僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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完璧弟と白衣の姉と

2話

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東京駅は人が本当に多い。
まるで周りだけ濁流が流れてるようで少し酔ってしまう。
先日の修学旅行といい、ちょっと人混みが多くて私の頭はパンクしそうだった。

「大丈夫?姉ちゃん。」
「……り……リバース。」
「絶対やめてね!?駅員さんに迷惑だから!」

私は凛に手を引かれて新幹線に乗り込む。
平日の新幹線は思ったより人が少ない。
周りを見ると、サラリーマンなどのビジネスパーソンに溢れていた。

「姉ちゃん!なんか飲む?」
「……ふっ、私はビールにする。」
「え?まだ午前九時なのに?」
「……甘い、こういう日だからこそ朝から飲むもの。全く……仕事に追われてる男はこれだから。」
「それ、俺のお金なんだけど……まあいいや!すみません!ビール二本ください!」
「……え?」

すると、サービスの人が私たちに缶ビールを渡して、凛が乾杯をする。
それと同時に、新幹線は進んでいく。
最初はこんなものかと思ったけど、徐々にスピードを上げてたった数分で新横浜まで着いてるのだから、文明の利器の恐ろしさを徐々に理解する。

「ぷはー!やっぱビールって上手いなー!」
「……凛、仕事中では?」
「いいんだよ!この前も先方のところに行ったらお酒お世話になったし……世の中飲みニケーションって必要だよ。」

いかん、こいつとは見ているものが全然違う。
私なんて、ストレス発散に男にあっては食い散らかしてるだけが飲みニケーションだというのに、こいつは仕事のために人脈を広げたりとか、やっぱり要領がいい。

「……ところで、どこに行くの?」
「んー、三重だからね。伊勢神宮とかどう?」
「……伊勢、神宮。」
「外宮と内宮があるんだって!ちなみに外宮から行くのが良いらしいよ!その後は松阪牛でも食って……あー、なんか楽しみになってきた。」

地面に足をつけてウキウキしている凛と、ぼーっとした表情でプラプラと足をバタつかせる私。
外界では想像もつかない速さでまずは名古屋を目指す。

しばらくすると、私たちは各々で自由に過ごし始める。
凛は少し酒が入りながら、会社のチャットでやり取りをしながら、たまにペンタブをつかってデザインとかをしている。

私は1冊の本を読みながら、また足をばたつかせていた。そういえば昔は私はこうして本をずっと読んでいた。
家の中ではひたすらAVを眺めてるかしょーもない動画みてぼーっとしていたけど、私は本を読むのが好きだったんだと気がつく。

「みて!姉ちゃん!あれ富士山だよ!」
「……どれ?あれ?」
「あれは普通の山だよ……。もう見えないや。」

こんな感じで時折新幹線の景色が綺麗なスポットを凛は教えてくれるけど、どれも私の目に入ることはなくて少し微妙な空気を感じる。
凛も……そんなに私に気を遣う必要ないのになとか思ってしまう。普段、私の知らないところで彼女にもこんなデートとかしてるのかな?

「……凛って、彼女いるの?」
「え、どうしたの急に。」
「……いや、モテそうなのに女の雰囲気とか出さないじゃん。」
「あはは!いないいない!なんかね……付き合うけど数週間で別れちゃうんだよね!」

意外……という訳でも無さそうだった。
凛は人助けとか好きなのだが、それで勘違いさせて付き合うけど人助けを最優先して結局振られてしまうとの事だった。
まあ、自分一人を見て欲しい子とかには耐えられない性格をしてそうではある。

「そういう姉ちゃんはどうなの?」
「……んー、たまに男が寄ってきては身体を交わせるけど、それだけ。」
「姉ちゃん、もうちょっと身体大事にした方が……。」

あはは、と凛は苦笑をしていた。

「……失望した?」
「姉ちゃん?どうしてまだこの期に及んで評価が下がれると思ってるの?」
「……私で童貞捨てたくせに。」
「捨ててないからね?記憶の捏造やめよ?幼稚園のファーストキスをそう表現する人初めて見たよ。」

凛は今でこそ高身長で私に辛辣なツッコミを入れていたけど、昔はクラスでいちばん背が低く、口喧嘩だって最弱だったのにいつの間にか大きくなるものだ。
昔はすぐ私に泣きついては私は最強のディスりで相手を泣かしたもんだとしみじみ思う。

今はその弟に瞬殺なのだがね。

「姉ちゃん!いい人ができたらまずは僕を通してね!絶対だよ!」
「……え、なんか嫌だ。」

そして妙にこの男は束縛みたいなところがあるんだよな。
きっと、本気で女を好きになったことがないのかもしれない。あれ?ちょっと待てよ……私には束縛してちょっと重いぞコイツ……。

女を好きにならない原因、私説が出てきた。

「……もしかして、私の事が好きなのか?」
「ば……バカ!何言ってんだよ……ゴニョニョ……。」

単刀直入に聞いてみたら凛は耳まで真っ赤になり目を逸らして口篭り始めた。
デザインも明らかに乱れている。
いかん……コイツシスコンかもしれない。
ちょっと本能的にゾワッとくる。
弟離れできてない私だと思ったけど、姉離れできてない凛にも問題があるようだった。

「ち……違うんだ!姉ちゃん!」
「……訳を聞こう。」
「ほら、なんというか姉ちゃんってさ……一人で生きていけない感じがどうにもいいなって思えて……一人で生きていけないチワワを養ってる気持ちというか……ね?」
「……よーし、目をつぶって歯を食いしばれ。」

すると、アナウンスが流れてくる。
間もなく、名古屋に到着するとの事だった。
それを聞いて一旦私は手を止める。

「……まあいいや、お腹すいたから松阪牛で許してやる。」

ぶっちゃけ、弟のシスコンは昔からだったし……昔からずっと私の膝に座るのが好きだった。
今に始まったことじゃない。

名古屋駅のホームは、冬の寒さでビルのすきま風が強く吹き荒れる。
東京とは建築の雰囲気が違うので少しだけ異世界に来たようなそんな違和感さえも感じた。

「……凛、姉離れしろよ。」
「姉ちゃんこそ、弟離れしたらどうだよ。」
「……無理、今私にそんな選択させたら?」
「野垂れ死んじゃうね!」
「……そういうこと、じゃあ……行くぞ。」
「姉ちゃん!?そこは大阪行きの列車だよ!?」

私たち、欠点だらけの姉弟は今日も今日とて道に迷う。
でも、今日は時間は沢山あるんだから、敢えていくらでも間違えてみよう、そう思える朝だった。
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