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メレニア・メイジ編
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ダイニングでの自分の振る舞いを思いだし、以前──15歳の自分との違和感を家族に持たれなかっただろうかと危惧し、それからプリシラは「はっ」と乾いた笑いを漏らした。
「家族が私の心配なんかするはずないじゃない」
プリシラは柔らかいベッドに仰向けに寝転びながら小さくため息をついた。
ちなみにメイドにはお茶を持ってくるように頼んだので部屋にはいない。
「……それにしても、時間が逆行したのは良いものの、まさかロザリーが引き取られる前日に巻き戻るなんて思いもしなかったわ」
プリシラはベッドの上で大きなため息をついた。
そして、再び虐げられる生活が始まるのかと思い、恐怖に震えた。
「あんな生活、もう懲り懲りよ」
プリシラは小さく呟いた。
「……」
けれど、プリシラは自分が虐げられる前の、しかも前日とはいえど、ロザリーと出会う前に時間が巻き戻ったことで、彼女の頭にはある考えが浮かんでいた。
それは──
「生まれてきたことを後悔させてやる」
復讐である。
(自分が周囲から虐げられ、火で炙られた時よりも更に苦痛な、殺してくれと相手が許しを乞うような、凄惨な方法で奴らに復讐してやる──。)
……プリシラが復讐を考えているのは義妹だけではない。
血の繋がった自分ではなく、義妹を信じた家族のことも、将来を誓い合った仲でありながら冤罪でプリシラを糾弾した元婚約者も、自分の取り巻きだった癖に急に手のひらを返し始めた元友人達も、公爵令嬢である自分のことを虐げてきたメイドも──全員許すつもりなどプリシラにはなかったのだ。
「全員地獄に落としてやる」
プリシラが独り、枕に顔を埋めながら呟いた。
(……そういえば、私が処刑された時もそんなようなこと言ったっけ)
前回の時間軸で、耐え難い激痛と憎悪に苛まれながらプリシラが言い放ったのは"全員地獄に落ちろ"という呪詛だった。
けれど、東洋にはこんな言葉がある。
「……呪いと祈りは紙一重」
プリシラはそう呟き、はっとして顔を上げた。
「……そうよ、きっと私の呪(いのり)いが神様に届いたんだわ」
プリシラはベッドの上でゲラゲラと笑った。
その姿は、前の時間軸で民衆が戦いた、火刑に処されたプリシラと瓜二つだった。
「ああ、神様。私に機会を授けてくれたんですね!私が奴らを地獄に落とす機会を!」
処刑されたはずの自分が、虐げられる前の時間軸に舞い戻る──
そんな有り得ない経験をして、プリシラには神が自分に復讐する機会を与えたとしか思えなかった。
「うふふ、楽しくなってきたわ」
プリシラはうっとりと微笑んだ。
その姿は復讐に身を焦がした女の姿とは思えない、慈愛に溢れた天女の笑みだった。
プリシラが恍惚の笑顔を浮かべるのは仕方がないことだろう。
彼女の頭の中では、義妹がプリシラの足元で許しを乞い、家族とメイドたちが自分の機嫌を伺ってビクビクと震える光景が再生されているのだから。
それにプリシラは、前回の時間軸で自分が処刑される日までを一度繰り返している──つまり3年後、自分が処刑される日までの未来がプリシラには分かっているのだ。
(貴女が三年もかけて私を甚振ってくれたみたいに、私も三年かけて貴女にそっくりそのまま……いえ、それ以上の苦痛を味合わせてお返しするわ)
プリシラはこれから先、生じるであろう未来に思いを馳せ、白い頬をさっと朱に染めた。
そして部屋の外に自分の声が漏れないよう口に枕を押し当てると、心底愉快そうに笑い続けた。
そしてその笑い声は、メイドが部屋の扉をノックするまで止まることはなかった。
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