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完璧弟と白衣の姉と
4話
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凛は駅を降りると取引先の方へと進む。
私は喫煙所でアイコスを吸っては煙の気持ちよさの余韻に浸っていた。
なんというか、喫煙をしてると口が寂しくなるので完全に習慣になってしまっている。
全く凛め……仕事とはいえこの私を1時間放置とは……。
そう思いつつ、街並みをぼんやりと見つめる。
ここら辺の地域になると妙に松阪牛の看板が沢山目に入るのだけど、金のない私にとっては圧にしか感じなかったのでその場をスルーする。
お金が無いのは本当に惨めだ、好きなことに使えない。
そんな私にとっては下心のある男ってお金をバンバン出してくれる貴重な存在だったりする。
流石に、凛をほったらかしで男と遊ぶのは気が引けるから無いとして……あとはパチンコ?
いやいや!流石に私脳内麻薬を欲しすぎている。
私は少し悩んで、普段絡んでる同僚の宮島先生に電話をかけることにした。
「もしもし?」
「……あ、出た。」
「何がよ!?珍しいわね!あんたから電話かけてくるなんて!」
宮島先生は3コール目で出てくれた。
この人はいい人だ。いつも私とくだらない時間を共有してくれている。
ほかの先生とは馴染めない私にとっては宮島先生と松本先生は唯一の心の拠り所だった。
「……今私はどこにいるでしょーか?」
「急ね、んー女性向け風俗?」
一体私をなんだと思ってるんだろう。
「……ぶぶー。」
「え?じゃあ……男とラブホとか?」
「……宮島先生?普段私をどんな目で見てるの?」
「いや、この間ランチ誘った時に男と遊んで遅刻したのはどこの誰だったかしら?」
「……あの時はごめん。」
この人もある意味私の理解者だった。
私もそこそこ酷い扱いをしてるのに切ることなく接してくれるのはありがたかった。
「いいわよ!そういえばクイズの途中だったわね!旅行とか行ってるの?」
「……そう、三重県にいってこれから伊勢神宮行ってくる。」
「あ!いいわね!私も誘ってくれたら行ったのに~!」
彼女は暇電にこんなにフランクに接してくれる。
てっきり休みの日に電話なんかかけてくるなとか言いそうだったのに、こういう所が彼女のいい所でもある。
「……ふっふっふ、先着がいてね。これからその人の金で松阪牛を食べるのだ。」
「え?もしかして佐々木先生ついにパパ活に手を出したの?」
「……いや、私よりも所得が高い弟に奢ってもらうの。」
「恥を知りなさい!恥を!」
その言葉に心がグサッと来るのがわかる。
いや、恥知らずなクズという自覚はあるのだけど……ちょっと認めるのは辛いものがあった。
「……大丈夫、弟は私といるだけでご褒美。」
「あんたねぇ~弟さんにずっと心配かけられてるじゃない。」
「……そうかな。」
「そうよ!きっといい弟さんなんだけど、頼りすぎるとお互いがダメなまま進んじゃうかもしれないわよ!」
宮島先生は、良くも悪くも常識人だ。
私には無い感覚を教えてくれるのだけれど、どうもそのニュアンスが伝わってこなくてポカーンとしていた。
「弟がシスコンなのは……私のせい?」
「本人の性格もあるかもだけどね!きっと伊勢神宮に来たのも貴方に何か変わるきっかけとか与えたかったんじゃない?あなた一生東京の職場と繁華街と家の往復じゃない。」
私は、アイコスを吸いながら少しショックだった。
凛に無意識に気を遣わせて、負担をかけている。
それが凛自身の幸せを妨げてしまってる可能性があるのではないかと、無機質な機械のような頭に叩きつけられる。
「大丈夫?悶え始めたけど。」
「……晴天の、霹靂。」
「ああ!ごめんごめん!あくまで一個人の意見だから!!」
そう言って宮島先生は即座に謝罪をする。
説教臭いけど、きっとそれも含めて彼女なりの優しさなのだろう。
「……でも、聞いてみる。凛に辛い思いさせたくないから。」
「無理に聞かなくていいのよ!?ほんと、私の一個人の意見だか」
そう言って私は彼女との電話を切る。
気がついたらアイコスを3本も無意識に吸っていて、それなりの時間が過ぎているのに気がついたら。
ラインを開くと、凛から商談終わったよと連絡が来た。
少し、彼の本心に触れてみてもいいのかもしれない。
