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第五章 男ばかりの訓練所
006 お茶の支度
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それからセシルは夕食の後にお風呂に入り、アルベリクと同じ訓練所の服を借りた。
男性ばかりであるが、一応女性用もあって安心した。体を動かしやすい白いシャツと黒のハーフパンツ。
この服装ならディルクが言っていたみたいに、訓練に少し参加してみようかなと思えてきた。
「目が疲れた……」
部屋に戻る途中にアルベリクが眉間を指で摘まみ苦言を呈する。近づいてきた人を誰彼構わず睨んでいたら、それは疲れるだろう。
「お部屋に戻ったらお茶をお入れしますね」
「ああ……」
アルベリクの部屋は宿舎の二階にあった。
大きなベッドが一つ、クローゼットに小さなテーブル、それから書机。アルベリクの荷物も部屋の隅に置かれている。
アルベリクは部屋に入るなりシャツのボタンを外し始めた。
「アルベリク様?」
「……いたんだったな。俺は着替える……」
「わ、私、部屋の前で待ってますね」
「ふん。そうしろ……」
悪戯な笑みを浮かべるアルベリクを尻目に、セシルは慌てて部屋を飛び出した。そして、廊下に出て深いため息を吐く。
セシルの部屋はディルクが今準備してくれているらしい。できたらアルベリクの部屋に教えに来てくれると言っていた。
今のうちにお茶の準備をしよう。
セシルの鞄は部屋になかったので、荷物はまだ宿舎の入り口に置いたままなのだろう。
そうだ。下に行ったついでにお湯をもらおう。
「今日は何のお茶にしようかな~」
セシルは鼻歌混じりに一階へと降りていった。
◇◇
食堂は静まり返っていた。
しかし、明かりは灯ったままなので声をかけてみた。
「すみませ~ん」
「うわぁ」「ぁあっ」
すると奥から数名の声がして、厨房の横から三人の訓練生が出てきた。昼食の時に話しかけてきた新人三人組だ。
「あの~。お湯ってもらえますか?」
「あぁぁ! 昼の時の、セシルちゃんだ。良かった~」
「えっと皆さんはここで何を?」
「ああ~。明日の仕込みだよ。仕込み!」
三人組の手にはワインのようなボトルが握られていた。
セシルがそれを見ると、背中の後ろにそれを隠す。
「あ、食事当番なんですね。ご苦労様です」
「セシルちゃんは……お湯が欲しいの?」
「はい。夜のお茶の準備に必要なんです」
「ああ~。やっぱりセシルちゃんってメイドさんなんだ。すごいね。手伝うよ」
「ありがとうございます」
三人はヒソヒソとセシルの見ていないところで会話しつつ、お湯を沸かしポットの用意をした。
宿舎の入り口に荷物が置きっぱなしであることを知ると、部屋まで運んでくれるとも言ってくれた。
「優しい人ばかりで良かったです。でも、まだお部屋の準備が出来ていないみたいで……」
「あ。さっきディルクさんが部屋を片付けていたな。案内するよ」
「そうだな。荷物も持ってやるよ」
「わぁ。ありがとうございます」
「さ、こっちこっち!」
「はい!」
◇◇
アルベリクは着替えを済ませ、部屋のドアを開けた。
廊下には誰もいなかった。
「ん? あの馬鹿。どこ行った?」
「おっ。アルベリク」
ちょうど隣の部屋からディルクが出てきた。
一仕事やり終えたような清々しい笑顔で。
「ディルク。セシルが……」
「ああ、セシルちゃんの部屋なら準備出来たぜ。お前がうるさいから、ちゃんとお前の隣の部屋を開けてやったぞ。いいか、この部屋は俺の部屋だったんだからな。俺の!」
隣の部屋はいつもディルクが使っている。なるべく近い部屋がいいとは言ったが、わざわざ隣を開けていたとは……。
真面目でいい奴だが効率が悪い。
「遅いと思ったら自分の部屋を片していたのか。向こうの空いている二部屋で良かっただろ。俺はいつもの部屋でなくてもどこでもいい」
「……早く言えよ。俺、自分の部屋がいい」
「知るか!? もうセシルが使っているなら今は我慢しろ」
げんなりと肩を落としていたディルクだが、それを聞くと表情を明るくし顔を上げた。
「いや。まだセシルちゃん使ってないから。……あれ? セシルちゃんは?」
「それは俺がお前に聞きたいと……」
アルベリクは嫌な予感がした。またセシルは問題を起こしているのではないかと、容易に想像できる。
「あいつは……ディルク。ティーセットの鞄はどこだ?」
「宿舎の入り口だ」
「ちっ」
「ちょっと待て。俺も行くっ」
