平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ

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第1部 第2章

小国の平凡な王太子、美人の選帝公令嬢に尋ねられる。(下)

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「だから、教皇庁から破門されると教会との関係が破壊されるリスクがあるという話ではないのですか?」
 教会の中枢が教皇庁である以上、教皇庁の破門は教会が破門したのと変わらないのではないか?と言うのがアルベルトの疑問であった。

「ええ。現状では教皇庁による破門は教会との絶縁を意味します。しかし、例えば自国の教会を教皇庁から切り離し、その教会に引きつづき自分がテンプレ教信者であると認めさせたらどうなりますか?」

 アリシアが言った通りだと完全に破門されたとは言えない。しかし、教会を分離させた時点で教皇庁は黙っていない。確実に戦争となるだろう。だが、簒奪王が教皇庁と戦いを望んでいれば教皇に破門される事を障害と考えないというのはアルベルトも筋が通っているとしか言い様がなかった。しかし、このアリシアが言った策には二つ程問題があり、アルベルトは指摘していく。

「しかし、果たして都合良く教皇庁から独立しようとする教会は現れるでしょうか?」
 今までテンプレ教会の中枢を担ってきた教皇庁から独立しようとする神官がそう簡単に出るとはアルベルトには思えなかった。

「殿下のおっしゃる事はわかります。しかし……」
 そう言いながらもアリシアの人形のように整った美しい顔には自信があふれている。
「例えばアストゥリウの高位神官達が王位を簒奪したフェリオル王の意向に逆らえましょうか? またテンプレ教の神官たちが教皇庁に忠実なのであれば、ナロテン派、ブス派、チーレム派、カルバン等の異端諸派が誕生していないでしょう」
 ちがいますか? とアリシアは目でアルベルトに目で訴える。
 
 確かに父や兄を討ってまで王位を奪った簒奪王に、アストゥリウの高位神官全員が足並みを揃えて逆らえるとはアルベルトにも思えなかった。
 あくまでも従わぬ強硬派がいたとしても、簒奪王の武威をもってすれば、相当数の神官を確保できるだろう。そもそも神官全員が教皇庁に忠実なら、テンプレ教異端諸派は誕生していないのである。

「確かに簒奪王の圧力に逆らえるアストゥリウ神官ばかりだと思えませんし、可能性はあるでしょうけれども、しかし……」
 アルベルトは一旦言葉を区切り、アリシアの顔に目を向ける。
 アリシアの表情は変わらず、自信にあふれた微笑を浮かべている。

「しかし、これは簒奪王にとって賭けになりますよ。もし、神姫の名を用いて破門されればその策は破綻する。神姫の名を教皇が用いる可能性は低いですが、万が一神姫の名で破門されれば簒奪王が破滅する事は避けられません。フラリンという豊かな国土を得た今、そんな危ない賭けをするとは思えませんが……」
 神姫の名で出せば効果的だ。どんな高位神官も表面上は神の子とされる神姫の言葉を否定はできないのだから。
 しかし、それをすれば教皇の権威に傷がつく。神姫は俗世に関わらない。神姫の代わりに俗世を司るのが教皇なのだから、効果的と分かっていても神姫の名で宣言は中々出せない。異端勢力や異教徒の討伐も教皇の名で行われているのはそのためである。それを簒奪王にやってしまえば教皇庁の権威は失墜し、今後テンプレ教の中枢でいられる事は難しくなる。要するに神姫の号令は簒奪王にとって破滅だが、教皇庁にとってもそれに近い。「万が一」とアルベルトは前置きしたが、正直、それより低いのではないかと彼も思っている。

「私でもこの状況でそんな大きな賭けには出ません。しかし、フェリオル王は恐らくそれに乗るでしょう。見返りも大きいですから。恐らくフェリオル王が興味があるのはナーロッパの覇権であり、アストゥリウ王国はかの王にとってそれを得るための道具に過ぎないのだと思っています」
 アリシアは一息ついて微笑を浮かべて続ける
「まあ、あくまでも今述べた事は私の想像です。しかし……」

「半年もかからず、結果は出る。そういうことですか」
 途中でアリシアの言葉を遮ってアルベルトが続けると、選帝公令嬢は頷いた。

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