239 / 369
遥香と秘境の吊り橋物語
14話
しおりを挟む
私は朝の日差しが瞼の上を照らして、浅くなってきた睡眠から一気に目覚める感覚を感じる。
私は用意されていたセミダブルベッドに横たわっていた。
ここまで歩いて寝た記憶はない。
ほんのりと、直輝との会話だけが妙に心に残っている感覚があった。
我ながらほんと息子に迷惑かけてばかりかもしれない。
隣ではことねさんが寝ている。
「ぐごごお~ふがっ……ギリ……ギリ……。」
「え、これことねさんの寝息?」
恐る恐る彼女の様子を見る。
掛け布団はベッドから転げ落ちており、シーツも剥がれている。
というか、彼女も右足だけベッドから落ちていた。
エレガントなイメージの彼女だが、想定よりも寝相が悪いみたいだった。
そして、残りの高校生組は畳の上に布団を敷いてるのか確認をする。
「すーすー。」
直輝は逆に寝相もいびきも特になかった。
それはいい……それはいいのだが……。
「ンゴォォ…ングゥ…。」
男女で少し離れるように布団は敷いてあったのだが、舞衣ちゃんが直輝の布団に入っていて直輝の身体を抱きしめていた。
まさか、本能的に直輝を求めてるのか……?
まあいいや、せっかく備え付きの風呂があるし、少し優雅な朝を迎えるとしましょ。
そんな時だった。
「おはようございます、遥香さん。」
「きゃあ!?」
1人だけ姿の見えなかった彩奈ちゃんがいた。
既に化粧はほとんど終わっており、まつ毛にマスカラをつけてはヘアアイロンで髪を巻いて、それをワックスとスプレーで固めている。
「び……びっくりした、朝早いわね彩奈ちゃん。」
「ええ、あんまりすっぴん見られたくないのもありますけど、基本朝早いんですよ。基本家事も私がやってるので。」
この子いいな……ストイックだし、こうして家のこともやってくれているなんて。
将来いいお嫁さんになりそうだ。
「ねえ、舞衣ちゃんのアレって……?」
「最初は私の隣で寝てたんですけどね……行ってしまった見たいです。」
「ど……どうしましょ、高校生で子どもが出来るのはさすがに早いと思うのよ私。」
「いや、遥香さんも16で直輝くん産んでますよ。」
「あ、確かに……。」
そういえば私も若くして子供を産んだ身だった。
まあ、あんまり心配しすぎても仕方がないかも知れない、現に服は着ていたし。
「彩奈ちゃん……コーヒー淹れる?」
「あ、欲しいです。」
「わかったわ、味はどうする?」
「ブラックでお願いします。」
私は彼女の言うとおりアメニティのコーヒーを砂糖とミルク無しで用意して彼女に渡す。
私も向かいの席に座って彼女とコーヒーを飲んでいた。
さて、時刻は5時半過ぎ。
この地域は彼女の知識のおかげでとても好いものになった。
今日も若者の声に耳を傾けて旅を委ねることにしよう。
それくらい、私にとって彼女の存在は大きいものになっていた。
「今日どこ行こうかな?ごめんなさい、私ここあんまり詳しくなくて……。」
「いえいえ!遥香さんは運転してくださってるじゃないですか!そこは私に任せてください!」
彼女は顔だけこちらに向けて化粧を仕上げる。
前髪もしっかりとスプレーで固められていて、香水もバニラの良い香りのする美少女がそこには座っていた。
そして、その美少女がるるぶを読んでは少しルートを考えてくれる。
