稀代の英雄に求婚された少年が、嫌われたくなくて逃げ出すけどすぐ捕まる話

こぶじ

文字の大きさ
55 / 83

夢じゃない1

しおりを挟む
 すごく、気持ちいい夢を見ていた。

 肌当たりがいいとか、居心地がいいとか、そういう気持ちがいいじゃなくて、もう単刀直入にえっちなやつだ。
 男か女かもわからない相手に、最初は性器をこすられた。それだけでも十分気持ちよかったけど、その後なぜだかわからないが、性器を舐められたり口の奥まで咥えられたりした。そんなところ口に入れさせたらダメなのに、すごく気持ちよくていっぱい恥ずかしい声を出してしまった。
 その人の口の中で射精して、すごく申し訳ない気持ちになっていたら、今度は尻の穴をしっとり濡れた指でつつかれた。そここそ絶対ダメだってわかっているのに、時折舌を入れられて、背徳感で性器を舐められた時よりもっともっと気持ちよかった。
 もう二回も射精してつらくて仕方なかったが、まだ尻の穴をくにくにといじられ続け、熱を持ってじくじくする。もうやめて欲しいけど、指を中でぐりぐりされると時々大きく体が跳ねてしまうところがあって、それが妙に癖になる。





 目が覚めた瞬間、まだ頭はぼんやりしていたけど、すごい夢を見てしまった自覚だけがあって、恥ずかしくて叫び出したくなった。あんな夢を見てしまうなんて、俺はきっとすごい変態だ。どうしよう。異常性癖だ。もしバレたりしたら、きっといろんな人から後ろ指をさされるだろう。
 あまりのばつの悪さに、ベッドの上で体をよじりながらううーんと唸ってしまう。俺が頭を抱えていると、不意に背後から衣擦れの音がした。てっきり俺ひとりきりだと思っていたので内心とんでもなくびっくりして、心臓がボコっと大きく脈打った。

「…………誰?」

 半身を軽く起こし、勇気を振り絞って暗闇に向かって尋ねるが、返事が返ってくる気配が一向にない。気のせいだったのかも、と考え始めるくらいの時間、俺の周りでただただ静寂が続いた。
 ほっ、と短く息を吐いて、ベッドにペタリと座り込む、手のひらに触れるシーツの感触がとてもさらさらしていて気持ちがいい。なんで俺服を着てないんだろう。のんきにそんなことを考えていると、今度はベッドがギシリと軋んで、だれかが乗り上げてきたのがわかった。驚きと恐怖で頭の中がしっちゃかめっちゃかになる。声も出せずに俺の体はがちりと固まった。
 乗り上げて来た時の振動の感じから、音を立てた主は俺よりだいぶ体重のある男だと思った。悲鳴を飲み込んだ俺の努力を褒めて欲しい。怖気で鳥肌が立ち、心臓は不整脈を起こし、全身から冷や汗が吹き出す。
 辺りは異様に真っ暗で、自宅の寝室でも、居候先のイアンの家の物置きでもないことに今更気付く。

 俺は、どこにいるんだ?眠る前、どこにいたんだっけ…?

 夢の中のバカみたいな記憶がぐっちゃぐちゃに混じって邪魔してくる。現実での最後の記憶がどこだかすぐに思い出せない。
 そうしてる間にもベッドがまた軋み、正体のわからない熱い体が覆い被さってきた。

「嫌だ…」

 俺は男の下から抜け出ようとシーツを蹴ってもがくが、あっさりうつ伏せの状態で抑え込まれてしまう。
シーツについた手が動かない。魔法で拘束されたらしい。こうなっては本格的に俺のもがきは無意味だが、それを認めたくなくて叫ぶ。離して、やめて、嫌だ。
 俺の懇願なんて一欠片も聞こえていないように、男は淀みない動きで俺の腰を掴んで高く上げさせると、抵抗する俺の膝下もべたりとシーツに貼り付けた。
 脇腹を硬い手で撫でられてぞわりとする。そのまま撫で下ろした手が尻を鷲掴み、左右に割り開いた。どうやら、この男も俺の尻に性器を入れるつもりらしい。そこはどう考えても性器を入れるために出来てないだろう。穴のしわを伸ばすように撫でられて血の気が引く。
 怯えていると、不意にふっ、と息を吹きかけられた。なぜか不快感だけでない震えが体を走り、「あっ」と鼻にかかった声が出た。恥ずかしくなって、シーツに顔を押し付けて自分の口を塞ぐが、そんな俺を笑ったのか、また短く息が尻の穴にかかって俺はシーツに情けない声を吸わせた。
 案の定、そのすぐ後に吐息が更に近くなり、穴に湿った感触が触れた。本当に、舐められてる。俺の頭は恐怖より、夢の中以上の背徳感でいっぱいになってしまう。こんな無理やりの行為なのに、気持ちいいのが止まらない。