☆☆
「外宮!着いたね!」
「……意外と人少ない。」
「まあ~平日だからね!それに、内宮の方が人多いらしいよ!」
私は凛と合流して、伊勢神宮の外宮に到着する。
歴史を感じる建築と、樹齢が何百年もありそうな木々がお生い茂っている。
しかし、適度に人の手が加わっているので所々が綺麗なところを見るとここは長年愛された神聖な場所なのだと感じて妙に喉奥に緊張に近いものを感じた。
「なあ、姉ちゃん?ちょっと聞いてもいいか?」
「……何。」
ふと、この様子を見て凛が顎に手を当てて考える。
ほんと、何に対しても興味を示すのは素晴らしいと思う。
「姉ちゃんってさ、博士号とか生物学に長けてるじゃん?生き物の構造に詳しいわけだ。」
「……白昼堂々と下ネタの話?」
「違うよ?」
「……何が聞きたいの。」
急に構造とかいうからそういう話かと思った。
とはいえ、意外と神社って男性器を模した木彫りとかを祀って子孫繁栄とかあるから意外と当たらずとも遠からずだと思ったけど、もっと違う質問をしたいらしい。
「姉ちゃんからすると、神様って存在すると思う?」
「……は?」
「いやさ、だって凄いじゃん。地球だってほんと奇跡のような成分の割合で、それでいて重力や太陽との距離も絶妙だ。ほとんどがミジンコのような原生生物なのに俺たちはテクノロジーを扱えている。神が作ったとしか俺には結論付けられない。」
なるほど、この弟は神社という存在で神の存在の有無を考えていたのだ。
神なんていわゆる偶像だ。そして私は科学で証明をすることに携わった人間、私なりの結論は既に出ていた。
「……いない。」
「へー!でも確率的にはすごく低いよね。」
「……うん。例えば瓶に腕時計の部品を入れて掻き混ぜるとしよう。時計は組み立てられる?」
「いや、無理だろ。」
「……理論上は可能。例え数百回やって出来なかったとしてもそれを何千兆やったら、どこかの部品はくっつく。」
「その奇跡の繰り返しってこと?」
「……そういうこと、ミジンコのようなものがウイルスとか、熱の変化とか様々なことが重なって偶然生まれた。そこに創造主はいない。」
そう言うと、凛は大笑いする。
凛は本当によく笑う。昔から私に色んなことを質問して答えてはこうして大笑いしていた。
「やっぱ、姉ちゃんって面白いわ。」
「……じゃあ、私からも凛に質問。」
「へ?意外だな……何が聞きたい?」
「……凛は、私が負担?」
そう聞くと凛はポカーンと口を開けて固まってしまった。
「……三重に来たのは、凛が私に変わって欲しいから?凛は私に気を使いすぎてないか?ちょっと考えてしまった。」
そう言うと、凛はまた大笑いした。
どうやら私の考えすぎのようだった。
「何言ってんだよ、俺は好きでやってるんだよ。」
「……でも、ずっとこうしてる訳には行かない。」
「まあな~。」
少しだけ沈黙する。
冬だと言うのに、緑が沢山生えてるのに疑問を抱いたが、これは1年緑の象徴である松の木が多いからだと結論付けると、凛は考えがまとまったのか私に思いを告げた。
「まあでもさ、別に先々の事とか難しいこと考えなくていいんじゃないか?姉ちゃん理論だと、これも偶然なんだし……こうあるべきみたいな正解はないんじゃないか?その時が来たら未来の自分に任せてみてもいいんじゃないか?」
「……そうだった。」
凛の言葉に、酷く汚れた私の心が少しだけ漂白剤をかけたかのように少し淡くなってるのを感じた。
世の中は、偶然のかたまり。
私はこの弟と姉弟である偶然に、少しだけ身を委ねようと感じた。
石畳はどこまでも続き、太陽は暖かく私たちを温める。
妙にこの静けさが、私の背中を押すようだった。
私は喫煙所でアイコスを吸っては煙の気持ちよさの余韻に浸っていた。
なんというか、喫煙をしてると口が寂しくなるので完全に習慣になってしまっている。
全く凛め……仕事とはいえこの私を1時間放置とは……。
そう思いつつ、街並みをぼんやりと見つめる。
ここら辺の地域になると妙に松阪牛の看板が沢山目に入るのだけど、金のない私にとっては圧にしか感じなかったのでその場をスルーする。
お金が無いのは本当に惨めだ、好きなことに使えない。
そんな私にとっては下心のある男ってお金をバンバン出してくれる貴重な存在だったりする。
流石に、凛をほったらかしで男と遊ぶのは気が引けるから無いとして……あとはパチンコ?
