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愛の続きはリタイア後で
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「え、皇帝陛下、今なんて…」
「すまないが、同盟国の姫を側妃として迎えることになった。これは政治的なものだが、君に負担を強いることを申し訳なく思う。だが許してくれないか」
皇帝陛下から衝撃の話を受け、私は涙が溢れそうになるのをこらえて微笑んだ。
「…政治的な結婚も、皇帝陛下の大切なお仕事ですものね」
「ああ、理解してくれてありがとう。礼を言う、では失礼する」
皇帝陛下の背を見送る。
その後、私はベッドで泣きじゃくった。
私と皇帝陛下は、生まれながらの婚約者。
皇帝陛下にとって、そこに愛はない政治的な結婚。
けれど私は、昔からずっと皇帝陛下を愛している。
それでも、私は皇后だ。
臣民たちを愛し、慈しむ国母だ。
愛だけに生きることは許されない。
こうなった以上、同盟国の姫君を快く迎え入れなければならない。
この愛を心の奥深くに封印してでも、嫉妬に狂わず皇后としてどっしりと構えていなければ。
「…うん、私なら大丈夫ですわ!」
自分に喝を入れる。
きっと私は大丈夫。
姫君の輿入れは準備もあるので一年後らしい。
それまでに、ありとあらゆる準備を進めなければ。
「まず、姫の輿入れ前になんとしてでも王子を産まなくてはね」
跡目争いは起こしたくない。
皇后の産んだ第一王子がいれば、よほどのボンクラに育たない限り跡目争いは起きないはず。
大丈夫、私ならやれる。
臣民たちに余計な負担や心配をさせないため。
私は頑張る!!!
皇帝陛下との夜を盛り上げるため、お香やら花びらやらめちゃくちゃロマンスを演出する。
皇帝陛下は私に負担をかけないよう優しくしてくれる。
そしてこの度、めでたく子を授かった。
医師が魔法で確認したところ、双子の男女でもちろん皇帝陛下の子。
ということで、お役目は見事果たせそうだ。
「シェイラ、子を授かったと報告を受けた」
「はい、皇帝陛下のおかげです!」
「ありがとう、シェイラ」
「…!ふふ、光栄ですわ!必ず元気な子を産みます!」
「頼んだぞ」
そして私は、子を産んだ。
検査通り双子の男女で、どちらも健康そのもの。
国民たちへのお披露目も無事に済み、みんなに祝福された。
そしてその後の立て続けになる同盟国の姫君の輿入れ。
国内は沸き立った。
「ご結婚おめでとうございます、セレン様」
「こ、皇后陛下、あの、えっと!」
「私はセレン様を歓迎いたします」
「え、あ、ほ、本当に?」
「ええ。私や私の子達ともぜひ仲良くしてくださいね」
「…!は、はい!」
私は側妃となった姫君との仲も深めて、子供たちとも意図的に交流させた。
もちろん、安全には気をつけて。
跡目争いは起こらないと思いたいが、万が一のないように情をかけさせるためだ。
「第二王子も欲しいところよね」
やはりスペアは必要。
ということで皇帝陛下のお渡りの日にはまた気合いを入れて出迎えた。
もちろん夜だけ頑張っているわけじゃなくて、外交とか色々も頑張って臣民たちの生活を守るべく尽力している!
