僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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完璧弟と白衣の姉と

3話

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名古屋駅から近鉄名古屋線に乗り換え、私たちは黙々と進む。

時刻はお昼に差し掛かり、凛と私はとにかくお互い静かな時間を過ごしていた。
研究を辞めてから、本なんて読む暇はなかった。
とにかく時間がなくて仕方がなかった。
たまに時間が空いても欲求が疼き男を招いては本能に身を任せるばかりだったのである意味新鮮だ。

「姉ちゃん、ちょっといい?」

パソコンで作業していた凛が急に私に聞き出す。

「……どうしたの、難しい顔して。」
「デザイン先方に出そうと思ってるのがあるんだけど……どうにも決まらなくてさ、どっちがいい?」

いや大丈夫かこいつ。
デザインなんて勉強したことがないから私に振られて困惑してしまう。
溜息をつきながらふたつのデザインを眺めてみる。
どうやら、飲食店の内装のイノベーションをやってるらしい。

「左がA案で、右がB案ね!もし……若い女性をターゲットにするならどっちが刺さる?」
「……私、アラサーなんだけど。」
「いやいや!姉ちゃん……パッと見は若いからさ!」

パッと見ってなんだと心の中で突っ込みながらふたつのカフェの内装を見つめる。
A案は如何にも若い女性向きで可愛いインテリアを沢山揃えているのでごちゃごちゃしている。
それに比べて、B案はシンプルで洗練されたインテリアを最小限に留め、観葉植物が映えるデザインだった。

「……若いって、年代層は?どんなシチュエーションで楽しんで欲しい?」
「んー、10代ではないんだよね。場所は二子玉川だからさ!」
「……ってことは、私のように働いているOLとかその辺で、軽い女子会や若いママ友みたいな人を狙ってるってこと?」
「そう!そうなんだよ!」

凛のデザインと入る人物を当てはめる。
そうなると、答えは一つだ。

「……であればB案。その年齢の女性は同じ空間で楽しい話を分かち合えるかとか重要視する。A案だと可愛いけどごちゃごちゃして話に集中できないから、在り来りで印象が残りにくくなる……かな?」
「おおー!さすが姉ちゃん!早速先方にメールだ!」
「……え?」

凛は私がとめるまでも無くすぐに私が良いと言ったデザインを私が言った通りに訴求文章にして取引先に送っていた。
……おいおい、大丈夫か。

しばらくすると、凛のパソコンがメッセージを受けたのか通知を鳴らすと凛はすぐに私に向けてグッドサインを送った。

「へへん!採用!」
「……いや、凛のデザインのセンスが良かっただけ!てか、なんで大事なところを私に委ねる?」

すると、凛はポカンとしたあとに笑っていた。
笑いすぎて長いまつ毛に少し涙ぐむまで笑っていた。

「あはは、だってさ~姉ちゃんって、不器用だしポンコツなんだけど……小手先の俺とは違って芯があるだよ。なんというか……本質を掴むのが上手くてね。」
「……おい!褒めてるのか貶してるのかどっちかにしろ。」

思えばこいつはいつも自分の人生の大事なところは私に任せていた。
高校受験も私に聞いてきた。
その結果大学の入試の勉強は辞めてデザインの専門学校で面接の練習をしたり、スターバッ〇スのバイトをしたりで結果、彼はデザイナーでありながら人間性も磨かれて取引先や職場で可愛がられる術を覚えたりで成功した。

就職先もそうだ。
今の職場と別の職場を比較したけど、今の職場が少し給料が低くても、特許の取得が多かったりで上場を控えてる可能性があると指摘したら迷わずその職場にしてすぐにその職場は上場する。
その勢いもあって彼は2年目で主任の立場に居られるという出世をすることにもなった。

言われてみれば私のアドバイスの元行動して、彼は上手くいくことがあった。

「褒めてるよ、俺は姉ちゃんには叶わない。」
「…………そう。」

彼は真っ直ぐ前を見つめる。
落ち着いた様子で、全てに余裕があって、それでいて私と同じくらいまつ毛が長い。
選択肢が多すぎるからこそ、彼は決断力に欠けていた……それだけだった。

突然、街並みの景色から一気に開けた海の景色に切り替わる。
道も緑がかかっていて、空は雲ひとつない。
それだけでも東京の景色になれた私たちにとっては新鮮に思えた。

「お、見てよ姉ちゃん!海めっちゃ綺麗だな~!」
「…………確かに、綺麗。」

電車は一定の速度と揺れを起こしただひたすらに進んでいく。
でも、凛が見えてる世界と私が見えてる世界はどうにも違ってるように見えた。

私は、私の舵を取るのだけは苦手だったからだ。
私には眩しすぎる、全てをやらかし切った私には到底この世界を楽しむ権利があるのかすら疑問だった。

「あ、姉ちゃん!ここだ!」
「……え?」

停車している駅は、伊勢市駅というところだった。
しかし、その声は虚しく列車は発車したので私たちは力無く座ってしまった。

「いっけねぇ~、すまん……うっかりしてた。」
「……ううん、いい。」

どうやら、弟も簡単なミスをするようでそれが年相応の可愛さに見えてくすりと笑ってしまう。

「……ねえ、凛?」
「ん?どした?」
「……私、頼るの下手かな?」

すると、凛は少し眉をひそめてこちらを見つめる。
彼は包み隠さず真実を伝えた。

「ああ、ド下手だ。」
「……むう。」
「乗り越してしまってはなんだけど、もう少し頼ってくれ。だからこそ今俺は姉ちゃんと一緒にいるんだから。」

そう答える凛に、私は少しクスリと笑う。
私は、頼らなすぎただけなのだ。
せめてこの旅だけでもいい、人の頼り方を……身につけるとしよう。

次の駅で私たちは立ち上がり、列車から出ていく。
幸いにも前の駅からはそんなに離れてなくて、少しだけほっとしている私たちだった。

「行こっか、姉ちゃん。」
「……うん。」

ここは、三重県の伊勢市。
海から少し離れたここは、街並みが少しレトロなのが妙に面白く、木々が生き生きとしていたので歴史と自然が調和した空間なのだと一目で感じた。
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