僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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直輝と別れと小さな夢

1話

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中間テストも終わり、俺たちの中では少しだけ浮ついた雰囲気がざわつく。

それはストレスの解放だけではなくまた違ったざわつきであった。

「いやー!修学旅行たのしみだな!」
「どこ行く?」
「そんなの美ら海水族館とかに決まってるじゃないの!」
「ジンベエザメとか見れるんだよな!」

そう、俺たちは修学旅行ということで、沖縄本島に行くのだった。
ちなみに俺はその会話には入って来れなかった。
修学旅行は小中学校では内向的な性格も相まっていつも欠席していたからだ。

だからこそクラスの中心で修学旅行に胸を踊らせる生徒の気持ちが理解できなかった。

「お疲れ様、直輝くん!」
「舞衣……、お疲れさん。」
「あはは、ちょっとテンション低いね~修学旅行……苦手?」

この子は俺の彼女の佐倉舞衣。
俺の過去を知ってるためか妙に気を使ってくれる。

「いや、これは俺の問題だよ。今回はみんなもいるんだしできる限り楽しむよ。」

あの頃と違うのは、ぼっちを卒業できたし、あんまり明確な目標はなかったけどとにかく勉強や生徒会も頑張ったから試練と言うよりは思い出作りとして楽しもうとしていた。

それくらいは楽しんでもバチは当たらないはずだ。

「よ!直輝!班は俺と組もうな~。」

この軽い口調の男は飯田蓮、次期生徒会長候補で見た目はチャラいが俺といつも一緒の悪友。
あとは、クラスの橋でメイクを治してる川崎彩奈の4人のメンツが一緒の班になる予定だった。

あとは、不良の虎ノ門龍が揃えばイツメンなのだが、彼だけ別クラスなので今回は班としてはカテゴリーするのは出来なかった。

すると、班として作るのは5人だからあと一人が必要になるのだが……誰にしようか。

俺はクラスを一通り見ると、1人ちょうどいいのがいた。

「よお、修学旅行一緒に行かねえか?」
「な!?」

声をかけられてびっくりしたかのように、小柄な上原瑞希が焦り出す。
なんでちょうどいいのかと言うと……こいつは俺と同じAV女優の母親を持ち、俺たちと接して転校してきた奴だ。
最近は忙しくて疎遠だったけど誘わない理由もない。

「いいのか……!?」

こいつ、犬みたいに尻尾をパタパタとさせて可愛いんだよな。
でも、誘う理由はもうひとつあった。

「いいけど、めっちゃ誘ってほしそうに俺の後ろをウロウロするの辞めてもらっていいか?」
「何が!?べ……別にさそってほしーとか思ってねえし!」

いや、さっきから俺の後ろで下手くそな口笛とかイーヤーサーサーとかブツブツ言ってたでしょうが。

「まあ、瑞希は大切な友達だし、そりゃあ誘うよ。」
「と……友達……。」

その言葉にちょっとガッカリしていた。
何故かは理解できないけど、彩奈がポンと優しく瑞希の肩に手を当ててるあたり彼女の真相を知ってる人は限られてるようだった。

「あっはっはっ!直輝ー、お前多分天国には行けないなー。」
「なんでだよ!」
「まあ~、うん……いろいろな?まあいつかわかるよ。」

あれ、なんか飯田も瑞希のこと分かってるっぽい?
知らないの俺だけ?

ちなみに修学旅行は1週間後である。
ルートも決めたり、班で動くので俺たちは何となく立ち話がてら集まってミーティングを始める。

基本的にこういうプランニングは飯田に任せて、細かいところは個々で意見を出し合っていたので俺はその話をぼんやり聞くことに徹していた。

今回の目的地は沖縄本島だということを聞いて、ふとある。

「あれ、そういえば……母ちゃんの出身って沖縄だったような……?」

そう俺の母親である天野遥香は、ここ東京ではなく沖縄出身だった。
18年前に沖縄を襲った南海トラフ地震によって被災し、そこからは俺を女手一つで育ててくれたのだが、それしか知らない。
俺はもしかしたら、若き頃の母親と同じ景色を見に行くことになるのだ。

きっと、被災などのネガティブなこともあるけど、それでも母親の故郷や過去に触れられるのがとても嬉しかった。

「……きー?きいてるか?」

それで、お土産とかも買ってあげたりしたら喜ぶかもしれない。そう考えれば、修学旅行への楽しみが格段に湧いてくる。

「直輝ー!」
「……あ、すまんすまん。」

やっと俺はボーッとしていたことに気がつく。
どうやらミーティングも終盤に差し掛かってたみたいだった。

「ったく、俺たちのリーダーはお前なんだからちゃんとしてくれよ。人生初の修学旅行で緊張してるのは分かるけど。」
「すまん。」
「じゃあ、とりあえず予算はこの程度で、ルートはたまに電車や公共交通機関を駆使したルートにしようと思うけど何かあるか?」

「「「大丈夫!」」」

「了解~、じゃあパパっと先生に出してくるわな。」

ミーティングは30分もかからなかった。
中々に優秀なスピードだけど、このメンツはクラスでも成績がよく色んな分野に長けたプロフェッショナルが多いので予想の範囲内でもあった。

今日は生徒会の書類も何も無いし、問題もない。
少しはやくかえってゆっくり眠ることにしよう。

「じゃあ、今日はちょっと疲れてるみたいだから早めに帰るわ。」
「お?そうか!OK、最近生徒会でも頑張ってたし、ゆっくり休めよ。」
「あいよ~。」

今日は珍しくひとりでの帰宅だ。
どうやら各々でまだ学校でやることがあるみたいだった。

俺は真っ直ぐ帰宅して、今日も母ちゃんにめちゃくちゃスキンシップされて、美味しいご飯を食べて、普通の日常を過ごすのかと思っていた。
当たり前とか、日常ってそんなもんだろ?
俺には同じことの繰り返しは飽きては来るものの、安心感に近いものさえも感じていた。

そして、いつものルートを通り俺は家のドアを開ける。

「ただいまー。」

返事はなかった。
いつも母ちゃんがドタバタと駆け寄ってくると思ったのだが、その素振りは無かった。

なんだ、母ちゃんいないのか?
そう思ってリビングにいると……母ちゃんはそこにいた。妙に静かに……目が少し虚ろな感じで。

「なんだ、母ちゃんいたのかよ。」
「……。」
「今日から修学旅行の準備期間なんだって、今までは休んでいたけど今回は行こうと思うんだ。」
「……。」
「いや~、今回は舞衣とか飯田とか……楽しいメンツだから少し楽しみだったんだ。」
「……。」
「そういえば、母ちゃん沖縄出身で……。」

すると、母ちゃんが不意に俺に抱きつく。
妙に返事もしないし、どこか違和感を感じていたけど……スキンシップにしては明らかに異常だった。

いつもみたいな優しい抱きつき方ではなくしがみつくような、少し力が強くさえ感じていた。

「……母ちゃん?どうし。」
「う……う……えううう……!」

母ちゃんは、泣いていた。
何かに怯えるように……何かを訴えかけるように。

今年は早めの冬と呼ばれて寒波が来て冬に差しかかるのに、部屋は暖房がついてなく、明かりもつけてないとこらを見ると……母ちゃんがこの状態がどれほど続いたのかが見て取れる。

俺はまだ、何が起こったのか理解できないままでいた。
母ちゃんが泣き止むまでは、30分以上かかっていて……俺は静かにその泣く母の姿を見つめることしか出来なかった。

部屋はさらに暗くなり、いつもの家のようなのに、少し違うところにいるかのようにヒヤリと足と肩を冷やしていく。

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