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直輝と別れと小さな夢
13話
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とても長い時間を暗闇の中ですごしたような気がした。
洞窟の中は狭いのだが水の滴る音や時折コウモリの声が聞こえたりとしている。
それに加えて、まるで気圧が低い日に頭痛が起こるかのように常に耳のセンサーが安定せず頭がフラフラする感覚がしばらくあって、しばらくすると、一方通行の道は月明かりを差し込む。
俺は、その光を見ると立つ気力もなくてグラッと崩れてしまった。
地面が少しだけヒンヤリとしている。
火照った体温を少しずつ下げてくれているので心地が良いと感じてしまった。
俺は、それほどまでに疲れていたようだった。
少し……寝よう。
俺の精神はゆっくりとまるで底なし沼に浸かるかのように静かに静かに沈んで行った。
☆☆
太陽の光が目に差し込む。
体は心地よく、ベッドのシーツが体を温めて心地よい。
俺は瞼が重いながら目をゆっくり開ける。
すると、目の前には俺の彼女の舞衣とクラスメイトの瑞希が座っていた。
2人とも、俺の顔を見るなり目を見開き口が開いてしまうほど驚いていた。
「……ここは?」
「直輝くん!!!」
舞衣に抱きしめられて、体に重みがかかるのを感じる。
でも、それに抵抗できないほど俺の体は弱っていた。
後ろをみると瑞希も泣いていた。
「良かった……良かった……!ごめん、直輝……私が心霊スポットを行こうと言ったばかりに!」
……見慣れた顔ですごく安心する。
自分を知ってる人がいるって、すごく安心する。
俺は元の時間に戻ってきたようだった。
「いや、俺も少し気が大きくなってたから俺にも責任がある。」
「直輝くん……あの洞窟に入ってから半日以上行方不明だったんだよ!」
「ってことは……今は、修学旅行2日目……ってことか?」
「うん!」
どうやら向こうでの過ごした時間とこちらで流れた時間では多少のズレがあるらしい。
なんにせよ、神隠しとはよく言ったものだ。
「ねえ、どこ行ってたの?何を……みたの……?」
舞衣と瑞希は真剣な眼差しでこちらを見ている。
さて……どうしたものか。
神隠しって正直に言った方がいいのかな。
いや、俺に出来ることはせいぜい一つだろう。
「俺もハッキリとはわからないけど、小さな夢を……見ていたようだったよ。」
「夢?」
「うん、ちょっと懐かしくて、切ない夢だった。」
ぶっちゃけ、これだけでは伝わらないのは分かってるけど、ここまでしか言えなかった。
そう、これは小さな夢。
俺の心の中に留めるべき世界だった。
実際、世界には何も変化が無いのだから。
「それより、2人ともいいのか……?修学旅行だぞ。」
それよりも、2人の貴重な時間をこんな俺の療養に費やさせること自体が心配だった。
高校の修学旅行なんて後にも先にも今この3日間だけだ。
そんな貴重な時間を棒に振って欲しくはなかった。
でも、2人は見合ってから大笑いしていた。
「あはは!直輝気を遣いすぎ!」
「……へ?」
「直輝くん、私たちはここに居たいから座ってるんだよ!だって私たち、直輝くんのこと大好きなんだから。」
正直、自分に自信がなかった。
母ちゃんを悲しませて、父ちゃんを死なせてしまった。
俺は無力で何一つできない無能だと、自己嫌悪に走ってしまっていたからだ。
あれだけの時間があった。知識だってあった。
それでも……救えない命と対面して、無力さを痛感したからだった。
「直輝くん!まだ修学旅行は明日あるんだし、目一杯楽しも?私たちの生活に直輝くんは必要不可欠なんだから!」
「そうだよ!優しい直輝が楽しくて好きなんだから、そんな直輝を放っておいて自分だけ楽しめないよ!」
急に、心の周りを覆ってる氷が溶けだすような感覚があって、目が潤んでくる。
無力な俺を、無条件で信頼してくれている。
それだけで色んな感情が流れてくるようだった。
「ありがとう……ありがとう……!」
俺はしばらく泣いて嗚咽をした。
2人にはなぜ泣いてるのかは分からない。
でも、しばらく見守ってくれていた。
俺は無力だ。
それでも確かに一生懸命生きてきて、舞衣や瑞希を初めとするたくさんの人に手を差し伸べて、救われた人がいるのも事実だった。
俺は、最愛の父に託された夢を思い出す。
俺だって形は違えど人を救うことが好きだった。
だから、今俺はここで決心したい。
俺は、医者になりたい。
タイムリープして、神隠しという名の小さな夢を見た。それでたくさんの挫折を味わって、沢山悩んだけど……俺なりにひとつの答えを出す。
そして、小さな病棟の一室で俺は神隠しとはまた違う小さな夢を描くこととなった。
2025年の沖縄は、タイムリープ前とは違って季節は冬となる。
気温は冷涼で、夜は少し曇ってるようでもあった。
