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1.金木犀が香る丘
しおりを挟む人に夢とかいて「儚い」と読む。
かのモーツァルトは、「夢を見るから、人生は輝く」という言葉を遺している。
夢とは、人類に希望を与える存在なのかもしれない。
しかし、叶えるのは容易ではない。
夢を叶える人もいれば、夢を諦めてしまう人もいる。
これまでどれだけの人が夢を見続け、挑み、儚く散っていったのだろうか。
そういう意味では、人の生涯とは地に根を張り、茎を伸ばし、大輪を咲かせ、最後には儚く散っていく花と同じようなものかもしれない。
これは何もない男子高校生と、特別な事情を抱えた少女が織り成す物語。
―――――――――――――――――――
9月。もう夏休みは終わったというのに、まだまだ気温は高いままだ。夏に入ってからというもの、ずっと蒸し暑い夜が続いている。
「こんなんじゃ寝れもしないよな。」
17歳の男子高校生である瑞希(みずき)は、
ベッドで横になりながらネットサーフィンをしている最中にふと画面越しにつぶやいた。
高校に入ってからというもの、日々堕落した生活送っている。朝、日が昇る頃に眠り、夕方に起きる、そんな生活を繰り返していた。
小学生の頃からサッカーを始め、足は速く、運動もできるということで女子からはかなりの人気があった。小学生なのにもかかわらず、毎年バレンタインデーでもらうチョコレートの量は尋常ではなかった。中学でもサッカー部に入部し、入部して早々三年生と同じチームで戦ったり、沢山の賞状をもらったり、3年間スタメンに選ばれ、女子からもそこそこ好かれ、試合においては数多くの輝かしい功績を残してきた。そう思っていた。
今の高校にはスポーツ推薦で入学した。
また沢山の功績を残せる。
なにより自分にはサッカーの才能がある。
そう思いながら高校でもサッカー部に入部した。
なんなら将来はサッカー選手になりたいとまで思い始めていた。
しかし、現実はそう甘くないのだ。
スポーツ推薦で生徒を募るだけあって、
自分のまわりには全国トップレベルのプレイヤーばかり。
練習ではまわりに追いつけず悔しがることしかできなかったり、試合ではチームの足を引っ張ることしかできなかったり、挙句の果てにはチーム内からも雑魚呼ばわりされるようになり、気づいたら部活を辞めていた。サッカー選手の夢は呆気なく途絶えたのだ。
最近は学校にも行っていない。
自分の良いところって何なのだろうか。
夢とは一体何なのだろうか。
こんな生活早く抜け出さなきゃいけないのは
自分自身一番よく分かってるが、やっぱりそう上手くはいかない。
こんなふうに憂鬱な日々を過ごしている。
そんな自分にも最近ハマっている事が一つある。
それは夜が更け、街が眠りにつく頃、ひとり金木犀が香る丘で、自分の住んでいる街を見下ろすことだ。たいして栄えてもなく、有名な何かがある訳でもなく、魅力なんてひとつもないと思っていたが、どこか惹き付けられるものが瑞希にはあった。
「今日も行ってみるか。」
真夜中の人が居ない道を、自転車のペダルを踏み続ける。
漕ぐ度に耳元でヒュー、ヒューと風を切る音がする。
いつもの交差点、いつもの信号機、横断歩道、街灯、道路標識。
深夜は何もかも神秘的に見えてしまう。
いづれ大人になって、夜遅くまで働くようになったら、こんな気分も味わえなくなるのだろうか。
そんな事を考えているうちに、目的地へとたどり着いた。
「戀ヶ丘(こいがおか)公園」
公園の入口の大きな石碑にはそう刻まれている。
ここは街の小さな丘の上に作られた公園で、この時期になると植えてある沢山の金木犀が花を開き、優雅で美しい香りを辺り一面に漂わせる。
自転車のスタンドを下ろし、しっかりチェーン錠をしたことを確認し、上へ上へと続く公園の遊歩道を歩いて行く。
「昔、おじいちゃんとよく来たなぁ。」
小さい頃、親が仕事で忙しい時は、おじいちゃんがよく面倒を見てくれていた。
この公園にも何回か訪れた事がある。
金木犀の香りが気に入った当時の僕は、おじいちゃんに駄々を捏ねて金木犀の木を持って帰ることを懇願した。しかし、そんなことできる訳もなく、枝をほんの少しだけ切り取り、接ぎ木にしたが、途中で面倒を見るのを怠り、最終的には枯れ、ゴミ箱に捨てたのをよく覚えている。
そんな思い出に浸りながら、金木犀に挟まれた道を進んでゆく。
数分ほど歩くと、頂上にたどり着き、ベンチに座りながら眼下の街を見下ろした。
やはり頂上でも金木犀の香りが頬を撫でる。
「いくつになっても、金木犀の匂いは好きだな。」
―――――――――――――――――――
街の人々はこの公園を「金木犀が香る丘」と呼ぶ。
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