平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ

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第1部 第2章

王都で書類仕事ばかりで戦場に出ない臆病者に戦を解れと言うのが無理でしょうが……(下)

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「何でしょうか?外務卿」

 外務卿ラーゼン候は立ち上がりアルベルトに一礼した後
「まず、フラリン王国がアストゥリウ王国に敗北して2ヵ月ぐらいしかたっていない以上フラリン王国旧同盟諸国が一斉に軍事行動を起こすのはあり得ないと思われます。6カ国が意思統一するのは2ヵ月ではほぼ不可能ですから。」
 外務卿は一息ついて続ける。
「また、現状デーン王国は第1王子派と第2王子派が次期王の座を巡って激しく争っており、デーン王国が我が国に侵攻する余裕があるとは思えません。よってこの段階でロアーヌ帝国やナビア王国に支援を要請するのはいかがなものかと……」

「成程。外務省から見ればそう考えられるのかも知れませんが、軍部からすると最悪な事態を想定して対応を考えておかねばなりません。」
 軍務卿が反論し、

「その通りです。軍を動員するのは時間がかかります。それは帝国やナビア王国も同様です。それを考えれば最悪の状況を想定し準備をするべきです。」
 とレッフラー将軍が珍しく軍務卿に同意する。

「しかし、ロアーヌ帝国とは同盟交渉中です。ここで大きな借りをつくるのは交渉で不利になると考えられますし、そもそも条約が締結されていない状況で我が国を助けてくれるのかと言う問題もあります。外務卿はどうお考えですか?」
 と内務卿が外務卿に尋ねると
「恐らくですがロアーヌ帝国はこちらから要請を出せば大規模な援軍を出してくれるかと思います。ただ、内務卿のご指摘通り帝国に借りを作る形になりますから、一般論を申し上げれば同盟交渉はかなり不利になるでしょう。」
 と答える。
「成程。陸軍の主張通りに行くと外交上不利になる可能性が高いと言う事ですね。通商条約等で不利になる事は内政、財務等を司る内務省としましても慎重な対応を求めざるを得ませんな。」

 それを聞いた軍務卿は目を険しくしながら
「具体的に内務省はどのような対応を求められているのでしょうか?」
 と尋ねながらも心の中で
(この緊急時に自分達の利権防衛を企みよって)
 と舌打ちする。
 リューベック王国は海上の治安維持は海軍が指揮し担当しているが、陸については内務省の管理下であった。普段は衛兵は内務省の指揮下で動き、戦時の際には衛兵を陸軍と協議して、供出する事になっていた。
 しかし、陸軍主流派は戦時の際困るとして平時でも軍が治安維持を担当する代わりに衛兵の指揮権を完全に陸軍に寄越せと言ってきているのである。
 しかし、内務省もはい、そうですかと譲る訳には行かない。
 取り締まりの権限は商人達から賄賂を受けとれると言う美味しい権限でもあるのだから。
 そのため、陸軍主流派将校と内務省が激しく対立しており、陸軍を牽制するため外務卿側を支持するような発言と軍務卿は思ったのだ。

「内務省としては情報の確認が終えるまではロアーヌ帝国やナビア王国に支援要請を出すのは反対ですな。」

「しかし、帝国やナビア王国への支援要請が遅れればその分軍の動員も遅れる事となります。万が一の事態になれば国家存亡の危機に陥る事になりますぞ。」
 とレッフラー将軍が反論するが
「外務省としても内務卿に同意します。軍の動員を進めながら迎撃の準備を整えつつ、情報が揃ってから他国に支援要請を出すのか、出さないのか、それを判断すれば良いでしょう」
 と外務卿も内務卿に同意する発言する。

「それでは間に合わない可能性があると言っているのです。まあ、王都で書類仕事ばかりで戦場に出ない臆病者に戦を解れと言うのが無理でしょうが……」
 軍部からの侮蔑的発言に内務卿や外務卿は表面上は流したが内務省や外務省の官僚が反応し
「無礼な!」
「陸軍こそ、近年たいした武勲をたてておらぬではないか!」
 と顔を赤くして反論する。
 不味いとアルベルトは思った。

 感情的な反発が反発を生む流れになってきておりアルベルトとしてはこれを断ち切りたいが、摂政が迂闊に割って入ると、この後まともに議論ができなくなる恐れがある。

 アルベルトが迷っていると、それまで沈黙を守っていたアイザック・ロブェネル将軍が口を開いた。
「サンドラッグ卿とマッシュ卿が失礼した。少々熱くなっているようだ。」
「ロブェネル将軍閣下……」
 内務卿や外務卿にかみついていた上級将校も流石にこの老将には頭が上がらない。

 アイザックが謝罪した後
「ただ、軍部としては最悪な事態を想定して動かねばならぬ事も理解して欲しい。」
 と謝罪した。
 その後、微妙な空気が流れる中アルベルトは
「一旦休憩としよう。落ち着く時間も必要だろうしな」
 と続けた。









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