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驚き目を見開く蒼を見て、湊が少し微笑む。
「蒼も気づいただろう?
俺と・・・あいつらのこと。蒼にはほんとに申し訳ないことをした。
あの後、大丈夫だったか?」
「あ、ああ・・・朝陽さんの弟に助けられて、何もされなかったよ」
そのあといろいろあったが、それには触れないことにする。
「そうか。良かった・・・」
「・・・なあ、湊、お前一体何をしたんだ?」
「・・・何となくお前もわかるだろ。
薬の密輸だ。・・・俺が仕事以外で旅行に行く時は大体関わってた」
何となく予感してはいたが、湊の口から聞いて蒼は驚き、悲しくなった。
「・・・っ!なんで、そんな事したんだよ!」
「・・・俺んちさ、本当はすげー貧乏なんだ。母子家庭でさ」
「・・・え?」
「小1の頃、親が離婚して、それから母親が女手一つで育ててくれたけど、ずっと暮らしに困ってて、家もオンボロアパートで、欲しいものも何も買って貰えなかった。
欲しい物なんて、言えなかったし。
俺も弟も。高校はなんとか入れてもらって、大学も奨学金で行ってさ。
海外旅行とか、凄い憧れてた。
そしたら、大学の時の彼女が結構金持ちの家の娘で、一緒にバリ島に連れてってくれたんだ。それが初めての海外で・・・、その時行ったバーで、日本人の男に話しかけられたんだ。そこから・・・薬の密輸に関わるようになった」
湊・・・そんな前から悪事に手を染めていたのか。蒼は湊の独白を聞き続ける。
「毎回旅行代も出してもらって、密輸に成功する度、今までバイトしてたのが馬鹿らしくなるくらいの報酬を受け取ったよ。
弟の大学費用も援助することができた。
弟が大学を出るまで、と思ってたから、ずっと抜けたいと言っていたんだけど、ずるずるとここまで・・・、蒼をあんな目にあわせてしまって・・・」
湊が俯く。
「・・・俺は、大丈夫だ。
大事にはならなかったし。それより、湊のことが・・・俺は心配だよ」
蒼がそう言いながら湊に近づくと、湊は蒼の手をそっと握った。
「俺はもちろん自業自得だし、罪をこれから償っていくつもりだよ。
ただ・・・その前にお前に会えてよかった。蒼に、どうしても最後に言いたかった」
蒼の手を握り、片方の手で蒼の頬に触れる。
「蒼、俺、お前のことずっと好きだった。恋人になってほしいという意味で」
「え・・・?」
蒼は驚き目を見開いて湊を見る。
「それこそ、ほぼ一目惚れだ。
男に今までそんな思い抱いたことないから、戸惑った。
お前を入社式で見て見惚れて、それから友達として一緒にいるうちに、お前の優しくて真っ直ぐな心に惹かれたんだ」
湊が顔を真っ赤にしながらの告白を聞いているうちに、湊もつられるかのように顔が熱くなるのを感じた。
「でも、男に言い寄られて嫌がってるお前を見てて、その気持ちは心のうちに留めて置くことにした。
嫌がられて遠くなるより、お前の近くにいたかった。無理に女と付き合ってはみたけど続かなかったよ。
それなのに、男とつきあいだすなんてな・・・」
湊は苦笑しながら、まっすぐに蒼と目を合わせた。
「湊・・・」
「蒼も気づいただろう?
俺と・・・あいつらのこと。蒼にはほんとに申し訳ないことをした。
あの後、大丈夫だったか?」
「あ、ああ・・・朝陽さんの弟に助けられて、何もされなかったよ」
そのあといろいろあったが、それには触れないことにする。
「そうか。良かった・・・」
「・・・なあ、湊、お前一体何をしたんだ?」
「・・・何となくお前もわかるだろ。
薬の密輸だ。・・・俺が仕事以外で旅行に行く時は大体関わってた」
何となく予感してはいたが、湊の口から聞いて蒼は驚き、悲しくなった。
「・・・っ!なんで、そんな事したんだよ!」
「・・・俺んちさ、本当はすげー貧乏なんだ。母子家庭でさ」
「・・・え?」
「小1の頃、親が離婚して、それから母親が女手一つで育ててくれたけど、ずっと暮らしに困ってて、家もオンボロアパートで、欲しいものも何も買って貰えなかった。
欲しい物なんて、言えなかったし。
俺も弟も。高校はなんとか入れてもらって、大学も奨学金で行ってさ。
海外旅行とか、凄い憧れてた。
そしたら、大学の時の彼女が結構金持ちの家の娘で、一緒にバリ島に連れてってくれたんだ。それが初めての海外で・・・、その時行ったバーで、日本人の男に話しかけられたんだ。そこから・・・薬の密輸に関わるようになった」
湊・・・そんな前から悪事に手を染めていたのか。蒼は湊の独白を聞き続ける。
「毎回旅行代も出してもらって、密輸に成功する度、今までバイトしてたのが馬鹿らしくなるくらいの報酬を受け取ったよ。
弟の大学費用も援助することができた。
弟が大学を出るまで、と思ってたから、ずっと抜けたいと言っていたんだけど、ずるずるとここまで・・・、蒼をあんな目にあわせてしまって・・・」
湊が俯く。
「・・・俺は、大丈夫だ。
大事にはならなかったし。それより、湊のことが・・・俺は心配だよ」
蒼がそう言いながら湊に近づくと、湊は蒼の手をそっと握った。
「俺はもちろん自業自得だし、罪をこれから償っていくつもりだよ。
ただ・・・その前にお前に会えてよかった。蒼に、どうしても最後に言いたかった」
蒼の手を握り、片方の手で蒼の頬に触れる。
「蒼、俺、お前のことずっと好きだった。恋人になってほしいという意味で」
「え・・・?」
蒼は驚き目を見開いて湊を見る。
「それこそ、ほぼ一目惚れだ。
男に今までそんな思い抱いたことないから、戸惑った。
お前を入社式で見て見惚れて、それから友達として一緒にいるうちに、お前の優しくて真っ直ぐな心に惹かれたんだ」
湊が顔を真っ赤にしながらの告白を聞いているうちに、湊もつられるかのように顔が熱くなるのを感じた。
「でも、男に言い寄られて嫌がってるお前を見てて、その気持ちは心のうちに留めて置くことにした。
嫌がられて遠くなるより、お前の近くにいたかった。無理に女と付き合ってはみたけど続かなかったよ。
それなのに、男とつきあいだすなんてな・・・」
湊は苦笑しながら、まっすぐに蒼と目を合わせた。
「湊・・・」
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