ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと

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真綿で絞められるような

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私の彼はホストだ。

彼とは最初は客とホストの関係だったが、彼に猛烈にアプローチされて付き合い始めた。

けれど…彼が本気とは思っていない。

私はそこまで思い上がったりしない。

とはいえ、付き合おうと言ってくれて同棲までしてくれて、良い夢を見せてくれる彼には感謝しかない。

だから生活費は私が持つし、デート代も私が持つし、客として彼のところに行って少しでもお金を貢いできた。

そして彼は、念願叶ってホストクラブでナンバーワンになった。

彼はもう、お金には困っていないだろう。

私はもう、必要ないだろう。

「いやぁ、とうとう俺もナンバーワンかぁ!」

「おめでとう、律くん」

「ありがとう奏ー!お前のおかげだよー!」

「ふふ、よかった」

「それでさ、俺…金ならあるしさ、これからは生活費もデート代も俺が出すよ」

律くんは優しい。

だから、自分から私を切ることはできないんだろう。

ならば私から言い出さないと。

「ううん、大丈夫。もういいよ」

「え?もういいって?」

「別れよう?」

「…は?」

固まる彼。

意外だっただろうか?

「あのね、律くんはもうお金持ちだし…これ以上は心配いらないかなって。もう私がいなくても困らないでしょう?」

「いや…いやいやいやいやいや、ちょっと待ってよ。え、なんで?なんでそうなった?」

肩を掴まれる、ぎゅっと強く。

「り、律くん、痛い」

「…別れないよ」

「え」

「俺は君と絶対に別れないよ」

律くんは真剣な表情で言う。

私はどうしたらいいかわからなくて困惑する。

てっきり喜んで受け入れられると思っていたんだけど。

「なに?俺なんか不安にさせた?それとも怒らせるようなことしたかな…」

「そんなことないよ、律くんはいつでも最高の彼氏だったよ」

「じゃあなんで」

「律くんはもう私はいらないでしょ?」

「要らないわけないだろ!ずっと一緒にいようって約束したじゃん!」

驚いた。

夜イチャイチャしていた時に、いつも言われることだけど。

リップサービスだと、思っていた。

「…なにその顔、え、なに?もしかしてリップサービスかなぁとか思っちゃってたり?俺がホストだからって?俺は本気じゃないんだろうなぁって?そういうこと?」

「えっと」

「へー、そう。俺は本気で告白して、本気で付き合って、本気で結婚まで考えてたのに。お前は…相手はホストだしー、どうせ本気じゃないでしょー!とか思って付き合ってたの。なにそれ、バカにしてんの?」

「…ごめん」

「謝るなよ。謝るくらいなら…俺に償って」

償えと言われても、どうすればいいかわからない。

「あの、律くん、償えって…」

「一生俺のそばにいて。ずっと一緒にいて。この家から出ないで」

「え、それは…」

「いいから、ここにいるって誓って」

「いや、それは…」

律くんらしくない言動に困惑する。

「律くん、私より美人な女の子もいっぱいいるでしょう?私は必要ないよ」

「やだ。お前じゃなきゃやだ。奏じゃないと無理」

「でも…」

「奏、手を出して」

大人しく手を出す。

律くんは私の手に手錠をかけた。

「え」

「ぶっちゃけさ、気づいてたんだよね。お前が俺に本気じゃないこと」

「律くん」

「だから、どうやってお前を言いくるめるか、あるいは閉じ込めるか…考えてたわけ」

「律くん…」

律くんは悲しげな表情を浮かべる。

「だからさ、監禁の準備もできてる。お前に不自由を強いることにはなるけど、優しくするし、欲しいものはなんでもあげるし、幸せにするから。だから、諦めて俺に監禁されて?」

「それは…」

「お前のことは大事にするからさ。お願い」

「…」

どうしてこうなったのだろうか。















「なあなあ、今月も俺ナンバーワンだったの!すごくない?」

「う、うん。すごいね、律くん」

「えへへ、俺本当に頑張ったの!全部奏のためだよ」

「あ、ありがとう」

監禁されて数ヶ月。

奏くんが色々手を回したらしく、監禁されていることは誰も知らない。

誰も私を探さないし、誰も私を心配しない。

部屋からは出られないけれど、律くんと一緒にいる間ならベランダで日光浴はできる。

室内で運動するための道具も買ってくれたから、なんだかんだで運動不足とかもない。

律くんはいつでも私に優しくて、小説も漫画もゲームもたくさん与えてくれるから暇もしない。

監禁という事実に目を瞑れば、最高の環境。

「奏、愛してるよ」

「律くん、私…」

「奏はさ、俺のこと嫌いになった?」

「ならないよ」

「本当に?」

「本当だよ」

律くんはこんなに私を愛してくれていて、そんな律くんを弄んだのはむしろ私の方。

だから、律くんが満足いくまで監禁ごっこに付き合うのが私の償いなんだろう。

だって、本当は。

いつだって警察に通報できるし、いつだって誰かに連絡できるし、いつだって逃げ出せるような甘い拘束しかされていない。

律くんはわかった上でそうしてる。

「…律くん、好きだよ」

「俺も。俺も大好き」

「ごめんね、律くん」

「…奏は謝んなくていいよ。俺が悪い」

「律くん、愛してる」

私の言葉に、律くんはきゅっと眉を寄せた。

切ない表情で私を見つめて、抱きしめてくる。

「ねえ、婚姻届もらってくるからサインして。結婚しよう」

「律くん」

「なに?」

「いいよ、結婚しよう」

「…え?」

もうこうなったら、とことんまで付き合おう。

だって、私も律くんが好きだから。

「律くんが愛してくれるなら…私も、律くんが好きだから」

「…奏っ」

律くんは抱きしめる力を強くする。

「ごめん、俺、こんな風にしか愛せなくて。でも絶対幸せにするから、自由以外の全てを差し出すから!」

「うん、今度こそずっとずっと一緒にいようね」

「奏ー!!!」

律くんは甘い。

砂糖菓子みたいな人。

だから私はきっと監禁ごっこの中で、その甘さに中毒にでもなってしまったのだ。

捨てられる前に捨てようとして、結果中毒になるとか救えないけど…律くんが嬉しそうに私の頬にキスをするから、なんだかもうそれでいいやと思えてしまった。
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