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「誰なんだよ。もうやめてくれよ」
明が半べそを書きながらそう言った。
卓也は、はっとして、
「水だ。昨日新しく出した水。あれを飲んで少ししたら眠気が来て……。あれにも睡眠薬が入っていたんだ」
史帆はカメラに向かって聞いた。
「あなたがやったの?」
返事はなかった。
「あいつに決まってる」
京子の顔はもうまともじゃなくなっていた。
「急いでここから出よう」
卓也と明、京子が立ち上がった瞬間、
「逃がしませんよ」
アインスの声がスピーカーから聞こえてきた。
「殺し合えと言いましたよね。昨夜、殺し合う気配は何もなかった。なので私が代わりにあなたたちがたまたま睡眠薬入りの水を飲んで寝た隙に、一人殺しておきました。良かったですね。自らが殺める人数が減って」
しばらく何も言い返せずにいた。
「もし、逃げたらどうなる」
明だった。
「私はこの島にはいません。泳いで帰れるのであればそうすればいい」
「今の聞いたか?」
明は小声で言った。
卓也も小声で「行こう」と言った。
「嘘に決まってる」
京子は首を横に振った。
「あいつが本当のことを言ったことがあった?睡眠薬も毒も、あいつがないって言うから少し安心して飲み食べしたんじゃない。それで二人も死んだんだよ。アインスは絶対この島にいる」
史帆はうなずいた。
「今日も殺し合わなければ誰か死ぬってのかよ?」
明は眉間に皺を作りながら言った。
「水を飲まなければいい」
京子は説得するように言った。
「どんな手を使って殺されるかなんてわからないだろ。とりあえずここからは出よう」
卓也は一人ひとりの顔を見て強い口調で言った。
京子と史帆は渋々納得し、山小屋からは出ることにした。
玄関を出て、階段を降りたところで止まった。
しばらくして京子が口を開いた。
「もしかして、由紀を殺した犯人って史帆じゃない?」
史帆の目をまっすぐに見てそう言った。
「違う。もしそうなら私に返り血がついていないとおかしい」
京子の疑いはまだ晴れない。
「裸で殺して、バスルームで洗えば血は消せるじゃない」
「じゃあバスルームが濡れているか確認してきたらいいじゃない」
そう言い切ると京子はうつむいて何も言い返してこなかった。
史帆は明と卓也に聞いた。
「昨日、全部屋見たんだよね?私が寝た「5」番の部屋は押入れが開きっぱなしだったんだけど、他の部屋からも掛け布団は取ったの?」
すると卓也が少し考えるようにして答えた。
「いや、掛け布団を取ったのは「3」の部屋までだ。一部屋二枚ずつ入っていたから、残りの部屋は扉を開けただけで中には入っていないし、電気もつけなかったから押入れが開いていることには気づかなかった」
史帆は鳥肌が立った。
もしかして、と明が言いかけたのを遮って京子が言った。
「そこにあいつが隠れていたんじゃない?明たちが行った後に押入れから出て、別の場所に逃げたとか……」
「確認する必要があるな」
明はそう言うと階段を上り始めた。
「待てよ」
卓也は明を呼び止めた。
「もし五つの部屋の内、どこかに今も隠れていたらどうする?殺されるぞ」
明は困ってような顔をした。
「とりあえず降りてこい。どうするか話し合おう」
明が戻ってきて、卓也が史帆を見て言った。
「史帆は、昨日部屋にいて物音がしたりしなかったか?」
「しなかったよ。私がすぐ寝ちゃったから気付かなかっただけかもしれないけど」
京子は怪訝そうな表情で言った。
「アインスは本当に私たちが殺し合うと思っているのかな?」
「無理やりにでも、そうさせようとしているんじゃないかな」
史帆は真顔で言った。
「なんてやつだ……」
明は吐き捨てるようにして言った。
