僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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完璧弟と白衣の姉と

12話

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いつもの見慣れたマンションに行くと、少しだけ心拍数が上がるのを感じる。

凛があれだけ心配してるので多分帰ったら怒られるだろう。
1歩、また1歩と歩くと少しだけあることに気がついた。

「……あれ、このマンションこんなにカラフルだったっけ?」

ここ数日で私の世界は妙に目に刺激を感じていた。
世界が白黒に見えていたのが妙に沢山の色に溢れかえったことに気がついたのだろう。

そう思いエレベーターのボタンを押して自分のいる階層へと到着する。
いつもの見慣れた道、何度やったであろう動作で私は恐る恐る帰宅する。

「……ただいま。」

すると、凛はリビングで作業していた。
私がいること自体に強く驚いていたのでかなり心配をかけてたんだろう。

「姉ちゃん!どうしたんだよ!連絡しても全然帰ってこないから心配したんだぞ!」
「……ごめん。」
「とにかく……お腹すいた?」
「……うん。」
「わかった!ビールかなんか飲む?」
「……飲みたい。」

いつも通りの会話。
凛はいつも通り優しくて、頼れる存在だった。

テーブルにご飯が並べられている。
今日はカレーライスだった。

お互いにカレーを食べてはビールを飲んでその美味さに下を鳴らしていた。
でも、凛は少しだけ心配の糸が切れたのかちょっと怒っていた。

「……ごめん、いつも。」
「いいけど……また黙って抱えたまま家出される方が辛かった!」

いや、ホントおっしゃる通り。
凛が宮島先生とか松本先生と仲良くしてるところが自分の知らない所を隠されるとか思っていたけど、私も私でやりたい放題していて、面目ないの一言に尽きる。

「………昨日、凛が宮島先生たちと仲良くなるのは嬉しかったけど、ちょっと寂しかった。」

そう言うと凛はキョトンとしてクスって笑っていた。

「え?姉ちゃん?もしかしてヤキモチ妬いていたの?」
「……うっさい。」
「なんだ、そういうことか!姉ちゃん可愛いとこあるな。」

ちょっとイラッとしたけど、でも実際その通りだったので私は返す言葉もなかった。


「……でも、プチ家出してね。そっから考えたら、まだまだ私には凛が必要だった。」
「うん。」
「……凛、いつもありがとう。こんなに情けない私だけど、まだ一緒にいていいかな。」
「うん、もちろん。姉ちゃんがちゃんと自分の足で立てて、きちんと姉ちゃんを受け入れてくれる人ができるまでは居ていいからね。」

凛は優しくこちらを見つめてから、ビールを思いっきり飲んだ。
妙にこのありふれた瞬間がとても幸せだった。

私はひとりじゃない、確かにたまにひとりの世界でモヤモヤしてしまうけど、気が付けば周りには誰かいる。
でもそれって、すごく幸せなんだなと静かにカレーの味を噛みしめていた。

「そうそう、今日久しぶりに母さんと電話したんだけどね。」
「……珍しい。」

私は家族とは仲が悪い。
研究職をすると飛び出してから、そこからは10年くらい疎遠になっていた。
親が今何をして、どう歳を取っているのかさえと知る由もない。

だから少しだけ家族の存在を聞いて胸が焼けるような感覚があった。

一体、裏でどう悪く言われてるのだろうか、とかそういえ悪口を言われてるのではないかと少しだけ恐れている自分がいる。

「姉ちゃん、今年の年末年始……実家に帰ってきて欲しいって。」
「……いいの?」
「当たり前でしょ!姉ちゃんも列記とした家族なんだから!それに、母さんは最後姉ちゃんと口論したけど影で応援してたんだよ。ぶっちゃけ、いつでも帰ってよかった。」
「……ほんとに?」

本当は、寂しかった。
家族とまた分かち合って、本音で話したかった自分がいた。
でも分からなかった。
だからこそ身体を痛めつけていた。

そう思うと……私は涙が出ていた。

「あ、ごめんごめん!泣かすつもりはなかった!ティッシュ持ってくる!」
「……いや、大丈夫。」

私の耳に聞きなれないこえが聞こえる。
私はもうかれこれ何年も何年も泣いてなかったから、自分の泣いてる声だと気がつくには時間がかかった。

私は、ここに居ていいんだ。
それ以上の気持ちがどこにあるのだろう。

会いたい、どんな顔をすればいいのかわからなかったけど、久しぶりに会いたかった。

私は無意識に満足してタバコを片手に火をつけようとすると、凛に手首を掴まれた。

「姉ちゃん?タバコは家の中では辞めてって言ったよね?」
「……そうだった、つい。」
「ついじゃないでしょ!?」

私の家は相変わらず賑やかだった。
あと何年これが続くか分からないけど、この日常をゆっくり楽しむとしよう。

今年もあとわずかだけど精一杯楽しんでから、家族に顔を合わせよう。
そう思うと、明日も頑張れそうな気がした。
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