が、やはり後継問題も大切なことなのでしっかり務めねば。
「シェイラ」
「はい、皇帝陛下」
「ありがとう」
「え?」
「いつも、とてもよく頑張ってくれている。皇后として、俺の妃として」
思わぬお褒めの言葉に舞い上がる。
「ふふ、嬉しいです!本当に光栄です、ありがとうございます」
「これからも頼むぞ」
「はい!」
その後私は第二王子を授かった。
そして側妃とも仲良くしつつ、国に貢献しつつ、皇帝陛下を支えつつ…第二王子も無事出産した。
第二王子も健康そのもの。
第一王子と第一王女も元気に健やかに成長している。
これで後継に憂いはない。
あとは国に尽くすだけだ。
皇帝陛下と夜を過ごすことはなくなった。
必要ないだろうと私が断っているからだ。
私は皇后として、外交などに尽力した。
そのうち子供たちもすくすく成長し、今や第一王子は立派な王太子となった。
第一王女も素晴らしい姫となり隣国への輿入れも決まっていて、婚約者との仲も良く安心している。
第二王子は兄を支えたいと騎士団に入ることを決め、日に日に逞しくなっている。
国もさらに豊かになり、近隣諸国や同盟国との関係も良い。
側妃は子宝に恵まれなかったが、その分私の産んだ子たちと仲が良い。
私と側妃の関係も良好。
不満はないはずだ。
けれど、どうしてだろう。
皇帝陛下は時々、私を切ない目で見てくる。
思い切って、言ってみることにした。
「あの、皇帝陛下」
「ん?」
「私、なにかしてしまいましたか?」
皇帝陛下は目を見開いて、その後首を横に振った。
「違う。シェイラは悪くない。悪いのは俺だ」
「え」
「君が俺を拒絶しているのはわかってる」
「え、拒絶?」
「側妃を娶ったのを許してくれていないから、夜を断るようになったのだろう?」
…まあ、言ってしまえばそういう気持ちもある。
あまり皇帝陛下に好意を寄せてしまうと、私が嫉妬で側妃を虐げるのではないか…自分でそれが怖くなってしまったのだ。
許していない、という気持ちがあるから。
「…本当にすまなかった。だが、君は皇后として素晴らしい働きをずっと続けてくれた。おかげで国は栄え、安全な生活を臣民たちに保証できている」
「えっと…」
「だから、君に我慢ばかり強いている俺にこんなことを言う資格はない。それでも言わせてくれ。愛している」
「えっ」
「…今更だが、心から君を愛しているんだ」
皇帝陛下は目は真剣で、だから私は微笑んだ。
「もう。言うのが遅いです」
「…すまない」
「じゃあ、国にも十分尽くしてきましたし…王太子である第一王子に跡を譲って、私たちは楽隠居しましょう?」
「え」
「それで、ゆっくり二人の時間を取り戻すのです」
私がそう言えば、皇帝陛下は頷いた。
「君がそれを許してくれるのなら」
「ふふ、ええ」
こうして皇帝陛下は上皇となり、国の運営は立派に育った息子に任せて。
私たちは、やっと二人の時間を過ごせるようになった。
二人で足りなかったものを埋めるように時間を重ねていき。
側妃には悪いが、私たちはラブラブ夫婦になった。
側妃は側妃でこっそり輿入れの時からついてきていた愛人とよろしくやっているようなので許してほしい。
「幸せですね、上皇陛下」
「ああ。全部君のおかげだ」
「ふふ…素直になるのが遅くなってごめんなさい」
「何を言うんだ。それは俺のセリフだ。愛してる」
「ふふ、私もです。愛しています」
今まで国に尽くしてきたのだから、リタイア後の人生は愛に生きることくらい許してほしい。
「すまないが、同盟国の姫を側妃として迎えることになった。これは政治的なものだが、君に負担を強いることを申し訳なく思う。だが許してくれないか」
皇帝陛下から衝撃の話を受け、私は涙が溢れそうになるのをこらえて微笑んだ。
「…政治的な結婚も、皇帝陛下の大切なお仕事ですものね」
「ああ、理解してくれてありがとう。礼を言う、では失礼する」
皇帝陛下の背を見送る。
その後、私はベッドで泣きじゃくった。
私と皇帝陛下は、生まれながらの婚約者。
皇帝陛下にとって、そこに愛はない政治的な結婚。
けれど私は、昔からずっと皇帝陛下を愛している。
それでも、私は皇后だ。
臣民たちを愛し、慈しむ国母だ。
愛だけに生きることは許されない。
こうなった以上、同盟国の姫君を快く迎え入れなければならない。
この愛を心の奥深くに封印してでも、嫉妬に狂わず皇后としてどっしりと構えていなければ。
「…うん、私なら大丈夫ですわ!」
自分に喝を入れる。
きっと私は大丈夫。
姫君の輿入れは準備もあるので一年後らしい。
それまでに、ありとあらゆる準備を進めなければ。
「まず、姫の輿入れ前になんとしてでも王子を産まなくてはね」
跡目争いは起こしたくない。
皇后の産んだ第一王子がいれば、よほどのボンクラに育たない限り跡目争いは起きないはず。
大丈夫、私ならやれる。
臣民たちに余計な負担や心配をさせないため。
私は頑張る!!!
