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僕の役割は文化祭実行委員
20話
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後夜祭は限られた照明とブルーシートで座る生徒などがいて、普段の学校ではありえない少しカオスな雰囲気になっている。
後夜祭……といってもやることはシンプルである。
キャンプファイヤーとその周りをフォークダンスしたり、飲み食いをするといった内容である。
本当は企画ももう少し練りたかったけど、昨今は教師たちの働き方改革の兼ね合いもあって時間が限られてるらしい。
……まあ、残業嫌いな松本先生が22時まで働くとなると発狂しそうだし、妥当といえば妥当なのかもしれない。
「どんなことがあるのかなー?ワクワクだよ!」
「そうだね……今回はちょっとした演出も用意したんだ!」
「演出?」
「そう、多分テンション上がると思えよ……っと、噂をすれば。」
突如証明は暗くなり、スポットライトが1点に集まり袴を着た女性に集まる。
この女性は弓道部の主将である。
彼女に火矢をつけてもらい、キャンプファイヤーを着火するようになっている。
まあ、在り来りだけど王道は洗練された選択肢なので間違いはなさそうだった。
「あれ?直輝くん……あれって……。」
しかし、舞衣は別の人を指していた。
何やら60代くらいの先生がキャンプファイヤーをするためのキャラクターのオブジェに何かをかけていた。
「ああ……多分灯油じゃない?結構使うって聞いたし……。」
しかし、このイベントって実は矢が刺さるだけで火矢が着くことって珍しい。
油って温度がある程度高くないと引火しないので化学的に考えたら当たり前なのだ。
しかし、なにやら違ったみたいだ。
「今年こそは……必ずつけるんだ!」
先生は何やらボソボソと呟きながら液体を大量にかけていた。
すると、辺りから明らかに灯油とは違う匂いがしていた。
なんというか……トリュフの瓶詰めのような匂い。
いわゆる、ガソリンのような匂いがした。
お……おい、大丈夫……だよな……?
「舞衣……少し、離れるか。」
「え?」
俺達は距離をとると、飯田のアナウンスの声が聞こえる。
「みんなー!文化祭楽しんでるかー?」
………………。
いや、めっちゃしらけてるやんけ。
「みんなーー!!文化祭、楽しんでるかーー!?」
「「「おおーー!」」」
「OK、いい返事だ!いよいよフィナーレということで……キャンプファイヤーイベントをはじめるぞ!3.2.1のリズムで火矢を発射するから……皆さんご昭和ください!じゃあ……いきますよー!せーのー!」
「「「3........2..........1............」」」
「発射!!!」
弓道部の主将が強く弓がしならせ、風を切るかのように矢が発射される。
そして、火がオブジェに刺さると……小さな火が徐々に広がって言った。
「やったぞ!みんなー!着火大成…………。」
ドカーーーーーーーン!!!!
飯田が大成功……という前に日の広がりが大きくなり、直径6mていどのキャンプファイヤーの予定が直径数十メートルの巨大な火柱に変わって言った。
「ちょーーーー!?みんな、逃げてください!火がでかい!!!」
「きゃーー!」
「やべぇよ……やべぇよ……。」
かなり離れてるのに強い熱気の爆発が肌を焼くように熱かった。
俺と舞衣も唖然としてその火柱を眺めている。
しかし、幸いなことに怪我人は一人もいなかったし、火は収まって普通のキャンプファイヤーに戻って行った。
俺はこの時確信した。
多分……ガソリンは車の運転以外には基本使っちゃいけないんだと、そして……これ軽く問題になるんじゃないかと冷や汗が止まらなかった。
そして、それに追随するように、後ろから花火も上がっていく。
「すごいね!スリルとロマンチックが相まってこんな演出考えてたんだ!流石直輝くん!」
「あはは……う……うん、そうだね。」
