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第5章
第一日目ー夜ー③
しおりを挟む大きな戦果を挙げたユニオン部隊であった。
犠牲者は三百名中、60名という驚異的な生存率を果たした
彼等に、後方に控える副総大将から褒美の酒と女が振舞われた。
焚き木を囲い祝杯をあげるユニオン部隊の面々……
彼等は1日目の朝と違いまざまざと見た有名な《鴉のついばみ》
の実力に歓喜した。
特にリアムの功績は大きくからかっていた兵達もこぞって
彼に酒を勧める有様であった。
兵士「お前すげぇな、流石暗殺ギルド1、2位を争う《鴉》
今後もよろしく頼むぜ、特に俺には奥さんも居るからよ、
見かけたら守ってくれよな、でないと恨まれる事になるぜぇ」
兵士「この戦争が終わったら私と傭兵業をしませんか?」
手の平を返すこの有様にリアムはうんざりしていた……
相変わらずリアムは無言で鎮座する。
デッカ「おい……酒呑まないのか?、なら少し付き合え……」
リアム「……」
デッカはリアムを先程の戦場跡へと連れて行った。
その場所に複数の人が見える、しかし味方の兵士の見張りが
周りを囲む様に警備していることから敵兵の姿では無かった。
デッカ「お前はアイツらが何してるか知っているか?」
リアム「……」
デッカ「お前聞いた話だと落ち人らしいな、なら覚えとけ、
アイツらは血と内臓の腐るこの場所で、亡骸となった兵士の
装備を掻き集め金にするんだ……」
あそこにに見える男を見ろ、アイツが手に持っているのは
おそらく怨石だ、うちの兵士に頼まれたのか……
もしくは貴族辺りの者に雇われたか……
戦場は彷徨う魂も多い、自分が逝った事すら気付かず彷徨う魂も
しかり……だ。
その魂を石に封じ込めて金に変える者もいる」
リアムは、その男に向かおうとした。
その肩をデッカに止められる
「やめとけ、戦場のならわしだ……戦場に立つ者は
無理矢理であろうが、己の欲であろうが例外なく、そうなる事を
理解している筈だ」
「嫌なら殺されても行かねばいい話だ。どちらにしろ
こうなる運命を受け入れた本人達が集まって戦場は成り立つ」
「それに俺達が持つ囲い石も少なからず、戦って散った
兵士の血を吸っている、発動条件を満たす程ではないがな、
しかし戦争だ、大量の血が流れる、その量は少量しか
吸えなくても3日もありゃ依頼300件以上にはなる」
「お前がそれを知っていようがいまいが、恩恵は受けてる限り
奴らとそう変わらん」
「戦争は何も本当は生みやしない、しかし戦いから身を引くって
のはこの世界の変革を諦めるって事だ。
誰が正しいかどうか、この中には誰もわかっちゃいねぇ……」
「ただ生きるために、あぁやって生活しなきゃならない者も
地上には沢山いる、且つて俺もそうだった」
「ほれ、あそこに見える子供を殴る老婆が見えるだろう、
おそらく、あの老婆は少年が剥ぎ取ろうとした装備品の
持ち主の親だな……この中には最後、あぁやって見送りと
遺品を集める家族も多い」
哀しみに嗚咽する声と、時折聞こえる罵声や叫び声が辺りに
響き渡る。
「この場所では荒くれ兵士も、見張りも一切手を出さない」
「何故戦場に夜の奇襲が少ないかわかるか?
あぁやって戦って散った、兵士の最後を家族にさせる為のものと
あぁやってしか、稼ぎようのない者たちへの配慮もあるのさ」
「多くの血や肉は獣や植物の栄養となり大地へ帰ってゆく
装備品はあぁやって人の……ある意味、金という栄養となって
また生きるものの為に役立つのさ……」
デッカは持っていた槍を天に掲げ魔力を解放する
天から冷たい氷の霧が辺りを冷やし、亡骸の腐る時間を
長引かせた。
リアム「お前はいつも戦場ではこの様な事をしているのか?」
デッカ「あぁ……魔力が残っていればの話だがな……」
「俺は怨石が嫌いだ、お前もそうなんだろ、話は聞いた。
しかし俺は弱い奴が嫌いだ。
組んでもすぐにくたばりやがる……」
「弱い奴は生き残れない、そうゆう奴らを沢山見てきた。
なら俺は戦場で他の者を巻き込む前にそいつらを己の手で殺す」
「俺は人道的には正しくはないだろう、解っている……
しかし俺が罪を背負わねば結果、多くの者が犠牲になる
俺自身さえもな」
「元々戦争に正しい答えなんざ転がっちゃいねぇ……」
「たしかに俺は鬼だ、そう殺人鬼だ
俺はそれを受け入れた、俺は俺のやり方で戦争を終わらせる」
リアム「……戦争に正しい答えなんか……そうだな……」
デッカはリアムに聞こえない位の小さな声で呟いた。
「お前が、弱いと感じた時は背後からであろうが
俺はお前を殺す……」
2人は血みどろの荒野に悲しみと朽ちてゆく亡骸と
生きる民という景色を眺め、その後、会話する事は無かった……
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