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直輝と別れと小さな夢
9話
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カチッ……カチッ……
書斎の時計の音が妙に大きく聞こえる。
この少年が実の父とわかってから妙に心地が悪い。
でも幸にも彼は読書を楽しんでおり、それにはあまり気がついてないようだった。
ちなみに俺は父の本を読んでみるのだが、これまた恐ろしいほど難しい。
なぜ高校生という若さでこんな全て英語の本なんて読めるのか、半分は同じ遺伝子だと言うのに驚かされてばかりいる。
「……居心地悪い?」
「あ!いや……全然!!」
どうやら本に没頭してる訳では無い。
彼は本を読みながらもうひとつ別で脳の処理を行っているようだった。どうやら、習慣で頭の良さは変わるのだとこの時強く感じた。
とにかく話題を考えよう……。
「あのさ、普段ずっと……1人なの?」
「うん、そうだよ。親も帰ってこない。」
「そうか……、そりゃあ、寂しいね。」
「寂しい……か、確かにそうかもしれない。僕は好奇心はあるのだけど、結局本を読むことに逃げてばかりだよ。」
彼は、ぼんやりとした目でページをめくる。
まるでその姿だけでもミステリアスで様になっている。
でも、少しだけ彼を見てわかった。
彼は少し痩せこけている。
こんなにも豪勢なマンションに住んでるのに、妙に肌ツヤが沢山食べてない感じだった。
「あのさ、普段……飯とか食べるの?」
「ああ……カロリーメ〇トとかは。」
「いや、それ食事じゃないよ!」
てっきり行動=心理のような人だと思ったけど、ちょっとズレてるだけだったのかもしれない。
そう考えると、少しだけ年相応で自分の父が可愛らしく感じた。
「そうか……じゃあたまにはフルーツ味とかチョコ味とかで。」
「いや!味変えても栄養素一緒だよ。だから……泊めてくれるお礼に飯作らせてよ。」
少年は、少し考えながら静かに頷いた。
「ああ、構わないよ。人通りものはあるからね。」
そう言って、彼はまたページをめくった。
☆☆
俺はまずは米を炊く。
その後に簡素だけど味噌汁を作ることにした。
とはいえ、本だしの粉末を入れてはワカメと豆腐なめこを入れたシンプルなものだけどね。
その後は、冷凍で魚があったのでそれを解凍して、鮭に小麦粉をまぶしバターで炒めるムニエルを仕上げてテーブルに並べた。
これは、何を隠そう母ちゃんの得意料理だ。
「直人ー!飯できたよ!」
「……ああ。」
彼はテーブルに座るとありふれた食事なのに目を張っていた。
どうやら、本当に久しぶりの食事だったそうだ。
彼は鮭をまず食べてから米を一気に食べる。
その後は、味噌汁を飲んでほっとしていた。
驚くことに彼はかなり食欲があった。
「美味い……。」
「だろー!母ちゃんの得意料理なんだ!」
「へぇ~素敵なお母さんだね。どんな人なの?」
げ、いきなり地雷踏んだ。
「あ~、なんというか天真爛漫な人でな、いつも明るくて……誰よりも強くて……それで……。」
母ちゃんの事を話すと、妙に涙がこぼれた。
そう、今は母ちゃんはがんの手術をしてる最中だ。
大丈夫かな、母ちゃん……早く会いたい。
いつもみたいな元気な顔を見たいなと……そう思ったら妙にこぼれるように感情が溢れ出てしまった。
「……大丈夫?」
「ああ、母ちゃん……今ガンを患って、手術を受けてるんだよ。」
「そうか、素敵なお母さんな分……怖いし悲しいよね。でも、もし直輝みたいに素敵な息子がいたら、きっと元気な顔を見せようと頑張るはずだよ。」
直人は、慰めてくれた。
知る由もなかった、初めての父からの労いがこの不可解な奇跡によって体験させてくれたのだ。
