268 / 369
直輝と別れと小さな夢
5話
しおりを挟む
俺は目が覚める。
いつもより早い時間に起きたことで疲れを感じて、いつの間にか寝ていたようだった。
空の上は明らかに非日常なのに数時間も同じ景色を見ているとさすがに飽きて来る。
到着まではまだまだ時間がある。
「おはよ、直輝くん。」
「舞衣。」
「少しうなされてたみたいだけど……大丈夫?」
「え、まじ?ごめん……気が付かなかった。」
ぐっすり寝た時の夢は鮮明なのにこういう時に見た夢ってもう起きた時には思い出せない。
記憶の奥底からデリートされたかのようにどんな夢さえも探ることは出来ない。
「なんかあった?」
「んー……まあね。」
少し教えようか考えたけど、母ちゃんだってそんなに言いふらされたら溜まったもんじゃ無いだろう。
俺は話すべきか少し悩んだけど……。
「ごめん、時期が来たら話すよ。」
「そっか。」
てっきり食い下がったり浮気を疑うのかと思ったけどあっさりと舞衣は俺の意見を汲み取り、あっさりとその話が終わってしまう。
「ちょっと寂しいけど……きっと悩みがあるんだよね。もし、耐えられなくなったら私でもいいから話してね。」
「ああ、ありがとう。」
突然、機内に放送が流れる。
「間もなく、目的地に到着します。」
驚きだ、まだ数時間たったか分からないのに、もう果てしない距離を進んでいたことになる。
今年は長野県とか、静岡県とかは行ったけどそれとは比べ物にならない距離を短時間でたどり着くため文明の利器の恐ろしさが垣間見えた。
少しだけ、カフェラテを飲んで落ち着く。
母ちゃんは今頃頑張ってる時間かな。
「なあ……舞衣?」
「なぁに?直輝くん。」
「俺、母ちゃんのお土産買いに行こうと思うんだ。タイミングあったら……一緒に行かないか?」
「あはは、もう~直輝くんは本当に遥香さん大好きなんだね!」
「まあ、否定はしない。」
舞衣も母ちゃんと面識はあるし、仲が良い。
だから俺の家がどんな関係値なのかも全て知っている。
この期に及んでまだ俺は話そうか悩んでいた。
「舞衣は……家族とはどうなんだ?」
つい、変な事を聞いてしまう。
舞衣も家庭が複雑だ。
父親はいるけど間男との子供だったので関係は最悪そのもの。
聞いてしまうこと自体がノンデリケートもいい所だったけど、どうにも自分の問題を何かに転換したかった。
「んー、確かにお父さん……血が繋がってないから話すことは無いけどね。」
「うん。」
「最初は、血が繋がってなくて……急によそよそしくなる父を恨んだけど、今は感謝してる。直輝くんや色んな人に会ってから私の家族のことも色んな方面で見てみようかなって思ってきたんだ。」
意外だった。
彼女は最近リストカットの跡も減ってきたし、妙に血色が良くなったと思ったら、彼女は既に彼女なりの幸せの結論を見つけていたのだ。
「この間もバイト代でゴルフセット買ってあげたらさ!顔は真顔なのに後ろ向いてめちゃくちゃ嬉しそうだったんだ。やっぱりここまで育ててくれたのは感謝してるからね。」
「そう……だったんだ……。」
「これも全部、私が愛されていいって直輝くんが教えてくれたおかげだよ!だから……毎日が楽しい。」
気がついたら舞衣も前へ進んでいた。
親と血が繋がってないとか、愛されてないとか色んな問題をクリアしてきた。
俺は、今の彼女に向き合えられるだろうか。
自分の問題で手一杯で、頼れるか分からないこの自分を本当に好きになってくれるだろうか。
その答えは、元気な母ちゃんを見れるまでは多分だせそうになかった。
やがて、飛行機は雲海を突き破り、青き海原が見えてくる。
水平線の先が丸みを帯びていて、地球が丸いって当たり前の常識を再認識させられる。
昔の人はここより低い世界しか知らないのに、丸いなんてよく結論づけたと感心さえしてしまう。
飛行機は音を立て徐々に降下していく、
それにつれ……着地を予感した周りの人達は少しずつザワつきだし、これから体験することを心待ちにしていた。
たった1人、母の死を過剰に恐れる俺を除いて。
でも、雲を突き抜けモヤを晴らすかの如く俺はその邪念を振り払い、それでも前のことに集中することにする。
ここは沖縄。
常夏とあおき海が揺らめく未知の世界。
俺はそんな世界を前に腕をのばし軽くストレッチをする。
初めて歩く第1歩を、快適に過ごせるようにゆっくりと。
いつもより早い時間に起きたことで疲れを感じて、いつの間にか寝ていたようだった。
空の上は明らかに非日常なのに数時間も同じ景色を見ているとさすがに飽きて来る。
到着まではまだまだ時間がある。
「おはよ、直輝くん。」
「舞衣。」
「少しうなされてたみたいだけど……大丈夫?」
「え、まじ?ごめん……気が付かなかった。」
ぐっすり寝た時の夢は鮮明なのにこういう時に見た夢ってもう起きた時には思い出せない。
記憶の奥底からデリートされたかのようにどんな夢さえも探ることは出来ない。
「なんかあった?」
「んー……まあね。」
少し教えようか考えたけど、母ちゃんだってそんなに言いふらされたら溜まったもんじゃ無いだろう。
俺は話すべきか少し悩んだけど……。
「ごめん、時期が来たら話すよ。」
「そっか。」
てっきり食い下がったり浮気を疑うのかと思ったけどあっさりと舞衣は俺の意見を汲み取り、あっさりとその話が終わってしまう。
「ちょっと寂しいけど……きっと悩みがあるんだよね。もし、耐えられなくなったら私でもいいから話してね。」
「ああ、ありがとう。」
突然、機内に放送が流れる。
「間もなく、目的地に到着します。」
驚きだ、まだ数時間たったか分からないのに、もう果てしない距離を進んでいたことになる。
今年は長野県とか、静岡県とかは行ったけどそれとは比べ物にならない距離を短時間でたどり着くため文明の利器の恐ろしさが垣間見えた。
少しだけ、カフェラテを飲んで落ち着く。
母ちゃんは今頃頑張ってる時間かな。
「なあ……舞衣?」
「なぁに?直輝くん。」
「俺、母ちゃんのお土産買いに行こうと思うんだ。タイミングあったら……一緒に行かないか?」
「あはは、もう~直輝くんは本当に遥香さん大好きなんだね!」
「まあ、否定はしない。」
舞衣も母ちゃんと面識はあるし、仲が良い。
だから俺の家がどんな関係値なのかも全て知っている。
この期に及んでまだ俺は話そうか悩んでいた。
「舞衣は……家族とはどうなんだ?」
つい、変な事を聞いてしまう。
舞衣も家庭が複雑だ。
父親はいるけど間男との子供だったので関係は最悪そのもの。
聞いてしまうこと自体がノンデリケートもいい所だったけど、どうにも自分の問題を何かに転換したかった。
「んー、確かにお父さん……血が繋がってないから話すことは無いけどね。」
「うん。」
「最初は、血が繋がってなくて……急によそよそしくなる父を恨んだけど、今は感謝してる。直輝くんや色んな人に会ってから私の家族のことも色んな方面で見てみようかなって思ってきたんだ。」
意外だった。
彼女は最近リストカットの跡も減ってきたし、妙に血色が良くなったと思ったら、彼女は既に彼女なりの幸せの結論を見つけていたのだ。
「この間もバイト代でゴルフセット買ってあげたらさ!顔は真顔なのに後ろ向いてめちゃくちゃ嬉しそうだったんだ。やっぱりここまで育ててくれたのは感謝してるからね。」
「そう……だったんだ……。」
「これも全部、私が愛されていいって直輝くんが教えてくれたおかげだよ!だから……毎日が楽しい。」
気がついたら舞衣も前へ進んでいた。
親と血が繋がってないとか、愛されてないとか色んな問題をクリアしてきた。
俺は、今の彼女に向き合えられるだろうか。
自分の問題で手一杯で、頼れるか分からないこの自分を本当に好きになってくれるだろうか。
その答えは、元気な母ちゃんを見れるまでは多分だせそうになかった。
やがて、飛行機は雲海を突き破り、青き海原が見えてくる。
水平線の先が丸みを帯びていて、地球が丸いって当たり前の常識を再認識させられる。
昔の人はここより低い世界しか知らないのに、丸いなんてよく結論づけたと感心さえしてしまう。
飛行機は音を立て徐々に降下していく、
それにつれ……着地を予感した周りの人達は少しずつザワつきだし、これから体験することを心待ちにしていた。
たった1人、母の死を過剰に恐れる俺を除いて。
でも、雲を突き抜けモヤを晴らすかの如く俺はその邪念を振り払い、それでも前のことに集中することにする。
ここは沖縄。
常夏とあおき海が揺らめく未知の世界。
俺はそんな世界を前に腕をのばし軽くストレッチをする。
初めて歩く第1歩を、快適に過ごせるようにゆっくりと。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる