2 / 2
残念令嬢は冷遇王子に甘やかされる
しおりを挟む
「で?これでいいの?」
「はい!とっても素敵ですー!ジェラール様の騎士団長服姿、一生忘れません!」
「あーそう。絵に残さなくていいの?」
「そんなことしたら他の人が見ちゃうかもしれないじゃないですか!もしそれでジェラール様に惚れてしまったらどうなさるのです!」
興奮してジェラールに詰め寄るオレリア。そんなオレリアを心底呆れたという顔で見つめつつ頭を撫でるジェラールは、内心幸せでいっぱいだった。
「さあ、次は魔術師団長服です!着てみてくださいませ!」
「はいはい…。これでいい?」
「あ…だめ…尊い…」
たらりと鼻血まで出し始めるオレリアに若干引いたような表情を作るジェラールは、しかしオレリアの自分への愛情を感じむしろかなり喜んでいた。
そもそも何故こんなことになっているのか。数時間前に遡る。
オレリアは最近ようやく実力を発揮し始め忙しく働くジェラールのために、手作りのお弁当を用意してジェラールを訪ねた。
「ジェラール様と両想いー!うふふふふふ!」
ご機嫌な彼女は気付かなかった。オレリアの満面の笑みに、すれ違う人みんなが心を奪われていることに。
「ジェラール様!貴方だけの婚約者、オレリアですよ!」
「貴方だけの、ね…」
ジェラールは執務室で、なぜか不機嫌そうにしていた。オレリアはどうしたのだろうとジェラールに近付く。
「ジェラール様、今日は最近お忙しいジェラール様のために手作りのお弁当を持ってきたのです!よかったら食べてくださいませ」
ふわり、と…まるで花が咲くような笑み。ジェラールは、ああこの笑顔を振りまいて自分の執務室まで来たのかとイライラした。自分の影達が、オレリアがたくさんの人を魅了してまわっていると先程報告してきた。この笑みは自分だけが知っていればいいのに。いっそ籠の鳥にでもしてやろうか。
「リア」
「はい!ジェラール様!」
手招きして、オレリアを自分の膝の上に乗せる。そして、強引にキスをした。
「ん!?…ん、ジェラール様?」
きょとんとしたオレリアを見てようやく腹の虫が治る。そうだ、オレリアはそうやって自分だけを見つめていればいい。ジェラールは案外と嫉妬深い己に苦笑した。
「リア。僕のいないところではあんまり笑うな。最悪襲われる」
「え?私、大丈夫ですわ!これでも強いんですのよ!」
それは知っている。なんなら数日前にこの目で、近衛騎士団の団長と互角に渡り合う姿を見た。ちょっと焦った。まあお陰で魔術訓練に力が入ったものだが。
「…なら、僕に対抗できる?」
「え?」
オレリアの両手首をさくっと拘束し、顔中にキスを落とした。オレリアはあまりのジェラール成分過多により鼻血とよだれを垂れ流す。どんなオレリアも可愛いが、さすがにこれは可哀想だとハンカチでオレリアの顔を拭うジェラール。オレリアは危うく天国に行きかけた。
「ほら、対抗できなかっただろう?僕の言うことをきちんと聞けるな?」
「そ、それは…うーん…ジェラール様にとってその方が良いのなら…でも、色々お付き合いもありますし」
「そういう時は僕が一緒にいるようにする。それでいい?」
「えっと…ジェラール様のお邪魔になりませんか…?」
「ならないよ。むしろ四六時中一緒にいたいのを我慢してる」
「!私もです!」
「いっそ一緒に住む?」
「まあ!良いお考えですわ!」
「ジェラール殿下」
「わかったよ…まだ同棲は先になりそうだね」
「残念ですわ…」
側に控えていた腹心の部下に咎められ同棲を一度は諦めたジェラール。オレリアは少し残念だったが、ジェラールと心が通じ合ってさえいれば問題無しと自分に言い聞かせた。
「それも良いけど、手作りのお弁当を食べさせて欲しいな」
「はい!こちらになります!」
美味しそうな弁当が出てきた。ジェラールは思わず口元が緩む。何故なら、いそいそと昼食の準備をするオレリアの手にたくさん傷を手当てした痕があったから。もちろん、剣術やらなにやらの怪我もあるだろうが…このお弁当を作るにあたって付けた傷もあるだろう。その健気な献身にジェラールは心が温かくなる。
「リア、お願いがあるんだ」
「何でしょう?」
「どうか、僕にあーんして欲しい」
「そ、それはつまり…ジェラール様に餌付けして良いと!?」
きゃー!やったー!とはしゃいでいるオレリアに早くと急かすジェラール。
「はい、ジェラール様。あーん」
「あーん。ん、美味しい」
「ぐふぅっ!」
その光景はオレリアには供給過多だった。好きな人が自分に餌付けされて嬉しそうに笑うのだ。心臓がばくばくだった。
そんな中でもなんとかジェラールを完食させ、自分も完食したオレリア。しかしこの頃には供給過多のせいで泣きそうになっていた。