「ありがとう、直人。」
「ああ……いや、僕は当たり前の事をしたまでだよ。僕も……家族と触れることが無い僕が父親になるんだ。正直……怖い。」
意外にも、彼は彼で悩んでいた。
そうだ、彼は既に母ちゃんが妊娠してることを知っていて腹を括っている。でも16歳の少年……子を育てるにはまだまだ若すぎる歳だ。
「大丈夫、きっと直人の子に対する思いとかは、伝わってるよ。君はいい人だ。」
目の前にいる男が紛れもない息子なんだけどね。
「あはは!君は面白いな。もっと早く……出会いたかった。君のような友人ができると僕もこんなに孤独にならなかっただろうに。」
彼は、とにかく寂しかったのだろう。
どこか世界が見えすぎていて、周りに自分を理解することが出来ないから、彼は本の中の人物との対話に逃げていた。
でも、彼は同い年の友達とこうして語りたかった。
だからこそ、快く助けてくれたのかもしれない。
「好きなだけ、ここにいていいからね。」
「ありがとう、直人!」
でも、ある事が脳裏を過った。
今の時代には、彼はいない。
南海トラフ地震で母ちゃんを庇って犠牲になったからだと母ちゃんからは聞かされた。
俺は、母ちゃんと同じくらい大好きになったこの父には生きて欲しくなった。
そう、この神隠しはもしかしたら意味があるのかもしれない。
時代を改変して……父を生かす。
そして、円満な家庭にして母ちゃんを楽にさせれば、もっと幸せになれるんじゃないかと思った。
そう、これはチャンスなのだ。
俺はこの最愛の父を助ける。そして、母ちゃんと一緒により幸せな家庭を築いていくのだ。
待ってろよ、母ちゃん。
今からすごいお土産を用意してあげるよ。
俺は、止まった時が急に彩り、料理の香りと共に心を踊らせていた。
日は完全に落ち、常夏の沖縄は蒸し暑さを際立たせている。
でも妙に、灼熱が落ち着いて心地よくさえも感じた。
書斎の時計の音が妙に大きく聞こえる。
この少年が実の父とわかってから妙に心地が悪い。
でも幸にも彼は読書を楽しんでおり、それにはあまり気がついてないようだった。
ちなみに俺は父の本を読んでみるのだが、これまた恐ろしいほど難しい。
なぜ高校生という若さでこんな全て英語の本なんて読めるのか、半分は同じ遺伝子だと言うのに驚かされてばかりいる。
「……居心地悪い?」
「あ!いや……全然!!」
どうやら本に没頭してる訳では無い。
彼は本を読みながらもうひとつ別で脳の処理を行っているようだった。どうやら、習慣で頭の良さは変わるのだとこの時強く感じた。
とにかく話題を考えよう……。
「あのさ、普段ずっと……1人なの?」
「うん、そうだよ。親も帰ってこない。」
「そうか……、そりゃあ、寂しいね。」
「寂しい……か、確かにそうかもしれない。僕は好奇心はあるのだけど、結局本を読むことに逃げてばかりだよ。」
彼は、ぼんやりとした目でページをめくる。
まるでその姿だけでもミステリアスで様になっている。
でも、少しだけ彼を見てわかった。
彼は少し痩せこけている。
こんなにも豪勢なマンションに住んでるのに、妙に肌ツヤが沢山食べてない感じだった。
「あのさ、普段……飯とか食べるの?」
「ああ……カロリーメ〇トとかは。」
「いや、それ食事じゃないよ!」
てっきり行動=心理のような人だと思ったけど、ちょっとズレてるだけだったのかもしれない。
そう考えると、少しだけ年相応で自分の父が可愛らしく感じた。
「そうか……じゃあたまにはフルーツ味とかチョコ味とかで。」
「いや!味変えても栄養素一緒だよ。だから……泊めてくれるお礼に飯作らせてよ。」
少年は、少し考えながら静かに頷いた。
「ああ、構わないよ。人通りものはあるからね。」
そう言って、彼はまたページをめくった。
☆☆
俺はまずは米を炊く。
その後に簡素だけど味噌汁を作ることにした。
とはいえ、本だしの粉末を入れてはワカメと豆腐なめこを入れたシンプルなものだけどね。
その後は、冷凍で魚があったのでそれを解凍して、鮭に小麦粉をまぶしバターで炒めるムニエルを仕上げてテーブルに並べた。
これは、何を隠そう母ちゃんの得意料理だ。
「直人ー!飯できたよ!」
「……ああ。」
彼はテーブルに座るとありふれた食事なのに目を張っていた。
どうやら、本当に久しぶりの食事だったそうだ。
彼は鮭をまず食べてから米を一気に食べる。
その後は、味噌汁を飲んでほっとしていた。
驚くことに彼はかなり食欲があった。
「美味い……。」
「だろー!母ちゃんの得意料理なんだ!」
「へぇ~素敵なお母さんだね。どんな人なの?」
げ、いきなり地雷踏んだ。
「あ~、なんというか天真爛漫な人でな、いつも明るくて……誰よりも強くて……それで……。」
母ちゃんの事を話すと、妙に涙がこぼれた。
そう、今は母ちゃんはがんの手術をしてる最中だ。
大丈夫かな、母ちゃん……早く会いたい。
いつもみたいな元気な顔を見たいなと……そう思ったら妙にこぼれるように感情が溢れ出てしまった。
「……大丈夫?」
「ああ、母ちゃん……今ガンを患って、手術を受けてるんだよ。」
「そうか、素敵なお母さんな分……怖いし悲しいよね。でも、もし直輝みたいに素敵な息子がいたら、きっと元気な顔を見せようと頑張るはずだよ。」
直人は、慰めてくれた。
知る由もなかった、初めての父からの労いがこの不可解な奇跡によって体験させてくれたのだ。
「ありがとう、直人。」
「ああ……いや、僕は当たり前の事をしたまでだよ。僕も……家族と触れることが無い僕が父親になるんだ。正直……怖い。」
意外にも、彼は彼で悩んでいた。
そうだ、彼は既に母ちゃんが妊娠してることを知っていて腹を括っている。でも16歳の少年……子を育てるにはまだまだ若すぎる歳だ。
「大丈夫、きっと直人の子に対する思いとかは、伝わってるよ。君はいい人だ。」
目の前にいる男が紛れもない息子なんだけどね。
「あはは!君は面白いな。もっと早く……出会いたかった。君のような友人ができると僕もこんなに孤独にならなかっただろうに。」
彼は、とにかく寂しかったのだろう。
どこか世界が見えすぎていて、周りに自分を理解することが出来ないから、彼は本の中の人物との対話に逃げていた。
でも、彼は同い年の友達とこうして語りたかった。
だからこそ、快く助けてくれたのかもしれない。
「好きなだけ、ここにいていいからね。」
「ありがとう、直人!」
でも、ある事が脳裏を過った。
今の時代には、彼はいない。
南海トラフ地震で母ちゃんを庇って犠牲になったからだと母ちゃんからは聞かされた。
俺は、母ちゃんと同じくらい大好きになったこの父には生きて欲しくなった。
そう、この神隠しはもしかしたら意味があるのかもしれない。
時代を改変して……父を生かす。
そして、円満な家庭にして母ちゃんを楽にさせれば、もっと幸せになれるんじゃないかと思った。
そう、これはチャンスなのだ。
俺はこの最愛の父を助ける。そして、母ちゃんと一緒により幸せな家庭を築いていくのだ。
待ってろよ、母ちゃん。
今からすごいお土産を用意してあげるよ。
俺は、止まった時が急に彩り、料理の香りと共に心を踊らせていた。
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でも妙に、灼熱が落ち着いて心地よくさえも感じた。
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