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第二章
005 ベネディッド=ロンバルト
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ベネディッドは慣れた手つきでビリーを後ろ手で縄で縛ると、そのロープをユーリに託した。そしてルゥナの前に来て背を向けると腰を下げて言った。
「乗れ。野営地までは距離がある」
「はい?」
「その足と、その装いでは無理だ」
「あ……」
泥で汚れたきらびやかなドレスに、靴は脱ぎ捨てたので裸足だった。
「ほら、早く乗れ」
「け、結構です。靴はありますし、着替えもありますから。スーザン」
「はい。ご用意致します」
こんな女たらしの世話になどなりたくないし、二度と触れられたくもない。スーザンはポーチから着替え用の簡易テントを素早く取り出した。
◇◇
そして、野営地までの道中――ルゥナはベネディッドに背負われていた。
お忍びで街へ行く時の洋服に着替えたので機動力はあるが、靴が合わなかった。
ブーツはヒールが高く、岩肌ばかりの山道には不向き。尚且つ、一度でも転んだら歩くことを禁止するというベネディッドの言葉にプレッシャーを感じていた為、余計に力が入り足を捻って転びかけたのだ。
ベネディッドのお陰で地面とお友達にはならなかったが、問答無用で背中に乗せられた。
ユーリが自分が背負うと名乗りを上げてくれたけれど、これは俺の婚約者だと言われ何も言い返せないでいた。
こうやって女性を落としていくのだろう。
アレクシアからの密命が婚約破棄ではなく、ただの婚約者の調査であったなら、お墨付きを与えただろう。ルゥナの大好物ど真ん中だし、ドラゴンを倒すほど強いし判断力も高い。
それに、会って間もないのに、もう何度助けられたことか。
でも、笑顔はまだ一度も見ていない。
女たらしと聞いていたのでヘラヘラした感じの糞王子だと思っていたのに、これではやり辛い。
「おい。そろそろ着くぞ。自分で歩くか?」
「も、勿論です!」
そして女性に恥をかかせない地味な優しさもあるらしい。ベネディッドはゆっくりとルゥナを下ろしてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「……意外だな」
「何がですか?」
「君は、ルナステラで一番、我が儘で高飛車な王女だと聞いていた」
「えっ?」
アレクシアが高飛車? アレクシアは自身への評価が高く、国王を下に見ている言動は目立ったが、気高くて頭の回転が早い才女といった印象だった。
それが高飛車と取られることもあるかもしれない。
「まぁ、噂なんてそんなものだろ。野営地は男ばかりだ。俺のテントを半分貸すから、君とスーザンで使え。半分は俺とユーリで」
それは、男女比率が一対三なのだけれど、ベネディッドはユーリを男性だと思っているので、正当な分け方なのだろうか。
「こちらにもテントの用意はあります」
「一応命を狙われたのだ。俺のテントの方が安全だ。ユーリ、お前はどう判断する?」
「私も、その方が良いと存じます」
スーザンも目が合うと頷いていた。ベネディッドど同じ空間で夜を過ごすことになるユーリがそう言うのなら――。
「……分かりました。ベネディッド様。宜しくお願い致しますわ」
きっと、こうやって周りの女性に優しくして懐へ入り手懐けていくのだろう。
しかし、向こうが近づいてくるなら好都合。
こっちが懐に入り込んで油断させて、糞王子の本性を暴いてやるのだ。
「乗れ。野営地までは距離がある」
「はい?」
「その足と、その装いでは無理だ」
「あ……」
泥で汚れたきらびやかなドレスに、靴は脱ぎ捨てたので裸足だった。
「ほら、早く乗れ」
「け、結構です。靴はありますし、着替えもありますから。スーザン」
「はい。ご用意致します」
こんな女たらしの世話になどなりたくないし、二度と触れられたくもない。スーザンはポーチから着替え用の簡易テントを素早く取り出した。
◇◇
そして、野営地までの道中――ルゥナはベネディッドに背負われていた。
お忍びで街へ行く時の洋服に着替えたので機動力はあるが、靴が合わなかった。
ブーツはヒールが高く、岩肌ばかりの山道には不向き。尚且つ、一度でも転んだら歩くことを禁止するというベネディッドの言葉にプレッシャーを感じていた為、余計に力が入り足を捻って転びかけたのだ。
ベネディッドのお陰で地面とお友達にはならなかったが、問答無用で背中に乗せられた。
ユーリが自分が背負うと名乗りを上げてくれたけれど、これは俺の婚約者だと言われ何も言い返せないでいた。
こうやって女性を落としていくのだろう。
アレクシアからの密命が婚約破棄ではなく、ただの婚約者の調査であったなら、お墨付きを与えただろう。ルゥナの大好物ど真ん中だし、ドラゴンを倒すほど強いし判断力も高い。
それに、会って間もないのに、もう何度助けられたことか。
でも、笑顔はまだ一度も見ていない。
女たらしと聞いていたのでヘラヘラした感じの糞王子だと思っていたのに、これではやり辛い。
「おい。そろそろ着くぞ。自分で歩くか?」
「も、勿論です!」
そして女性に恥をかかせない地味な優しさもあるらしい。ベネディッドはゆっくりとルゥナを下ろしてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「……意外だな」
「何がですか?」
「君は、ルナステラで一番、我が儘で高飛車な王女だと聞いていた」
「えっ?」
アレクシアが高飛車? アレクシアは自身への評価が高く、国王を下に見ている言動は目立ったが、気高くて頭の回転が早い才女といった印象だった。
それが高飛車と取られることもあるかもしれない。
「まぁ、噂なんてそんなものだろ。野営地は男ばかりだ。俺のテントを半分貸すから、君とスーザンで使え。半分は俺とユーリで」
それは、男女比率が一対三なのだけれど、ベネディッドはユーリを男性だと思っているので、正当な分け方なのだろうか。
「こちらにもテントの用意はあります」
「一応命を狙われたのだ。俺のテントの方が安全だ。ユーリ、お前はどう判断する?」
「私も、その方が良いと存じます」
スーザンも目が合うと頷いていた。ベネディッドど同じ空間で夜を過ごすことになるユーリがそう言うのなら――。
「……分かりました。ベネディッド様。宜しくお願い致しますわ」
きっと、こうやって周りの女性に優しくして懐へ入り手懐けていくのだろう。
しかし、向こうが近づいてくるなら好都合。
こっちが懐に入り込んで油断させて、糞王子の本性を暴いてやるのだ。
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