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遥香と秘境の吊り橋物語
1話
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私は天野遥香、32歳のシングルマザーである。
今日も今日とて1日が無事終わる。
たまーに神宮寺さんのメイド喫茶でバイトして、家事をする。
直輝とじゃれたりして、日常は当たり前のように過ぎ去っていくのだけど……。
「あー!退屈!!」
私は何を隠そう元AV女優。
それも25日ぶっ通しで働いていて、それはもうハードなスケジュールでハードなことをして、そんな私が家事のみの生活で収まるだろうか。
否、断じて否だとおもう。
「なんだよ母ちゃん、急にギャーギャー騒いで……ヒステリック?」
「直輝!私は退屈なの!」
「お……おう。とりあえず話は聞くけど。」
とにかく直輝はテーブルに座り、お互いにお茶を飲む。
テーブルには知り合いから貰ったチョコとかおかきなどが雑多に並べられ、私たちのティータイムが始まる。
「それで、母ちゃんはなにしたいの?」
「何……ってそりゃあもうスリルとかリラックスしてバーンと楽しみたいのよ!」
「すまん、ちょっと何言ってるか分からない。」
いけないいけない、私もストレスが溜まると抽象的なことを言ってしまう。
「だって……誰かさんが文化祭でほとんど帰ってこなかったりしたし、わかる?美味しい料理を作って待ってるのに連絡も無しでテーブルに座らされる私の気持ち!」
「ごめんて、わかったよ。今回は旅行でもなんでも付き合うから。」
「やった!流石直輝!」
そうと分かれば話が早い。
なんせ直輝は我が家のブレイン担当だから、私の旅行には必須と言っても過言では無いからだ。
「そんで、母ちゃんはスリルとかリラックスして……っていってたな。」
「うん!どこに行こっか、長野……はこの前直輝行ったし、山梨も富士五湖の時に回ったもんね。」
「そうだな……。」
私たちはお茶を飲みながら考える。
お茶……スリル、非日常……。
「あ、静岡はまだ行ってなかったわね。」
「ああ……確かにな。」
静岡はお茶で有名だ。
浜松でもいいし、伊豆など案外栄えてる面と自然に溢れた面が共存する件でもあるので興味はものすごくある。
「じゃあ、静岡のなんかヤバそうなとこ行きましょ!」
「……ざっくりだな、おい。」
すると、直輝がなにか思い出したかのように手をぽんと叩き、顔が少しニヤついていた。
「母ちゃん、静岡のいいとこ思いついた!」
「え、どこどこ?」
「大井川!」
「……川?」
私は、すぐにスマホで大井川と検索をする。
大井川というのは、静岡県北部から流れる川の名称らしい。南アルプスに位置して、すぐ西には長野県と東には山梨県がある県境の秘境だった。
吊り橋の名所と呼ばれ、渓流と温泉が有名で……。
「ここ!いいじゃない!」
「でしょ、アニメとかでもやっててめちゃくちゃ景色いいから行ってみたいな~とかは思ってたんだ。ここならスリルも味わえるんじゃないか?」
「そうとなれば……しゅっぱーつ!」
「まてまて、東京からだとクソハードだぞ……ずっと車一台分のスペースを走らなきゃになる!」
すぐ旅行を提案する直輝が少し怖気付く。
確かに調べてみるとヘアピン坂だらけになっていて、行くのも苦労なのかもしれない。
「じゃあ、今回は友達とか呼びましょ!」
「おお……じゃあ飯田とか?」
「そうそう!」
とはいえ、私も誰か呼びたいものである。
誰にしようか……と思いつつ連絡先を辿る。
しまった、社会人になると友達ってこんなに増えにくいんだと少し残念な気持ちになったけど、その中で1人ノリが良さそうな人がいた。
急にかけて迷惑かなと思いつつも、その人物とは親交を深めたかったのもあって、意を決して電話をかけてみた。
「もしもし。」
「ああ、ことねさん!お疲れ様です。」
「遥香さん、珍しいですね。」
そう、その人物とはメイド喫茶のメイド長の神宮寺ことねさんだ。
普段バイトでお世話になってるし、仲良くしたい場面が欲しかった。
「あの、今週の土日息子と旅行に行くんですけど、ことねさんも良かったらいかがですか?」
「ほう……どちらに?」
「大井川っていう静岡の秘境なんですけど。」
「吊り橋の名所ですね、いいですよ。」
「ほんとですか!じゃあまた詳しいことは連絡しますね!」
「ええ、楽しみにしてます。」
ことねさんも思いの外アウトドアが好きなのか、ノリノリでOKをしてくれた。晩酌の相手ができて楽しみが増えそうだった。
「やった!ことねさん誘ったわ!直輝は?」
「飯田は下呂温泉行くっぽい……あと誰誘うか。」
「舞衣ちゃんとかは?」
直輝はドライなところがある。
あんた彼女持ちなんだから声掛けていいと思うんだけど……?
「そっか、それもそうだ。後は……アニオタの彩奈とかも良さそう。大井川行きたいって言ってたし。」
「直輝の知り合いの女性比率多いわね。じゃあ今回はハーレムじゃん。」
「あの、1人母親が入ってるんですけど。」
「えー?嫌なの~?」
「やめろ!抱きつくな。」
ちょっと傷つくけど思春期としては健全な反応である。
とはいえ、大方やることは決まった。
秋の夜空は少し寂しく、寒さが際立つのだけれど
私の心はまるでハロウィンのパーティーのように夜でも心踊りそうな気持ちでいっぱいだった。
さて、これから何が待ってるのだろう。
今日も今日とて1日が無事終わる。
たまーに神宮寺さんのメイド喫茶でバイトして、家事をする。
直輝とじゃれたりして、日常は当たり前のように過ぎ去っていくのだけど……。
「あー!退屈!!」
私は何を隠そう元AV女優。
それも25日ぶっ通しで働いていて、それはもうハードなスケジュールでハードなことをして、そんな私が家事のみの生活で収まるだろうか。
否、断じて否だとおもう。
「なんだよ母ちゃん、急にギャーギャー騒いで……ヒステリック?」
「直輝!私は退屈なの!」
「お……おう。とりあえず話は聞くけど。」
とにかく直輝はテーブルに座り、お互いにお茶を飲む。
テーブルには知り合いから貰ったチョコとかおかきなどが雑多に並べられ、私たちのティータイムが始まる。
「それで、母ちゃんはなにしたいの?」
「何……ってそりゃあもうスリルとかリラックスしてバーンと楽しみたいのよ!」
「すまん、ちょっと何言ってるか分からない。」
いけないいけない、私もストレスが溜まると抽象的なことを言ってしまう。
「だって……誰かさんが文化祭でほとんど帰ってこなかったりしたし、わかる?美味しい料理を作って待ってるのに連絡も無しでテーブルに座らされる私の気持ち!」
「ごめんて、わかったよ。今回は旅行でもなんでも付き合うから。」
「やった!流石直輝!」
そうと分かれば話が早い。
なんせ直輝は我が家のブレイン担当だから、私の旅行には必須と言っても過言では無いからだ。
「そんで、母ちゃんはスリルとかリラックスして……っていってたな。」
「うん!どこに行こっか、長野……はこの前直輝行ったし、山梨も富士五湖の時に回ったもんね。」
「そうだな……。」
私たちはお茶を飲みながら考える。
お茶……スリル、非日常……。
「あ、静岡はまだ行ってなかったわね。」
「ああ……確かにな。」
静岡はお茶で有名だ。
浜松でもいいし、伊豆など案外栄えてる面と自然に溢れた面が共存する件でもあるので興味はものすごくある。
「じゃあ、静岡のなんかヤバそうなとこ行きましょ!」
「……ざっくりだな、おい。」
すると、直輝がなにか思い出したかのように手をぽんと叩き、顔が少しニヤついていた。
「母ちゃん、静岡のいいとこ思いついた!」
「え、どこどこ?」
「大井川!」
「……川?」
私は、すぐにスマホで大井川と検索をする。
大井川というのは、静岡県北部から流れる川の名称らしい。南アルプスに位置して、すぐ西には長野県と東には山梨県がある県境の秘境だった。
吊り橋の名所と呼ばれ、渓流と温泉が有名で……。
「ここ!いいじゃない!」
「でしょ、アニメとかでもやっててめちゃくちゃ景色いいから行ってみたいな~とかは思ってたんだ。ここならスリルも味わえるんじゃないか?」
「そうとなれば……しゅっぱーつ!」
「まてまて、東京からだとクソハードだぞ……ずっと車一台分のスペースを走らなきゃになる!」
すぐ旅行を提案する直輝が少し怖気付く。
確かに調べてみるとヘアピン坂だらけになっていて、行くのも苦労なのかもしれない。
「じゃあ、今回は友達とか呼びましょ!」
「おお……じゃあ飯田とか?」
「そうそう!」
とはいえ、私も誰か呼びたいものである。
誰にしようか……と思いつつ連絡先を辿る。
しまった、社会人になると友達ってこんなに増えにくいんだと少し残念な気持ちになったけど、その中で1人ノリが良さそうな人がいた。
急にかけて迷惑かなと思いつつも、その人物とは親交を深めたかったのもあって、意を決して電話をかけてみた。
「もしもし。」
「ああ、ことねさん!お疲れ様です。」
「遥香さん、珍しいですね。」
そう、その人物とはメイド喫茶のメイド長の神宮寺ことねさんだ。
普段バイトでお世話になってるし、仲良くしたい場面が欲しかった。
「あの、今週の土日息子と旅行に行くんですけど、ことねさんも良かったらいかがですか?」
「ほう……どちらに?」
「大井川っていう静岡の秘境なんですけど。」
「吊り橋の名所ですね、いいですよ。」
「ほんとですか!じゃあまた詳しいことは連絡しますね!」
「ええ、楽しみにしてます。」
ことねさんも思いの外アウトドアが好きなのか、ノリノリでOKをしてくれた。晩酌の相手ができて楽しみが増えそうだった。
「やった!ことねさん誘ったわ!直輝は?」
「飯田は下呂温泉行くっぽい……あと誰誘うか。」
「舞衣ちゃんとかは?」
直輝はドライなところがある。
あんた彼女持ちなんだから声掛けていいと思うんだけど……?
「そっか、それもそうだ。後は……アニオタの彩奈とかも良さそう。大井川行きたいって言ってたし。」
「直輝の知り合いの女性比率多いわね。じゃあ今回はハーレムじゃん。」
「あの、1人母親が入ってるんですけど。」
「えー?嫌なの~?」
「やめろ!抱きつくな。」
ちょっと傷つくけど思春期としては健全な反応である。
とはいえ、大方やることは決まった。
秋の夜空は少し寂しく、寒さが際立つのだけれど
私の心はまるでハロウィンのパーティーのように夜でも心踊りそうな気持ちでいっぱいだった。
さて、これから何が待ってるのだろう。
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