火柱の件は置いといて、花火は周辺地域の雨で使われなかった地元の花火を寄付していただくことになったものである。
繋がりから何かを成し遂げるのはこんなにも大きな結果を産むのだと……なにか胸にグッとくるものがある。
キャンプファイヤーの周辺は、いつの間にやら人が集まって楽しくジュースを飲み食いしてはバカふざけをしている男子生徒とか……いい感じになってる男女とか、フォークダンスをする人もいて楽しみ方は十人十色だった。
でも、それでいい……カオスと自由さが共存するこの文化祭はみんなが主役になれる場なのだから。
それを作ったことが、なによりの財産だった。
「あー!!なんか、自分で作った企画だけど……めっちゃ疲れた!……でも、なんかすげー成長できた気がする。」
「あはは、直輝くん……確かに前より凛々しくなったかも。」
「そうか?」
「うん!」
お互いに火をみて、その自然に揺らぐ姿を見て同じ事を感じつつ、その時間を共有している。
今までにない感覚だ。
ゲームの画面の上で感じる幸せなんかじゃない、何かに苦悩し……乗り越えてやりきる。
そんな強い感情を歓喜と呼ぶのかもしれない。
「ねえ、直輝くん……踊らない?」
「キャンプファイヤーにフォークダンスってか……体育以外でやったことないけど……。」
「大丈夫よ、何となくで楽しめばいいから。」
俺達も日の周りでフォークダンスもどきの動きをする。
舞衣と歩幅を合わせつつ、時折舞衣が回ったり、時に抱きかかえたりもする。
「ちょ、これ……むずかしいな。」
「大丈夫……私も合わせるから!」
まるで、その息を合わせて行く行為は……愛そのもののような気がした。
フォークダンスとして成り立ってるか分からないけど、ぼんやりと体育で習った動きをして俺達は音楽に合わせて動く。
「いい感じだよ!直輝くん……。」
「おお……なんか、楽しくなってきた。」
そして、曲はクライマックスになり少し体が熱気で汗ばんできて、動きがスムーズになってお互いの動きがシンクロしていく。
そして、音楽の終わりとともにフィナーレを決める。
音楽は止まり……ギャラリーは拍手喝采で溢れていて俺の心拍数はバクバク鼓動を刻み、手足が熱くなるのを感じた。
「舞衣!」
「……はい。」
「その……抜けててポンコツなところがあるけど……これからも、彼氏やってもいいかな?俺……改めて舞衣が……好きです。」
すると、舞衣が俺を抱きしめる。
「そんなの、直輝くん以外考えられないよ。絶対……逃がさないから覚悟しててね。」
「ああ、もちろん。」
俺と舞衣はキャンプファイヤーと人混みに紛れて接吻を交わす。
こうして、たくさんの試練で悩むことの多かった俺の文化祭編が終わりを迎える。
とても疲労した感覚と……何かやり遂げた達成感を残して。
☆☆
「……おきー!」
「ん……なんだよ……。」
チュンチュンと、鳥のさえずりが聞こえる。
秋の少し乾いた朝は少し空が透き通っていて、少し体が身震いするほどである。
「なーおーきー!起きなさい!」
「あ、やべぇ……寝すぎた。」
そして、久しぶりに母ちゃんが起こしに来る。
昨日も楽しみすぎてどうやらかなり疲れてたみたいだ。
俺はいつも通り身支度を整えて、食事を終えてから、いつも通りの学校の時間を目指す。
そろそろ学校がはじまる。
「じゃあ、行ってきます。」
「うん!行ってらっしゃい。」
そして、いつも通り家を出る前に、ふと立ち止まる。
「あ、そうだ……ついこの間まで舞衣トラブってた。でも……なんとか、乗り越えて仲直りしたよ。」
「そうみたいね。」
「いや、知ってたのかよ!?」
「知ってるも何も……本人から相談されてたからね~。」
そう言って母ちゃんはにんまりとわらってスマホのトーク履歴を俺に見せてくる。
「でも、さすがうちの息子!文化祭とかもろもろ……どんな事があってもあなたは私の自慢の息子よ!」
「あはは……なんだよ……それ。」
俺は母ちゃんを背に靴紐を結ぶ。
制服も衣替えで冬服に変わるのだが、新調したカーディガンが妙に暖かかった。