「やっぱり逃げよう。浜に行けば船が通るかもしれない。ここにいたって殺されるだけだ」
卓也の言葉には誰もうなずけなった。
「どうしたんだよ。この山小屋にはあいつがいるかもしれないんだぞ」
「ここから動くことには賛成できない」
京子が断言口調で言った。
「聞かなかったの?『逃がさない』って。森に入れば確実に殺される」
「ここにいたって同じだろ!」
卓也は興奮状態だった。
その後も四人は何も出来ずその場に座り込んでいた。
「部屋、確かめに行こうか」
明だった。
「いやだから、部屋にはあいつが――」
「わからないだろ!いなければ山小屋の中が一番安全になるかもしれない。ここにいてもし嵐でも来たらどうするよ。中が安全なら今はそれが一番じゃないか」
明の言葉に誰も何も言い返せなかった。
「行ってみよう」
史帆は立ち上がった。
「そうだね」
京子も立ち上がり、卓也も納得のいかない顔をしていたが立ち上がった。
階段を上り、玄関をゆっくりあけた。
念のため靴は履いたまま二階へと続く階段を上った。
「1」 の数字が付いた部屋の前に来た。
明がドアノブに手をかけ、勢いよく開けた。
少し中に入り、押入れを開けた。誰もいなかった。
こうして「4」番まで順に見て行ったが誰もいなく、残るは史帆が寝ていた「5」」番だけだ。
明は恐る恐る扉を開けた。史帆が使っていた掛け布団が落ちていること以外、他の部屋と特に変わったところはなかった。
そして開いたままの押入れに注目した。
「昨日も開いていたんだよな?」
荒れそうになる呼吸を抑えながら明が一番後ろの史帆に聞いた。
「うん」
「なら、異常なしか」
中は丸見えだったので特に物色したりはせずに部屋を出た。
扉を閉めて、一同はほっとした。
階段を降り、血だらけのソファから少し距離を置き明から時計回りに卓也、京子、史帆の順で座った。
すると、再びアインスの声が部屋に鳴り響いた。
明が半べそを書きながらそう言った。
卓也は、はっとして、
「水だ。昨日新しく出した水。あれを飲んで少ししたら眠気が来て……。あれにも睡眠薬が入っていたんだ」
史帆はカメラに向かって聞いた。
「あなたがやったの?」
返事はなかった。
「あいつに決まってる」
京子の顔はもうまともじゃなくなっていた。
「急いでここから出よう」
卓也と明、京子が立ち上がった瞬間、
「逃がしませんよ」
アインスの声がスピーカーから聞こえてきた。
「殺し合えと言いましたよね。昨夜、殺し合う気配は何もなかった。なので私が代わりにあなたたちがたまたま睡眠薬入りの水を飲んで寝た隙に、一人殺しておきました。良かったですね。自らが殺める人数が減って」
しばらく何も言い返せずにいた。
「もし、逃げたらどうなる」
明だった。
「私はこの島にはいません。泳いで帰れるのであればそうすればいい」
「今の聞いたか?」
明は小声で言った。
卓也も小声で「行こう」と言った。
「嘘に決まってる」
京子は首を横に振った。
「あいつが本当のことを言ったことがあった?睡眠薬も毒も、あいつがないって言うから少し安心して飲み食べしたんじゃない。それで二人も死んだんだよ。アインスは絶対この島にいる」
史帆はうなずいた。
「今日も殺し合わなければ誰か死ぬってのかよ?」
明は眉間に皺を作りながら言った。
「水を飲まなければいい」
京子は説得するように言った。
「どんな手を使って殺されるかなんてわからないだろ。とりあえずここからは出よう」
卓也は一人ひとりの顔を見て強い口調で言った。
京子と史帆は渋々納得し、山小屋からは出ることにした。
玄関を出て、階段を降りたところで止まった。
しばらくして京子が口を開いた。
「もしかして、由紀を殺した犯人って史帆じゃない?」
史帆の目をまっすぐに見てそう言った。
