僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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スケベな友人が泥酔お姉さんのせいでまともになる件

6話

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ここは飛騨川を超える大きな橋。
俺たちはそこをゆっくりと進んでいく。

川は温泉の排水も行ってるのか少し湯気が目立ち、橋の下にも人溜まりができている。

もはや何があっても不思議では無い観光地雰囲気がこれでもかと出ていた。

「いえーい!げろげろー!」
「ちょ……走らないでくださいよ!」

笛吹さんは子供のようにはしゃいでいる。
まるでアラサーだということを感じないような明るさだった。
まあ、この人骨格からして若いとはいつも思っていたけど。

すると、笛吹さんは急に立ちどまり、ビルのような建物に入っていった。

い……意外と足速い。
ジョギングしてる俺でさえ追いかけるので精一杯だった。

ビルに入ると……そこはたくさんの焼き物や皿、徳利などが並んでいた。

「こ……これは。」
「美濃焼だね!」
「あー!土岐市とかにある……あれ、あそこって岐阜県でしたっけ?」
「……え、何言ってんの?れんれん……。」

ちょ、なんかムカつく。
逆になんで笛吹さん土岐市と美濃焼だけピンポイントで知ってるんだよ。

「すみません、結構無知なもので……そういえば美濃焼って、どんな特徴があるんですか?名前はよく聞くけど……。」
「え……?う……うーん、わかりません!」

良かった、いつもの笛吹さんだった。
でも……よく見ると陶器とか磁器もあれば……デザインもまるで違う……というか、違いすぎるので美濃焼の特徴が掴めなかった。

「美濃焼はね……特徴がないのが特徴なんだよ。」

すると、店員らしき女性が話しかけてくる。
少し派手めな髪にピアスが幾つも空いて……それでいて、やさぐれたような雰囲気が出ていた。

「て……店員さんですか……?」
「ええ……まあ。」

いや素っ気ない……。
きっと美人に入る部類なのだけど……サブカル気質が強すぎてまるでV系のバンドマンを見るような感覚に近かった。

「見てくれ……このように、派手なデザインもあればシンプルなのもある。美濃焼はね、なんで特徴がないのに残っているのかと言うと……時代に合わせて変化できる柔軟性があるんだよ。」

このお姉さん、見た目に反してかなり美濃焼にこだわりがあるようだった。
お皿のことを語るお姉さんは、真剣に話していて人は見た目ではないなと感じた。

「もしかして……お姉さんも美濃焼作ってるんですか?」
「ああ……。ちなみにお二人さんはどんなのが好きだい?」
「あ……うーん……そうだな。」
「酒!!」

突然笛吹さんが割って入ってくる。
こんなにも堂々とお酒と言われると……否定することは邪道だと感じた。

「あはは、そうかいそうかい!じゃあ……これなんてどう?」

すると、お姉さんは徳利を出す。
表面が青く輝いて……残り下半分は黒くなっていた。
ぐい呑みも同じように加工されていて、青く輝く様がとても美しかった。

「すご!?これお姉さんがつくったのー!?天才じゃん!」
「ああ……まあ。」

お姉さんはちょっと恥ずかしいような、ちょっと嬉しいような顔で目を逸らしている。
接客としてはなんとも言えないけど、それだけこのお姉さんは真剣に美濃焼に取り組んでるのかなとか考えてしまった。

俺たちは、目線を合わして静かに頷く。

「お姉さん!この徳利かっこいい!買います!」
「おお……ま、毎度!」

どうやら褒めると年相応の反応をする雰囲気だった。
あれ、意外と可愛くないか?この人。

「あの……どうしてお姉さんってこの美濃焼をすることになったんですか?」
「……私もね、昔から結構な悪ガキだったんだよ。それで、若気の至りで、やらかしまくってたら居場所がなくなってな?そんで出会ったのが美濃焼なんだよ。そっからは……この道一筋だ。」

すごい……めっちゃしっかりとした職人さんじゃん。
笛吹さんは、目をキラキラさせてバキバキのスマホにメモをしている。
あ、もしかして……。

「あの……私、実は小説家をしてまして、取材させて貰えませんか?」
「しょ……小説……?あんたが……?」

どうやら、次の小説の主人公決定したらしい。
サブカル気質の美濃焼職人。たしかに主人公感あるな。

「あのな、こっちもプロでやってるんだ。中途半端なものじゃ受けないぞ?」
「ああ……いや、すみません。この人の小説……つい最近映画化してまして。」
「は……え……?」

お姉さんは笛吹さんをみて静止する。
気持ちはわかります。
笛吹さんは良くも悪くも小説家っぽくないからな~。
あ、いやでも酒飲んだくれなところは太宰治に通じるところはあるか。

「えーー!?翼の折れた天使の作者!?」

お姉さんのやさぐれた灰色の声から年相応の黄色い声が店に響き渡る。

「ちょ……しー!」
「え、本当に笛吹さやかさんなんですか!?映画言ったし……昔から本も買ってましたよ!」

ああ、しかもやっと敬語使うようになった。
接客中に敬語という概念はないのだろうか……?

