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009☆共犯者①
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彼を見つけたのは二年前——……
私、アリシア・クロレンスがクロレンス公爵邸の庭先で死体、ではなくボロボロのニコを見つけたのは三歳の春だった。
彼はアクターレン・ミルドレッドにたった一人の家族を——実は既に死んじゃっているんだけど——人質にとられた暗殺者。
助けてあげられなくてごめんね。その時私はまだ生まれてすらないの。
『……だ……れだ』
『ねぇ、貴方大丈夫?』
なんかありきたりな言葉をかけてしまったけどこの怪我は大丈夫なんかじゃない。本来なら確か怪我をしている所をクロレンス公爵に拾われて馬丁になる。
……そして私が十歳の頃、アクターレン・ミルドレッドに命令されるがままお父様とお母様を殺してその口封じをされる。……やだっ、辛過ぎるから。
血や泥で汚れ榛色の髪をそっと撫でてみた。小柄だし毛質も猫みたい。確かニコラウス・ブルームは今十五歳。たった一人の家族を奪われてそして人殺しの駒にされる。許せん。許すまじアクターレン・ミルドレッドめっ!!!
『お嬢さま~、アリシアお嬢さま~』
『サラっ、こっちに来て!』
『お嬢様、かくれんぼとは言えあれほど庭から出てはいけないと……えっ、死体っ?!』
『まだ死んでないから!ローガンを呼んで使用人棟に運んで頂戴』
『分かりました。旦那様や奥様にも伝えますからね。勿論アリシアお嬢様が庭より先に出たことも』
『そ、そんな~。ねぇ、サラ二人だけの秘密にしよう?』
『可愛く言ってもそれは聞けません。まったく、庭の護衛をどうやって撒いたんでしょう……』
ふふ、驚くなかれサラ。私何でか分からないけど気配を隠匿できるのよ。鍛えたら暗殺者になれるわね!ならないけど。……なんてそんな事サラには言えないけど。
『それにこの子供を見つけた経緯をローガン様に伝えなくてはいけないんですよ?嘘ついたら私が殺られますから』
『……惜しい人を亡くしたわ』
『だから隠し事はしませんからっ!』
使用人棟に運んだニコの治療をする。
本来なら半日後にお父様が見つけてお医者様を呼ぶんだけど、その時には怪我をしてから大分時間が経っていて足に障害が残るのよね。記憶の無い(振りの)大怪我をしたニコを可哀想に思ったお父様が馬丁として雇う。
ふふ、でも私、ばっちり置きたてほやほやのニコを見つけて"治療も私が魔法でする"から傷一つ残さないんだから!
なんて言ったって四周目だからね、魔力も治療もお茶の子さいさいよ。……さっぱり嬉しくないけど。
それからお父様に頼み込んで私専属の使用人にしてもらったニコに残酷だけどたった一人の家族が売られた先を知らせた。最初は疑っていたけど、最終的に未来視と私の死の運命もアクターレンの悪事も話した。
ニコの妹は過酷な使用人生活で風邪をこじらせて呆気なく死んじゃってるんだ。
現実を見て知ってそして戻ってきたニコと二人大泣きをして、そして二人泣き疲れて眠ってしまいローガンに怒られたのは今では良いのか悪いのかわからないしょっぱい思い出になっている。
『万が一の時は俺がアリシアお嬢様を連れて逃げるから』
その言葉にどれだけ救われたか。
『だったらお願いがあるんだけど……』
お父様とお母様の暗殺を阻止する……これはニコがこちら側になったから何時何処で何が起こるかもうわからない。アクターレン・ミルドレッドの悪事を暴く。最終手段は国外逃亡。
そしてあの日私の共犯者となったニコラウス・ブルームが秘密裏に隣国へ魔導具師となるべく修業に行くのだけど、それはまた別の話——……
私、アリシア・クロレンスがクロレンス公爵邸の庭先で死体、ではなくボロボロのニコを見つけたのは三歳の春だった。
彼はアクターレン・ミルドレッドにたった一人の家族を——実は既に死んじゃっているんだけど——人質にとられた暗殺者。
助けてあげられなくてごめんね。その時私はまだ生まれてすらないの。
『……だ……れだ』
『ねぇ、貴方大丈夫?』
なんかありきたりな言葉をかけてしまったけどこの怪我は大丈夫なんかじゃない。本来なら確か怪我をしている所をクロレンス公爵に拾われて馬丁になる。
……そして私が十歳の頃、アクターレン・ミルドレッドに命令されるがままお父様とお母様を殺してその口封じをされる。……やだっ、辛過ぎるから。
血や泥で汚れ榛色の髪をそっと撫でてみた。小柄だし毛質も猫みたい。確かニコラウス・ブルームは今十五歳。たった一人の家族を奪われてそして人殺しの駒にされる。許せん。許すまじアクターレン・ミルドレッドめっ!!!
『お嬢さま~、アリシアお嬢さま~』
『サラっ、こっちに来て!』
『お嬢様、かくれんぼとは言えあれほど庭から出てはいけないと……えっ、死体っ?!』
『まだ死んでないから!ローガンを呼んで使用人棟に運んで頂戴』
『分かりました。旦那様や奥様にも伝えますからね。勿論アリシアお嬢様が庭より先に出たことも』
『そ、そんな~。ねぇ、サラ二人だけの秘密にしよう?』
『可愛く言ってもそれは聞けません。まったく、庭の護衛をどうやって撒いたんでしょう……』
ふふ、驚くなかれサラ。私何でか分からないけど気配を隠匿できるのよ。鍛えたら暗殺者になれるわね!ならないけど。……なんてそんな事サラには言えないけど。
『それにこの子供を見つけた経緯をローガン様に伝えなくてはいけないんですよ?嘘ついたら私が殺られますから』
『……惜しい人を亡くしたわ』
『だから隠し事はしませんからっ!』
使用人棟に運んだニコの治療をする。
本来なら半日後にお父様が見つけてお医者様を呼ぶんだけど、その時には怪我をしてから大分時間が経っていて足に障害が残るのよね。記憶の無い(振りの)大怪我をしたニコを可哀想に思ったお父様が馬丁として雇う。
ふふ、でも私、ばっちり置きたてほやほやのニコを見つけて"治療も私が魔法でする"から傷一つ残さないんだから!
なんて言ったって四周目だからね、魔力も治療もお茶の子さいさいよ。……さっぱり嬉しくないけど。
それからお父様に頼み込んで私専属の使用人にしてもらったニコに残酷だけどたった一人の家族が売られた先を知らせた。最初は疑っていたけど、最終的に未来視と私の死の運命もアクターレンの悪事も話した。
ニコの妹は過酷な使用人生活で風邪をこじらせて呆気なく死んじゃってるんだ。
現実を見て知ってそして戻ってきたニコと二人大泣きをして、そして二人泣き疲れて眠ってしまいローガンに怒られたのは今では良いのか悪いのかわからないしょっぱい思い出になっている。
『万が一の時は俺がアリシアお嬢様を連れて逃げるから』
その言葉にどれだけ救われたか。
『だったらお願いがあるんだけど……』
お父様とお母様の暗殺を阻止する……これはニコがこちら側になったから何時何処で何が起こるかもうわからない。アクターレン・ミルドレッドの悪事を暴く。最終手段は国外逃亡。
そしてあの日私の共犯者となったニコラウス・ブルームが秘密裏に隣国へ魔導具師となるべく修業に行くのだけど、それはまた別の話——……
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