イカロスの探求者

多田羅 和成

文字の大きさ
8 / 20

イグニスの邂逅8

しおりを挟む
「なぁ、太陽探しに行こう」

「えっ! な、なに言ってるのルフ!」

「オレは行く場所がないから構わんぞ」

「アンタは黙ってなさいよ!」

 ルフの突然の提案に声を荒げるベルに対して、アランが肯定するものだからベルはアランを軽く叩いたのちにルフと向き合う。

「太陽があるかも分からないのよ? この広い世界を彷徨って見つからない可能性の方が高いのよ? 村にいた方が安全よ」

「確かに生涯賭けても見つからないかもしれない。村にいた方が安全だと思う。でも、俺の心が叫んでいるんだ! この未知の恒星を見つけたい。探求したいって。勿論、ベルが嫌なら来なくていい。ただ俺は行く」

真っすぐで壁に照らされた空の映像のように迷いなく見つめるルフの瞳に、ベルは心を揺さぶられた。もしも、この世界に太陽があれば果てしない闇に怯えずに済むだろう。この光景を知るのは自分達と神の使者だけだ。ベルは自分の手をぎゅっと力強く握りしめた。

「分かったわよ! 止めはしないわ。ただし、アタイも連れて行きなさい! アンタ達だけじゃ直ぐに危険な目に合うだろうし、ルフは文字書けないからね」

「ありがとうベル!」

「お、幼馴染として当然だわ」

 嬉しさのあまりルフがベルを抱きしめると、ベルは顔を赤くして幼馴染だからと繰り返す。そんな光景を見た後、アランは神の箱に近づくとケラー教が使っている文字が書かれていることに気がづく。

「アポストルス?」

 何故イグニス教で使われている神の箱にケラー教が使う文字が使われているのか。まさかケラー教にも神の箱は関わりがあるのかと考えているとルフから呼びかけられた。

「もうそろそろ行こう。ベルがバレたらまずいって言ってる」

「あっ、あぁ、そうだな。行こう」

 疑問は一時置いておき、出口に向かってく。その三人を見送る神の使者は優しく微笑みながら手を振っていた。

「いってらっしゃいませ。マニュス族の方々」

 神の使者が目を閉じると映像も途絶えた。誰もいなくなった空間では確実に歯車が廻り始めていた。

「で、これから何処向いていくのよ」

「とりあえず北向いていかない?」

「そうだな。どうせ先は長いし」

 こうしてルフ、アラン、ベルは果てしない夜の世界で未知の恒星太陽を探す旅に出た。三人の未来に待ち受けるのは希望の太陽か。それとも暗く閉ざされた絶望か。それは神すらも知らない物語である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...