平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ

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第1部 第2章

オレンボー辺境伯領

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 オレンボー辺境伯領主都シュレースに奇妙な使者が現れたのは、ナーロッパ歴1056年11月17日10時、小雨が降っていた日だった。
 編成した軍を、フリーランス王国軍の侵攻に合わせてリューベック王国へ近隣諸侯の軍とともに略奪に向かわせる予定だったが、その使者は今から襲おうとしているリューベック王国から来たのだと言う。

「アマンダお嬢様、どういたしましょう?」
 文官達は困惑して、アマンダに尋ねている。
 アマンダの父オレンボー辺境伯は、現在、近隣諸侯とともにリューベック王国の略奪の件でハールス子爵領で最終協議中である。
 領主不在であるとは言え、使者を放置する訳にはいかないとアマンダは判断し
「私が会おう。使者を応接室にお通しせよ。」
 と命じた。

 ☆☆☆☆☆☆☆

「わたしはエイノ・オレンボー辺境伯が長女、アマンダです。遠路はるばるよくお越しくださいました。それで、どういったご用件でしょう?」

 使者は失礼ながらと辺境伯は不在なのかと尋ねてきた。

「父オレンボー辺境伯は現在所用で席を外しておりまして、代わりにわたしが応対いたします。こちらに政務を担当しております文官らも控えておりますので、ある程度の事なら問題ありません。」

 さっさと用件を言って欲しいとアマンダは内心思ったが、顔には出さない。この使者も自分の仕事を果たしているだけなのだから。
 そういうことならば、と彼は小さな鞄から書簡を取り出した。
 正式な装丁がされていた。

「こちらはリューベック王国摂政アルベルト殿下から辺境伯閣下への親書にございます。お受け取りください。」
「リューベック王国の摂政が何故……いや、失礼しました。」
 アマンダが頭を下げた後、文官が書簡を受け取り、アマンダに渡す。

「確かに受け取りました。しかし、申し訳ありませんが父が帰るのは早くとも明日となっております」
 アマンダの言葉にリューベックの使者は頷く。
「私自身はあくまでも親書を急ぎ届けるように命じられた先触れに過ぎません。全権を委任された正使および使節団が現在こちらに向かっており、道中に問題なければ3日ほどで参る予定です。委細についてはそれからの話になるかと存じます。」

 その後、使者は別れの挨拶を済ませて応接室を去った。アマンダは即時に父の元に急使を送った。


 ☆☆☆☆☆☆

 翌日の15時にオレンボー辺境伯は自分の館に帰還した。アマンダからアルベルトの親書を受け取り、素早く目を通す。
 書簡を読み終わったオレンボー辺境伯は有難いと一言呟いた。
「どうしたのです? 父上。」
 アマンダは驚いたようにオレンボー辺境伯に尋ねる。
 するとオレンボー辺境伯は娘に書簡を渡す。
 アマンダはそれを目を通す。
 最初は外交儀礼に則った挨拶だが、その後の内容は外交文書とは思えないぐらいに分かりやすいものだった。
 親書の内容は大きく二つ。一つは食料の無償提供。量は穀物5万プントで、かつ、すでに輸送を開始しているとのこと。一週間もあれば到着するだろう。いま一つは傭兵契約。辺境伯軍をフリーランス王国戦に備えて雇いたいとの事。報酬は千の兵力につき10万プントで、さらに戦場での働きに応じて追加報酬も出すとのこと。
 3千の兵力を提供すればオレンボー辺境伯領も近隣諸侯も当面は凌げる量だ。

「アマンダ、そなた兵を率いて行ってくれるか?」
 父に言われ、アマンダは嬉しそうに頷く。
「喜んで。略奪に行くよりははるかにマシですしね。」

「では父上。此度の戦のために備蓄している糧食を全て開放してきます。」

「分かった。とりあえず、一週間凌げば何とかなるからな。」
 父の許しを得たアマンダは一礼して軍の宿営地に向かった。


 ☆☆☆☆☆☆

 アマンダは編成が終了している軍の宿営地に到着した。

 兵士は痩せこけてまともに戦えそうにない。彼らは侵略すれば食糧を得られると信じているからこそ、何とか耐えている状況だ。
 すぐに指揮官が姿を現す。オレンボー家の家臣の一人である。

「お嬢様、いかがされました?」

 アマンダはリューベック王国からの使者が来たことを掻い摘んで説明した。そして、食糧支援が受けられる事も。

「助かりましたな……此度は仕方がないとは言えリスクが高かったからですから。これだけの兵を出すだけでこんなに食糧支援を受けられるならとても有難い……」

 この指揮官の言う通り、これだけの戦力供出でこんなに食糧支援を受けられるならとても有難い。

「しかし……お嬢様も向かうというのは。」

「わたしも戦地に向かう程度で領民が救われるのならば安い物。それにこれは父上の命でもある。私が指揮を執るのは不安か?」

「そのような事は……」
 指揮官の男は首を横に振って否定する。

「それはまあ良い。兵には一週間ほどで食糧が届くと伝えておけ。餓死者も出ているのだろう? 今残っている食糧を全て消費しても構わんから、なんとしてでも食糧が届くまでに死者を出さず、兵達も十分に戦えるようにしておいてくれ」

「御意!」
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