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第1部 第2章
ただの英雄で収まってくれるのであればな
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自分の館に戻ったアルベルトは自分の執務室に自分の側近を集める。
「エミリア、御前会議の招集状況は?」
「現在、軍務省で将軍や提督、一部諸侯が集まり話し合いを行っているようですが、御前会議に出席するとの事。内務省や外務省も似たような動きが見られてます。」
エミリアの言葉にアルベルトは頷く。
「成程。重臣らもそれぞれの意見を纏めているであろうが、我らも意見を纏めておきたい。状況はそれぞれ解っていると思うが、エミリア、現在解っている状況の説明を……」
「はっ。」
エミリアはアルベルトに一礼した後、説明を始める。
「フリーランスに潜伏している諜者(スパイ)より本日明朝報告が入りました。今月10日より国軍、諸侯軍の動員及び傭兵の募兵を開始し、ルエヌに武具や兵糧等の軍需物資の集積を開始しているとの事。そして、デーン王国のオレンボー辺境伯領でも軍の動員を確認。デーン王国のそれ以外の地域、及び他の旧フラリン王国同盟国から報告は上がっておらず、現在確認作業を進めております。」
軍の動員とは国軍や諸侯が戦場に連れて行く将校や常備兵を選抜し、さらに自領で大規模に徴兵を進めたり、武具や当面の兵糧を自前で用意しなければならない。そのため、軍隊を招集し、編成するのはそれなりの手間と時間がかかる。そして、その兆候が見られれば隣国も戦争準備を整えるため、ナーロッパの歴史上、戦術上の奇襲の成功例は多くあるが戦略レベルでの奇襲を成功させた例は2つしかない。
「ルエヌに軍需物資の集積を始めた以上フリーランス王国が我が国に対し野心をもっている事は明白です。こちらも軍を動員し迎撃せざるを得ませんが、問題はデーン王国の動きと他の旧フラリン王国同盟国の動きかと……場合によっては帝国に援軍を要請する事も考える必要があると愚考致します。」
と発言したのはジェネラル・ホーセンであった。
ホーセン家はリューベック王都の近くに小さな領地を持つ男爵家である。アルベルトが王太子になる前からアルベルトに接近し、アルベルトの信用を勝ち取り、アルベルトの立太子後当主は近衛隊副隊長に抜擢され、息子のジェネラルもアルベルトの側近として侍従に抜擢される等現状勝ち馬に乗れている家である。
「確かに。現状デーン王国が動くならば2正面作戦になりますし、旧フラリン同盟諸国が全て兵を動かせば3万以上の兵力となります。そうなってくると少々帝国との同盟交渉が不利になったとしても帝国の援軍は必要になるかと……」
と側近の一人が口にする。
アルベルトとアリシアが結婚したとて、現在リューベック王国とロアーヌ帝国は同盟条約交渉中であり、現状帝国にはリューベックを支援する義務はない。
しかし、ロアーヌ帝国も伊達や酔狂でなく、ちゃんとした戦略的目的があって、それを達成するための手段として同盟を申し出てきており、帝国にとって交渉中にリューベックに貸しを作る事は目的達成のため近道とすら言える。
リューベック王国が援軍要請を出せば帝国が軍を出してくれる可能性は極めて高い。
「成程。しかし、旧フラリン同盟諸国6カ国が一斉に軍を動かす事はありえるのか?」
とアルベルトが口にする。
「どういう事でありますか?」
と側近の一人が尋ね、エミリア以外の側近が同意するように頷く。
ちなみにエミリアは興味深そうにアルベルトに視線を向けていた。
アルベルトは苦笑を浮かべながら
「良く考えて見よ。まだフラリン王国が崩壊して2ヵ月ぐらいしかたっていないのだぞ。」
と続ける。
この言葉で側近らもはっと気づく。旧フラリン同盟諸国がこの時期に一斉に軍事行動を起こす可能性が極めて低い事に……
「成程。しかし、デーン王国の方はどういたしますか?」
「現状デーン王国王宮は第1王子派と第2王子派の次期王位争いの真っ最中だ。他国に大きく侵攻する余裕はないだろう。万が一どちらかの派閥が侵攻を考えていたとしてももう一方の派閥を買収し牽制すれば良い。」
アルベルトは一息ついて
「である以上オレンボー辺境伯との取引すれば良い。ユクド半島南部は数年飢饉が続いており、穀物を大量に出せばそちらは無力化も容易かろう。」
と続ける。
これを聞いたエミリア以外の側近らは
「確かに」
「流石殿下。私にはこのような事は考えつきませんでした。」
「リューベック王国は今後も安泰ですな」
と絶賛した。
(ほぼアリシアの受け売りなんだけどね)
と内心苦笑を浮かべながら、それを面に出す事はなかった。
☆☆☆☆☆
リューベック王の寝室。
アリシアの退室後、リューベック王の侍従長が
「アリシア王太子妃殿下は聡明と王太子殿下もおっしゃておられましたが、それは本当でしたね。これでリューベック王国もナガコト王家も安泰ですな。」
と声をかけるとリューベック王の表情が険しくなり
「ただの英雄で収まってくれるのであればな。」
と続ける。
「どういう事ですか?」
