悪役令嬢に転生しました。何もしてないのに転生ヒロインに原作そのままの悪役にされそうなので先手を打って私が聖女になろうと思います。

下菊みこと

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転生ヒロインが先手を取ることがなくてセーフでした

「あー、うざい…転生ヒロインうざすぎる…中身絶対転生者だよ、可憐で純粋なヒロインを返して…」

わたくしことジェシカは転生悪役令嬢。前世でお気に入りだったとある乙女ゲームの世界に、病気で亡くなったあと転生していた。

でも原作そのままにならないよう、幼少期から頑張り続けて今は領民たちからも貴族の間でも評判のいい公爵家の優秀なお嬢様をやっている。

しかしゲーム本編となる貴族の子女の通う学園に入学すると、会えるのを楽しみにしていたヒロインちゃんは転生ヒロインで中身最悪。

原作そのままの悪役としてわたくしを利用しようとしている。イジメをでっち上げようとしていて、本当に最悪。

今のところみんなわたくしがたかだか男爵家の娘を虐める理由もないだろうとわたくしを信じてくれているのが救い。

「でも、転生ヒロインが聖女になってしまったらみんな手のひらを返すでしょうね」

この国では聖女は絶対だから、それは仕方ない。

ならば、先手を取ってわたくしが聖女になるしかないだろうと思い立った。

「ということで、やりますわ!原作改変!」













わたくしは貴族学園の卒業に必要な単位は、転生ヒロインの転入前にすでに取ってある。

貴族学園に登校を続けていたのは他の方々との交流のため。

しかし、転生ヒロインが濡れ衣を着せてこようとするため傷ついたから登校しないということにして学園をしばらく休むことにした。

これで彼女はますます他の方から責められ距離を置かれるはず。

その間にわたくしは聖女になるための準備をする。

「よし、着きましたわ!」

わたくしはとある廃墟に来ている。

廃墟といっても人のいない教会だが。

この教会は、本来なら半年後にヒロインがみつけて、廃墟になっているのを可哀想に思ったヒロインがピカピカにする。

それをこの教会で祀られる神がよく思い、ヒロインに加護を与えて聖女にするのだ。

ちなみにこの国は多神教で聖女は複数いるから、わたくしが聖女になってもヒロインにチャンスはまだあるがわたくしが聖女になることに意味があるので大丈夫。

「お父様とお母様とお兄様には、ヒロインのせいで病んだ心を癒すためしばらく神に奉仕したいと言ってありますから大丈夫ですし」

ただ、ヒロインに手は出さないでとも懇願しているので下手なことは家族もしないはず。

その上で教会への奉仕も認めてもらえたので、あとはひたすら頑張るだけ。

「では、早速教会のお掃除開始ですわ!」

わたくしは聖女になるための一歩を踏み出す。
















結論から言うと、わたくしは教会の神様に気に入られて聖女になった。

本来ヒロインが起こすはずの教会清掃イベントをこなすだけでなく、神様の像に供物を捧げたりお祈りも欠かさなかったので偉く気に入られた。

なんなら原作のヒロインに対する好意よりよほど大きな好意を神様から寄せられている。

原作ヒロインより強い加護ももらい、原作ヒロインより力の強い聖女となった。

国一番の聖女といっても過言ではないかもしれない。

「聖女になったと告げたら、みんながちやほやしてくれてありがたいですわ」

今はわたくしは聖女として中央教会で保護されている。

転生ヒロインは聖女になったわたくしにまだイジメの濡れ衣を着せてこようとして、逆に他の方から断罪されたらしい。

地団駄を踏んで、暴れて、暴言を吐いて貴族学園を追放されたとか。

親からも見放され勘当され、今はスラム街に身を落としたと聞く。

これでわたくしの身の安全は完全に保障されたわけである。

「あとは、これからのことに関してですわね」

今世でわたくしは、いつ何がどう転ぶかわからないため保険として誰とも婚約を結んでいない。

優しく可愛く優秀な娘として両親と兄から溺愛されているわたくしがどうしても政略結婚は嫌だと駄々をこねたところ、そのわがままも許されたからだ。

でも、そろそろ結婚適齢期。学園を卒業したら結婚する相手が欲しい。

この国では聖女も結婚できるし、それで力を失ったりもしないからやっぱり結婚できるならしたい。

前世では今くらいの年齢で亡くなってしまったから、前世を合わせても初婚となるので是非とも素敵な結婚をしたい。

「聖女様、面会の希望者がいます」

「誰かしら」

「リュドヴィック様です」

「まあ!もちろん会うわ!」

リュドヴィックはわたくしの幼馴染だ。

原作では攻略対象ではない所謂モブだが、見た目も十分整っているし優しく気さくで大好きな幼馴染。

こうして教会に頻繁に会いに来てくれるくらいマメで、幼馴染のわたくしから見ても良い男だ。

侯爵家の次男なのだが、何故かまだ婿入り先が決まっていないのがちょっと心配だけれど。

良い男なのにもったいない。

「リュドー!」

「ジェシー、久しぶり!」

「久しぶりかしら?この間も会いに来てくれたじゃない」

「俺の気持ちとしては毎日でも会いたいからさあ」

「ふふ、もう」

口の上手いところもこの男の好きなところだ。

「それであの…さ」

「ええ」

「プレゼントがあるんだ」

「え、何かしら」

首を傾げていると、リュドが恭しくわたくしの前に跪き小さな箱を取り出した。

箱を開けると指輪が入っている。

「え…」

「ずっとずっとジェシーが好きだった。両家の両親にはもう許可を得てる。あとはジェシーが頷いてくれるだけだ。…学園の卒業後、俺と結婚してほしい」

「…!!!」

リュドはわたくしが拒まないのを見て、びっくりしすぎて何も言えないわたくしの左手を取って薬指に指輪をはめた。

わたくしは、幼馴染からの突然の告白と求婚に驚きつつも嬉しくなって胸がいっぱいになった。

そこでようやく気付いたのだ。わたくしはリュドをいつのまにか好きになっていたのだと。

「リュド」

「うん?」

「…好きよ、幸せにしてね」

「…!もちろんそのつもりだ!」

リュドに優しく抱きしめられる。

自分の身の安全を第一に考えてきた人生だったけど、これからはそんなことを考える必要もなく純粋に恋を楽しめそうです。
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