「夢の吊り橋を7時に向かってチェックアウトを済ませたら……昨日の奥大井湖上沿いの道をさらに北上しましょう。そこからは……道があんまり良くないですけど畑薙湖までいってみてそこから帰りでも良いかもしれないですね。」
「なるほど、静岡の北端ね。相当秘境らしいわね~。」
「多分昨日みたいな道を40km近く走るらしいですよ。」
なるほど……基本的には自分で頑張って、厳しくなったらことねさんにバトンタッチでも良いかもしれない。
「さて……と、私もちょっと温泉行ってくるわ。」
「いいですね!朝の贅沢……楽しんでください!」
私は備え付きの露天風呂で服を脱ぎ文字通り全身で寸又峡の空気を味わう。
マイナスイオンと秋の涼しさ、空気の美味さなどが私を極上なまでにさわやかにしてくれている。
開放感に溢れて、昨日の二日酔いはどこかに行ってしまいそうだった。
そして、一人で温泉に入ると、少しぬるめのお湯が私をリラックスさせて自然の心地良さとお湯の気持ちよさが調和した最高の朝を迎えることが出来た。
ああ、私はなんて幸せなんだろう。
朝の日差しが私をさらに照りつけ鳥の鳴き声が心地よい。
肩まで浸かり足のふくらはぎから温まり、心拍数が上がっている。
たった一人の贅沢。
「そろそろ……出るかな。」
私は湯船から出て、軽くシャワーで体を洗い流す。
しかし、ここで私は1つの失態に気がついた。
「着替え……忘れた。」
ここに来るのに着替えを忘れたことに気がつく。
彩奈ちゃんは部屋にはいない。
どうやら、売店かどこかに行ってしまったようだった。
仕方が無いので私はタオルで洗って服を着ないまま和室の奥まで進んでいく。
大丈夫……みんな寝ているはずだから……。
「……何してるの、母ちゃん。」
そんな私の予想は虚しく、直輝がピンポイントで起きていて私の産まれたままの顕な姿は息子に見られてしまう。
「きゃあああ!!?」
私は声を上げて直輝をビンタして彼は後ろに倒れてしまった。いけない、驚きのあまり息子をぶっとばしてしまった。
「い……いたい……。」
「ごめん!直輝……これはその……あれだから!」
私は今思いついたワードで言い訳を考えて彼に思いのまま伝えた。
「新しい贅沢に挑戦しただけだから!」
「いや、挑戦の方向性おかしくないか。」
思春期の息子に裸を見られるとはこうも恥ずかしいとは思わなかった。
とはいえ、非日常の朝から少しずついつもの私たちの朝に戻るような感覚も、これはこれで悪くはないと思った。
私は用意されていたセミダブルベッドに横たわっていた。
ここまで歩いて寝た記憶はない。
ほんのりと、直輝との会話だけが妙に心に残っている感覚があった。
我ながらほんと息子に迷惑かけてばかりかもしれない。
隣ではことねさんが寝ている。
「ぐごごお~ふがっ……ギリ……ギリ……。」
「え、これことねさんの寝息?」
恐る恐る彼女の様子を見る。
掛け布団はベッドから転げ落ちており、シーツも剥がれている。
というか、彼女も右足だけベッドから落ちていた。
エレガントなイメージの彼女だが、想定よりも寝相が悪いみたいだった。
そして、残りの高校生組は畳の上に布団を敷いてるのか確認をする。
「すーすー。」
直輝は逆に寝相もいびきも特になかった。
それはいい……それはいいのだが……。
「ンゴォォ…ングゥ…。」
男女で少し離れるように布団は敷いてあったのだが、舞衣ちゃんが直輝の布団に入っていて直輝の身体を抱きしめていた。
まさか、本能的に直輝を求めてるのか……?
