の影達が、オレリアがたくさんの人を魅了してまわっていると先程報告してきた。この笑みは自分だけが知っていればいいのに。いっそ籠の鳥にでもしてやろうか。
「リア」
「はい!ジェラール様!」
手招きして、オレリアを自分の膝の上に乗せる。そして、強引にキスをした。
「ん!?…ん、ジェラール様?」
きょとんとしたオレリアを見てようやく腹の虫が治る。そうだ、オレリアはそうやって自分だけを見つめていればいい。ジェラールは案外と嫉妬深い己に苦笑した。
「リア。僕のいないところではあんまり笑うな。最悪襲われる」
「え?私、大丈夫ですわ!これでも強いんですのよ!」
それは知っている。なんなら数日前にこの目で、近衛騎士団の団長と互角に渡り合う姿を見た。ちょっと焦った。まあお陰で魔術訓練に力が入ったものだが。
「…なら、僕に対抗できる?」
「え?」
オレリアの両手首をさくっと拘束し、顔中にキスを落とした。オレリアはあまりのジェラール成分過多により鼻血とよだれを垂れ流す。どんなオレリアも可愛いが、さすがにこれは可哀想だとハンカチでオレリアの顔を拭うジェラール。オレリアは危うく天国に行きかけた。
「ほら、対抗できなかっただろう?僕の言うことをきちんと聞けるな?」
「そ、それは…うーん…ジェラール様にとってその方が良いのなら…でも、色々お付き合いもありますし」
「そういう時は僕が一緒にいるようにする。それでいい?」
「えっと…ジェラール様のお邪魔になりませんか…?」
「ならないよ。むしろ四六時中一緒にいたいのを我慢してる」
「!私もです!」
「いっそ一緒に住む?」
「まあ!良いお考えですわ!」
「ジェラール殿下」
「わかったよ…まだ同棲は先になりそうだね」
「残念ですわ…」
側に控えていた腹心の部下に咎められ同棲を一度は諦めたジェラール。オレリアは少し残念だったが、ジェラールと心が通じ合ってさえいれば問題無しと自分に言い聞かせた。
「それも良いけど、手作りのお弁当を食べさせて欲しいな」
「はい!こちらになります!」
美味しそうな弁当が出てきた。ジェラールは思わず口元が緩む。何故なら、いそいそと昼食の準備をするオレリアの手にたくさん傷を手当てした痕があったから。もちろん、剣術やらなにやらの怪我もあるだろうが…このお弁当を作るにあたって付けた傷もあるだろう。その健気な献身にジェラールは心が温かくなる。
「リア、お願いがあるんだ」
「何でしょう?」
「どうか、僕にあーんして欲しい」
「そ、それはつまり…ジェラール様に餌付けして良いと!?」
きゃー!やったー!とはしゃいでいるオレリアに早くと急かすジェラール。
「はい、ジェラール様。あーん」
「あーん。ん、美味しい」
「ぐふぅっ!」
その光景はオレリアには供給過多だった。好きな人が自分に餌付けされて嬉しそうに笑うのだ。心臓がばくばくだった。
そんな中でもなんとかジェラールを完食させ、自分も完食したオレリア。しかしこの頃には供給過多のせいで泣きそうになっていた。
「リア、ごめんごめん。まだリアには刺激が強すぎたね。よく頑張りました」
ジェラールはオレリアの頭を撫でる。オレリアはようやく復活する。
「お詫びと言ってはなんだけど、僕にできることなら何か一つお願いを聞いてあげるよ。何処かに出かける?それとも二人きりで甘い時間を過ごす?」
「じゃあ…ジェラール様に色んな服を着て欲しいです」
「…え?」
というのが事の始まりである。オレリアはジェラールを着せ替えてはしゃぐ。ジェラールはそんなオレリアが可愛い。
「ジェラール様、ありがとうございます!眼福でした!」
「まあね。可愛い婚約者の頼みだし」
言って恥ずかしくなったジェラールは、オレリアが何かいう前に口を塞いだ。…キスで。
「もう、ジェラール様ったら…」
「ふふ、可愛い」
今日もジェラールとオレリアのなんでもない日常は通り過ぎていく。そんな二人をジェラールの腹心の部下は何も言わずに見守っていた。…が、内心とても祝福していた。ジェラールの恋心をずっとずっと見守ってきたからだ。これからは二人がずっと一緒に居られればいい、と。そればかりを祈るのだった。
「はい!とっても素敵ですー!ジェラール様の騎士団長服姿、一生忘れません!」
「あーそう。絵に残さなくていいの?」
「そんなことしたら他の人が見ちゃうかもしれないじゃないですか!もしそれでジェラール様に惚れてしまったらどうなさるのです!」
興奮してジェラールに詰め寄るオレリア。そんなオレリアを心底呆れたという顔で見つめつつ頭を撫でるジェラールは、内心幸せでいっぱいだった。
「さあ、次は魔術師団長服です!着てみてくださいませ!」
「はいはい…。これでいい?」
「あ…だめ…尊い…」
たらりと鼻血まで出し始めるオレリアに若干引いたような表情を作るジェラールは、しかしオレリアの自分への愛情を感じむしろかなり喜んでいた。
そもそも何故こんなことになっているのか。数時間前に遡る。
オレリアは最近ようやく実力を発揮し始め忙しく働くジェラールのために、手作りのお弁当を用意してジェラールを訪ねた。
「ジェラール様と両想いー!うふふふふふ!」
