僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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スケベな友人が泥酔お姉さんのせいでまともになる件

7話

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俺たちは千鶴さんと別れたあとは少し夕日の指す下呂温泉街の観光をしていた。

昼間は温泉にいたのか、より一層人集りが集まりちょっとした原宿のような賑わいになっていた。

年齢層は年配の方も入れば、比較的若い人も沢山居たり……カップルも居たりして、伝統ある温泉街と言うように長年愛されてきたのが伺える。

ほんのりと湯けむりが立ち、林立している旅館からの温泉の香りがする。
比較的内陸部のため肌寒さが目立ち、より一層この後の温泉が楽しみになっていた。

「いや~千鶴さん、素敵な人でしたね!俺話ししてて好きなことに全力か人って尊敬するなって思いましたよ!」
「ね~!たまに可愛いところもあるし!」
「確かに!ああいうダウナー系も中々……。」

俺はハッとすると笛吹さんがジト目でこっちを見ていた。

「れんれん……そういえば女好きだったな。」
「すみません……。」

俺ははっきり言ってすけべである。
いつも遥香さんとか素敵な女性を見ると少し鼻の下を伸ばしてしまい、親友の直輝からもスケベと言われている。

「ここにも!素敵な女性がいるんですけど!」

すると、ちょっとヤキモチを妬いたのか笛吹さんが俺の両頬を掴み顔を近づける。
普段だらしない面しかみてないから、最近女として見てなかったけど、ルービックキューブの別の面を見てしまったように、もしくは同じ面のはずだけど少し変えられたかのように、少しだけ笛吹さんが可愛く見えた。

突然積極的になる彼女に心拍数があがり、思考が鈍る。
次の言葉が思い浮かばない……完全に彼女の土俵だったけど、これだけははっきり言おう。

「じゃあ、せめて毎日お風呂入ってから言ってください!笛吹さん風呂入ってれば美少女なんですから。」
「ぬっ!こやつめ……。」

とはいえ……同居してる身としてはせめて毎日お風呂に入って欲しかった。
今日の目的のひとつではあるのだけどね。

二人で温泉街をまた並んで歩く。
川の向こう岸の温泉街はそこまで大きくないものの……妙に標高差があって息が上がってしまう。

笛吹さんは、最初は大股でズシズシ歩いていたけど……徐々に歩くのがゆっくりになって、最後はひょろひょろと歩いていた。

「ふ…普段運動しないせいで……しんどい……。」
「一旦休みますか。」
「そだね……お!なんか可愛い店がある!」

笛吹さんが街の先を指さすと、バター専門店というのがあった。
メニューを見ると、バターサンドとか……焼きおにぎりなんて売っている。
これは……ちょうど取材で疲れた体が欲するカロリーである。

「俺はネギ焼きおにぎりにしますね。」
「私は……バターサンド!」

俺はお会計を済ますと、焼きおにぎりとバターサンドが出される。
バターサンドはクッキーのようなもので拳の半分くらいの大きさのバタークリームが乗せられていた。

対する焼きおにぎりは……カップにネギが敷きつめられ、その上に焼きおにぎり、バターが乗せられてあった。

なんとも豪華なつくりである。
小さくてもしっかり満足感がありそうだった。

そして……俺は出入口付近であるものと対峙する。

「へぇ……バターミルク足湯ですって。」
「バターミルク?」
「バターを作る際に不要な水分を足湯にしたらしいですね。」

そして、真ん中にはバターミルクに浸かった牛のモニュメントがあり、一層存在感を際立たせていた。

好奇心で入ってみると……ほんのりと香るバターの香りと温泉のぬるさが程よくリラックスさせる。
ツーリングで酷使した足が初めてリラックスしたのを感じた。

「あ~3日ぶりの風呂だ。」
「……笛吹さん、マジであとでちゃんと入りましょうね?」
「…………ごめん。」

温泉に癒されながら俺たちは静かに漫才をしながら、お互いのものを食べる。

焼きおにぎりは……素朴な醤油ベースの味とカリッとした食感……そこにバターのコクが味わいをリッチにさせて、俺はその素材の味を引き出した食べ物に驚愕してしまった。

「うま……!?なんだこれ……。」

俺が美味しそうに食ってると、笛吹さんがじーっと焼きおにぎりをみていた。

「いや、笛吹さんもあるじゃないですか。」
「食べ終わっちゃった。」
「いや早いよ!?もっと味わってください。」
「美味しかったです!」
「……売れっ子小説家とか思えない感想どうもありがとうございます。」

この人、たまに精神年齢小学生並みだと思う時がある。
この歪さが才能を引き出すフックになってるんだろうけど。

「……一口どうぞ。」
「いいの!?うわー!焼きおにぎりうめぇ……!」

全くこの人は……確かに甘やかしすぎなのは自覚はあるけど、どうにもこの人は何かをしてあげたくなる。
これは、ある意味ひとつの才能なのかもしれない。

「うん!このバターのリッチさが!」
「ちゃんと噛んでから話しましょうね、お行儀悪いから。」
「はーい!」

この温泉街は本当に飽きない。
その後も飛騨牛の肉寿司というのも食べてみたが、肉と脂が均一に乗っていたり、足湯カフェなんてものもあったりして時代に順応したグルメ温泉街こそがこの下呂温泉の魅力だと思った。

そんなこんなで俺たちは食っては坂道を歩き……食べては足湯に浸かることを繰り返していて、贅沢な時間を過ごしていたと思う。

そして、歩いた矢先に俺たちは……神社にたどり着いた。

「ちょっと……お参りしていきましょうか。」
「うん!」

俺たちは鳥居の前で一例をして、お互い5円をもってお賽銭する。
お参りなんて滅多にしないな……とおもいつつも、旅行に加えるだけで気が引き締まる気がする。

意外と何かをお願いするってすごくいい事だと思う。
無意識に自分のやりたいことに走って行けるような気がしたから。
笛吹さんは……特に顕著だ。

「小説売れますように小説売れますように小説売れますように!」

小説に対する思いがこんなにもすぐに出る。
やっぱり俺は、彼女のそんなところが好きだった。

俺は家内安全とか、健康とか……ぼんやり進路決まるとか……彼女の色がハッキリとした朱色のような色だとすると、俺の願いは緑なのか青なのかどっちつかずの色をしていた。

「笛吹さんって……やっぱプロですよね。」
「え?どした?」
「なんというか、だらしないように見えて……やっぱり小説はプロフェッショナルにこだわってるというか、やりたいことをハッキリしてるとこ……凄いと思います。」
「あはは!普段から私のことを子供扱いしてるからだぞ少年!」

むう……なんかムカつく。

「私だっていっぱい悩んだんだよ!接客も事務も何やってもダメな私が辿り着いたのがこの道なんだよ。嫌われ者の私に手を差し伸べてくれたのがこの世界だった。」
「ほう。」
「あの神主さんとか、売店のおっちゃん、ホテルのフロントさんだって……それぞれの世界があって物語があるんだよ。もちろん……れんれんだって!」

こんな事を語る笛吹さんは、まるで世界の語り部であるかのように壮大で、堂々としていた。

「だから……比べず人生を楽しみな!人生楽しんだ者勝ちだぜ!」

そして、心から人生を楽しんでいるこの女性は……どのプロフェッショナルよりもかっこよかった。

俺はまだ鳥居を出ていないので、こっそり神様にお願いした。
神様もう少し、この人と一緒に居させて欲しいです……なんて、素朴な願いを小さく祈るのだった。

日はすっかり暮れて、賑わいが少し寂れ、ほんのりと感じた寒さが際立ってくる。
旅はまだまだ続いていく。
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