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今度は貰う側になるお話
私の兄は公爵様だ。
兄は領地領民のために毎日毎日頑張って領地改革を行なっている。
愚かな父と義理の母は領民たちから搾取することしか考えていない人達だった。
兄は成人して必要な知識も得ると、すぐ父と母を引き摺り下ろして爵位を強引に継承した。
今、領民たちの兄への信頼は爆上げ状態。
兄の采配で、実際に豊かに安心して暮らせるようになったからだろう。
そんな兄は、妾の子である腹違いの妹の私を何故かすごく大切にしてくれる。
だから私も、兄に懐いている。
兄は、私に結婚を無理に勧めない。
私が妾の子だからと陰口を叩かれているのを知っているから。
だから手元に置いて庇護してくれている。
今日は、そんな兄にプレゼントがあるのだ。
「兄様ー」
「どうした、リュゼ。また誰かに虐められたのか?」
「ううん、今日はプレゼントを持ってきたの」
「…プレゼント?」
「そう、ワイン!」
私はお小遣いをもらっているが、基本的に散財しない。
だから、貯まっていたお小遣いをパァッと使いすごく高いワインを買ってきたのだ。
「そうか、ありがとう…これは!?」
「なんだか、ものすごく高いお酒なんですって!」
「リュゼ…こんな良いものを、もらっていいのか?」
「兄様に買ってきたのよ?当たり前でしょう?」
「リュゼ…なんていい子に育ったんだ…」
兄様は領地改革に勤しむけれど、その分休む暇もなく働き詰め。
だからせめて、今日くらい気楽に酔って楽しく過ごしてほしい。
そう思ったのだけど。
「リュゼ、一緒に飲もうか」
「え、私もいいの?」
「リュゼが持ってきてくれたんだ、当たり前だ」
「わーい」
兄様は私も誘ってくれた。
おつまみも用意して、二人で飲む。
「ん、これ美味しい!」
「ああ、美味しいな」
「兄様、そんなチビチビ飲まずにいつも通り飲みましょう?」
「…そうか、そうだな。うん、美味い」
「ね!美味しい!」
その日は兄は気持ち良く酔えたらしく、早めに寝てくれた。
それから時々、私は兄にワインを渡すようになった。
「兄様、今日はこんなワインを持ってきたわ!」
「またすごいのを持ってきたな」
「一緒に飲みましょう?」
「もちろんだ」
「おつまみはこの間のやつがいいわ!」
そうして兄様と時々飲んで。
兄様はなんだか、目に見えて元気になった。
領地改革も問題なく進み、領民たちはますます兄様を信頼して、兄様のおかげで幸せだと笑う者が増えた。
そして我が公爵家も益々栄え…兄様と私にそれぞれ婚約の打診が来るようになった。
「ねえ兄様、この釣書の方だけど」
「ん」
「私、良いかもと思ってて」
「そうか」
「顔合わせして、よければ婚約してもいいかしら」
兄様は少し心配そうな顔をしたが頷いてくれた。
そして相手と顔合わせをして、いい人だったので婚約することになった。
トントン拍子に話が進み、一年後に結婚することになった。
そこで私は、どこか寂しそうな兄にまたワインを贈った。
「兄様、これあげる」
「…こんなに良いワインを、いいのか?」
「一緒に飲みましょう?」
「もちろんだ」
兄様と、おつまみを用意して一緒に飲む。
「ねえ兄様。私、兄様の妹に生まれてこれて幸せだわ」
「意地の悪い奴らに虐められてもか?」
「ええ!世界一幸せだと胸を張れるわ!」
「そうか…」
兄様は、酔いもあるだろうけれど突然泣き出した。
「え、兄様!?」
「立派になったな」
「…」
「いつまでも幼い、俺の周りをうろちょろする子供だとばかり思っていたが…こんなに大きくなった」
「兄様…」
兄様は、少し寂しそうな、でも嬉しそうな表情で言った。
「幸せになれ、リュゼ。それが俺の今一番の望みだ」
「兄様、ありがとう。私、もうずっとずっと前から幸せだけど…きっと、もっと幸せになるわ」
「うぅ…リュゼ、うぅ…」
初めて兄様の泣き顔を見たけれど。
私のために、嬉し泣きしてくれる兄がますます大好きになった。
私が結婚すると、しばらくして兄様も婚約を発表した。
やっぱり、私が結婚して幸せになるのを見届けてから自分も結婚する気だったらしい。
兄様ったら、優しすぎる。
私は裕福な商人の嫁になったが、その人が良い人だったからすごく幸せ。