ご機嫌な彼女は気付かなかった。オレリアの満面の笑みに、すれ違う人みんなが心を奪われていることに。
「ジェラール様!貴方だけの婚約者、オレリアですよ!」
「貴方だけの、ね…」
ジェラールは執務室で、なぜか不機嫌そうにしていた。オレリアはどうしたのだろうとジェラールに近付く。
「ジェラール様、今日は最近お忙しいジェラール様のために手作りのお弁当を持ってきたのです!よかったら食べてくださいませ」
ふわり、と…まるで花が咲くような笑み。ジェラールは、ああこの笑顔を振りまいて自分の執務室まで来たのかとイライラした。自分の影達が、オレリアがたくさんの人を魅了してまわっていると先程報告してきた。この笑みは自分だけが知っていればいいのに。いっそ籠の鳥にでもしてやろうか。
「リア」
「はい!ジェラール様!」
手招きして、オレリアを自分の膝の上に乗せる。そして、強引にキスをした。
「ん!?…ん、ジェラール様?」
きょとんとしたオレリアを見てようやく腹の虫が治る。そうだ、オレリアはそうやって自分だけを見つめていればいい。ジェラールは案外と嫉妬深い己に苦笑した。
「リア。僕のいないところではあんまり笑うな。最悪襲われる」
「え?私、大丈夫ですわ!これでも強いんですのよ!」
それは知っている。なんなら数日前にこの目で、近衛騎士団の団長と互角に渡り合う姿を見た。ちょっと焦った。まあお陰で魔術訓練に力が入ったものだが。
「…なら、僕に対抗できる?」
「え?」
オレリアの両手首をさくっと拘束し、顔中にキスを落とした。オレリアはあまりのジェラール成分過多により鼻血とよだれを垂れ流す。どんなオレリアも可愛いが、さすがにこれは可哀想だとハンカチでオレリアの顔を拭うジェラール。オレリアは危うく天国に行きかけた。
「ほら、対抗できなかっただろう?僕の言うことをきちんと聞けるな?」
「そ、それは…うーん…ジェラール様にとってその方が良いのなら…でも、色々お付き合いもありますし」
「そういう時は僕が一緒にいるようにする。それでいい?」
「えっと…ジェラール様のお邪魔になりませんか…?」
「ならないよ。むしろ四六時中一緒にいたいのを我慢してる」
「!私もです!」
「いっそ一緒に住む?」
「まあ!良いお考えですわ!」
「ジェラール殿下」
「わかったよ…まだ同棲は先になりそうだね」
「残念ですわ…」
側に控えていた腹心の部下に咎められ同棲を一度は諦めたジェラール。オレリアは少し残念だったが、ジェラールと心が通じ合ってさえいれば問題無しと自分に言い聞かせた。
「それも良いけど、手作りのお弁当を食べさせて欲しいな」
「はい!こちらになります!」
美味しそうな弁当が出てきた。ジェラールは思わず口元が緩む。何故なら、いそいそと昼食の準備をするオレリアの手にたくさん傷を手当てした痕があったから。もちろん、剣術やらなにやらの怪我もあるだろうが…このお弁当を作るにあたって付けた傷もあるだろう。その健気な献身にジェラールは心が温かくなる。
「リア、お願いがあるんだ」
「何でしょう?」
「どうか、僕にあーんして欲しい」
「そ、それはつまり…ジェラール様に餌付けして良いと!?」
きゃー!やったー!とはしゃいでいるオレリアに早くと急かすジェラール。
「はい、ジェラール様。あーん」
「あーん。ん、美味しい」
「ぐふぅっ!」
その光景はオレリアには供給過多だった。好きな人が自分に餌付けされて嬉しそうに笑うのだ。心臓がばくばくだった。
そんな中でもなんとかジェラールを完食させ、自分も完食したオレリア。しかしこの頃には供給過多のせいで泣きそうになっていた。
「リア、ごめんごめん。まだリアには刺激が強すぎたね。よく頑張りました」
ジェラールはオレリアの頭を撫でる。オレリアはようやく復活する。
「お詫びと言ってはなんだけど、僕にできることなら何か一つお願いを聞いてあげるよ。何処かに出かける?それとも二人きりで甘い時間を過ごす?」
「じゃあ…ジェラール様に色んな服を着て欲しいです」
「…え?」
というのが事の始まりである。オレリアはジェラールを着せ替えてはしゃぐ。ジェラールはそんなオレリアが可愛い。
「ジェラール様、ありがとうございます!眼福でした!」
「まあね。可愛い婚約者の頼みだし」
言って恥ずかしくなったジェラールは、オレリアが何かいう前に口を塞いだ。…キスで。
「もう、ジェラール様ったら…」
「ふふ、可愛い」
今日もジェラールとオレリアのなんでもない日常は通り過ぎていく。そんな二人をジェラールの腹心の部下は何も言わずに見守っていた。…が、内心とても祝福していた。ジェラールの恋心をずっとずっと見守ってきたからだ。これからは二人がずっと一緒に居られればいい、と。そればかりを祈るのだった。
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感想ありがとうございます。頑張って書きたいと思いますが亀更新&内容が飛び飛びになりそうなので、よろしくお願いします!
オレリアちゃん可愛い( *´艸`)
ジェラール殿下とオレリアちゃんがいつまでも幸せであります様に……
感想ありがとうございます。二人ともお互いが大好きなので、ずっと幸せでいてくれると思います!