聖女は死に戻り、約束の彼に愛される

春乃紅葉@コミカライズ2作品公開中〜

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第六章 王子と指輪と誕生日

009 当主エドワール

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 セシルは朝からぐったりしていた。

 昨夜、アルベリクが本館から戻った後、部屋にハーブティーを運んだ時のことだ。

 庭で偶然、迷子のクリス王子に出会ったことを伝えると、アルベリクは手にしたカップを荒くテーブルに戻し、またあの怖い瞳で睨んできたのだ。

「今、誰と会ったと言ったのか?」
「く、クリス王子です。リリアーヌ様の婚約者の……」
「まだ婚約者ではない。どうして会った?」
「迷子になったそうで」
「……何が迷子だ。あんな奴とは関わるな。全くフラフラするなと言っただろ」

 耳が痛い。怒鳴られて物理的にも痛いけれど、セシルの行動にも問題があったかと思うと返す言葉がない。

「申し訳ございません」
「はあ。……何を話した?」
「特には……メアリさんも一緒でしたし。……アルベリク様は当分屋敷にいらっしゃるのですよね。なので大丈夫です」
「それはどういう意味だ?」
「え……。王子様のお相手はどうしたら良いのか分からないのですが、アルベリク様が屋敷にいらっしゃるなら、すぐにご相談できるかな……と」

 アルベリクは意外そうな顔をしてセシルに歩み寄った。
 顔を覗き込み目を細めてセシルを訝しげに見つめる。

「セシル。お前、クリス王子の腹黒さにやっと気づいたのか?」
「はい? リリアーヌ様の婚約者様に向かってなんて事を言っているのですか?」
「……それもそうだな。姉上は男を見る目がない。しかし、それもある意味自業自得か……」

 アルベリクは頭を抱え深く息を吐いた。

「アルベリク様?」
「何でもない。セシルはもうあいつと関わるな。見かけたら逃げろ。用事があるとでも言ってだな――」

 と、その後も延々とアルベリクの講義を聞かされ続けた。

 アルベリクはシュナイト領へは行かないものの、ファビウス領の騎士団の訓練に向かうそうだ。

 だから毎日、屋敷を空けるらしい。
 ずっと一緒にいられるのかと思ったのに。凄く残念だった。

 ◇◇

 朝食の後、セシルはオリヴィアとライラと再会した。

 オリヴィアは桃色の年相応な可愛らしいドレスを着ていて、これからアルベリクにファビウス領を案内してもらうらしい。

 レクトも付いて行くそうだから、アルベリク自身は案内する気など無さそうだ。

「セシル。また向こうに遊びに来てね」
「はい。オリヴィア様。道中お気を付けて」
「ええ。――あ、そうだわ。エドワール様。リリアーヌ様の指輪の件、私に任せてくださいませ」

「ああ。よろしく」

 セシルの後ろからアルベリクに似た男性の声がした。

 振り向くとそこには、アルベリクに似ているが、少し背が高く、髪も少し長い青年が立っていた。瞳の色も同じだが、目付きは優しく大人っぽい落ち着いた雰囲気がある。この人がエドワール?

 セシルは一瞬エドワールと目が合ったがサッと反らされてしまった。

「いってらっしゃいませ」

 メアリと爺やが深々とお辞儀をしてオリヴィア達を見送った。セシルも慌ててお辞儀をしたが、いつからこの人達はいたのだろうか。

「ああ。婆や。指輪の件だけど、暇があったらミリアの手伝いをしてやってくれないか?」
「はい。旦那様」
「じゃあ。よろしく」

 旦那様は手をヒラヒラと振ると本館の方へ去っていった。

「今のがエドワール様ですか!?」
「そうよ。アル様に似てらっしゃるでしょう?」
「はい……それに、気配がなかったのですが?」
「あの方は穏和に見えて、アル様より剣に長けていらっしゃるのよ」

 あの細い腕でどうやって剣を持つのだろう。
 爺やは強そうだけど……。

「意外ですね。あ、さっきおっしゃってた指輪って何ですか?」
「それが――クリス王子がアクアマリンの指輪を探しているらしいの。街で失くされたそうなんですけれど、リリアーヌ様が見つけて差し上げたいのですって」

「アクアマリンの……指輪?」

 それって、間違いなく……セシルが持っているあの指輪の事だ。
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