いやいや!流石に私脳内麻薬を欲しすぎている。
私は少し悩んで、普段絡んでる同僚の宮島先生に電話をかけることにした。
「もしもし?」
「……あ、出た。」
「何がよ!?珍しいわね!あんたから電話かけてくるなんて!」
宮島先生は3コール目で出てくれた。
この人はいい人だ。いつも私とくだらない時間を共有してくれている。
ほかの先生とは馴染めない私にとっては宮島先生と松本先生は唯一の心の拠り所だった。
「……今私はどこにいるでしょーか?」
「急ね、んー女性向け風俗?」
一体私をなんだと思ってるんだろう。
「……ぶぶー。」
「え?じゃあ……男とラブホとか?」
「……宮島先生?普段私をどんな目で見てるの?」
「いや、この間ランチ誘った時に男と遊んで遅刻したのはどこの誰だったかしら?」
「……あの時はごめん。」
この人もある意味私の理解者だった。
私もそこそこ酷い扱いをしてるのに切ることなく接してくれるのはありがたかった。
「いいわよ!そういえばクイズの途中だったわね!旅行とか行ってるの?」
「……そう、三重県にいってこれから伊勢神宮行ってくる。」
「あ!いいわね!私も誘ってくれたら行ったのに~!」
彼女は暇電にこんなにフランクに接してくれる。
てっきり休みの日に電話なんかかけてくるなとか言いそうだったのに、こういう所が彼女のいい所でもある。
「……ふっふっふ、先着がいてね。これからその人の金で松阪牛を食べるのだ。」
「え?もしかして佐々木先生ついにパパ活に手を出したの?」
「……いや、私よりも所得が高い弟に奢ってもらうの。」
「恥を知りなさい!恥を!」
その言葉に心がグサッと来るのがわかる。
いや、恥知らずなクズという自覚はあるのだけど……ちょっと認めるのは辛いものがあった。
「……大丈夫、弟は私といるだけでご褒美。」
「あんたねぇ~弟さんにずっと心配かけられてるじゃない。」
「……そうかな。」
「そうよ!きっといい弟さんなんだけど、頼りすぎるとお互いがダメなまま進んじゃうかもしれないわよ!」
宮島先生は、良くも悪くも常識人だ。
私には無い感覚を教えてくれるのだけれど、どうもそのニュアンスが伝わってこなくてポカーンとしていた。
「弟がシスコンなのは……私のせい?」
「本人の性格もあるかもだけどね!きっと伊勢神宮に来たのも貴方に何か変わるきっかけとか与えたかったんじゃない?あなた一生東京の職場と繁華街と家の往復じゃない。」
私は、アイコスを吸いながら少しショックだった。
凛に無意識に気を遣わせて、負担をかけている。
それが凛自身の幸せを妨げてしまってる可能性があるのではないかと、無機質な機械のような頭に叩きつけられる。
「大丈夫?悶え始めたけど。」
「……晴天の、霹靂。」
「ああ!ごめんごめん!あくまで一個人の意見だから!!」
そう言って宮島先生は即座に謝罪をする。
説教臭いけど、きっとそれも含めて彼女なりの優しさなのだろう。
「……でも、聞いてみる。凛に辛い思いさせたくないから。」
「無理に聞かなくていいのよ!?ほんと、私の一個人の意見だか」
そう言って私は彼女との電話を切る。
気がついたらアイコスを3本も無意識に吸っていて、それなりの時間が過ぎているのに気がついたら。
ラインを開くと、凛から商談終わったよと連絡が来た。
少し、彼の本心に触れてみてもいいのかもしれない。
☆☆
「外宮!着いたね!」
「……意外と人少ない。」
「まあ~平日だからね!それに、内宮の方が人多いらしいよ!」
