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メレニア・メイジ編
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しおりを挟む「あら、お義姉様。偶然ですね」
「お義姉様。いつもお忙しそうですけど何をしてらっしゃるんですか?」
「お義姉様。私もメディチ家の一員として、役に立ちたいんです! 何か私にもできることはないでしょうか……」
(──しつこい)
最近、露骨にロザリーがプリシラに絡むようになってきた。
ただでさえ、自分が火刑にかけられる原因となった張本人の顔を見るだけでもキツいのに、こう四六時中絡まれては、はっきり言って身が持たない。
最近では兄とロザリーの仲が深まっているため、余計なことを口走らないよう注意しなければならないし、母の前で絡まれては、母の機嫌を損ねないよう、言葉選びに倍注意を払わなければならなかった。
それに、プリシラはヴァレリオとの文通が倍に増え──まあそれは、彼からプリシラを一方的に急かす内容の物が大半なのだが──、かつ母から譲り受けた家計簿も毎日つけなければならなかったため多忙を極め、これ以上の厄介事は、正直言うとごめん被りたかった。
だというのに、ロザリーは空気も読まずプリシラに絡んでくるし、ヴァレリオの文通は止まらない。
「……お前も大変ね。」
プリシラは、自分と叔父の間を絶え間無く行き交う一羽の文鳥に同情の視線を向ける。
プリシラの最近の癒しは、ヴァレリオとの文通のため教会から貸し出された、酷使されている一羽の文鳥であった。
体に鞭を打ちながら働く姿が自分と重なり、自分も頑張ろうという気になるのだ。
プリシラは調教を終えた文鳥を労るように撫でながら目を細め、それから大きなため息をついた。
そして、ロザリーがメディチ家に迎え入れられて、半年と少し経った頃
──事件が起こった。
▼▼▼
その日、プリシラは週末の慣習となった教会の礼拝に出掛けようと準備をしていた。
だが、その日はいつもと少し様子が違った。
プリシラの近くに、彼女の専属のメイドであるリリーの姿がどこにも見当たらないのだ。
まあそれは、プリシラがいつも自分のために頑張ってくれるリリーに、休暇を二日間与えていただけだったのだが……とにかくその日、プリシラは一人だったのだ。
もちろん、リリーがいないこの二日間、家の使用人を代理のメイドとして、プリシラの身の回りの世話をさせるように両親から提案された。
けれど当然、プリシラは断った。
一度目の人生で自分を虐げたメイドに世話をされたいと思う人間なんてこの世にいない。
両親に説得されたが、それでもプリシラは自分の意思を曲げなかった。
そして今、プリシラはその決断を少しだけ……いや、かなり後悔していた。
プリシラに突き刺さるのは、逆行前の自分が嫌というほど晒されてきた、懐疑と軽蔑の視線。
当時は毎日のように浴びせられる罵倒と侮蔑の眼差しに慣れてしまい、何も思う所はなかったが……半年という歳月は、どうやら人を狂わせるには十分らしい。
プリシラは、半年振りに晒されたその視線に、心の底から恐怖が沸き上がってくるのを感じた。
「もう一度言いなさい!」
母がメレニアに、今にも掴みかかろうとする勢いで、金切り声のような声音を上げる。
メレニアは、母の言葉にびくりと震えながら、私を指差し、前回の時間軸と全く同じ言葉を、一字一句、違わずに言い放つ。
「私……見たんです! プリシラ様がロザリー様を階段に落とす瞬間を!!」
そして、その言葉を皮切りに、仕事を放り出して集まったメディチ家の使用人たちの間に、ザワリと、喧騒が広がった。
プリシラが今佇んでいるその位置は、二階と一階を繋ぐ二階の階段の手前。
そして、メレニアが悲鳴を上げる少し前までは、一階の階段の先に、頭から血を流して気を失ったロザリーの姿があったのだ。
誰がどうみても、プリシラがロザリーを突き落としたのだろうと、そう考えるより他はなかった。
そしてプリシラは──
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