そして理解あるその人は、私が時々実家に贈り物をするのを許してくれる。
だから私はそういう時、兄様にワインを贈る。
でも、もう一緒に飲んだりはしない。
今度は婚約者さんと飲んでね、と言い含めて渡すのだ。
それから兄の婚約者さんは酔った兄様から色々な本音を聞いたらしく、色々安心したと言って私にお礼を言ってくれた。
兄様は優しいのに分かりづらいところがあるから…お酒が薬になったようで良かった。
兄の婚約者さんは既に他家に嫁いだ私とも仲良くしてくれる。
ワイン一本で、みんなが幸せになった。
よかったよかったと笑う私に、夫がワインを差し出した。
「僕も、君と飲んでみたい」
「ふふ、もちろんですわ!」
夫は優しい人で、夫になんの不満もないが…もっと夫と打ち解けたい。
そんな私には有り難いお話だった。
「君はいつも、兄君のためにワインを贈っているね」
「ええ。兄様は頑張りすぎる人ですから、気持ち良く酔える日があっても良いと思って」
「すごく素敵なことだね。だから、これからは僕も君に時々ワインを贈ろう」
「え、でも」
「我が家に馴染もう、僕を支えよう、僕のために頑張ろう。そういう君の優しさを、結婚してからいつも感じてるんだ」
「…!」
伝わっていたと嬉しい気持ちと、伝わってしまったと恥ずかしい気持ち。
それが入り混じっているのがわかったのか、夫は笑った。
「リュゼ。僕は君と結婚出来て幸せだ」
「ジル様…」
「これからは、兄君に代わって僕が君を守るよ。君が僕に尽くしてくれるように、僕も君を心から愛する。愛してるよ、リュゼ」
正直、ちょっとだけ不安だった。
ジル様は『兄様の妹』として私を娶ったわけで、私を愛してくれる日は来るだろうかと。
ジル様と婚約して結婚して、そのお人柄を感じる度に惹かれていたから。
けれどそれは杞憂だった。
夫は、ジル様は、心から私を愛してくれた。
「ジル様…私も、ジル様を愛しています」
「よかった…ありがとう、リュゼ。そう言ってくれて嬉しい」
「ジル様…」
「リュゼ…」
そっと触れるだけのキス。
それだけで心が満たされる。
やはりワインは、気持ち良く酔わせてくれて素直な本音を口にさせてくれる魔法のお薬かもしれない。
乱用にはご注意だけどね。
兄は領地領民のために毎日毎日頑張って領地改革を行なっている。
愚かな父と義理の母は領民たちから搾取することしか考えていない人達だった。
兄は成人して必要な知識も得ると、すぐ父と母を引き摺り下ろして爵位を強引に継承した。
今、領民たちの兄への信頼は爆上げ状態。
兄の采配で、実際に豊かに安心して暮らせるようになったからだろう。
そんな兄は、妾の子である腹違いの妹の私を何故かすごく大切にしてくれる。
だから私も、兄に懐いている。
兄は、私に結婚を無理に勧めない。
私が妾の子だからと陰口を叩かれているのを知っているから。
だから手元に置いて庇護してくれている。
今日は、そんな兄にプレゼントがあるのだ。
「兄様ー」
「どうした、リュゼ。また誰かに虐められたのか?」
「ううん、今日はプレゼントを持ってきたの」
「…プレゼント?」
「そう、ワイン!」
私はお小遣いをもらっているが、基本的に散財しない。
だから、貯まっていたお小遣いをパァッと使いすごく高いワインを買ってきたのだ。
「そうか、ありがとう…これは!?」
「なんだか、ものすごく高いお酒なんですって!」
「リュゼ…こんな良いものを、もらっていいのか?」
「兄様に買ってきたのよ?当たり前でしょう?」
「リュゼ…なんていい子に育ったんだ…」
兄様は領地改革に勤しむけれど、その分休む暇もなく働き詰め。
だからせめて、今日くらい気楽に酔って楽しく過ごしてほしい。
そう思ったのだけど。
「リュゼ、一緒に飲もうか」
「え、私もいいの?」
「リュゼが持ってきてくれたんだ、当たり前だ」
「わーい」
兄様は私も誘ってくれた。
おつまみも用意して、二人で飲む。
「ん、これ美味しい!」
「ああ、美味しいな」
「兄様、そんなチビチビ飲まずにいつも通り飲みましょう?」
「…そうか、そうだな。うん、美味い」
「ね!美味しい!」
その日は兄は気持ち良く酔えたらしく、早めに寝てくれた。
それから時々、私は兄にワインを渡すようになった。
「兄様、今日はこんなワインを持ってきたわ!」
「またすごいのを持ってきたな」
「一緒に飲みましょう?」
「もちろんだ」