「リア、ごめんごめん。まだリアには刺激が強すぎたね。よく頑張りました」
ジェラールはオレリアの頭を撫でる。オレリアはようやく復活する。
「お詫びと言ってはなんだけど、僕にできることなら何か一つお願いを聞いてあげるよ。何処かに出かける?それとも二人きりで甘い時間を過ごす?」
「じゃあ…ジェラール様に色んな服を着て欲しいです」
「…え?」
というのが事の始まりである。オレリアはジェラールを着せ替えてはしゃぐ。ジェラールはそんなオレリアが可愛い。
「ジェラール様、ありがとうございます!眼福でした!」
「まあね。可愛い婚約者の頼みだし」
言って恥ずかしくなったジェラールは、オレリアが何かいう前に口を塞いだ。…キスで。
「もう、ジェラール様ったら…」
「ふふ、可愛い」
今日もジェラールとオレリアのなんでもない日常は通り過ぎていく。そんな二人をジェラールの腹心の部下は何も言わずに見守っていた。…が、内心とても祝福していた。ジェラールの恋心をずっとずっと見守ってきたからだ。これからは二人がずっと一緒に居られればいい、と。そればかりを祈るのだった。
「はい!とっても素敵ですー!ジェラール様の騎士団長服姿、一生忘れません!」
「あーそう。絵に残さなくていいの?」
「そんなことしたら他の人が見ちゃうかもしれないじゃないですか!もしそれでジェラール様に惚れてしまったらどうなさるのです!」
興奮してジェラールに詰め寄るオレリア。そんなオレリアを心底呆れたという顔で見つめつつ頭を撫でるジェラールは、内心幸せでいっぱいだった。
「さあ、次は魔術師団長服です!着てみてくださいませ!」
「はいはい…。これでいい?」
「あ…だめ…尊い…」
たらりと鼻血まで出し始めるオレリアに若干引いたような表情を作るジェラールは、しかしオレリアの自分への愛情を感じむしろかなり喜んでいた。
そもそも何故こんなことになっているのか。数時間前に遡る。
オレリアは最近ようやく実力を発揮し始め忙しく働くジェラールのために、手作りのお弁当を用意してジェラールを訪ねた。
「ジェラール様と両想いー!うふふふふふ!」
ご機嫌な彼女は気付かなかった。オレリアの満面の笑みに、すれ違う人みんなが心を奪われていることに。
「ジェラール様!貴方だけの婚約者、オレリアですよ!」
「貴方だけの、ね…」
ジェラールは執務室で、なぜか不機嫌そうにしていた。オレリアはどうしたのだろうとジェラールに近付く。
「ジェラール様、今日は最近お忙しいジェラール様のために手作りのお弁当を持ってきたのです!よかったら食べてくださいませ」
ふわり、と…まるで花が咲くような笑み。ジェラールは、ああこの笑顔を振りまいて自分の執務室まで来たのかとイライラした。自分の影達が、オレリアがたくさんの人を魅了してまわっていると先程報告してきた。この笑みは自分だけが知っていればいいのに。いっそ籠の鳥にでもしてやろうか。
「リア」
「はい!ジェラール様!」
手招きして、オレリアを自分の膝の上に乗せる。そして、強引にキスをした。
「ん!?…ん、ジェラール様?」
きょとんとしたオレリアを見てようやく腹の虫が治る。そうだ、オレリアはそうやって自分だけを見つめていればいい。ジェラールは案外と嫉妬深い己に苦笑した。
「リア。僕のいないところではあんまり笑うな。最悪襲われる」
「え?私、大丈夫ですわ!これでも強いんですのよ!」
それは知っている。なんなら数日前にこの目で、近衛騎士団の団長と互角に渡り合う姿を見た。ちょっと焦った。まあお陰で魔術訓練に力が入ったものだが。
「…なら、僕に対抗できる?」
「え?」
オレリアの両手首をさくっと拘束し、顔中にキスを落とした。オレリアはあまりのジェラール成分過多により鼻血とよだれを垂れ流す。どんなオレリアも可愛いが、さすがにこれは可哀想だとハンカチでオレリアの顔を拭うジェラール。オレリアは危うく天国に行きかけた。
「ほら、対抗できなかっただろう?僕の言うことをきちんと聞けるな?」
「そ、それは…うーん…ジェラール様にとってその方が良いのなら…でも、色々お付き合いもありますし」
「そういう時は僕が一緒にいるようにする。それでいい?」
「えっと…ジェラール様のお邪魔になりませんか…?」
「ならないよ。むしろ四六時中一緒にいたいのを我慢してる」
「!私もです!」
「いっそ一緒に住む?」
「まあ!良いお考えですわ!」
「ジェラール殿下」
「わかったよ…まだ同棲は先になりそうだね」
「残念ですわ…」
側に控えていた腹心の部下に咎められ同棲を一度は諦めたジェラール。オレリアは少し残念だったが、ジェラールと心が通じ合ってさえいれば問題無しと自分に言い聞かせた。
「それも良いけど、手作りのお弁当を食べさせて欲しいな」
「はい!こちらになります!」
