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お礼の品はもらっておく

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「エリアーヌ、貴女は本当に私の自慢の娘だわ」

「…?何かありましたか?」

「騎士団長様の息子さんの顔の怪我を治してあげたと聞いたわ。よく頑張ったわね」

お母様に褒められる。別にお小遣いで魔女の万能薬を買っただけで、褒められるようなことはしていないのだけど…。

「そう言っていただけて嬉しいです」

「もしよかったら、その息子さんと婚約する?お母様がお話しておきましょうか?」

突然の話に焦る。それはダメ!

「お、お母様!それは待って!」

「あら、どうして?あそこは侯爵家だし身分に問題はないわ。顔立ちだって整っているし、彼を気に入っているから助けてあげたのではないの?」

「違うわ、お母様!私は彼と友達でいたいの!婚約なんて嫌よ!」

私のあまりの必死さに、お母様は困惑する。

「そ、そんなに友達でいたいの?」

「ええ!そうですわ!」

「…なら、せっかくのご縁ですけれどやめておきましょうか。なかなかの優良物件だと思うのだけれど」

残念そうなお母様に平謝りして、なんとか窮地を切り抜けた。




















その後私は、カジミールともちょくちょく会うようになった。時々、カジミールも連れてオードリックに会いに行ったりもする。

カジミールとオードリックは仲が良い。もちろん私もその輪に入れてくれる。

友達として、この良い男二人とつるむのは楽しい。だって眼福だから。

そんなわけで今日も今日とて三人で遊んでいる。

「そうそう。エリアーヌ嬢に贈り物がありまして」

「え?なんですの?」

「魔女の万能薬のお礼…になるかはわかりませんが、こちらを」

そう言ってカジミールが差し出したのは小さな石のついたネックレス。

「一度だけ、主人の不幸を肩代わりしてくれる魔法のかかった石です。身につけやすいようにネックレス用に加工しました」

「まあ!ありがとうございます、カジミール様」

「おや、先を越されてしまったな」

オードリックが笑って、ポケットからなにかを取り出した。

「俺も、あの時のお礼にこんなものを用意した」

オードリックが私に差し出したのは、カジミールがくれた石と同じものを使ったブレスレット。

「オードリック様もありがとうございます!」

「いや、こちらこそいつもありがとう。こうして二人と友人として過ごせることが、すごく嬉しい」

「私もですわ!」

「僕もです」

うんうん。順調に悪役令嬢の道から遠ざかっている。このまま他三人の攻略対象とも婚約せず、問題を解決して友達になり、ヒロインも助ければ私の今後も安泰だ!
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