その晩、俺は思いっきり飯を食って、静かにまた眠りにつく。
その時見た夢はどんな夢だったか全く覚えていなかったけど、幸せで真っ直ぐ生きていこうと思える……そんな素敵な夢だったと思う。
洞窟の中は狭いのだが水の滴る音や時折コウモリの声が聞こえたりとしている。
それに加えて、まるで気圧が低い日に頭痛が起こるかのように常に耳のセンサーが安定せず頭がフラフラする感覚がしばらくあって、しばらくすると、一方通行の道は月明かりを差し込む。
俺は、その光を見ると立つ気力もなくてグラッと崩れてしまった。
地面が少しだけヒンヤリとしている。
火照った体温を少しずつ下げてくれているので心地が良いと感じてしまった。
俺は、それほどまでに疲れていたようだった。
少し……寝よう。
俺の精神はゆっくりとまるで底なし沼に浸かるかのように静かに静かに沈んで行った。
☆☆
太陽の光が目に差し込む。
体は心地よく、ベッドのシーツが体を温めて心地よい。
俺は瞼が重いながら目をゆっくり開ける。
すると、目の前には俺の彼女の舞衣とクラスメイトの瑞希が座っていた。
2人とも、俺の顔を見るなり目を見開き口が開いてしまうほど驚いていた。
「……ここは?」
「直輝くん!!!」
舞衣に抱きしめられて、体に重みがかかるのを感じる。
でも、それに抵抗できないほど俺の体は弱っていた。
後ろをみると瑞希も泣いていた。
「良かった……良かった……!ごめん、直輝……私が心霊スポットを行こうと言ったばかりに!」
……見慣れた顔ですごく安心する。
自分を知ってる人がいるって、すごく安心する。
俺は元の時間に戻ってきたようだった。
「いや、俺も少し気が大きくなってたから俺にも責任がある。」
「直輝くん……あの洞窟に入ってから半日以上行方不明だったんだよ!」
「ってことは……今は、修学旅行2日目……ってことか?」
「うん!」
どうやら向こうでの過ごした時間とこちらで流れた時間では多少のズレがあるらしい。
なんにせよ、神隠しとはよく言ったものだ。
「ねえ、どこ行ってたの?何を……みたの……?」
舞衣と瑞希は真剣な眼差しでこちらを見ている。
さて……どうしたものか。
神隠しって正直に言った方がいいのかな。
いや、俺に出来ることはせいぜい一つだろう。
「俺もハッキリとはわからないけど、小さな夢を……見ていたようだったよ。」
「夢?」
「うん、ちょっと懐かしくて、切ない夢だった。」
ぶっちゃけ、これだけでは伝わらないのは分かってるけど、ここまでしか言えなかった。
そう、これは小さな夢。
俺の心の中に留めるべき世界だった。
実際、世界には何も変化が無いのだから。
「それより、2人ともいいのか……?修学旅行だぞ。」
それよりも、2人の貴重な時間をこんな俺の療養に費やさせること自体が心配だった。
高校の修学旅行なんて後にも先にも今この3日間だけだ。
そんな貴重な時間を棒に振って欲しくはなかった。
でも、2人は見合ってから大笑いしていた。
「あはは!直輝気を遣いすぎ!」
「……へ?」
「直輝くん、私たちはここに居たいから座ってるんだよ!だって私たち、直輝くんのこと大好きなんだから。」
正直、自分に自信がなかった。
母ちゃんを悲しませて、父ちゃんを死なせてしまった。
俺は無力で何一つできない無能だと、自己嫌悪に走ってしまっていたからだ。
あれだけの時間があった。知識だってあった。
それでも……救えない命と対面して、無力さを痛感したからだった。
「直輝くん!まだ修学旅行は明日あるんだし、目一杯楽しも?私たちの生活に直輝くんは必要不可欠なんだから!」
「そうだよ!優しい直輝が楽しくて好きなんだから、そんな直輝を放っておいて自分だけ楽しめないよ!」
急に、心の周りを覆ってる氷が溶けだすような感覚があって、目が潤んでくる。
無力な俺を、無条件で信頼してくれている。
それだけで色んな感情が流れてくるようだった。
「ありがとう……ありがとう……!」
俺はしばらく泣いて嗚咽をした。
2人にはなぜ泣いてるのかは分からない。
でも、しばらく見守ってくれていた。
俺は無力だ。
それでも確かに一生懸命生きてきて、舞衣や瑞希を初めとするたくさんの人に手を差し伸べて、救われた人がいるのも事実だった。
俺は、最愛の父に託された夢を思い出す。
俺だって形は違えど人を救うことが好きだった。
だから、今俺はここで決心したい。
俺は、医者になりたい。
タイムリープして、神隠しという名の小さな夢を見た。それでたくさんの挫折を味わって、沢山悩んだけど……俺なりにひとつの答えを出す。
そして、小さな病棟の一室で俺は神隠しとはまた違う小さな夢を描くこととなった。
2025年の沖縄は、タイムリープ前とは違って季節は冬となる。
気温は冷涼で、夜は少し曇ってるようでもあった。
その晩、俺は思いっきり飯を食って、静かにまた眠りにつく。
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