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昨日、仕事終わりに少しでも顔を見たいと会社に迎えにきて、朝陽の家は晴翔がいるのでと蒼の家に強引に案内させられた。
蒼のマンションでやはり事に及んでしまい、寝不足のため飛行機では熟睡してしまった。キスマークをちゃんとチェックしてなかったな・・・、そういえば、朝陽さん、虫除けとか言ってたけど、まさかこれのこと?!
全く・・・、蒼は朝陽を思い出し微笑みながらも、湊に今、朝陽と付き合い始めたことを言うべきか迷った。
湊はきっと驚くだろうし、嫌悪感を抱くかもしれない。
旅行の後が良いかな・・・けど、湊に嘘はつきたくない・・・が・・・、こんな日中ではなく、夕食の時にでもさりげなく言おう。
素面では流石に突然に言いづらい。
そう判断して蒼は
「まぁその話は後でな。」
と言いすてて海へと駆け出した。
島で1日のんびりと過ごしコテージへと戻ってから、蒼は少し酒も飲みたいとリクエストし、繁華街の食事もできるクラブへと入った。
地元の肉の串焼きや、大豆を固めて揚げた料理を食べ、酒を飲みひとしきり落ち着いたところで、蒼は少し緊張しながら湊を見た。
「湊、お前さっき俺に彼女・・・って言ってただろ。」
「ああ。だってあんな熱烈なキスマークつけてただろ。
今度の彼女はどこで?合コン?また告られた?」
湊が笑いながら言う。
たいがい付き合おうと言われるものの、3ヶ月も保たないうちに振られてしまうのが蒼のパターンだ。
何事も受身で、セックスもかなり淡白だった蒼が、物足りなくなるのだろうと思っていた。
だが朝陽に思われて、身も心も満たされていくのを感じ、今までの付き合いは、相手を深く思っていなかったのだと気づいた。
もちろん好意はあったものの、離れても何も感じなかった。
だが朝陽との関係は、始まったばかりだが大事にしていきたいと思う。
そのためにも、周りには秘密にしても、一番の親友といえる湊には伝えたかった。
「湊・・・俺、実は恋人ができた。
相手は・・・男だ。」
赤面し躊躇しながらもはっきりと伝えると、湊はギョッとした顔で
「は・・?!冗談だろ。」
と目を丸くする。
無理もない。
蒼は揶揄われたと思っているが、男に言い寄られるたびに、ことごとく跳ね返してきた蒼が、頬を赤く染めて男とつきあっているなど言うとは。
「本当なんだ。
1ヶ月くらい前かな、知り合って・・・、ほら、湊も見たことある会社に来てた・・・背の高い・・・」
湊は一瞬記憶を辿るように顔をしかめ、
「あの、俺に蒼を呼び出させたやつか。
でかくて色の黒い・・・。」
「うん、その人だ。
朝陽さんていうんだけど、お前と行ったバーで実は知り合ったんだよ。
隣に座ってたんだ。
お前が先に帰った日に、まぁ、いろいろあって・・・。」
「嘘だろ?・・・マジなのか?」
「・・・ああ、マジだ。」
湊はじっと蒼を見て、キスマークのあった部分を服越しにたどってから目を逸らし、
「・・・マジか・・・。」
と呟き、ため息をついた。 それからはずっとお互い黙ったまま、残りの酒をちびちびと飲み、時間をやり過ごす。
そうだよな、やっぱり嫌だよな。
俺だって湊から男の彼氏ができたなんて聞いたら、驚くだろうし、1ヶ月前の俺なら嫌悪感を拭えないかもしれない。
もう一緒に遊ぶこともできず、避けられるかもしれない。
想像して、蒼はそれは嫌だと思った。
「・・・湊・・・俺のこと、気持ち悪いとか思うか?」
「いや・・・そんな・・・。」
「俺、お前とはこれからも、ずっと仲良くしていきたいと思ってる。
こんな風に旅行とか飲みいったりとか、その・・・この年で恥ずかしいけど入社してからずっと、湊のこと親友だと思ってきた。
でも、お前が俺の、そういうの、拒否感とかあるなら・・・俺、距離を置くようにするよ。
なんか・・・ごめんな。」
必死の思いで言葉を紡いでいると目が潤んできてしまう。
湊は俯いていた顔を上げて、
「・・・蒼が謝る必要はない。
俺も、これからもずっと、つるんでたいと・・・思ってるから。」
「本当か?良かった・・・、これからもよろしくな」
蒼はほっとして湊を見ると、湊はどこか悲しそうに、
「うん」
と微笑んだ。
それからコテージに戻り明日の予定を話し合いながら、蒼は今日一日の疲労や、湊にカミングアウトした緊張もあり、ほどなくして眠りについてしまった。
「・・・なんで」
湊の声が聞こえる。これは夢か。
「なんで・・・俺の方が先に・・・だったのに」
蒼の髪を撫でる優しい手つきと、唇に温かいものが触れた感覚があった。
「・・・蒼・・・。」
湊・・・?泣きそうな声でどうしたんだ・・・?そう思いながらも蒼はまた眠りに着いてしまった。
次の日、蒼としては早い時間に起きたと思ったのだが、隣のベッドに湊はいなかった。
朝からどこへ?と身を起こし部屋の中を見回してもいない。
そこでドアが開いて湊が現れた。
手には買い物したらしいビニール袋を持っている。
「おはよ、湊。また朝市にいったの?」
「うん。
美味しそうな果物とかいろいろあったよ。
ここの朝食もいいけど地元のものもおすすめだよ。」
湊は滞在中よく地元の朝市に顔を出す。
蒼も行きたいのだが、いつも寝ているうちに行ってしまうので同行できない。
「土産も買ったから整理するわ。
それからメシ食べよう。」
そう言ってスーツケースを整理しに寝室へといった。
蒼のマンションでやはり事に及んでしまい、寝不足のため飛行機では熟睡してしまった。キスマークをちゃんとチェックしてなかったな・・・、そういえば、朝陽さん、虫除けとか言ってたけど、まさかこれのこと?!