美味しそうな弁当が出てきた。ジェラールは思わず口元が緩む。何故なら、いそいそと昼食の準備をするオレリアの手にたくさん傷を手当てした痕があったから。もちろん、剣術やらなにやらの怪我もあるだろうが…このお弁当を作るにあたって付けた傷もあるだろう。その健気な献身にジェラールは心が温かくなる。
「リア、お願いがあるんだ」
「何でしょう?」
「どうか、僕にあーんして欲しい」
「そ、それはつまり…ジェラール様に餌付けして良いと!?」
きゃー!やったー!とはしゃいでいるオレリアに早くと急かすジェラール。
「はい、ジェラール様。あーん」
「あーん。ん、美味しい」
「ぐふぅっ!」
その光景はオレリアには供給過多だった。好きな人が自分に餌付けされて嬉しそうに笑うのだ。心臓がばくばくだった。
そんな中でもなんとかジェラールを完食させ、自分も完食したオレリア。しかしこの頃には供給過多のせいで泣きそうになっていた。
「リア、ごめんごめん。まだリアには刺激が強すぎたね。よく頑張りました」
ジェラールはオレリアの頭を撫でる。オレリアはようやく復活する。
「お詫びと言ってはなんだけど、僕にできることなら何か一つお願いを聞いてあげるよ。何処かに出かける?それとも二人きりで甘い時間を過ごす?」
「じゃあ…ジェラール様に色んな服を着て欲しいです」
「…え?」
というのが事の始まりである。オレリアはジェラールを着せ替えてはしゃぐ。ジェラールはそんなオレリアが可愛い。
「ジェラール様、ありがとうございます!眼福でした!」
「まあね。可愛い婚約者の頼みだし」
言って恥ずかしくなったジェラールは、オレリアが何かいう前に口を塞いだ。…キスで。
「もう、ジェラール様ったら…」
「ふふ、可愛い」
今日もジェラールとオレリアのなんでもない日常は通り過ぎていく。そんな二人をジェラールの腹心の部下は何も言わずに見守っていた。…が、内心とても祝福していた。ジェラールの恋心をずっとずっと見守ってきたからだ。これからは二人がずっと一緒に居られればいい、と。そればかりを祈るのだった。
44
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
おしどり夫婦の茶番
Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。
おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。
一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
魅了魔法に対抗する方法
碧井 汐桜香
恋愛
ある王国の第一王子は、素晴らしい婚約者に恵まれている。彼女は魔法のマッドサイエンティスト……いや、天才だ。
最近流行りの魅了魔法。隣国でも騒ぎになり、心配した婚約者が第一王子に防御魔法をかけたネックレスをプレゼントした。
次々と現れる魅了魔法の使い手。
天才が防御魔法をかけたネックレスは強大な力で……。
こちらからお断りです
仏白目
恋愛
我が家は借金だらけの子爵家
ある日侯爵家から秘密裏に契約結婚が持ちかけられた、嫡男との結婚 受けて貰えるなら子爵家を支援するが?という話
子爵家には年頃の娘が3人いる 貧乏子爵家に縁を求めてくる者はなく、まだ誰も婚約者はいない、侯爵家はその中の一番若い末娘を求めていた、
両親はその話に飛びついた,これで自分たちの暮らしも楽になる、何も無い子爵家だったが娘がこんな時に役に立ってくれるなんて,と大喜び
送り出され娘はドナドナな気分である
「一体何をされるんだろう・・・」
*作者ご都合主義の世界観でのフィクションです。
魔女の祝福
あきづきみなと
恋愛
王子は婚約式に臨んで高揚していた。
長く婚約を結んでいた、鼻持ちならない公爵令嬢を婚約破棄で追い出して迎えた、可憐で愛らしい新しい婚約者を披露する、その喜びに満ち、輝ける将来を確信して。
予約投稿で5/12完結します
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
やーん!可愛い"(∩>ω<∩)"
リアちゃん
残念令嬢?で
暗器使う凄腕だなんてっ!
素敵😍
続きとゆうか
1話完結でいろいろ読みたい!(希望)
時間があったらよろしくお願いしますm(_ _)m
感想ありがとうございます。頑張って書きたいと思いますが亀更新&内容が飛び飛びになりそうなので、よろしくお願いします!
オレリアちゃん可愛い( *´艸`)
ジェラール殿下とオレリアちゃんがいつまでも幸せであります様に……
感想ありがとうございます。二人ともお互いが大好きなので、ずっと幸せでいてくれると思います!