「んじゃあ、改めて行ってきます。」
「行ってらっしゃい!」
1つの事が終わる。
それはものすごく寂しいけど、それは新しいことの始まりでもあった。
俺は、少し紅葉してる木々を過ぎり、黄色い落ち葉を踏んで……新たな1歩を迎えた。
後夜祭……といってもやることはシンプルである。
キャンプファイヤーとその周りをフォークダンスしたり、飲み食いをするといった内容である。
本当は企画ももう少し練りたかったけど、昨今は教師たちの働き方改革の兼ね合いもあって時間が限られてるらしい。
……まあ、残業嫌いな松本先生が22時まで働くとなると発狂しそうだし、妥当といえば妥当なのかもしれない。
「どんなことがあるのかなー?ワクワクだよ!」
「そうだね……今回はちょっとした演出も用意したんだ!」
「演出?」
「そう、多分テンション上がると思えよ……っと、噂をすれば。」
突如証明は暗くなり、スポットライトが1点に集まり袴を着た女性に集まる。
この女性は弓道部の主将である。
彼女に火矢をつけてもらい、キャンプファイヤーを着火するようになっている。
まあ、在り来りだけど王道は洗練された選択肢なので間違いはなさそうだった。
「あれ?直輝くん……あれって……。」
しかし、舞衣は別の人を指していた。
何やら60代くらいの先生がキャンプファイヤーをするためのキャラクターのオブジェに何かをかけていた。
「ああ……多分灯油じゃない?結構使うって聞いたし……。」
しかし、このイベントって実は矢が刺さるだけで火矢が着くことって珍しい。
油って温度がある程度高くないと引火しないので化学的に考えたら当たり前なのだ。
しかし、なにやら違ったみたいだ。
「今年こそは……必ずつけるんだ!」
先生は何やらボソボソと呟きながら液体を大量にかけていた。
すると、辺りから明らかに灯油とは違う匂いがしていた。
なんというか……トリュフの瓶詰めのような匂い。
いわゆる、ガソリンのような匂いがした。
お……おい、大丈夫……だよな……?
「舞衣……少し、離れるか。」
「え?」
俺達は距離をとると、飯田のアナウンスの声が聞こえる。
「みんなー!文化祭楽しんでるかー?」
………………。
いや、めっちゃしらけてるやんけ。
「みんなーー!!文化祭、楽しんでるかーー!?」
「「「おおーー!」」」
「OK、いい返事だ!いよいよフィナーレということで……キャンプファイヤーイベントをはじめるぞ!3.2.1のリズムで火矢を発射するから……皆さんご昭和ください!じゃあ……いきますよー!せーのー!」
「「「3........2..........1............」」」
「発射!!!」
弓道部の主将が強く弓がしならせ、風を切るかのように矢が発射される。
そして、火がオブジェに刺さると……小さな火が徐々に広がって言った。
「やったぞ!みんなー!着火大成…………。」
ドカーーーーーーーン!!!!
飯田が大成功……という前に日の広がりが大きくなり、直径6mていどのキャンプファイヤーの予定が直径数十メートルの巨大な火柱に変わって言った。
「ちょーーーー!?みんな、逃げてください!火がでかい!!!」
「きゃーー!」
「やべぇよ……やべぇよ……。」
かなり離れてるのに強い熱気の爆発が肌を焼くように熱かった。
俺と舞衣も唖然としてその火柱を眺めている。
しかし、幸いなことに怪我人は一人もいなかったし、火は収まって普通のキャンプファイヤーに戻って行った。
俺はこの時確信した。
多分……ガソリンは車の運転以外には基本使っちゃいけないんだと、そして……これ軽く問題になるんじゃないかと冷や汗が止まらなかった。
そして、それに追随するように、後ろから花火も上がっていく。
「すごいね!スリルとロマンチックが相まってこんな演出考えてたんだ!流石直輝くん!」
「あはは……う……うん、そうだね。」
火柱の件は置いといて、花火は周辺地域の雨で使われなかった地元の花火を寄付していただくことになったものである。
繋がりから何かを成し遂げるのはこんなにも大きな結果を産むのだと……なにか胸にグッとくるものがある。