全く・・・、蒼は朝陽を思い出し微笑みながらも、湊に今、朝陽と付き合い始めたことを言うべきか迷った。
湊はきっと驚くだろうし、嫌悪感を抱くかもしれない。
旅行の後が良いかな・・・けど、湊に嘘はつきたくない・・・が・・・、こんな日中ではなく、夕食の時にでもさりげなく言おう。
素面では流石に突然に言いづらい。
そう判断して蒼は
「まぁその話は後でな。」
と言いすてて海へと駆け出した。
島で1日のんびりと過ごしコテージへと戻ってから、蒼は少し酒も飲みたいとリクエストし、繁華街の食事もできるクラブへと入った。
地元の肉の串焼きや、大豆を固めて揚げた料理を食べ、酒を飲みひとしきり落ち着いたところで、蒼は少し緊張しながら湊を見た。
「湊、お前さっき俺に彼女・・・って言ってただろ。」
「ああ。だってあんな熱烈なキスマークつけてただろ。
今度の彼女はどこで?合コン?また告られた?」
湊が笑いながら言う。
たいがい付き合おうと言われるものの、3ヶ月も保たないうちに振られてしまうのが蒼のパターンだ。
何事も受身で、セックスもかなり淡白だった蒼が、物足りなくなるのだろうと思っていた。
だが朝陽に思われて、身も心も満たされていくのを感じ、今までの付き合いは、相手を深く思っていなかったのだと気づいた。
もちろん好意はあったものの、離れても何も感じなかった。
だが朝陽との関係は、始まったばかりだが大事にしていきたいと思う。
そのためにも、周りには秘密にしても、一番の親友といえる湊には伝えたかった。
「湊・・・俺、実は恋人ができた。
相手は・・・男だ。」
赤面し躊躇しながらもはっきりと伝えると、湊はギョッとした顔で
「は・・?!冗談だろ。」
と目を丸くする。
無理もない。
蒼は揶揄われたと思っているが、男に言い寄られるたびに、ことごとく跳ね返してきた蒼が、頬を赤く染めて男とつきあっているなど言うとは。
「本当なんだ。
1ヶ月くらい前かな、知り合って・・・、ほら、湊も見たことある会社に来てた・・・背の高い・・・」
湊は一瞬記憶を辿るように顔をしかめ、
「あの、俺に蒼を呼び出させたやつか。
でかくて色の黒い・・・。」
「うん、その人だ。
朝陽さんていうんだけど、お前と行ったバーで実は知り合ったんだよ。
隣に座ってたんだ。
お前が先に帰った日に、まぁ、いろいろあって・・・。」
「嘘だろ?・・・マジなのか?」
「・・・ああ、マジだ。」
湊はじっと蒼を見て、キスマークのあった部分を服越しにたどってから目を逸らし、
「・・・マジか・・・。」
と呟き、ため息をついた。 それからはずっとお互い黙ったまま、残りの酒をちびちびと飲み、時間をやり過ごす。
そうだよな、やっぱり嫌だよな。
俺だって湊から男の彼氏ができたなんて聞いたら、驚くだろうし、1ヶ月前の俺なら嫌悪感を拭えないかもしれない。
もう一緒に遊ぶこともできず、避けられるかもしれない。
想像して、蒼はそれは嫌だと思った。
「・・・湊・・・俺のこと、気持ち悪いとか思うか?」
「いや・・・そんな・・・。」
「俺、お前とはこれからも、ずっと仲良くしていきたいと思ってる。
こんな風に旅行とか飲みいったりとか、その・・・この年で恥ずかしいけど入社してからずっと、湊のこと親友だと思ってきた。
でも、お前が俺の、そういうの、拒否感とかあるなら・・・俺、距離を置くようにするよ。
なんか・・・ごめんな。」
必死の思いで言葉を紡いでいると目が潤んできてしまう。
湊は俯いていた顔を上げて、
「・・・蒼が謝る必要はない。
俺も、これからもずっと、つるんでたいと・・・思ってるから。」
「本当か?良かった・・・、これからもよろしくな」
蒼はほっとして湊を見ると、湊はどこか悲しそうに、
「うん」
と微笑んだ。
それからコテージに戻り明日の予定を話し合いながら、蒼は今日一日の疲労や、湊にカミングアウトした緊張もあり、ほどなくして眠りについてしまった。
「・・・なんで」
湊の声が聞こえる。これは夢か。
「なんで・・・俺の方が先に・・・だったのに」
蒼の髪を撫でる優しい手つきと、唇に温かいものが触れた感覚があった。
「・・・蒼・・・。」
湊・・・?泣きそうな声でどうしたんだ・・・?そう思いながらも蒼はまた眠りに着いてしまった。
次の日、蒼としては早い時間に起きたと思ったのだが、隣のベッドに湊はいなかった。
朝からどこへ?と身を起こし部屋の中を見回してもいない。
そこでドアが開いて湊が現れた。
手には買い物したらしいビニール袋を持っている。
「おはよ、湊。また朝市にいったの?」
「うん。
美味しそうな果物とかいろいろあったよ。
ここの朝食もいいけど地元のものもおすすめだよ。」
湊は滞在中よく地元の朝市に顔を出す。
蒼も行きたいのだが、いつも寝ているうちに行ってしまうので同行できない。
「土産も買ったから整理するわ。
それからメシ食べよう。」
そう言ってスーツケースを整理しに寝室へといった。
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