僕とシークレットボーイ

夏目きょん

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1.5章:魔法習得編

17話:エッセルさん！？

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陽向と男は部屋に帰ってきた。
陽向は疲れ切っていた。

「よぉ！陽向！お、その感じは逞しくなって帰ってきたな？」「お、おかえり！？」

トランプ片手に
期待のこもった声をあげる。

「あぁ。まぁな、しっかし、あれだな。この世界アンリアルにもトランプがあるのかぁ～」

微笑みながら敬太に返答する。

ごくごく当たり前の日常会話。

「いや、ないぞ？この世界アンリアルにはトランプはない。これは俺が持ってきたんだ。」

とぼけたような顔で言う。
当たり前かのように。

「ん、え？持ってきた？一回現実リアルに帰れたりするの？」

思いもしなかった返答に陽向も戸惑う。
しかし
現実リアルに帰れるかも。そう思うと少し、期待してしまう。

「いや、帰れないぞ？この世界アンリアルから帰るためには目的のクエストをクリアしなきゃ無理だ。」

当たり前だろ？と言わんばかりの顔で言い返す。

「ん、え？じゃあ、どう言う事？」

デジャブだ。
そんなことを思いながら聞いてみる。

「いや、普通にこの世界アンリアルに転移させられる時にトランプ持ってたんだよ。」

またしても、真顔で言い放つ。
陽向はつっこまずにはいられない。

「どう言う状況だよ！」

B級のツッコミが炸裂する。

しかし、

「ところでエッセルさん。こいつのでき、どうでした？」

またしても流されてしまう。

「こいつは、おぼ」

聞きなれない単語につい、口を挟む。

「まてまてまてまて、お前エッセルってこのおっさんの事を言うのか？」

指をさし、目を丸めて言う。

「お前、エッセルさんにその言い方は失礼だぞ。」

冷たい声で叱る。
お母さんとは程遠い声だ。

「敬語な」

ここでも引っかかってくる。
これがエッセルだ。

「ごめんな、おじ…エッセルさんよ」

いつものように、癖で言ってしまいそうになる。
しかし
今回は言い直す。

「うん、それでいい！おじさん嬉しいよ。」

まさかの展開だ。
エッセルが自虐に走る。

「自分で言ってんじゃねーかよ」

ここでもB級のツッコミが炸裂する。
だが、

「あぁ、話の続きだがこいつは覚えがいい！すぐ終わったからこいつのMPじゃ出来ない技まで教えちゃったよ！」

流される。
そしてエッセルは陽向を褒める。

「流石ですね、エッセルさん」

「お前先からエッセル…さんのこと凄く褒めてるけど、何かあったの？」

これはこの男、エッセルが現れてからの疑問だった。
なぜか、敬太はエッセルに恩義があるような口ぶりだ。

「エッセルさんには……」

敬太がその重々しい口を開こうとした時だ。

「ピピピピピピピ♪残り10分で受付終了、致します。」

受け付けのお姉さんの声だけが鳴り響く。
その音は敬太の過去を語らせようとはしないようだった。

「すまない、この話はまた今度にしよう。今はそれより受付だ。」

そう言い敬太は、小走りで受け付けへ行く。

「あぁ、そうだな。」

納得はしないが、タイミングが悪かった。そう自分に言い聞かせる。
そのための返事だった。

「そんじゃ頑張ってこい！俺は別でやらせてもらうからな！」

エッセルはそう言うと手を天にかかげた。

「ありがとよ！エッセルさん」「ありがとうございました。」

エッセルはお礼を言われると、魔法マジックを使い
瞬間移動で消えていった。
手を天にかかげたのは魔法マジックを使う為の前振りだろう。と認識している。

「いらっしゃいませ。何人での登録に致しましょうか？」

心なしか、お姉さんになにか変化が起きてるようにも感じていたが、陽向は黙っていた。

「俺、陽向、ミクこの3人で頼む。」

「了解致しました。クエストは何に致しましょうか？」

「クエスト難易度★2だ」

「了解致しました。それではいってらっしゃいませ。3.2.1。」

お姉さんがそう言うと、クエストのフェールドに転送された。
そこはこの前とは変わらない場所だった。

「制限時間はなし。盗賊トッタラ一家を退治せよ。」

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