「でも……ホントなんですか?」
「ああ……これ、マイナンバーカードです。」
「本物だ!」

いや、本人確認をマイナンバーカードで見せるなし。

「お姉さん~なんというか、この美濃焼の姿勢とか……生い立ちとか主人公っぽいからモデルやってくれませんか?」
「え……私が……主人公……?私がなって……いいの……?」

ああ、ダウナーサブカルお姉さんはもうどこにもいなくて目の前にいるのはシンデレラになりそうな女の子がそこにいた。
いや、誰だあんた。

こうして、まさかの1件目でなんとなく通りがかった美濃焼店で小説のネタが見つかったのだった。

さて、彼女の取材は俺も同行させてもらった。

彼女は佐渡千鶴。
現在27歳の美濃焼職人だ。

元々中高生の頃はバイクを乗り回し、破壊の限りを尽くす不良で教師に報復として車のガラスを割り少年院に行く。

その後も悪事を働くのだが、両親が他界したことをきっかけに働くことを決心するも……彼女の経歴によりバイトすら雇ってくれない日々。

そんな中、とある年配の美濃焼職人に雇ってもらい、徐々に更生しつつも美濃焼の技術を上げて下呂温泉に店を構えるほどに成長……。

職人に認められ、その職人も間もなく老衰により亡くなり、彼の気高き精神は彼女が継いでいく。

そんな話を楽しそうに話してくれた。
俺はもう彼女を見た目で蔑むことはできなかった。
それだけ、好きなことを真剣にやってきたのだから。
なんというか……この人笛吹さんと似ている。

「それでね……もう私は、毎日寝る間も惜しんではろくをまわし……ひっく。」
「千鶴ちゃん!いや~もう尊敬だよ~。」
「いやいや~さやちゃんもすごいよ!両親と離れて施設で孤独を味わいながらも……あの神作小説を書きあげるなんて!」

境遇が大変なところも……クソ酒飲みなところも。

「いえいえ~拙作をどうも~。」
「私はね!あんたにいいたいの!私がひとつも焼き上げられなくてこの道を辞めようかなと思った時にあんたの小説に出会って……人に貢献することの大事さを学んだんだ!翼が折れていても、天使としての使命を全うして人に捧げる大事さを知った!だから今があるんだ!」

……どうやら、本当に彼女の小説が好きらしい。
これは本人からするとかなり運命的なんだろう。
それにしても、笛吹さんはすごい。
普段はあんなに自堕落で1人で生きていけないのに……わかる人には彼女の良さがわかってしまうのだ。

まるで、1つの宗教の教祖のように……たまに俺もゾッとするようなカリスマ性を出す。

もしかして、俺が飼ってるお姉さん……めちゃくちゃすごい人なのでは?と少しだけ畏れてしまう。

少し悲しかったのは……本気で好きなことに打ち込んでるふたりに、少しだけ置いてけぼりにされてるような感じがした。
いや、ついていけなかった。
なぜなら俺はまだ……彼女らに誇れる程、なにかに打ち込んでいなかったから。

「それで……さやちゃん、この人とは……?」
「あー、れんれんはね!運命共同体!」

そう言って……彼女は俺の腕を抱きしめるように組んでいく。

「ちょ……笛吹さん!?」
「翼の折れた私の……翼のような存在なんだよ!れんれんって。」

どうやら、置いてけぼりと思っていたのは……俺だけのようだった。

旅は面白い。
こうして普段出会うはずのない人たちを繋げてくれるまるで人生という名の川の歪みのようなものである。

俺はどうやら……ここにいていいんだとおもったら、より一層この時間を楽しむことが出来た。

下呂市の飲食店で俺たちはテラスで談笑をしながら、街並みをみると人々は浴衣を着ては食べ歩きをして、祭りのような混沌さが際立つ不思議な光景と、たくさんの人の声が重なってノイズのように聞こえ……ぼんやりと温泉の匂いがする。

まだ、旅の中盤……俺たちの波乱の旅はまだまだこれでおわりそうにはなかった。
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