皇帝陛下との夜を盛り上げるため、お香やら花びらやらめちゃくちゃロマンスを演出する。
皇帝陛下は私に負担をかけないよう優しくしてくれる。
そしてこの度、めでたく子を授かった。
医師が魔法で確認したところ、双子の男女でもちろん皇帝陛下の子。
ということで、お役目は見事果たせそうだ。
「シェイラ、子を授かったと報告を受けた」
「はい、皇帝陛下のおかげです!」
「ありがとう、シェイラ」
「…!ふふ、光栄ですわ!必ず元気な子を産みます!」
「頼んだぞ」
そして私は、子を産んだ。
検査通り双子の男女で、どちらも健康そのもの。
国民たちへのお披露目も無事に済み、みんなに祝福された。
そしてその後の立て続けになる同盟国の姫君の輿入れ。
国内は沸き立った。
「ご結婚おめでとうございます、セレン様」
「こ、皇后陛下、あの、えっと!」
「私はセレン様を歓迎いたします」
「え、あ、ほ、本当に?」
「ええ。私や私の子達ともぜひ仲良くしてくださいね」
「…!は、はい!」
私は側妃となった姫君との仲も深めて、子供たちとも意図的に交流させた。
もちろん、安全には気をつけて。
跡目争いは起こらないと思いたいが、万が一のないように情をかけさせるためだ。
「第二王子も欲しいところよね」
やはりスペアは必要。
ということで皇帝陛下のお渡りの日にはまた気合いを入れて出迎えた。
もちろん夜だけ頑張っているわけじゃなくて、外交とか色々も頑張って臣民たちの生活を守るべく尽力している!
が、やはり後継問題も大切なことなのでしっかり務めねば。
「シェイラ」
「はい、皇帝陛下」
「ありがとう」
「え?」
「いつも、とてもよく頑張ってくれている。皇后として、俺の妃として」
思わぬお褒めの言葉に舞い上がる。
「ふふ、嬉しいです!本当に光栄です、ありがとうございます」
「これからも頼むぞ」
「はい!」
その後私は第二王子を授かった。
そして側妃とも仲良くしつつ、国に貢献しつつ、皇帝陛下を支えつつ…第二王子も無事出産した。
第二王子も健康そのもの。
第一王子と第一王女も元気に健やかに成長している。
これで後継に憂いはない。
あとは国に尽くすだけだ。
皇帝陛下と夜を過ごすことはなくなった。
必要ないだろうと私が断っているからだ。
私は皇后として、外交などに尽力した。
そのうち子供たちもすくすく成長し、今や第一王子は立派な王太子となった。
第一王女も素晴らしい姫となり隣国への輿入れも決まっていて、婚約者との仲も良く安心している。
第二王子は兄を支えたいと騎士団に入ることを決め、日に日に逞しくなっている。
国もさらに豊かになり、近隣諸国や同盟国との関係も良い。
側妃は子宝に恵まれなかったが、その分私の産んだ子たちと仲が良い。
私と側妃の関係も良好。
不満はないはずだ。
けれど、どうしてだろう。
皇帝陛下は時々、私を切ない目で見てくる。
思い切って、言ってみることにした。
「あの、皇帝陛下」
「ん?」
「私、なにかしてしまいましたか?」
皇帝陛下は目を見開いて、その後首を横に振った。
「違う。シェイラは悪くない。悪いのは俺だ」
「え」
「君が俺を拒絶しているのはわかってる」
「え、拒絶?」
「側妃を娶ったのを許してくれていないから、夜を断るようになったのだろう?」
…まあ、言ってしまえばそういう気持ちもある。
あまり皇帝陛下に好意を寄せてしまうと、私が嫉妬で側妃を虐げるのではないか…自分でそれが怖くなってしまったのだ。
許していない、という気持ちがあるから。
「…本当にすまなかった。だが、君は皇后として素晴らしい働きをずっと続けてくれた。おかげで国は栄え、安全な生活を臣民たちに保証できている」
「えっと…」
「だから、君に我慢ばかり強いている俺にこんなことを言う資格はない。それでも言わせてくれ。愛している」
「えっ」
「…今更だが、心から君を愛しているんだ」
皇帝陛下は目は真剣で、だから私は微笑んだ。
「もう。言うのが遅いです」
「…すまない」
「じゃあ、国にも十分尽くしてきましたし…王太子である第一王子に跡を譲って、私たちは楽隠居しましょう?」
「え」
「それで、ゆっくり二人の時間を取り戻すのです」
私がそう言えば、皇帝陛下は頷いた。
「君がそれを許してくれるのなら」
「ふふ、ええ」
こうして皇帝陛下は上皇となり、国の運営は立派に育った息子に任せて。
私たちは、やっと二人の時間を過ごせるようになった。
二人で足りなかったものを埋めるように時間を重ねていき。
側妃には悪いが、私たちはラブラブ夫婦になった。
側妃は側妃でこっそり輿入れの時からついてきていた愛人とよろしくやっているようなので許してほしい。
「幸せですね、上皇陛下」
「ああ。全部君のおかげだ」
「ふふ…素直になるのが遅くなってごめんなさい」
「何を言うんだ。それは俺のセリフだ。愛してる」
「ふふ、私もです。愛しています」
今まで国に尽くしてきたのだから、リタイア後の人生は愛に生きることくらい許してほしい。
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