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第一章
話
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《???視点》
目の前の人が消えた。
…………え!?
どーゆーこと!?
転移魔法?
でも、術式を構築した気配がなかった。
っていうか、転移魔法自体使える人は多くないはず。
じゃあ、何があったの!?
っていうことがあってからだいたい十分。
なにやらわんさかいるオオカミたちが混乱している様子。
でも、さっき1匹に「暫しお待ちを!!!」って言われちゃったから何にもできない。
やっぱり、手伝った方がいいよね?
うーん、でもなあ。
出会ってからまだ1時間くらい。
そんな状況、初めてだし……。
あぁーっ、わからない!
うん、とりあえず、オオカミに話しかけ──
その瞬間。
私の前に人が現れた。
「「うわぁぁぁぁ!!?」」
「ふうー。びっくりしたぁ」
「うぅ、ごめんなさい…………」
「あぁ、いやいや、君のせいじゃなくてね!?」
「……ふふっ」
その人、ユータさんは、慌てていた。
それがなんだか可愛くて笑ってしまった。
「あっと、そうだった。ちょっと話があるんだけど、きいてもらえるかな? 君たち、集合!!」
ユータさんはなんだか慌てた様子でオオカミたちを集めると、さっきまで座っていた席にふたたび腰かけた。
そこから始まった話は、私の想像の遥か上をいくものだった。
ユータさんは他の星、世界から来た、とか、この世界が滅びかけている、とか。
正直に言って、私の手に負える話じゃあなかった。
それでも、私は話が終わったときに、叫んでいた。
「わ、私には──」
なんでこんなことを言ったんだろう。
「何が──」
それでも、ただひとつ、わかっていることがある。
私は──。
「私には何ができますか!?」
彼の力になりたかった。
私の故郷を救いたかった。
*********
《ユータ視点》
えっと、それって、俺の手伝いをしてくれるってこと?
うーーん、ありがたいんだけど、かなり危険なにおいがするし、正直に言って、あまりおすすめできない。
それに、相手のことを、俺は何にも知らない……。
あれ?
なんにもって言うか、俺、名前すら知らなくない?
逆になぜいままで気がつかなかったって感じなんだが……。
「うーーん、俺としては手伝ってくれるのはありがたいんだけど、危険だと思うし、正直あんまりお勧めできないよ。それに、俺、まだ君のこと何にも知らないし」
途中、彼女は顔を輝かせたり、曇らせたり、最後には赤くなったりしてた。
まあ、気持ちは分からんでもない。
「こ、これは失礼しました。私、ヤルタ王国第三王女、フレリア・リンガートと申します」
そこからは直感だった。
「ユ、ユータ様!? なにをなさっているのです!?」
「え? あ、いや、だって王家の人間に対しては跪くのが当たり前かなあと思って……」
「止めてください。ユータ様は私の恩人なのですから、私こそ……」
跪かれた。
この状況はヤバイ。
かなりヤバイ。
「おいお前! 王族の方に跪かせるとは何事だ! けしからん! 処刑する!」
「ひえーー! ご、ご容赦をーー!」
何てことになりかねない。
冗談抜きで。
「いやいやいやいやいや……。こちらこそ……」
「いえ、良いのです。それに、私は、もう王家の人間ではありませんので。」
「……え?」
「私の祖国、ヤルタ王国は、いまは軍部に乗っ取られているのです。しかも、民衆は、大部分がその事を知りません」
「なるほど……。クーデターというやつか」
「? くーでたー? 何ですか、それは?」
「いや、なんでもない。続けてくれ」
「私の父は軍の言いなり、母は消息すらわかりません。私は、そこから逃げてきたのです。ですから、私はもう王家の人間ではありません」
彼女は、寂しそうだった。
その表情が、強く印象に残った。
「君は、その国に戻りたい?」
一瞬、ハッとした顔をしたものの、直ぐに真剣な表情に戻った。
「私は国を一度捨てた身です。戻る資格なんてありません。それに、戻ったところで、なにも……」
「……俺に協力してくれたら、国に戻れるかも、と言ったら?」
我ながら悪役っぽいセリフだなぁ。
しかも、何だかんだで言葉づかい敬語じゃなくなってるし。
まあ、あそこまで言われたら、あまいっかってなっちゃう気持ちも分かって。
「だけど、俺はどうやらスキルをいまひとつも持ってないみたいなんだよ。なんとかなんないかなぁ。さすがにゼロはやばいと思うし」
「そうですね……。では、少し、特訓して、スキルとりましょうか」
彼女の顔は、さっきとは比べ物にならないくらい、凄い顔だった。
「ひいっ」
目の前の人が消えた。
…………え!?