私は凛と合流して、伊勢神宮の外宮に到着する。
歴史を感じる建築と、樹齢が何百年もありそうな木々がお生い茂っている。
しかし、適度に人の手が加わっているので所々が綺麗なところを見るとここは長年愛された神聖な場所なのだと感じて妙に喉奥に緊張に近いものを感じた。
「なあ、姉ちゃん?ちょっと聞いてもいいか?」
「……何。」
ふと、この様子を見て凛が顎に手を当てて考える。
ほんと、何に対しても興味を示すのは素晴らしいと思う。
「姉ちゃんってさ、博士号とか生物学に長けてるじゃん?生き物の構造に詳しいわけだ。」
「……白昼堂々と下ネタの話?」
「違うよ?」
「……何が聞きたいの。」
急に構造とかいうからそういう話かと思った。
とはいえ、意外と神社って男性器を模した木彫りとかを祀って子孫繁栄とかあるから意外と当たらずとも遠からずだと思ったけど、もっと違う質問をしたいらしい。
「姉ちゃんからすると、神様って存在すると思う?」
「……は?」
「いやさ、だって凄いじゃん。地球だってほんと奇跡のような成分の割合で、それでいて重力や太陽との距離も絶妙だ。ほとんどがミジンコのような原生生物なのに俺たちはテクノロジーを扱えている。神が作ったとしか俺には結論付けられない。」
なるほど、この弟は神社という存在で神の存在の有無を考えていたのだ。
神なんていわゆる偶像だ。そして私は科学で証明をすることに携わった人間、私なりの結論は既に出ていた。
「……いない。」
「へー!でも確率的にはすごく低いよね。」
「……うん。例えば瓶に腕時計の部品を入れて掻き混ぜるとしよう。時計は組み立てられる?」
「いや、無理だろ。」
「……理論上は可能。例え数百回やって出来なかったとしてもそれを何千兆やったら、どこかの部品はくっつく。」
「その奇跡の繰り返しってこと?」
「……そういうこと、ミジンコのようなものがウイルスとか、熱の変化とか様々なことが重なって偶然生まれた。そこに創造主はいない。」
そう言うと、凛は大笑いする。
凛は本当によく笑う。昔から私に色んなことを質問して答えてはこうして大笑いしていた。
「やっぱ、姉ちゃんって面白いわ。」
「……じゃあ、私からも凛に質問。」
「へ?意外だな……何が聞きたい?」
「……凛は、私が負担?」
そう聞くと凛はポカーンと口を開けて固まってしまった。
「……三重に来たのは、凛が私に変わって欲しいから?凛は私に気を使いすぎてないか?ちょっと考えてしまった。」
そう言うと、凛はまた大笑いした。
どうやら私の考えすぎのようだった。
「何言ってんだよ、俺は好きでやってるんだよ。」
「……でも、ずっとこうしてる訳には行かない。」
「まあな~。」
少しだけ沈黙する。
冬だと言うのに、緑が沢山生えてるのに疑問を抱いたが、これは1年緑の象徴である松の木が多いからだと結論付けると、凛は考えがまとまったのか私に思いを告げた。
「まあでもさ、別に先々の事とか難しいこと考えなくていいんじゃないか?姉ちゃん理論だと、これも偶然なんだし……こうあるべきみたいな正解はないんじゃないか?その時が来たら未来の自分に任せてみてもいいんじゃないか?」
「……そうだった。」
凛の言葉に、酷く汚れた私の心が少しだけ漂白剤をかけたかのように少し淡くなってるのを感じた。
世の中は、偶然のかたまり。
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