稀代の英雄に求婚された少年が、嫌われたくなくて逃げ出すけどすぐ捕まる話

こぶじ

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夢じゃない1

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 すごく、気持ちいい夢を見ていた。

 肌当たりがいいとか、居心地がいいとか、そういう気持ちがいいじゃなくて、もう単刀直入にえっちなやつだ。
 男か女かもわからない相手に、最初は性器をこすられた。それだけでも十分気持ちよかったけど、その後なぜだかわからないが、性器を舐められたり口の奥まで咥えられたりした。そんなところ口に入れさせたらダメなのに、すごく気持ちよくていっぱい恥ずかしい声を出してしまった。
 その人の口の中で射精して、すごく申し訳ない気持ちになっていたら、今度は尻の穴をしっとり濡れた指でつつかれた。そここそ絶対ダメだってわかっているのに、時折舌を入れられて、背徳感で性器を舐められた時よりもっともっと気持ちよかった。
 もう二回も射精してつらくて仕方なかったが、まだ尻の穴をくにくにといじられ続け、熱を持ってじくじくする。もうやめて欲しいけど、指を中でぐりぐりされると時々大きく体が跳ねてしまうところがあって、それが妙に癖になる。





 目が覚めた瞬間、まだ頭はぼんやりしていたけど、すごい夢を見てしまった自覚だけがあって、恥ずかしくて叫び出したくなった。あんな夢を見てしまうなんて、俺はきっとすごい変態だ。どうしよう。異常性癖だ。もしバレたりしたら、きっといろんな人から後ろ指をさされるだろう。
 あまりのばつの悪さに、ベッドの上で体をよじりながらううーんと唸ってしまう。俺が頭を抱えていると、不意に背後から衣擦れの音がした。てっきり俺ひとりきりだと思っていたので内心とんでもなくびっくりして、心臓がボコっと大きく脈打った。

「…………誰?」

 半身を軽く起こし、勇気を振り絞って暗闇に向かって尋ねるが、返事が返ってくる気配が一向にない。気のせいだったのかも、と考え始めるくらいの時間、俺の周りでただただ静寂が続いた。
 ほっ、と短く息を吐いて、ベッドにペタリと座り込む、手のひらに触れるシーツの感触がとてもさらさらしていて気持ちがいい。なんで俺服を着てないんだろう。のんきにそんなことを考えていると、今度はベッドがギシリと軋んで、だれかが乗り上げてきたのがわかった。驚きと恐怖で頭の中がしっちゃかめっちゃかになる。声も出せずに俺の体はがちりと固まった。
 乗り上げて来た時の振動の感じから、音を立てた主は俺よりだいぶ体重のある男だと思った。悲鳴を飲み込んだ俺の努力を褒めて欲しい。怖気で鳥肌が立ち、心臓は不整脈を起こし、全身から冷や汗が吹き出す。
 辺りは異様に真っ暗で、自宅の寝室でも、居候先のイアンの家の物置きでもないことに今更気付く。

 俺は、どこにいるんだ?眠る前、どこにいたんだっけ…?

 夢の中のバカみたいな記憶がぐっちゃぐちゃに混じって邪魔してくる。現実での最後の記憶がどこだかすぐに思い出せない。
 そうしてる間にもベッドがまた軋み、正体のわからない熱い体が覆い被さってきた。