どーゆーこと!?
転移魔法?
でも、術式を構築した気配がなかった。
っていうか、転移魔法自体使える人は多くないはず。
じゃあ、何があったの!?
っていうことがあってからだいたい十分。
なにやらわんさかいるオオカミたちが混乱している様子。
でも、さっき1匹に「暫しお待ちを!!!」って言われちゃったから何にもできない。
やっぱり、手伝った方がいいよね?
うーん、でもなあ。
出会ってからまだ1時間くらい。
そんな状況、初めてだし……。
あぁーっ、わからない!
うん、とりあえず、オオカミに話しかけ──
その瞬間。
私の前に人が現れた。
「「うわぁぁぁぁ!!?」」
「ふうー。びっくりしたぁ」
「うぅ、ごめんなさい…………」
「あぁ、いやいや、君のせいじゃなくてね!?」
「……ふふっ」
その人、ユータさんは、慌てていた。
それがなんだか可愛くて笑ってしまった。
「あっと、そうだった。ちょっと話があるんだけど、きいてもらえるかな? 君たち、集合!!」
ユータさんはなんだか慌てた様子でオオカミたちを集めると、さっきまで座っていた席にふたたび腰かけた。
そこから始まった話は、私の想像の遥か上をいくものだった。
ユータさんは他の星、世界から来た、とか、この世界が滅びかけている、とか。
正直に言って、私の手に負える話じゃあなかった。
それでも、私は話が終わったときに、叫んでいた。
「わ、私には──」
なんでこんなことを言ったんだろう。
「何が──」
それでも、ただひとつ、わかっていることがある。
私は──。
「私には何ができますか!?」
彼の力になりたかった。
私の故郷を救いたかった。
*********
《ユータ視点》
えっと、それって、俺の手伝いをしてくれるってこと?
うーーん、ありがたいんだけど、かなり危険なにおいがするし、正直に言って、あまりおすすめできない。
それに、相手のことを、俺は何にも知らない……。
あれ?
なんにもって言うか、俺、名前すら知らなくない?
逆になぜいままで気がつかなかったって感じなんだが……。
「うーーん、俺としては手伝ってくれるのはありがたいんだけど、危険だと思うし、正直あんまりお勧めできないよ。それに、俺、まだ君のこと何にも知らないし」
途中、彼女は顔を輝かせたり、曇らせたり、最後には赤くなったりしてた。
まあ、気持ちは分からんでもない。
「こ、これは失礼しました。私、ヤルタ王国第三王女、フレリア・リンガートと申します」
そこからは直感だった。
「ユ、ユータ様!? なにをなさっているのです!?」
「え? あ、いや、だって王家の人間に対しては跪くのが当たり前かなあと思って……」
「止めてください。ユータ様は私の恩人なのですから、私こそ……」
跪かれた。
この状況はヤバイ。
かなりヤバイ。
「おいお前! 王族の方に跪かせるとは何事だ! けしからん! 処刑する!」
「ひえーー! ご、ご容赦をーー!」
何てことになりかねない。
冗談抜きで。
「いやいやいやいやいや……。こちらこそ……」
「いえ、良いのです。それに、私は、もう王家の人間ではありませんので。」
「……え?」
「私の祖国、ヤルタ王国は、いまは軍部に乗っ取られているのです。しかも、民衆は、大部分がその事を知りません」
「なるほど……。クーデターというやつか」
「? くーでたー? 何ですか、それは?」
「いや、なんでもない。続けてくれ」
「私の父は軍の言いなり、母は消息すらわかりません。私は、そこから逃げてきたのです。ですから、私はもう王家の人間ではありません」
彼女は、寂しそうだった。
その表情が、強く印象に残った。
「君は、その国に戻りたい?」
一瞬、ハッとした顔をしたものの、直ぐに真剣な表情に戻った。
「私は国を一度捨てた身です。戻る資格なんてありません。それに、戻ったところで、なにも……」
「……俺に協力してくれたら、国に戻れるかも、と言ったら?」
我ながら悪役っぽいセリフだなぁ。
しかも、何だかんだで言葉づかい敬語じゃなくなってるし。
まあ、あそこまで言われたら、あまいっかってなっちゃう気持ちも分かって。
「だけど、俺はどうやらスキルをいまひとつも持ってないみたいなんだよ。なんとかなんないかなぁ。さすがにゼロはやばいと思うし」
「そうですね……。では、少し、特訓して、スキルとりましょうか」
彼女の顔は、さっきとは比べ物にならないくらい、凄い顔だった。
「ひいっ」
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