俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~

草乃葉オウル ◆ 書籍発売中

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第2章

第19話 勢揃いで草

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 それからしばらくして、すべての参加希望者の自己アピールが終わった。
 最後のメンバーはトラブルなく選ばれ、ここにバイパーバレー温泉同行隊が正式に結成された。
 不採用になった人たちはトボトボとお花畑から去っていく。

「今日はアタシのために集まってくれてありがと~う! また機会があればよろしくお願いしま~す!」

 ローウェが集まってくれた人間全員に感謝の言葉をかける。
 もちろん、不採用だった人たちにも言葉をかけ門の外まで見送った。

「しゃべり方が強烈だからわかりにくいけど、かなり人間出来てる町長さんよね」

「ああ、人の上に立つ人間のかがみだ。俺の父さんに見せてやりたいよ」

 その後、ウォルトとフロル……そしてもう一人の採用者は町長の邸宅の中へ招かれた。
 庭をお花畑にするだけあって、邸宅の中にも至る所に花が飾られている。
 壁に貼られた絵画すらも花が描かれている物ばかりだ。

「家の中までお花畑とは恐れ入りますねぇ」

 そうつぶやいたのは最後の採用者……奇術師のマジナ・イリュジニアだった。
 彼はフロルに完全敗北した後、再び立ち上がってローウェの前でアピールし、その不屈の精神と優秀なギフトによって採用を勝ち取ったのだ。

「まさか、あなたが選ばれるとは思わなかったな。そんな使い勝手のいいギフトでやることがさすらいのマジシャンとはねぇ。まあ、人の生き方をとやかく言わないけど」

 フロルがマジナをじとーっとにらみながら話しかける。

「ふふふ、そう呆れないでください。私の【念動術】は念じるだけでものを動かせはしますが、その実……あまりにも非力なのです。カードを動かすくらいなら涼しい顔で出来ますが、人を一人持ち上げようと思えば歯を食いしばって見るにえないくらい顔をゆがめて踏ん張ってやっとなのです」

「なら、踏ん張って頑張ればいいじゃん」

「嫌です。カッコ悪いところを人に見せたくない」

「さっき見せたばっかりじゃん」

「あ……ぐううぅぅぅぅぅぅっ!!」

 フロルに完全敗北したことを思い出したマジナは、膝から崩れ落ちて四つん這いの姿勢になる。
 彼の心はガラスのように脆い……。

「まただよ、フロル。割れ物を扱うようにしてあげなくっちゃ」

「私がそこまでしてあげる義理はないし! それにすぐ立ち直るじゃない」

「わ、私はカッコ悪くない……!」

 言ってるそばからマジナは立ち上がった。
 彼の心はガラスのように脆いが、雑草のように踏まれても伸び続ける。
 なので、ウォルトは案外マジナのことを気に入っていた。

(雑草のような心の強さ……見習いたいものだな)

「ほ~ら! 早くこっちにいらっしゃ~い!」

 ローウェがある部屋の扉の前からウォルトたちに呼びかける。

「これから他の同行隊のメンバーと一緒に作戦会議に出てもらいま~す! さあ、この会議室に入って入って!」

 言われるがまま、ウォルトたちは部屋の中に入る。

 広い広い部屋の中には大きな円形のテーブル――円卓えんたくが置かれ、それを囲むように8人のメンバーが着席していた。

「あらあら~! 急遽11人になったからイスが足りてないじゃな~い! アタシ取って来るから待っててねぇ~!」

 ローウェがバタバタと会議室を後にする。
 これで部屋の中には集められた同行隊メンバーのみになった。

「まさか、10人だった枠を11人にしちまうとは……なかなかヤンキーな姉ちゃんだな! 気の強い女の子は嫌いじゃないぜ!」

 話しかけて来たのは円卓に座った一人の黒髪の少年。
 小柄な体で扱えるとは思えない大弓を背負っている。

(弓を背負ったまま椅子に座ってて草)

 ウォルトが気になったのはその部分だった。
 だが、それに突っ込むような野暮なことはしない。

「俺たち全員、姉ちゃんたちのアピールタイムを見てたんだぜ。この会議室から出て、庭が見える廊下の窓からな。いやぁ、なかなか楽しい時間だったよ! 特に姉ちゃんがマジシャンみたいな奴をボコボコに返り討ちにした時は……」

「ぐううぅぅぅぅぅぅっ!!」

 マジナがまた膝から崩れ落ちる。
 この話題が出るたびに、彼は絶対にこの反応をし続けるだろう。

「あ、ごめんごめん! コテンパンにやられたマジシャンの兄貴も採用されてたんだったな」

「ぐううぅぅぅぅぅぅっ!!」

「でも、マジシャンの兄貴……略してマジ兄貴の最後のアピールすごかったなぁ! マジシャンとしての維持を感じたよ!」

「そうだろう? カッコよかっただろう?」

 称賛の言葉を聞いてマジナは即座に立ち上がった。

((今度から崩れ落ちたらこの手を使うか……))

 ウォルトとフロルは同じことを思った。

「ごっめ~ん! イス持って来たからこれに座って!」

「ありがとうございます」

 ウォルトは椅子を受け取り、円卓の間スペースに着席する。
 左隣にはフロル、右隣には上機嫌のマジナが座った。

「それではこれからバイパーバレー温泉同行隊を結成した理由から最終目標までを話すわよっ!」

 部屋の壁に取り付けられた黒板の前にローウェが立つ。

「まず私が体調不良を治すために湯治とうじを望んでいると募集チラシには書いたけど、その体調不良とは具体的に……腰痛なのよ」

 それはそれは深刻にローウェは言った。

「全然治らないのよ! もう3年以上痛いままなのよっ! 今は相性のいい痛み止めを見つけてごまかしているけど、それでも悪い日には動く気もなくなるくらい痛いのよォォォォォォ!!」

 鬼気迫る言葉の数々に、集まった同行隊のメンバーは絶句するしかなかった。
 これは本当につらい奴だ……と、ウォルトも流石に草を生やせない。

 だが、ウォルトとフロルには一つのひらめきがあった。
 単純な腰痛ならば、ウォルトが持つ薬草の力で治せてしまうのではないかと……。

 しかし、ここで治せてしまうと温泉同行隊は結成直後に解散。
 当然バイパーバレーに向かうこともなくなるだろう。

 自分たちの旅の目的か、それとも目の前の人の幸せか――
 ウォルトとフロルは腰痛に苦しむローウェを見つめ……答えを出した。

「ちょっと腰の様子を見させてもらえますか?」

 スッと手を上げ、ウォルトは発言した。
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