「おつまみはこの間のやつがいいわ!」
そうして兄様と時々飲んで。
兄様はなんだか、目に見えて元気になった。
領地改革も問題なく進み、領民たちはますます兄様を信頼して、兄様のおかげで幸せだと笑う者が増えた。
そして我が公爵家も益々栄え…兄様と私にそれぞれ婚約の打診が来るようになった。
「ねえ兄様、この釣書の方だけど」
「ん」
「私、良いかもと思ってて」
「そうか」
「顔合わせして、よければ婚約してもいいかしら」
兄様は少し心配そうな顔をしたが頷いてくれた。
そして相手と顔合わせをして、いい人だったので婚約することになった。
トントン拍子に話が進み、一年後に結婚することになった。
そこで私は、どこか寂しそうな兄にまたワインを贈った。
「兄様、これあげる」
「…こんなに良いワインを、いいのか?」
「一緒に飲みましょう?」
「もちろんだ」
兄様と、おつまみを用意して一緒に飲む。
「ねえ兄様。私、兄様の妹に生まれてこれて幸せだわ」
「意地の悪い奴らに虐められてもか?」
「ええ!世界一幸せだと胸を張れるわ!」
「そうか…」
兄様は、酔いもあるだろうけれど突然泣き出した。
「え、兄様!?」
「立派になったな」
「…」
「いつまでも幼い、俺の周りをうろちょろする子供だとばかり思っていたが…こんなに大きくなった」
「兄様…」
兄様は、少し寂しそうな、でも嬉しそうな表情で言った。
「幸せになれ、リュゼ。それが俺の今一番の望みだ」
「兄様、ありがとう。私、もうずっとずっと前から幸せだけど…きっと、もっと幸せになるわ」
「うぅ…リュゼ、うぅ…」
初めて兄様の泣き顔を見たけれど。
私のために、嬉し泣きしてくれる兄がますます大好きになった。
私が結婚すると、しばらくして兄様も婚約を発表した。
やっぱり、私が結婚して幸せになるのを見届けてから自分も結婚する気だったらしい。
兄様ったら、優しすぎる。
私は裕福な商人の嫁になったが、その人が良い人だったからすごく幸せ。
そして理解あるその人は、私が時々実家に贈り物をするのを許してくれる。
だから私はそういう時、兄様にワインを贈る。
でも、もう一緒に飲んだりはしない。
今度は婚約者さんと飲んでね、と言い含めて渡すのだ。
それから兄の婚約者さんは酔った兄様から色々な本音を聞いたらしく、色々安心したと言って私にお礼を言ってくれた。
兄様は優しいのに分かりづらいところがあるから…お酒が薬になったようで良かった。
兄の婚約者さんは既に他家に嫁いだ私とも仲良くしてくれる。
ワイン一本で、みんなが幸せになった。
よかったよかったと笑う私に、夫がワインを差し出した。
「僕も、君と飲んでみたい」
「ふふ、もちろんですわ!」
夫は優しい人で、夫になんの不満もないが…もっと夫と打ち解けたい。
そんな私には有り難いお話だった。
「君はいつも、兄君のためにワインを贈っているね」
「ええ。兄様は頑張りすぎる人ですから、気持ち良く酔える日があっても良いと思って」
「すごく素敵なことだね。だから、これからは僕も君に時々ワインを贈ろう」
「え、でも」
「我が家に馴染もう、僕を支えよう、僕のために頑張ろう。そういう君の優しさを、結婚してからいつも感じてるんだ」
「…!」
伝わっていたと嬉しい気持ちと、伝わってしまったと恥ずかしい気持ち。
それが入り混じっているのがわかったのか、夫は笑った。
「リュゼ。僕は君と結婚出来て幸せだ」
「ジル様…」
「これからは、兄君に代わって僕が君を守るよ。君が僕に尽くしてくれるように、僕も君を心から愛する。愛してるよ、リュゼ」
正直、ちょっとだけ不安だった。
ジル様は『兄様の妹』として私を娶ったわけで、私を愛してくれる日は来るだろうかと。
ジル様と婚約して結婚して、そのお人柄を感じる度に惹かれていたから。
けれどそれは杞憂だった。
夫は、ジル様は、心から私を愛してくれた。
「ジル様…私も、ジル様を愛しています」
「よかった…ありがとう、リュゼ。そう言ってくれて嬉しい」
「ジル様…」
「リュゼ…」
そっと触れるだけのキス。
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乱用にはご注意だけどね。
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