アルベリクはディルクを押し退け階段を駆け降りた。普段ないアルベリクのその顔にディルクも表情を強張らせ、急いで後を追っていった。
男性ばかりであるが、一応女性用もあって安心した。体を動かしやすい白いシャツと黒のハーフパンツ。
この服装ならディルクが言っていたみたいに、訓練に少し参加してみようかなと思えてきた。
「目が疲れた……」
部屋に戻る途中にアルベリクが眉間を指で摘まみ苦言を呈する。近づいてきた人を誰彼構わず睨んでいたら、それは疲れるだろう。
「お部屋に戻ったらお茶をお入れしますね」
「ああ……」
アルベリクの部屋は宿舎の二階にあった。
大きなベッドが一つ、クローゼットに小さなテーブル、それから書机。アルベリクの荷物も部屋の隅に置かれている。
アルベリクは部屋に入るなりシャツのボタンを外し始めた。
「アルベリク様?」
「……いたんだったな。俺は着替える……」
「わ、私、部屋の前で待ってますね」
「ふん。そうしろ……」
悪戯な笑みを浮かべるアルベリクを尻目に、セシルは慌てて部屋を飛び出した。そして、廊下に出て深いため息を吐く。
セシルの部屋はディルクが今準備してくれているらしい。できたらアルベリクの部屋に教えに来てくれると言っていた。
今のうちにお茶の準備をしよう。
セシルの鞄は部屋になかったので、荷物はまだ宿舎の入り口に置いたままなのだろう。
そうだ。下に行ったついでにお湯をもらおう。
「今日は何のお茶にしようかな~」
セシルは鼻歌混じりに一階へと降りていった。
◇◇
食堂は静まり返っていた。
しかし、明かりは灯ったままなので声をかけてみた。
「すみませ~ん」
「うわぁ」「ぁあっ」
すると奥から数名の声がして、厨房の横から三人の訓練生が出てきた。昼食の時に話しかけてきた新人三人組だ。
「あの~。お湯ってもらえますか?」
「あぁぁ! 昼の時の、セシルちゃんだ。良かった~」
「えっと皆さんはここで何を?」
「ああ~。明日の仕込みだよ。仕込み!」
三人組の手にはワインのようなボトルが握られていた。
セシルがそれを見ると、背中の後ろにそれを隠す。
「あ、食事当番なんですね。ご苦労様です」
「セシルちゃんは……お湯が欲しいの?」
「はい。夜のお茶の準備に必要なんです」
「ああ~。やっぱりセシルちゃんってメイドさんなんだ。すごいね。手伝うよ」
「ありがとうございます」
三人はヒソヒソとセシルの見ていないところで会話しつつ、お湯を沸かしポットの用意をした。
宿舎の入り口に荷物が置きっぱなしであることを知ると、部屋まで運んでくれるとも言ってくれた。
「優しい人ばかりで良かったです。でも、まだお部屋の準備が出来ていないみたいで……」
「あ。さっきディルクさんが部屋を片付けていたな。案内するよ」
「そうだな。荷物も持ってやるよ」
「わぁ。ありがとうございます」
「さ、こっちこっち!」
「はい!」
◇◇
アルベリクは着替えを済ませ、部屋のドアを開けた。
廊下には誰もいなかった。
「ん? あの馬鹿。どこ行った?」
「おっ。アルベリク」
ちょうど隣の部屋からディルクが出てきた。
一仕事やり終えたような清々しい笑顔で。
「ディルク。セシルが……」
「ああ、セシルちゃんの部屋なら準備出来たぜ。お前がうるさいから、ちゃんとお前の隣の部屋を開けてやったぞ。いいか、この部屋は俺の部屋だったんだからな。俺の!」
隣の部屋はいつもディルクが使っている。なるべく近い部屋がいいとは言ったが、わざわざ隣を開けていたとは……。
真面目でいい奴だが効率が悪い。
「遅いと思ったら自分の部屋を片していたのか。向こうの空いている二部屋で良かっただろ。俺はいつもの部屋でなくてもどこでもいい」
「……早く言えよ。俺、自分の部屋がいい」
「知るか!? もうセシルが使っているなら今は我慢しろ」
げんなりと肩を落としていたディルクだが、それを聞くと表情を明るくし顔を上げた。
「いや。まだセシルちゃん使ってないから。……あれ? セシルちゃんは?」
「それは俺がお前に聞きたいと……」
アルベリクは嫌な予感がした。またセシルは問題を起こしているのではないかと、容易に想像できる。
「あいつは……ディルク。ティーセットの鞄はどこだ?」
「宿舎の入り口だ」
「ちっ」
「ちょっと待て。俺も行くっ」
アルベリクはディルクを押し退け階段を駆け降りた。普段ないアルベリクのその顔にディルクも表情を強張らせ、急いで後を追っていった。
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