まあいいや、せっかく備え付きの風呂があるし、少し優雅な朝を迎えるとしましょ。
そんな時だった。
「おはようございます、遥香さん。」
「きゃあ!?」
1人だけ姿の見えなかった彩奈ちゃんがいた。
既に化粧はほとんど終わっており、まつ毛にマスカラをつけてはヘアアイロンで髪を巻いて、それをワックスとスプレーで固めている。
「び……びっくりした、朝早いわね彩奈ちゃん。」
「ええ、あんまりすっぴん見られたくないのもありますけど、基本朝早いんですよ。基本家事も私がやってるので。」
この子いいな……ストイックだし、こうして家のこともやってくれているなんて。
将来いいお嫁さんになりそうだ。
「ねえ、舞衣ちゃんのアレって……?」
「最初は私の隣で寝てたんですけどね……行ってしまった見たいです。」
「ど……どうしましょ、高校生で子どもが出来るのはさすがに早いと思うのよ私。」
「いや、遥香さんも16で直輝くん産んでますよ。」
「あ、確かに……。」
そういえば私も若くして子供を産んだ身だった。
まあ、あんまり心配しすぎても仕方がないかも知れない、現に服は着ていたし。
「彩奈ちゃん……コーヒー淹れる?」
「あ、欲しいです。」
「わかったわ、味はどうする?」
「ブラックでお願いします。」
私は彼女の言うとおりアメニティのコーヒーを砂糖とミルク無しで用意して彼女に渡す。
私も向かいの席に座って彼女とコーヒーを飲んでいた。
さて、時刻は5時半過ぎ。
この地域は彼女の知識のおかげでとても好いものになった。
今日も若者の声に耳を傾けて旅を委ねることにしよう。
それくらい、私にとって彼女の存在は大きいものになっていた。
「今日どこ行こうかな?ごめんなさい、私ここあんまり詳しくなくて……。」
「いえいえ!遥香さんは運転してくださってるじゃないですか!そこは私に任せてください!」
彼女は顔だけこちらに向けて化粧を仕上げる。
前髪もしっかりとスプレーで固められていて、香水もバニラの良い香りのする美少女がそこには座っていた。
そして、その美少女がるるぶを読んでは少しルートを考えてくれる。
「夢の吊り橋を7時に向かってチェックアウトを済ませたら……昨日の奥大井湖上沿いの道をさらに北上しましょう。そこからは……道があんまり良くないですけど畑薙湖までいってみてそこから帰りでも良いかもしれないですね。」
「なるほど、静岡の北端ね。相当秘境らしいわね~。」
「多分昨日みたいな道を40km近く走るらしいですよ。」
なるほど……基本的には自分で頑張って、厳しくなったらことねさんにバトンタッチでも良いかもしれない。
「さて……と、私もちょっと温泉行ってくるわ。」
「いいですね!朝の贅沢……楽しんでください!」
私は備え付きの露天風呂で服を脱ぎ文字通り全身で寸又峡の空気を味わう。
マイナスイオンと秋の涼しさ、空気の美味さなどが私を極上なまでにさわやかにしてくれている。
開放感に溢れて、昨日の二日酔いはどこかに行ってしまいそうだった。
そして、一人で温泉に入ると、少しぬるめのお湯が私をリラックスさせて自然の心地良さとお湯の気持ちよさが調和した最高の朝を迎えることが出来た。
ああ、私はなんて幸せなんだろう。
朝の日差しが私をさらに照りつけ鳥の鳴き声が心地よい。
肩まで浸かり足のふくらはぎから温まり、心拍数が上がっている。
たった一人の贅沢。
「そろそろ……出るかな。」
私は湯船から出て、軽くシャワーで体を洗い流す。
しかし、ここで私は1つの失態に気がついた。
「着替え……忘れた。」
ここに来るのに着替えを忘れたことに気がつく。
彩奈ちゃんは部屋にはいない。
どうやら、売店かどこかに行ってしまったようだった。
仕方が無いので私はタオルで洗って服を着ないまま和室の奥まで進んでいく。
大丈夫……みんな寝ているはずだから……。
「……何してるの、母ちゃん。」
そんな私の予想は虚しく、直輝がピンポイントで起きていて私の産まれたままの顕な姿は息子に見られてしまう。
「きゃあああ!!?」
私は声を上げて直輝をビンタして彼は後ろに倒れてしまった。いけない、驚きのあまり息子をぶっとばしてしまった。
「い……いたい……。」
「ごめん!直輝……これはその……あれだから!」
私は今思いついたワードで言い訳を考えて彼に思いのまま伝えた。
「新しい贅沢に挑戦しただけだから!」
「いや、挑戦の方向性おかしくないか。」
思春期の息子に裸を見られるとはこうも恥ずかしいとは思わなかった。
とはいえ、非日常の朝から少しずついつもの私たちの朝に戻るような感覚も、これはこれで悪くはないと思った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる