僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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直輝と別れと小さな夢

8話

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過去だとはわかっている。
もしかしたら神隠しの一環だとも分かっている。
だけど、だけど今1番会いたい人を目にして俺は冷静にはいられなかった。

だって、今1番頼れるかもしれない人物だったから。

「母ちゃん!たすけてくれ!」
「きゃ……きゃあ!なに!?」
「信じて貰えないかもしれないけど、俺は母ちゃんの息子で未来から来たんだ、今何故か16年前の沖縄に来てて……。」

俺は頭の中がめちゃくちゃだったので若き頃の母ちゃんにマシンガントークのように事実を伝える。
とにかく藁にすがる勢いだった。

しかし、その行動も虚しく……。

「いい加減に……しろおおおお!!」

母ちゃんは突如堪忍袋の緒が切れたのか俺を蹴り飛ばす。それが不幸にも、俺の金的をクリーンヒットして俺は感じたことの無い痛みが内蔵の奥から悲鳴をあげてるのを感じた。

「気持ち悪い!あっち行け!」
「は……話を……。」

まさか普段から気持ち悪いと俺の方が罵倒してるのに罵倒はされるし、母ちゃんは二重の意味で息子に攻撃をするとは思いもしなかった。
あの優しかったつり目はまるで今にも襲いかかる野良猫のように猟奇的にさえみえてしまった。

「あれ?どしたの遥香?」
「わかんない、突然私のことを母ちゃんとか……。」
「えー!?きも、新手の息子ナンパってやつ?」
「やめてよ愛深!」

母ちゃんはコンビニから出てきた女友達と一緒にこの場を去ってしまう。
母ちゃん……めっちゃJKだ。
当たり前だけど、母ちゃんにもちゃんとJKした時期があったことに強く驚きを感じる。

そして、今の優しい性格は……様々な経験からなっていたのでかつての母ちゃんが年相応に荒れてた事など、知る由もなかった。

やがて、痛みが引いてきたので俺は立ち上がろうとすると、一人青年が俺の前に立っていた。
俺によく似た青年で、遠くを見すえてるような落ち着いた青年だった。

「大丈夫?」
「は……はい、大丈夫です。」

彼には妙に惹き付けられるような感覚があった。
懐かしいような、それでいて胸の奥がざわつくようなそんな感覚だった。

「彼女、結構怒りっぽいからね。」
「全く知らなかったです。」

どうやらこの青年も母ちゃんの知り合いのようだった。
俺は冷静に考える。
下手に母ちゃんに息子とか言わない方がいいのかもしれない。もしかしたら、歴史の干渉なんておきたら俺の存在だって危うい。
改めてタイムリープしてることに対して、今何するべきか冷静に考えていた。

「君、どこから来たの?」
「あ……東京からで、ちょっと知り合いとはぐれたようで……。」
「そうなんだ、そのアスファルトにころがってるのも……東京の流行りのものなの?」

青年は俺のiPhone17に興味を示してニコニコ笑っていた。
いかん、この時代ってiPhoneあったっけ?

「あ、えーっと……あれですよ、新しいケータイだから……。」
「あれかな、スティーブ・ジョブズのiPhoneってやつ?都会ってホント便利だよね。ここの人たちはまだまだガラケーが主流だよ。」
「そう!最新のiPhoneなんですよ!まだ沖縄には流通してないのかな?」

いや!iPhoneあるんかい!
まあでもそうでなければ3G回線でネットなんて使えないわけが無いか。
時代との辻褄を恐る恐るかんがえながら俺はこの青年を頼ることにした。
この青年は不思議と、助けてくれそうだったから。

「直人。」
「へ?」
「僕の名前、君は?」
「あ、えーっと……直輝です。」
「直輝くんか!なんか、僕たち似たような名前してるね!」
「たしかに……あはは。」

しかし、直人ってどこかで聞いたような。
どこで誰から聞いたんだっけ?
どうしても思い出せない。
どこまで話して良くてどこまで話しちゃ行かないのか線引きが分からない。

あるヤンキーのリベンジャーズのつく漫画のようにめちゃくちゃ変えてもいいのかな?あれも元カノをタイムリープして助ける話だったし。

「……大丈夫?なんか、考えすぎて疲れてる感じがするよ。」
「そうですね、沖縄は初めてだし……お金も無くてどうしようか困ってるんですよ。」
「それなら、ウチくる?」

まさかの青年からとんでもない提案がきた。
この男は……俺を助けてくれる。
頼ってもいい存在なのかもしれないと、ほんの少しの希望さえ持ってしまう。

「いいんですか?」
「もちろん!僕の両親、2人ともお医者さんなんだけど帰って来ないことが多くてね。広い家で本を読むことしかやることが無いんだよ。」

俺はとにかく誰かに頼らないとこの灼熱の世界を生きていけない気がした。
喉は乾ききってるし身体もタイムリープの関係か酔っているような感覚がある。
俺は、意を決して直人に頼ることにした。

「あの、お世話になります。」
「気にしないでいいよ、君は話していて楽しい。じゃあ……行こうか。」

☆☆

俺は、男に連れられて大きなマンションへと到着する。
人気はなく生活感もないので妙に広さが際立つところを見るとこの青年はほとんど親とも交流がないらしい。

その代わり、家を埋めつくしかねないばかりの本がずらりと並んでいて、この男がどれだけ知識があるのかが分かってしまうようでもあった。

生物学や、歴史……英語で書いてある本さえある。
明らかに頭の良さや見えてる世界が違う人物なのがみてとれる。
それも、紙の匂いや年季をみると何度も読み返しているようでもあった。

彼の奥ゆかしさは、この知識の多さから来てるのかもしれない。

「ゆっくりくつろいで、散らかってるけど。」
「ありがとう、直人……。知り合いもいなかったから助かったよ。」
「そうなんだ、天野さんは?」

急に苗字を言われてビクつくがそれは俺ではなく母ちゃんの事を指していたことにすぐ気がつく。

「あ~一応前知り合った人だったんだけど、覚えてないみたいで。」
「そうなんだ……知ってるけど向こうは知らないってショックだよね。」
「逆に……直人は?」

すると、彼は少し考えた。
これから言うことを伝えるほど信用に足る人物が探るように、考えるかのように。

「んー、まだ分からないけど……これから、彼女と夫婦になるかもしれない。」
「え……ええ!?」
「僕と彼女は恋仲なんだけど、彼女のお腹には子どもがいる。」

ぼんやりとした違和感が確信となる。
直人……それは先日母ちゃんから聞いた父親の名前だった。
この遠くを見据えたような不思議な目など、母ちゃん言っていた人物と特徴が見事に一致している。

「あはは、驚くよね。僕も驚いた、子どもができるって不思議な感じだ。嬉しいような、それでいてこの子どもに対してきちんと父親を成せるか、そんな複雑な感情だよ。」

そう、今目の前にいる青年の工藤直人は……紛れもなく俺の父ちゃんだった。
そう感じると、一気に時が止まったような感覚があり、ページを捲られることの無い書斎が永遠に止まった時を閉じ込めるような、そんな感覚が紙の匂いと夕日とともに差し込んできた。
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