と侍従長は尋ねるがブディブォイ王は黙ってただドアの方を見つめるだけであった。
「エミリア、御前会議の招集状況は?」
「現在、軍務省で将軍や提督、一部諸侯が集まり話し合いを行っているようですが、御前会議に出席するとの事。内務省や外務省も似たような動きが見られてます。」
エミリアの言葉にアルベルトは頷く。
「成程。重臣らもそれぞれの意見を纏めているであろうが、我らも意見を纏めておきたい。状況はそれぞれ解っていると思うが、エミリア、現在解っている状況の説明を……」
「はっ。」
エミリアはアルベルトに一礼した後、説明を始める。
「フリーランスに潜伏している諜者(スパイ)より本日明朝報告が入りました。今月10日より国軍、諸侯軍の動員及び傭兵の募兵を開始し、ルエヌに武具や兵糧等の軍需物資の集積を開始しているとの事。そして、デーン王国のオレンボー辺境伯領でも軍の動員を確認。デーン王国のそれ以外の地域、及び他の旧フラリン王国同盟国から報告は上がっておらず、現在確認作業を進めております。」
軍の動員とは国軍や諸侯が戦場に連れて行く将校や常備兵を選抜し、さらに自領で大規模に徴兵を進めたり、武具や当面の兵糧を自前で用意しなければならない。そのため、軍隊を招集し、編成するのはそれなりの手間と時間がかかる。そして、その兆候が見られれば隣国も戦争準備を整えるため、ナーロッパの歴史上、戦術上の奇襲の成功例は多くあるが戦略レベルでの奇襲を成功させた例は2つしかない。
「ルエヌに軍需物資の集積を始めた以上フリーランス王国が我が国に対し野心をもっている事は明白です。こちらも軍を動員し迎撃せざるを得ませんが、問題はデーン王国の動きと他の旧フラリン王国同盟国の動きかと……場合によっては帝国に援軍を要請する事も考える必要があると愚考致します。」
と発言したのはジェネラル・ホーセンであった。
ホーセン家はリューベック王都の近くに小さな領地を持つ男爵家である。アルベルトが王太子になる前からアルベルトに接近し、アルベルトの信用を勝ち取り、アルベルトの立太子後当主は近衛隊副隊長に抜擢され、息子のジェネラルもアルベルトの側近として侍従に抜擢される等現状勝ち馬に乗れている家である。
「確かに。現状デーン王国が動くならば2正面作戦になりますし、旧フラリン同盟諸国が全て兵を動かせば3万以上の兵力となります。そうなってくると少々帝国との同盟交渉が不利になったとしても帝国の援軍は必要になるかと……」
と側近の一人が口にする。
アルベルトとアリシアが結婚したとて、現在リューベック王国とロアーヌ帝国は同盟条約交渉中であり、現状帝国にはリューベックを支援する義務はない。
しかし、ロアーヌ帝国も伊達や酔狂でなく、ちゃんとした戦略的目的があって、それを達成するための手段として同盟を申し出てきており、帝国にとって交渉中にリューベックに貸しを作る事は目的達成のため近道とすら言える。
リューベック王国が援軍要請を出せば帝国が軍を出してくれる可能性は極めて高い。
「成程。しかし、旧フラリン同盟諸国6カ国が一斉に軍を動かす事はありえるのか?」
とアルベルトが口にする。
「どういう事でありますか?」
と側近の一人が尋ね、エミリア以外の側近が同意するように頷く。
ちなみにエミリアは興味深そうにアルベルトに視線を向けていた。
アルベルトは苦笑を浮かべながら
「良く考えて見よ。まだフラリン王国が崩壊して2ヵ月ぐらいしかたっていないのだぞ。」
と続ける。
この言葉で側近らもはっと気づく。旧フラリン同盟諸国がこの時期に一斉に軍事行動を起こす可能性が極めて低い事に……
「成程。しかし、デーン王国の方はどういたしますか?」
「現状デーン王国王宮は第1王子派と第2王子派の次期王位争いの真っ最中だ。他国に大きく侵攻する余裕はないだろう。万が一どちらかの派閥が侵攻を考えていたとしてももう一方の派閥を買収し牽制すれば良い。」
アルベルトは一息ついて
「である以上オレンボー辺境伯との取引すれば良い。ユクド半島南部は数年飢饉が続いており、穀物を大量に出せばそちらは無力化も容易かろう。」
と続ける。
これを聞いたエミリア以外の側近らは
「確かに」
「流石殿下。私にはこのような事は考えつきませんでした。」
「リューベック王国は今後も安泰ですな」
と絶賛した。
(ほぼアリシアの受け売りなんだけどね)
と内心苦笑を浮かべながら、それを面に出す事はなかった。
☆☆☆☆☆
リューベック王の寝室。
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「アリシア王太子妃殿下は聡明と王太子殿下もおっしゃておられましたが、それは本当でしたね。これでリューベック王国もナガコト王家も安泰ですな。」
と声をかけるとリューベック王の表情が険しくなり
「ただの英雄で収まってくれるのであればな。」
と続ける。
「どういう事ですか?」
と侍従長は尋ねるがブディブォイ王は黙ってただドアの方を見つめるだけであった。
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