「あっ、ふあ、んっんん」

 すごく気持ちいい。でも射精出来ない。性器も触って欲しい。そんなこと思ってしまう自分も嫌だ。散々喘がされ続けた俺の体から力が完全に抜ける。
 ぐったりした俺からやっと舌を抜いた男は、一度大きく体を離した気配がしたがすぐにベッドを軋ませて戻ってきた。そして、ぐちゃぐちゃとやたら妙な水音をさせてから、今度は指──だと思う──をゆっくりと俺の尻の穴に射し入れた。少し苦しいけど、なぜか酷くすんなり入っていく。

「な、んで?あ。あうぅ…」

 最初は小さかった粘つく水音が、すぐにぐぷぐぷと大きな音に変わる。指がかなり奥まで入っている感じがする。そんなに尻穴って簡単にものが入るのか?
 何がどうなってるのかわからないけど、体が跳ねてしまうのを我慢出来ない。男はしばらくゆっくりと穴の中を捏ねていたが、次第に俺の体が跳ねる箇所ばかりを続けて抉り始めた。そんなことされたら俺の体も頭もおかしくなる。

「っん、ダメっ、お願い、イかせて、ぇ」

 俺がとち狂ったことを口にした途端、ぴたりと男の手が止まる。
 もしかして、終わりか?
 この責め苦から解放されるかもしれないという深い安堵と、体の熱を持て余すことへのほんの少しの落胆が綯い交ぜになる。でも、この後すぐに、そんな感情は男によって掻き乱されぶち壊された。

 突然男の指が容赦なく引き抜かれ、ひくりと尻が震える。そのまま男の体が離れて行くのかと思ったが、その気配はなくて、代わりに背後から小さな水音がする。何の音かと考え至るより早く、尻穴に再び何かが触れて、それがゆっくりと押し込まれてくる。あまりの圧迫感に、声にならない高い呻き声が喉奥から押し出された。

 入って来ているものは、指じゃない。だって、男の両手は俺の腰を逃さないように掴んでる。それに、さっきよりずっと奥まで来てる。

 なら、これは、男の性器以外にはあり得ないんじゃないのか?

「っあ、嫌だっ。嫌、嫌っ、嫌だあ!」

 こんなの性行為だ。嫌だ。見知らぬ男となんてしたくない。
 嫌悪を訴えるのに、男の腰は止まらず、しまいには腹を突き破りそうなほど中をパンパンにされてしまった。怖い。苦しい。死にそうだ。

「ん、んん、嫌だぁ。怖いっ」

 涙が滲んで、無様な鼻声で何度も嫌だを繰り返す。
 男は俺のそんな様子を観察でもしているのか、身動ぎ一つもしない。確かにそこにいるのに、誰もいないようだ。

「嫌、だぁ…あっん……助けて…ん、セブさん」

 男が、不意に喉で笑った。
 その笑い方にあまりに覚えがあって、俺は息を飲む。

「私と情を交わすことがそんなに嫌か、ハバト」

 背後から俺を穿っている男から聞こえてきたのは、少し掠れた、愛おしい彼の声だった。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

僕の太客が義兄弟になるとか聞いてない

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
 没落名士の長男ノアゼットは日々困窮していく家族を支えるべく上級学校への進学を断念して仕送りのために王都で働き出す。しかし賢くても後見の無いノアゼットが仕送り出来るほど稼げはしなかった。  そんな時に声を掛けてきた高級娼家のマダムの引き抜きで、男娼のノアとして働き出したノアゼット。研究肌のノアはたちまち人気の男娼に躍り出る。懇意にしてくれる太客がついて仕送りは十分過ぎるほどだ。  そんな中、母親の再婚で仕送りの要らなくなったノアは、一念発起して自分の人生を始めようと決意する。順風満帆に滑り出した自分の生活に満ち足りていた頃、ノアは再婚相手の元に居る家族の元に二度目の帰省をする事になった。 そこで巻き起こる自分の過去との引き合わせに動揺するノア。ノアと太客の男との秘密の関係がまた動き出すのか?

【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。 理想の彼氏はスパダリよ! スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。 受:安田陽向 天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。 社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。 社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。 ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。 攻:長船政景 35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。 いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。 妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。 サブキャラ 長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。 抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。 兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。 高田寿也:28歳、美咲の彼氏。 そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。 義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

辺境の酒場で育った少年が、美貌の伯爵にとろけるほど愛されるまで

月ノ江リオ
BL
◆ウィリアム邸でのひだまり家族な子育て編 始動。不器用な父と、懐いた子どもと愛される十五歳の青年と……な第二部追加◆断章は残酷描写があるので、ご注意ください◆ 辺境の酒場で育った十三歳の少年ノアは、八歳年上の若き伯爵ユリウスに見初められ肌を重ねる。 けれど、それは一時の戯れに過ぎなかった。 孤独を抱えた伯爵は女性関係において奔放でありながら、幼い息子を育てる父でもあった。 年齢差、身分差、そして心の距離。 不安定だった二人の関係は年月を経て、やがて蜜月へと移り変わり、交差していく想いは複雑な運命の糸をも巻き込んでいく。

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

処理中です...