「違う。もしそうなら私に返り血がついていないとおかしい」
京子の疑いはまだ晴れない。
「裸で殺して、バスルームで洗えば血は消せるじゃない」
「じゃあバスルームが濡れているか確認してきたらいいじゃない」
そう言い切ると京子はうつむいて何も言い返してこなかった。
史帆は明と卓也に聞いた。
「昨日、全部屋見たんだよね?私が寝た「5」番の部屋は押入れが開きっぱなしだったんだけど、他の部屋からも掛け布団は取ったの?」
すると卓也が少し考えるようにして答えた。
「いや、掛け布団を取ったのは「3」の部屋までだ。一部屋二枚ずつ入っていたから、残りの部屋は扉を開けただけで中には入っていないし、電気もつけなかったから押入れが開いていることには気づかなかった」
史帆は鳥肌が立った。
もしかして、と明が言いかけたのを遮って京子が言った。
「そこにあいつが隠れていたんじゃない?明たちが行った後に押入れから出て、別の場所に逃げたとか……」
「確認する必要があるな」
明はそう言うと階段を上り始めた。
「待てよ」
卓也は明を呼び止めた。
「もし五つの部屋の内、どこかに今も隠れていたらどうする?殺されるぞ」
明は困ってような顔をした。
「とりあえず降りてこい。どうするか話し合おう」
明が戻ってきて、卓也が史帆を見て言った。
「史帆は、昨日部屋にいて物音がしたりしなかったか?」
「しなかったよ。私がすぐ寝ちゃったから気付かなかっただけかもしれないけど」
京子は怪訝そうな表情で言った。
「アインスは本当に私たちが殺し合うと思っているのかな?」
「無理やりにでも、そうさせようとしているんじゃないかな」
史帆は真顔で言った。
「なんてやつだ……」
明は吐き捨てるようにして言った。
「やっぱり逃げよう。浜に行けば船が通るかもしれない。ここにいたって殺されるだけだ」
卓也の言葉には誰もうなずけなった。
「どうしたんだよ。この山小屋にはあいつがいるかもしれないんだぞ」
「ここから動くことには賛成できない」
京子が断言口調で言った。
「聞かなかったの?『逃がさない』って。森に入れば確実に殺される」
「ここにいたって同じだろ!」
卓也は興奮状態だった。
その後も四人は何も出来ずその場に座り込んでいた。
「部屋、確かめに行こうか」
明だった。
「いやだから、部屋にはあいつが――」
「わからないだろ!いなければ山小屋の中が一番安全になるかもしれない。ここにいてもし嵐でも来たらどうするよ。中が安全なら今はそれが一番じゃないか」
明の言葉に誰も何も言い返せなかった。
「行ってみよう」
史帆は立ち上がった。
「そうだね」
京子も立ち上がり、卓也も納得のいかない顔をしていたが立ち上がった。
階段を上り、玄関をゆっくりあけた。
念のため靴は履いたまま二階へと続く階段を上った。
「1」 の数字が付いた部屋の前に来た。
明がドアノブに手をかけ、勢いよく開けた。
少し中に入り、押入れを開けた。誰もいなかった。
こうして「4」番まで順に見て行ったが誰もいなく、残るは史帆が寝ていた「5」」番だけだ。
明は恐る恐る扉を開けた。史帆が使っていた掛け布団が落ちていること以外、他の部屋と特に変わったところはなかった。
そして開いたままの押入れに注目した。
「昨日も開いていたんだよな?」
荒れそうになる呼吸を抑えながら明が一番後ろの史帆に聞いた。
「うん」
「なら、異常なしか」
中は丸見えだったので特に物色したりはせずに部屋を出た。
扉を閉めて、一同はほっとした。
階段を降り、血だらけのソファから少し距離を置き明から時計回りに卓也、京子、史帆の順で座った。
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