キャンプファイヤーの周辺は、いつの間にやら人が集まって楽しくジュースを飲み食いしてはバカふざけをしている男子生徒とか……いい感じになってる男女とか、フォークダンスをする人もいて楽しみ方は十人十色だった。
でも、それでいい……カオスと自由さが共存するこの文化祭はみんなが主役になれる場なのだから。
それを作ったことが、なによりの財産だった。
「あー!!なんか、自分で作った企画だけど……めっちゃ疲れた!……でも、なんかすげー成長できた気がする。」
「あはは、直輝くん……確かに前より凛々しくなったかも。」
「そうか?」
「うん!」
お互いに火をみて、その自然に揺らぐ姿を見て同じ事を感じつつ、その時間を共有している。
今までにない感覚だ。
ゲームの画面の上で感じる幸せなんかじゃない、何かに苦悩し……乗り越えてやりきる。
そんな強い感情を歓喜と呼ぶのかもしれない。
「ねえ、直輝くん……踊らない?」
「キャンプファイヤーにフォークダンスってか……体育以外でやったことないけど……。」
「大丈夫よ、何となくで楽しめばいいから。」
俺達も日の周りでフォークダンスもどきの動きをする。
舞衣と歩幅を合わせつつ、時折舞衣が回ったり、時に抱きかかえたりもする。
「ちょ、これ……むずかしいな。」
「大丈夫……私も合わせるから!」
まるで、その息を合わせて行く行為は……愛そのもののような気がした。
フォークダンスとして成り立ってるか分からないけど、ぼんやりと体育で習った動きをして俺達は音楽に合わせて動く。
「いい感じだよ!直輝くん……。」
「おお……なんか、楽しくなってきた。」
そして、曲はクライマックスになり少し体が熱気で汗ばんできて、動きがスムーズになってお互いの動きがシンクロしていく。
そして、音楽の終わりとともにフィナーレを決める。
音楽は止まり……ギャラリーは拍手喝采で溢れていて俺の心拍数はバクバク鼓動を刻み、手足が熱くなるのを感じた。
「舞衣!」
「……はい。」
「その……抜けててポンコツなところがあるけど……これからも、彼氏やってもいいかな?俺……改めて舞衣が……好きです。」
すると、舞衣が俺を抱きしめる。
「そんなの、直輝くん以外考えられないよ。絶対……逃がさないから覚悟しててね。」
「ああ、もちろん。」
俺と舞衣はキャンプファイヤーと人混みに紛れて接吻を交わす。
こうして、たくさんの試練で悩むことの多かった俺の文化祭編が終わりを迎える。
とても疲労した感覚と……何かやり遂げた達成感を残して。
☆☆
「……おきー!」
「ん……なんだよ……。」
チュンチュンと、鳥のさえずりが聞こえる。
秋の少し乾いた朝は少し空が透き通っていて、少し体が身震いするほどである。
「なーおーきー!起きなさい!」
「あ、やべぇ……寝すぎた。」
そして、久しぶりに母ちゃんが起こしに来る。
昨日も楽しみすぎてどうやらかなり疲れてたみたいだ。
俺はいつも通り身支度を整えて、食事を終えてから、いつも通りの学校の時間を目指す。
そろそろ学校がはじまる。
「じゃあ、行ってきます。」
「うん!行ってらっしゃい。」
そして、いつも通り家を出る前に、ふと立ち止まる。
「あ、そうだ……ついこの間まで舞衣トラブってた。でも……なんとか、乗り越えて仲直りしたよ。」
「そうみたいね。」
「いや、知ってたのかよ!?」
「知ってるも何も……本人から相談されてたからね~。」
そう言って母ちゃんはにんまりとわらってスマホのトーク履歴を俺に見せてくる。
「でも、さすがうちの息子!文化祭とかもろもろ……どんな事があってもあなたは私の自慢の息子よ!」
「あはは……なんだよ……それ。」
俺は母ちゃんを背に靴紐を結ぶ。
制服も衣替えで冬服に変わるのだが、新調したカーディガンが妙に暖かかった。
「んじゃあ、改めて行ってきます。」
「行ってらっしゃい!」
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