400文字小説

鰻屋十兵衛

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朝のルーティン

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私は目が覚めると必ずため息を吐く。
そしてため息を吐きながら少ない朝食を食べ、ため息を吐きながらスーツを着込み、ため息を吐きながら会社へ向かう。
幸せなんかもの凄い数を逃していそうなものだけれど、今更感を否めない。ルーティンと化している。
朝がとてつもなく嫌いで夜は眠れないから時折睡眠薬を飲んで寝る。

少し前まで妻がいた。朝食を食べるのもスーツを着るのもなんやかんや世話してくれた。病で亡くしてからはこんな朝を過ごしている。

ある日奏という女性と出会った。凄く妻に似ている女性で、私は彼女にアタックしまくり、その甲斐あって結婚することができた。

しかしある日から彼女の顔が変わっていった。目元が彼女は似ていない、背丈が彼女と似ていない。もっと似ている女性が良い。私は彼女を殺して山に捨てた。

目を覚ますとため息を吐く。そして、もういない妻を探す。

私はため息を吐いた。
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