優しい君を抱きたい

ツナコ

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「どうする?蒼、まだ体も本調子じゃないし今日はここでゆっくりしたら?
夜家に送っていくから。
友達にはまた電話してみたらいいんじゃない?」

どうしよう。これから湊のところへ行こうか。でも確かにまだ体が覚束ない。
あそこから抜けられたのなら、何とか無事でいるのかな。
明日は湊も出勤のはずだし、明日湊から詳しい話を聞こうか。
そう考えて蒼は、

「そうだね。明日湊に詳しい話を聞くよ。今日は・・・陽さんといる」

朝陽は嬉しそうに、

「良し。じゃあ今日は家でゆっくりしよう。蒼のバック、中を少し見てしまったんだけど、バリ島の天然塩?
これもしかして俺へのお土産かな」

「あ、そう!料理上手な朝陽さんへプレゼント」
そう言ってにっこり微笑む蒼に

「ありがとう。よーし、夕飯はこの塩を使って俺の特製パスタにしよう」

と笑った。その後、少し表情を曇らせ、

「・・・友達には、明日話を聞いてごらん。・・・蒼にとって悲しい話になるかもしれないけど、本人から聞いた方がいい」

と蒼の頭をなでた。

「う、うん・・・」

そうだな、あいつらと絡んで何かしていたんだから、犯罪絡みだろうな・・・湊・・・、でも、本人からきちんと聞かなきゃ。
そう決めて、その日は朝陽の家でゆっくりと過ごさせてもらい、夜には車で送ってもらった。また次の休みのデートを約束して、ぎゅっとハグして別れた。

明くる日、体はほぼ元通りとなり、ほっとして出勤しすぐに湊を探すが来ていない。
結局その日は、湊が体調不良で休む旨、上司が急ぎ皆に伝え、その後会社の上司クラスは慌ただしく緊急の会議があるらしく、1日篭りきりになっていた。
湊に何度も電話してみたがやはり繋がらない為、定時で退社したあと、湊の家に行ってみようと決心した。

何度か遊びに行ったことのある湊のマンションに行き、インターホンチャイムを鳴らした。
蒼のマンションより大分広く、駅にも近い湊のマンションは、家賃も相当高いだろう。
留守だろうか・・・、もう一度インターホンを鳴らすと、静かにオートロックが開いた。湊・・・いた!蒼は急いで湊のいる部屋へ向かった。

ドアは開いていた。
中へ入りワンルームへ続くドアを開けると、ほぼ何もない殺風景な風景に、湊が立っていた。
たった2日で顔色も悪く覇気のない表情で、少しやつれたように思えた。

「湊・・・大丈夫か。今日会社にも来なかったし・・・」

「・・・会社は今日退職届を出した。
今マンションもひきはらう準備をしてたんだ。そのあと・・・警察へ出頭する」

「え・・・!」
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