猫被り姫は今日も臣民達からの信頼を集める

下菊みこと

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前編

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「アンジェリク様ー!」

「アンジェリク様万歳ー!」

教会の二階から臣民たちに優しく微笑み、手を振るのはアンジェリク・ベルト・フロランス第一皇女。

フロランス帝国の皇帝、ベルトランの第一子として生まれた彼女は、治癒魔法の才能と高い魔力を持って生まれた。

彼女は持って生まれた能力を惜しげもなく使い、怪我や病に苦しむ臣民たちを癒した。

信仰にも篤い彼女は神子姫と呼ばれ、臣民たちからの信頼と尊敬を一身に集めている。

今も、優しく手を振りながらも必死で魔力を練ってその場にいる怪我人や病人を治しまくっている。

「おお!右目が!見えるようになった!」

「無くなった足が生えた!」

「右腕が動くようになった!」

「血混じりの咳が出なくなった!」

「動悸息切れが治った!」

口々に奇跡だ、すごい、さすが神子姫様だと騒ぐ民衆に、慈愛の微笑みを浮かべたアンジェリク。

民衆の熱狂は更に増す。

こうして神子姫アンジェリクは、今日も魔力が尽きる限界まで人々を救ってみせた。

『…あーっ、つっかれたー!!!』

「お疲れ様です、アンジェリク様」

「ええ、ありがとう。その労いの言葉だけで、頑張った甲斐があるというものだわ」

『良いからさっさと寝かせろ』

「では、お着替えを手伝わせていただきますね」

魔力は、眠ることで回復する。そのためアンジェリクは、毎日の治癒魔法の施しの時間の後は寝る。ひたすら寝る。

朝も寝て、夜も寝る生活。そのためアンジェリクが動けるのはお昼から夕方にかけての時間のみだが、その時間も殆どが教会内でのお祈りの時間に当てられる。

アンジェリクには、自由になる時間が殆どなかった。だが彼女は文句を言ったことがない。何故なら。

彼女は、人前では猫を被っているからだ。

頭の中では口が悪い彼女だが、決してその本性を人に見せることはない。

「お手伝いありがとう。それでは、私は眠らせていただきますね」

「はい、良い夢を」

「ふふ。本当にいつもありがとう。おやすみなさい」

『あああああやっと休めるー!とろくさいんじゃボケェ!!!』

そして彼女は眠る。起きる頃にはお昼になっていた。

「神子姫様、お昼のご用意が出来ました。起きられますか?」

「んん…ああ、ええ、お願い」

「はい」

『今日のメニューは…うひょう!肉料理!昼間から贅沢ですなぁ!!!』

「…主の恵みに、そして命に感謝を。いただきます」

うっとりと食事を堪能するアンジェリク。彼女にとって、食事と睡眠、そして『お祈りの時間』こそが日々の楽しみであった。

「ご馳走さまでした。では、お祈りに行きます」

「はい、では参りましょう」

『ひゃっほぉーう!!!お祈りの時間キタァー!!!』

そして、お祈りの時間が始まる。
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