「嫌だ…」

 俺は男の下から抜け出ようとシーツを蹴ってもがくが、あっさりうつ伏せの状態で抑え込まれてしまう。
シーツについた手が動かない。魔法で拘束されたらしい。こうなっては本格的に俺のもがきは無意味だが、それを認めたくなくて叫ぶ。離して、やめて、嫌だ。
 俺の懇願なんて一欠片も聞こえていないように、男は淀みない動きで俺の腰を掴んで高く上げさせると、抵抗する俺の膝下もべたりとシーツに貼り付けた。
 脇腹を硬い手で撫でられてぞわりとする。そのまま撫で下ろした手が尻を鷲掴み、左右に割り開いた。どうやら、この男も俺の尻に性器を入れるつもりらしい。そこはどう考えても性器を入れるために出来てないだろう。穴のしわを伸ばすように撫でられて血の気が引く。
 怯えていると、不意にふっ、と息を吹きかけられた。なぜか不快感だけでない震えが体を走り、「あっ」と鼻にかかった声が出た。恥ずかしくなって、シーツに顔を押し付けて自分の口を塞ぐが、そんな俺を笑ったのか、また短く息が尻の穴にかかって俺はシーツに情けない声を吸わせた。
 案の定、そのすぐ後に吐息が更に近くなり、穴に湿った感触が触れた。本当に、舐められてる。俺の頭は恐怖より、夢の中以上の背徳感でいっぱいになってしまう。こんな無理やりの行為なのに、気持ちいいのが止まらない。

「あっ、ふあ、んっんん」

 すごく気持ちいい。でも射精出来ない。性器も触って欲しい。そんなこと思ってしまう自分も嫌だ。散々喘がされ続けた俺の体から力が完全に抜ける。
 ぐったりした俺からやっと舌を抜いた男は、一度大きく体を離した気配がしたがすぐにベッドを軋ませて戻ってきた。そして、ぐちゃぐちゃとやたら妙な水音をさせてから、今度は指──だと思う──をゆっくりと俺の尻の穴に射し入れた。少し苦しいけど、なぜか酷くすんなり入っていく。

「な、んで?あ。あうぅ…」

 最初は小さかった粘つく水音が、すぐにぐぷぐぷと大きな音に変わる。指がかなり奥まで入っている感じがする。そんなに尻穴って簡単にものが入るのか?
 何がどうなってるのかわからないけど、体が跳ねてしまうのを我慢出来ない。男はしばらくゆっくりと穴の中を捏ねていたが、次第に俺の体が跳ねる箇所ばかりを続けて抉り始めた。そんなことされたら俺の体も頭もおかしくなる。

「っん、ダメっ、お願い、イかせて、ぇ」

 俺がとち狂ったことを口にした途端、ぴたりと男の手が止まる。
 もしかして、終わりか?
 この責め苦から解放されるかもしれないという深い安堵と、体の熱を持て余すことへのほんの少しの落胆が綯い交ぜになる。でも、この後すぐに、そんな感情は男によって掻き乱されぶち壊された。

 突然男の指が容赦なく引き抜かれ、ひくりと尻が震える。そのまま男の体が離れて行くのかと思ったが、その気配はなくて、代わりに背後から小さな水音がする。何の音かと考え至るより早く、尻穴に再び何かが触れて、それがゆっくりと押し込まれてくる。あまりの圧迫感に、声にならない高い呻き声が喉奥から押し出された。

 入って来ているものは、指じゃない。だって、男の両手は俺の腰を逃さないように掴んでる。それに、さっきよりずっと奥まで来てる。

 なら、これは、男の性器以外にはあり得ないんじゃないのか?

「っあ、嫌だっ。嫌、嫌っ、嫌だあ!」

 こんなの性行為だ。嫌だ。見知らぬ男となんてしたくない。
 嫌悪を訴えるのに、男の腰は止まらず、しまいには腹を突き破りそうなほど中をパンパンにされてしまった。怖い。苦しい。死にそうだ。

「ん、んん、嫌だぁ。怖いっ」

 涙が滲んで、無様な鼻声で何度も嫌だを繰り返す。
 男は俺のそんな様子を観察でもしているのか、身動ぎ一つもしない。確かにそこにいるのに、誰もいないようだ。

「嫌、だぁ…あっん……助けて…ん、セブさん」

 男が、不意に喉で笑った。
 その笑い方にあまりに覚えがあって、俺は息を飲む。

「私と情を交わすことがそんなに嫌か、ハバト」

 背後から俺を穿っている男から聞こえてきたのは、少し掠れた、愛おしい彼の声だった。
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