1 / 3
前編
しおりを挟む
「アンジェリク様ー!」
「アンジェリク様万歳ー!」
教会の二階から臣民たちに優しく微笑み、手を振るのはアンジェリク・ベルト・フロランス第一皇女。
フロランス帝国の皇帝、ベルトランの第一子として生まれた彼女は、治癒魔法の才能と高い魔力を持って生まれた。
彼女は持って生まれた能力を惜しげもなく使い、怪我や病に苦しむ臣民たちを癒した。
信仰にも篤い彼女は神子姫と呼ばれ、臣民たちからの信頼と尊敬を一身に集めている。
今も、優しく手を振りながらも必死で魔力を練ってその場にいる怪我人や病人を治しまくっている。
「おお!右目が!見えるようになった!」
「無くなった足が生えた!」
「右腕が動くようになった!」
「血混じりの咳が出なくなった!」
「動悸息切れが治った!」
口々に奇跡だ、すごい、さすが神子姫様だと騒ぐ民衆に、慈愛の微笑みを浮かべたアンジェリク。
民衆の熱狂は更に増す。
こうして神子姫アンジェリクは、今日も魔力が尽きる限界まで人々を救ってみせた。
『…あーっ、つっかれたー!!!』
「お疲れ様です、アンジェリク様」
「ええ、ありがとう。その労いの言葉だけで、頑張った甲斐があるというものだわ」
『良いからさっさと寝かせろ』
「では、お着替えを手伝わせていただきますね」
魔力は、眠ることで回復する。そのためアンジェリクは、毎日の治癒魔法の施しの時間の後は寝る。ひたすら寝る。
朝も寝て、夜も寝る生活。そのためアンジェリクが動けるのはお昼から夕方にかけての時間のみだが、その時間も殆どが教会内でのお祈りの時間に当てられる。
アンジェリクには、自由になる時間が殆どなかった。だが彼女は文句を言ったことがない。何故なら。
彼女は、人前では猫を被っているからだ。
頭の中では口が悪い彼女だが、決してその本性を人に見せることはない。
「お手伝いありがとう。それでは、私は眠らせていただきますね」
「はい、良い夢を」
「ふふ。本当にいつもありがとう。おやすみなさい」
『あああああやっと休めるー!とろくさいんじゃボケェ!!!』
そして彼女は眠る。起きる頃にはお昼になっていた。
「神子姫様、お昼のご用意が出来ました。起きられますか?」
「んん…ああ、ええ、お願い」
「はい」
『今日のメニューは…うひょう!肉料理!昼間から贅沢ですなぁ!!!』
「…主の恵みに、そして命に感謝を。いただきます」
うっとりと食事を堪能するアンジェリク。彼女にとって、食事と睡眠、そして『お祈りの時間』こそが日々の楽しみであった。
「ご馳走さまでした。では、お祈りに行きます」
「はい、では参りましょう」
『ひゃっほぉーう!!!お祈りの時間キタァー!!!』
そして、お祈りの時間が始まる。
「アンジェリク様万歳ー!」
教会の二階から臣民たちに優しく微笑み、手を振るのはアンジェリク・ベルト・フロランス第一皇女。
フロランス帝国の皇帝、ベルトランの第一子として生まれた彼女は、治癒魔法の才能と高い魔力を持って生まれた。
彼女は持って生まれた能力を惜しげもなく使い、怪我や病に苦しむ臣民たちを癒した。
信仰にも篤い彼女は神子姫と呼ばれ、臣民たちからの信頼と尊敬を一身に集めている。
今も、優しく手を振りながらも必死で魔力を練ってその場にいる怪我人や病人を治しまくっている。
「おお!右目が!見えるようになった!」
「無くなった足が生えた!」
「右腕が動くようになった!」
「血混じりの咳が出なくなった!」
「動悸息切れが治った!」
口々に奇跡だ、すごい、さすが神子姫様だと騒ぐ民衆に、慈愛の微笑みを浮かべたアンジェリク。
民衆の熱狂は更に増す。
こうして神子姫アンジェリクは、今日も魔力が尽きる限界まで人々を救ってみせた。
『…あーっ、つっかれたー!!!』
「お疲れ様です、アンジェリク様」
「ええ、ありがとう。その労いの言葉だけで、頑張った甲斐があるというものだわ」
『良いからさっさと寝かせろ』
「では、お着替えを手伝わせていただきますね」
魔力は、眠ることで回復する。そのためアンジェリクは、毎日の治癒魔法の施しの時間の後は寝る。ひたすら寝る。
朝も寝て、夜も寝る生活。そのためアンジェリクが動けるのはお昼から夕方にかけての時間のみだが、その時間も殆どが教会内でのお祈りの時間に当てられる。
アンジェリクには、自由になる時間が殆どなかった。だが彼女は文句を言ったことがない。何故なら。
彼女は、人前では猫を被っているからだ。
頭の中では口が悪い彼女だが、決してその本性を人に見せることはない。
「お手伝いありがとう。それでは、私は眠らせていただきますね」
「はい、良い夢を」
「ふふ。本当にいつもありがとう。おやすみなさい」
『あああああやっと休めるー!とろくさいんじゃボケェ!!!』
そして彼女は眠る。起きる頃にはお昼になっていた。
「神子姫様、お昼のご用意が出来ました。起きられますか?」
「んん…ああ、ええ、お願い」
「はい」
『今日のメニューは…うひょう!肉料理!昼間から贅沢ですなぁ!!!』
「…主の恵みに、そして命に感謝を。いただきます」
うっとりと食事を堪能するアンジェリク。彼女にとって、食事と睡眠、そして『お祈りの時間』こそが日々の楽しみであった。
「ご馳走さまでした。では、お祈りに行きます」
「はい、では参りましょう」
『ひゃっほぉーう!!!お祈りの時間キタァー!!!』
そして、お祈りの時間が始まる。
32
あなたにおすすめの小説
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
毒と薬は使いよう〜辺境の毒りんご姫は側室候補となりました
和島逆
恋愛
辺境の令嬢シャノンには、毒りんごを生み出す異能があった。
「辺境の毒りんご姫」と呼ばれる彼女を警戒し、国王ランベルトは側室候補としてシャノンを王都に召喚する。初対面から彼女を威圧し、本音を探ろうとするランベルトだったが──
「この毒りんごに、他者を殺める力はございません」
「わたくしは決して毒好きなわけではなく、わたくしが愛でているのはあくまで毒りんごなのです」
ランベルトの予想はことごとく外れ、いつの間にかマイペースな彼女にすっかり振り回されていくのであった。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる