僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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直輝と別れと小さな夢

5話

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俺は目が覚める。
いつもより早い時間に起きたことで疲れを感じて、いつの間にか寝ていたようだった。

空の上は明らかに非日常なのに数時間も同じ景色を見ているとさすがに飽きて来る。

到着まではまだまだ時間がある。

「おはよ、直輝くん。」
「舞衣。」
「少しうなされてたみたいだけど……大丈夫?」
「え、まじ?ごめん……気が付かなかった。」

ぐっすり寝た時の夢は鮮明なのにこういう時に見た夢ってもう起きた時には思い出せない。
記憶の奥底からデリートされたかのようにどんな夢さえも探ることは出来ない。

「なんかあった?」
「んー……まあね。」

少し教えようか考えたけど、母ちゃんだってそんなに言いふらされたら溜まったもんじゃ無いだろう。
俺は話すべきか少し悩んだけど……。

「ごめん、時期が来たら話すよ。」
「そっか。」

てっきり食い下がったり浮気を疑うのかと思ったけどあっさりと舞衣は俺の意見を汲み取り、あっさりとその話が終わってしまう。

「ちょっと寂しいけど……きっと悩みがあるんだよね。もし、耐えられなくなったら私でもいいから話してね。」
「ああ、ありがとう。」

突然、機内に放送が流れる。

「間もなく、目的地に到着します。」

驚きだ、まだ数時間たったか分からないのに、もう果てしない距離を進んでいたことになる。

今年は長野県とか、静岡県とかは行ったけどそれとは比べ物にならない距離を短時間でたどり着くため文明の利器の恐ろしさが垣間見えた。

少しだけ、カフェラテを飲んで落ち着く。
母ちゃんは今頃頑張ってる時間かな。

「なあ……舞衣?」
「なぁに?直輝くん。」
「俺、母ちゃんのお土産買いに行こうと思うんだ。タイミングあったら……一緒に行かないか?」
「あはは、もう~直輝くんは本当に遥香さん大好きなんだね!」
「まあ、否定はしない。」

舞衣も母ちゃんと面識はあるし、仲が良い。
だから俺の家がどんな関係値なのかも全て知っている。
この期に及んでまだ俺は話そうか悩んでいた。

「舞衣は……家族とはどうなんだ?」

つい、変な事を聞いてしまう。
舞衣も家庭が複雑だ。
父親はいるけど間男との子供だったので関係は最悪そのもの。
聞いてしまうこと自体がノンデリケートもいい所だったけど、どうにも自分の問題を何かに転換したかった。

「んー、確かにお父さん……血が繋がってないから話すことは無いけどね。」
「うん。」
「最初は、血が繋がってなくて……急によそよそしくなる父を恨んだけど、今は感謝してる。直輝くんや色んな人に会ってから私の家族のことも色んな方面で見てみようかなって思ってきたんだ。」

意外だった。
彼女は最近リストカットの跡も減ってきたし、妙に血色が良くなったと思ったら、彼女は既に彼女なりの幸せの結論を見つけていたのだ。

「この間もバイト代でゴルフセット買ってあげたらさ!顔は真顔なのに後ろ向いてめちゃくちゃ嬉しそうだったんだ。やっぱりここまで育ててくれたのは感謝してるからね。」
「そう……だったんだ……。」
「これも全部、私が愛されていいって直輝くんが教えてくれたおかげだよ!だから……毎日が楽しい。」

気がついたら舞衣も前へ進んでいた。
親と血が繋がってないとか、愛されてないとか色んな問題をクリアしてきた。
俺は、今の彼女に向き合えられるだろうか。
自分の問題で手一杯で、頼れるか分からないこの自分を本当に好きになってくれるだろうか。

その答えは、元気な母ちゃんを見れるまでは多分だせそうになかった。

やがて、飛行機は雲海を突き破り、青き海原が見えてくる。
水平線の先が丸みを帯びていて、地球が丸いって当たり前の常識を再認識させられる。

昔の人はここより低い世界しか知らないのに、丸いなんてよく結論づけたと感心さえしてしまう。

飛行機は音を立て徐々に降下していく、
それにつれ……着地を予感した周りの人達は少しずつザワつきだし、これから体験することを心待ちにしていた。

たった1人、母の死を過剰に恐れる俺を除いて。
でも、雲を突き抜けモヤを晴らすかの如く俺はその邪念を振り払い、それでも前のことに集中することにする。

ここは沖縄。
常夏とあおき海が揺らめく未知の世界。
俺はそんな世界を前に腕をのばし軽くストレッチをする。
初めて歩く第1歩を、快適に過ごせるようにゆっくりと。
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